26 オッサン、印籠を用意したくなる
何故か神サマズの大部分を引き連れての旅が決定してしまった。
どうしてこうなった!
普通の、信仰心のある者ならば感涙に咽ぶところなのだろうが、シュレをはじめとして、神サマと言われてもどうも崇拝する気持ちになれない罰当たりなオッサンだった。いや、オッサンは悪くない。
まあ、『加護』と引き換えなのだから、ツアーガイドを引き受けたと思えばそれほど腹も立たない。くそ! 『神サマズご一行様』とかの旗を作ってやろうか!
ふと編成を見る。
木の杖を持った白髪白髯の爺さん。外見上若者二人(クール&肉体派)。女性(ミニサイズすぎて色気もクソも無いが)一人。
あれ? これって、午後八時47分ごろ印籠が飛び出すアレじゃね? しかも偉いヒトだというのを隠しての旅? 偉いっていうか、天下の副将軍どころのレベルじゃないけどね!
あれあれ? このメンバーに同行するオッサンは、まさかの『うっかり』なポジション?
いや、嫌いじゃないけど。風車の方キボンヌ。あ、偶に合流するヒトもいるよ。役取られた~。
「パパ? どうしたの?」
『高速思考』で変な妄想した上勝手に落ち込んでいたオッサンに天使の囁きが。よし! これであと十年戦える。気がする。
「何でもないよ~。さあ、加護をあのお爺ちゃんにもらおうか。ほら『お願いします』って言うんだよ?」
「うん……おじいちゃん……おねがいします……」
よくがんばった! 『次元の狭間』とやらで一人ぼっちだった幼女は人とのコミュニケーションなどいきなりできるわけが無い。きっとシュレが何かしてオッサンに懐いたんだろうケド、それにしてもなんと素直な子だろうか。
その証拠に創造神の爺さんデレデレだ。
「おお! なんと可愛い子じゃ。今このじいがいいものをやるからの!」
「うん! ありがと、おじいちゃん」
デレる爺さんと、周りでニヤつく神サマズ。クールな竜神様や脳筋の獣神までもがだ。あれ? この子が元『邪神』だって、気にもしてない? 保護者としては大歓迎だが、それでいいのか、神サマズ!
オッサンの抱える幼女に爺さんが手のひらを向ける。オッサン自身は使えないが、どうやら『鑑定』の類らしい。
「タケシよ。結界を切るのじゃ。ワシにも見通せぬぞ」
知ってたけど恐ろしいアカシックさん謹製の結界効果。
少々不安だが、娘の将来には替えられない。チラッと獣神を見て、オッサンの考えが通じたのかチッと舌打ちするのを確認してケータイの『結界』を解除する。
「ほう……なるほど、確かに『人間』じゃ。ちと寿命は長そうじゃが、エルフの、いや、この外見ならダークエルフか竜神の血が混じっておると言えば『先祖返り』とでも思われるじゃろう。問題なしじゃ。それでは加護を授けるぞ! 他にも良いスキルをたんと与えるでな」
「いや、あまり目立つようなのは困るんだが……」
「安心せい。孫はワシが守る!」
いつから爺さんの孫になった! じゃあオッサンは爺さんの息子かよ!
爺馬鹿は放っておくか。ま、いいスキルがある分には困ることは無いだろう。最悪『隠微』とかで誤魔化せばいいし。
「ところで、この子の名前はどうするのじゃ?」
「名前って……あっ!」
そういえば、名前を聞いた時、『ない』って言ってた。色々ありすぎて忘れてた。言い訳じゃないけど、娘にしようって決めたのはホンのさっきだし。
「名前、どうしよう……」
「ハイハイ! アタシが付けてあげる! え~とね~」
「待つのじゃ! ここは加護を与えるじいが付けて然るべきじゃろ!」
「え~、創造神様ズルイ~」
勝手に盛り上がりやがって。
あ、アカシックさん。なになに? 名付けの権利はオッサンにある。ゆっくり決めていい? ありがとうございます!
よし、爺さんたちが言い争っている間に決めてしまおう。『高速思考』フル発動!
と言いつつ、スーパーケータイを取り出し命名の参考にする。
この子、『邪神』だったんだよな。今度はその反対がいい。これは決定!
『邪』の反対は『聖』。
『聖子』か?
いや、ぶりっ子になっても困る。しかも、コッチの世界では発音的にちょいとそぐわない。男なら『聖矢』とか色々あるんだが……
お、漢字が同じで『聖美』と書いて『キヨミ』か。うーむ。悪くはないが、漢字というのもな。
あ、『聖羅』だって。
これって、キラキラの範疇だよね。日本では、という但し書きが付くけど。
いいんじゃないか? 大きくなって、『セーラ、出ます!』とかいうかも知れない。
それは軽い冗談として、うん。悪くない。
「娘よ。お前に名前を付けたいと思う」
「なまえ?」
「そうだ。パパが付けてもいいかな?」
「うん! うれしい!」
オッサンの腕の中で喜ぶ幼女。そうかそうか。そんなにうれしいか。いや~パパ冥利に尽きるねえ。
「あっ、異世界人ズルイ!」
「タケシよ。このジジイに免じてその権利を譲ってはくれぬか?」
「やかましい! 俺の娘だ! 俺が名付ける!」
神サマを一喝。いや、これってバチ当たらないよな。
大丈夫だった。二人ともシュンとしてた。
「よし。これからお前は『セーラ』だ。『セーラ・ハンムラ』。あ、俺の苗字と一緒にすると変か……」
「へんじゃない! セーラ! パパはセーラのパパ!」
おお! なんていい子だ! オッサンがケータイで適当に選んだだけなのに、苗字との整合性も忘れていたというのに、こんなに喜んでくれて。あー、涙腺が緩む。
「せ、セーラね。ふ~ん、わ、悪くないじゃない。でも、アタシの考えた『フリッキー』の方がいいわよ」
おい! チビ妖精、お前『フリッカ』だろ? 人の娘にお前と似た名前を付けようとしてんだよ!
「まだまだじゃな、フリッカ。その点ワシの考えた『ロキ』という名前は『すべての物事に通じ、世に平安をもたらす者』という意味じゃ。参ったか!」
おい! その短い言葉のどこにそんな長い意味が隠されてるんだ! そもそもその名前って『地球』じゃ『悪戯好きの神』ってほぼ悪神のポジションだよ! しかも男の名前じゃん! 却下だ却下!
「黙れダメ神ども! この子は『セーラ』! いいな! 文句があるなら拳で相手するぞ!」
肉体派でもなんでもないオッサンだが、つい興奮してしまった。
しかし効果はあったようで、爺さんもチビ妖精も静かになった。
「わーい。パパかっこいい」
そうかそうか。娘が喜ぶならオッサンは武闘派にでもなってやろうじゃないか!
「ほれ、さっさと加護くれ。二人分な」
「わ、わかったわい……」
ほ~。流石は創造神。手のひらから何か光が出てる。あれが『加護』なのか?
「終わったぞ」
「うむ。ご苦労」
何故か態度が安定しないオッサンだが、今は娘の将来が心配である。その憂いを絶つため『加護』のことに集中しよう。
『鑑定』スキルとか持っていないオッサンは爺さんから詳しく教えてもらう。
こんな感じ。
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名前:セーラ・ハンムラ
人種:ヒューマン
職業:なし
年齢:10
性別:女
レベル1
HP:10 MP:20
力:10
素早さ:10
器用さ:10
知力:10
運:777
スキル
剣術Ⅴ 格闘術Ⅴ 神聖魔法Ⅴ 精霊魔法Ⅴ 結界魔法Ⅴ
ユニークスキル
武術の才能 魔術の才能
称号
タケシの娘 管理神の*
加護
創造神の加護 森の神の加護 魔法の神の加護 竜の神の加護 獣の神の加護 海の神の加護 雷の神の加護
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うん。ダメ神ども、お仕置きだ。




