21 管理神サマ(?)光臨
爺さんの時は『創造神サマご乱心!』みたいな雰囲気だったのだが、竜神様の決断に他の神サマズはどうしたらいいかわからない、といった空気であった。
「セイリュウ! 何故だ!」
一番どうしたらいいかわからなそうな獣神が叫んだ。それは怒りに似ているが本質は異なるものだろう。例えて言えば、そう、『一緒に走ろうね、と約束したマラソンにおいて、途中で置いていかれたランナーの片割れ』のような気持ちであろう。
「私には少なくない眷族がいる。それらを置いて他所の世界に行くことも、行く末を見守ることのできぬ人間に生まれ変わることも私にはできぬ。よって管理神とやらの支配下に収まることにしたのだ」
「違う! そんなこと聞いてるんじゃねえ!」
うん、そうだよね。脳筋のヒトってそういうとこあるよね。合理的な説明が受け付けられないってこと。
「では、どうしろと? 戦うのか? そこに大義はあるのか?」
「あるじゃねえか! こっちは侵略を受けてるんだぞ!」
それは間違いない。
「まだ何もされていない。むしろ問題を起こしているのはこちらで、異世界の神はそれを解決しようとしている節がある」
わー。わかるヒトはわかってくれるんだねえ。
「他人のテリトリーに首を突っ込んできておいて、偉そうなこと言われてたまるか!」
「なら、お前に何とかできたのか? イズミは創造神様を隔離し、この世界を滅ぼそうとしていたのだぞ」
「そ、そりゃあ……」
あ。イズミちゃんがビクッとなった。身内からの砲撃だもんな。
「原因となった『世界の問題』とやらは異世界人は話すつもりはなさそうだが、だったら聞いてみるといい。イズミにな」
「そ、そうだ! イズミ! お前は誰かに唆されたんだよな! 騙されてるんだ! そうだろ!」
ライオン丸、召喚されたばかりの時はイズミちゃんを盛んに責めていたけれど、オッサンというインベーダーの存在が表面化すると一転して被害者として見るようになった。それはどうだろう?
「オカシイ……そうよ、間違ってるのはこの世界なのよ……」
「お、おい、イズミ」
あれ? イズミちゃんの様子が……
「どうして人間は一種類にならないの? 何千年も経つのに、混ざり合って弱い種族は消えていって当然なのに!」
あ、これ進化論か? それもダーウィンじゃなくてウォー何とかの方の『淘汰説』だ。すごいなイズミちゃん。
「い、イズミ、何を言って……」
「どうして魔物がいるの? 世界に必要? お父様はどうして魔物なんか作ったのかしら? 人間への試練? なら何故『加護』を分け隔てなく与えるの? 変、おかしい、理解できない、理解できない理解できない理解できない……」
「そ、創造神様、これは……」
「何ということじゃ……タケシが来てからはまともになったと思っておったが、また始まってしまった……」
爺さんの話を分析すると、オッサンがここに来る前もイズミちゃんは精神状態がオーバードライブだったようで、それで爺さんを閉じ込めたり人族間の戦争を画策したりしていたみたいだな。もう、誰も教えてくれなかったから、ビックリするじゃないか。名ばかりの邪神幼女が怖がってオッサンにしがみついてるよ!
「……こんなオカシナ世界は作り直すべき……そうよ! 滅べばいいのよ! 『知性の神』より告げル! すべて滅ぼせ!」
あ、マズイ。末期だ。
え? アカシックさん、ふんふん……え? 今の神託? どこの誰に? は? 教国? それってマズイんじゃ……
あ、はい。わかりました。やってみます。
「爺さん! 緊急事態だ! 今のは神託だ! 教国が戦争を始めるかも知れねえ! 残りの神たちで取り消しの神託を出せ! 急げ!」
「何じゃと! わ、わかった! 皆のもの、聞いたな! それぞれが担当する地域に神託を下すのじゃ! 軽挙妄動するなとな!」
神サマズ、これが異常事態だということはわかっているようで、早速人間界に神託を送っている様子。円卓を囲んで皆ブツブツ言っている光景はかなりシュール。
「それから、娘さんはコッチでしばらく預かるぞ」
「何じゃと!」
「心配するな。治療もしてやる予定だ。爺さんは気にしないで神託に気合を入れろ!」
「わ、わかった……」
よし! これでいい。アカシックさん、お願いします!
そう念じた瞬間、椅子に座って髪を振り乱しそうな勢いだったイズミちゃんの姿が掻き消えた。
一瞬、神サマズの硬直したが、爺さんとの遣り取りをちゃんと聞いていたようでそれ以上の騒ぎになることはなかった。
「やれやれ、終わったぞ……」
しばらくして神サマズの神託は終わった。
「各地の神官、指導者並びにその側近に通達した。しばらくは人間どももおいそれとは動かんだろう」
竜神様が代表として報告してくれる。あ、そうか、支配下に入るって選択したのは今のところこのヒトだけか。
「わかりました。それでですね、今後このまま事態が終息するとは思えないので、やはり早めにこちらの指揮下に入ってほしいのですが……竜神様以外のかた、どうですか?」
オッサンの言葉に、一拍置いて答えたのはチビ妖精だった。
「あたし入る。あたし一人じゃ何もできないし、イズミみたいになるのコワイ」
安心しろ。お前の性格なら大丈夫だ。
「ワシも従う」
「私も」
「吾輩も従おう」
それから立て続けに参加希望者が出た。海神様、魔神様、雷神様である。残るは……
「ちっ、俺が反対したら異世界の神が出てこないんだろ? なら今は従ってやる。そのかわり、異世界の神がロクでもねえヤツだった時は遠慮なく叩き潰してやるからな!」
これもツンデレ? 違うな。
まあ、これでコンプリートだ。一応、とりあえず。一人途中退場したし、一人は幼女だけどね。
「じゃあ、これからウチの神サマを呼び出すので、皆さんはそのままお待ちください」
やっと最後のプロセスだ。シュレが来たら今度こそ丸投げできる。いやいや、最初からの約束だからね。
「いや、既に下に付くことを決めたのじゃ、座ってお迎えなどできんじゃろ」
ああ、そういうもんだね。親会社の社長とか文部のお偉いさんが来たら会議中でもお迎えするよな。
そういうことで、神サマズ、円卓を離れて一列に整列した。ライオン丸も神様としての常識は持っているようで何も言わずに右倣えしている。
オッサンは邪神幼女を抱えたまま一歩前のポジション。上司になった覚えはないのだが……まあ、いいだろう。
「召喚! シュレ! さっさと来やがれ!」
今までで一番感情の篭ったオッサンの召喚魔術。どんな感情かは明言しないが。
パーっと目の前が輝き、人影が現れる。
あれ? あれれ~? おかし~ぞ~?
現れたのは、一瞬イズミちゃんかと思ったぐらいスタイル抜群の美女でした。もう、ボンキュッボン。金髪パサーッ。白の衣装ヒラヒラ。
誰?
そう思って誰かに聞こうと辺りを見渡した。
誰もいなかった。
と思ったら、神サマズ、全員床に平伏してる。五体投地? 何故?
美女と目が合った。何故か微笑まれた。いや違う。ニヤッとされた。これはアレだな。
「すみません間違いました! 送還!」
「ちょっと!」
謎の美女は何か言いかけたが、オッサンの適当で場当たり的な『送還魔法』は効果があったらしく、姿を消した。
ふ~。一時はどうなることかと……
お、電話だ。
シュレのヤツ、中々お呼びがかからないから焦れたな。
「はいはい。ちょっと間違ったけど、今呼ぶからな」
『阿呆! 今のがワシじゃ!』
聞きたくなかった。わかっていたんだ。
はあ~。また茶番につき合わされるのか……オッサン、胃が……




