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24 オッサン、色々押し付けられる

 


 つい先ほど『創造神にならないか?』というオファーがありました。

 いきなりの大出世です。学年主任も教頭も校長も飛び越えて、一教師の出世限界値を軽くブレイクスルーしました。これもチート能力のせいでしょうか?


 いや、ある意味そうかも知れません。この場にいる大人バージョンはともかくとして、真っ白空間にいる本体のチンチクリンバージョンの方は腹を抱えて笑い転げていることでしょう。目に見えるかのようです。


「だが断る!」


 こちらの世界に来てからは、こういうセリフも(それほど)恥ずかしく思うことなく言える気がします。


「いい考えじゃと思うがのう。管理神様の御使いで神以上の力を持っているタケシ殿にこそ相応しい気がするがのう。いやいや、『創造神』というてもな、実際にすることはないでの、『象徴』のようなもんじゃ」


 くっ、一気呵成に断ったものの、しつこく勧めてくる。どこの世界も爺さん婆さんはこうなのか?

『象徴』だと自分で言ってりゃ世話ないわい!


「爺さん、俺も『地球人』として少しは責任を感じる部分もある。だがそれは話が別だ。しゅ……管理神サマも言ってたが、ここはもう現実の世界だ。何千年何万年の記憶があるか知らないが、それは『あったこと』になるんだ。真実を知ったところで消えてなくなるわけじゃない。それでもどうしても辞めたいなら、神サマたちで話し合って決めてくれ。勿論イズミちゃんが合流してからな。俺が付き合ってたら日が暮れるどころか寿命も尽きちまうからな。勘弁してくれ」


「……そうか。残念じゃのう」


 オッサンの説得は何かしら効果があったようだ。

 爺さんは一応引き下がり、他の神サマズはホッとしたような表情である。

 シュレは……うむ。無表情だ。流石『お出かけバージョン』。本体は盛大に舌打ちしていることだろう。


「それよりもまだ話があるだろ?」


「何じゃな?」


「この子のことだ。『邪神』」


「おお」


 オッサンは膝の上の幼女を抱え上げる。

 会場がざわついた。オッサンが召喚したときは皆警戒心バリバリだったが、その後理不尽な要求、管理神の光臨などイベントてんこ盛りで忘れていたようだ。


 多人数に改めて見つめられた幼女は、居心地が悪かったようで、すぐにオッサンの胸に顔を埋めてしがみついた。

 プルプル震えているのが庇護欲を誘う。ナデナデ。


「しかしの、『創造神』としての記憶には『創った』覚えも『存在』していたという概念もないんじゃが……」


 爺さん、言い回しがくどい。

 他の神サマズも新たな問題の発生にどうしたらいいかわからない様子である。


 皆の視線が今度はシュレに集まった。『神気』は最小限に抑えてあるのだろうし、流石に皆ももう慣れたのだろう。


「……では、その子に関しても説明しましょう……どうですか? わかりましたか?」


 お馴染み圧縮ファイル。オッサンにはアカシックさんの解説だ。


「そ、そんなことが……」


 おーおー。爺さん驚いている。然もありなん。


「今の内にやっておいた方が……」


 コラ! 脳筋! 『やる』って『殺る』の意味だろ! 物騒すぎるぞ。ただ、言葉を選んだのは評価してやる。幼女ちゃんもわかってないみたいだからセーフ。


「魔素に邪気が移って、それが蓄積して大いなる災いが……コワイー!」


 チビ妖精、『魔素』とか『邪気』とか中二的単語を呟いている。

 オッサン初耳だよ。

 いや、正確には聞いたことがある。ただし『地球』で。ラノベの中に氾濫しとるわ。


 アカシックさんからの簡潔な説明によると、『設定』により大気中に『魔素』と呼ばれるファンタジー物質が漂っており『魔力』の燃料になるそうだが、大きく3種類の状態があるそうだ。

 これまたファンタジー要素の強い『邪気』と『聖気』。この二つは精神波と考えればいいそうだが、『魔素』はその精神波に影響されるらしい。

 よって、ニュートラル状態の『純魔素』、『邪気に侵された魔素』、『聖気を帯びた魔素』の三形態が存在する。もちろん『邪気』や『聖気』の含有量は様々なので大きく分けて、と前置きが入るわけだが。


 そしてこの『邪神』幼女ちゃん、『邪気』の一番絞りみたいな濃い『邪気に侵された魔素』の塊から生まれたらしい。

 オッサンに抱きついてプルプルしている姿からは、とてもそうは見えないが……ナデナデ。


「それで、あなたたちはどうしたいですか?」


 まだざわめきが収まらぬ中、シュレが改めて神サマズに問いかける。


「どうって言われても、コイツは本当に『邪気』の塊なのか?」


()る』発言をしていた脳筋代表の獣神が、オッサンに抱えられた幼女ちゃんを改めて見て、毒気を抜かれたような表情をしている。うむ。やはり可愛いは正義だったか。


「そうですね。『設定』ではこれから更に『邪気』を集め、この世界を滅ぼす存在になっていたことでしょう」


 おいシュレ。とうとう『設定』とかハッキリ口にしちゃってるよ。いいのか? それで。


「どうしますか? 決められた運命に従ってこの子と対決でもしますか?」


「茶番だな」


「そうですね。何も知らなかった状態ならともかく、真実を知った今は、その子も被害者としか思えませんね」


 お、流石竜神様。本質をよくわかってらっしゃる。魔神様も名前だけで言えば『邪神』みたいなものだが理性的なヒトだ。

 神サマズ、概ねこのような反応であった。いくらバトルジャンキーの獣神も幼女相手に戦意が湧くわけでもないらしい。


「ええ。それで構いません。自由にしてください、と私が言ったのは、『設定』に盲目的に従う必要もない、ということですから。ですので、先んじて私がこの子を保護し、『邪気』もすべて浄化しています。この子は『邪神』の称号は持っていますが、もう『人間』と変わりありません」


 何が『ですので』なのかはオッサンにはわからんが、とにかく幼女ちゃんが実質『邪神』でなくなったのはわかった。よかたよ~。


「話はわかりましたがの、ワシらにどうしろと?」


「はい。この子の今後のことです」


 神サマズには圧縮ファイル。オッサンにはアカシックさんから補足が入った。


 くーっ、涙なくしては聞けないぜ。

『邪神』幼女ちゃん、『邪気』の集まる『次元の狭間』で生まれたらしい。『次元の狭間』なんて、普段ならツッコミどころ満載のネーミングなのだが、それを素でスルーしてしまうほどオッサンは衝撃を受けた。幼女ちゃんはそこで生まれてから今まで一人ぼっちだったそうだ。説明はたったこれだけだが、人間だったら確実に気が狂う環境である。


「安心しなさい。『次元の狭間』は時間の概念もない場所、『人間』となってからも体感的にはそれほど長い時間いたわけではありませんから」


 それは救いだ。『設定』のヤロウもたまにはいいことをする。

 だが、問題は過去ではなく未来なのだ。


「ですので、この子には『人間』としての親兄弟はありません」


 それどころか『人間』としての最低限の経験・知識もない。まあ、この世界に限ってはオッサンも同じようなものだが。


「ワシらに面倒を見ろと? 管理神様のお言葉でしたら従うに異存はありませぬが……」


「人間になったんなら人間が面倒見ればいいじゃん? 異世界人に懐いてるみたいだし~」


 あ! 折角爺さんが渋々ながら認めかけたのに、チビ妖精が余計なことを言いやがった!


「待て待て!」


「私もそれが良いと思う」


「そうですね。彼ならそこいらの神より頼りになりそうですし」


 ワイワイと先ほどの暗さはどこに行ったのかと思うほど神サマズの活発な意見交換。ほぼすべてがオッサンに育児を押し付けるものだった。


「わかりました。それでは管理神である私が宣言します。元『邪神』の少女はただいまを以って『新創造神候補』タケシ・ハンムラの保護下に入ること。なお、この宣言は『宇宙の意思』の決定により未来永劫覆ることはありません」


「ちょっと待ったーッ!」


 大変です。いつの間にか『新創造神候補』とか言われました。









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