25 オッサン、色々あきらめる
『新創造神候補』
わかりやすいネーミングだが、ツッコミどころが多すぎる。
それより、爺さんの要請はハッキリと断ったはずだ。何故シュレまでがオッサンに押し付けてくるんだ。いや、面白そうだからとかいう答えではなくて。
「シュレ、創造神とか勘弁してくれ。大体その話はもう終わってただろうが」
流石のオッサンも会議モードだとか『管理神様~』とか言ってらんない。
「そうでしたか。わかりました。では訂正します。元『邪神』の少女の面倒だけ見てくれればいいです。『新創造神候補』は取り消します。これでよろしいですか?」
未来永劫変わらない、とか言ってたくせにあっさりと前言を翻しやがった。これだから信用できねえんだよな。まあ、今は突っ込むのはやめておこう。ヤブヘビになりかねん。
「当たり前だ」
「もっとちゃんと答えてください。これでよろしいですか?」
「ああ、それでいい」
何だ? しつこいな。
「はい。管理神としてタケシさんの意思は確認しました。正式に元『邪神』の少女の父親として認めます。よかったですね? 『パパ』さん」
「なにーっ!」
「パパ、どうしたの?」
さっきから何度も奇声を上げていたので膝の上の幼女ちゃんが不安がっている。いかん!
いやいや、それどころじゃない。
パパ? オッサンが? 確かに年齢的にはぴったりかもしれないが、結婚もせぬまま一児の父とは……ファンタジーめ! 定番だったよ!
くそ、シュレのヤツ、理不尽すぎる要求を混ぜてそちらを撤回する振りをして本命の要求を済し崩しに引き受けさせるっていうパターンできやがったな。引っかかってしまうオッサンも情けないが、いや、地球だったら大したことないよ? 契約書とか、最悪裁判所もあるし。
だが、ここはファンタジー世界。しかも回りは神サマだらけ。
どう抵抗すればいいの!
じっと手を見る。いや、腕の中の幼女を見る。
不安そうな顔だ。自分の去就が話し合われているって何となくわかっているのだろう。
よし! 決めた!
「なんでもないよ。それより、今日から俺が『本当』のパパになった。これからよろしくな」
そう! オッサンは決めたのだ。第二の人生、娘付きで結構なことじゃないか!
「ほんとうの? パパはパパだよ?」
首を傾げる幼女ちゃん。いや、俺の娘。くーっ、可愛いぜ!
「ううっ……なんていい話なのかしら」
ヨヨヨと、どこから取り出したかわからないハンカチで涙を拭く管理神サマ(大人バージョン)。どうせその涙も目薬かなんかだろう。
「これで後はママがいれば完璧ね? 私なんてどうかしら?」
「ママ?」
「娘よ。あのおねーさんは、ちょっとオカシイから近づいてはいけないよ」
「はーい。わかった」
「ヒドイ! タケシさんヒドすぎる!」
「お前がそばにいたら教育に悪いわ! あと、ハンカチ咬むのやめろ。この子が真似したらどうする」
うちの子になるというなら教育は大事だ。教育者として腕が鳴るぜえ!
「フンだ! 見てなさいピョン。いつかママになってやるんだからニャン!」
「「「「……ピョン?」」」」
「「「「「……ニャン?」」」」」
シュレのワケのわからない発言内容よりも、その特異な語尾が神サマズにとってはインパクトが強かったようだ。
どうやら、アバターか分身か知らないが、こちらにもバグの影響が出始めたようだ。そりゃそうか。そんなに簡単に矯正できるなら『宇宙の意思』であるアカシックさんも苦労はしまい。
「ホホホ。どうやら時間が来たようです。私はここで神域に戻りますが、あ、一つ報告が。『知性の神』イズミさんですが、先ほど旅に出られました」
「「「「「「「「はあ!?」」」」」」」」
神サマズ&オッサンは何が何だかわからなかった。
「あ、あの、管理神様! 娘はどうなったのですかな? ここに連れてきてくださるのでは……」
イズミちゃんの親である爺さんが一番事情が知りたいことだろう。
「ええ、そのつもりでしたが、彼女のたっての希望により認めました。なんでも『この世界が本当に実在しているのか、自分の目で確かめる。その上で滅ぼすかどうか決める』だそうです、にゃ……ゴホン、ゴホン。で、では、何か問題がありましたらタケシさんを通じて連絡してください。御機嫌ようだっちゃ。んもう!」
限界が来たらしく、シュレ(大人バージョン)は光のエフェクトを残してさっさと消えてしまった。慌しいことこの上ない。会議がグダグダじゃないか。
しかし、シュレに託したイズミちゃんの伝言、穏やかならない内容だったような……
「そうか……イズミも何か思うところがあるのじゃろう。元気ならそれでよいが……よし! ワシも神を辞めると決めたが、現実の世界とやらを見てみるとするか。神を辞めるも続けるも、新たな発見があるやもしれぬでのう」
「おもしろそう! アタシも!」
チビ妖精の主体性の無さはともかく、その後神サマズが我も我もと続いた。海神様と雷神様は元々海や空を漂っているような存在だったので変わりないとのこと。『津波が心配だからあまり陸地にはいられない』と言った海神様にイヤミのつもりは無いと信じたい。
(精神的に)長い会議がやっと終了した。
おっと、忘れてはいけない。オッサンにはまだ用事がある。
「爺さん、盛り上がっているところ悪いが、この子に『加護』をくれないか? できれば『邪神』の称号とやらも消してほしい」
「おお、そうじゃな。人間として生きるならそのほうがよかろう。しかしのう……」
爺さん、乗り気ではないようだ。
「イズミちゃんが言ってたことは俺もわかる。将来『加護』をどうするかは神サマたちで決めればいい。だが、それまでは俺もこの子もこの世界の人間として他の人たちと同じように暮らしたいんだ。だから頼む」
「……わかった。確かにお主の言うとおりじゃ」
「ついでに俺にも『加護』を頼むぜ」
「お主に今更いらんじゃろう」
「同じがいいんだって」
そう。日本人として周りと極端に違うのは居心地が悪い。オッサンは極めて庶民的なのだ。
「……よかろう。時に、お主これからどうするのじゃ?」
「ん? そうだな、元々世界を旅して老後に静かに暮らせるところを探すつもりだったけど、娘ができたからなあ。まあ、それでもしばらくは旅をしながら拠点でも作るさ」
「……そうか……わかった。お主の加護の件じゃが、やるのに条件がある」
は? 爺さんまでシュレみたいなことを言い出したぞ? これって神サマのデフォ?
「……どんな条件だ?」
一応聞いておく。いや、早まったか? 聞いたら断れないかも。
「ワシも同行させい」
「は?」
「じゃから、ワシもお主らと旅をすると言うておるんじゃ。お主とともにいれば管理神様のお心が一端でもわかるやもしれぬでの」
何? シュレ目当て? 大人バージョンだったから? いや、爺さん、それ騙されてる。ただの暇つぶし&ゲーム感覚なだけだよ。
「創造神様、素直に言ったら? 異世界人と一緒にいれば面白そうだからって」
「おうとも! いつか絶対にその結界破ってやる!」
「私は配下になったのだ。一緒に行くのが当然だろう」
「僕は、そうだな。魔族と人間が一触即発だからねえ。お嬢さんの影響だけでなく何かしら陰謀もあるようだし、ま、偶には顔を出すよ」
あれあれ? チビ妖精に脳筋獣神、竜神様まで参加? 魔神様も?
「どうじゃな? 加護がほしくばワシらを連れて行くがよい」
うわ、そんなに期待した目で見られても……
「パパ? みんなでおでかけするの?」
「……ヨロシクオネガイシマス……」
はい! 娘の言葉には逆らえませんでした。




