20 うちうの神秘?
ちょっとした黒幕気分で『こちらに従わないと後が怖いぞ』的なことを言ってみました。まあ実際は『ヒィー!』とか叫んでる手下ポジなんですが。
そしたら爺さんの『普通の老人になります』宣言。新たな伝説の一ページ?
いやーまいった。
「創造神様は三番の選択ですね。他の皆さんはどうしますか? あ、私の裁量で個別に選択することもできますよ」
「創造神様! 創造神様が神をやめたらこの世界はどうなるんだ!」
「そうよ! やめちゃダメよ!」
「そ、そうです! 私が言えた義理じゃありませんが、もう少しよく考えてください!」
あれ? 誰もオッサンの話聴いてなくない?
「皆のもの、落ち着くのじゃ」
流石最高神。オッサンみたいなエセネゴシエーターとは格が違うね。癖のある神サマズがピタッと静かになったよ。
「確かに今回のことは腹立たしくもあり悔しくもある。じゃが、一方で納得できることもあるのじゃよ」
「そ、それは……」
心当たりでもあるのか、娘のイズミちゃんが爺さんに確認してくる。
「ワシは本当に『創造神』なのかのう?」
あ、核心に迫ったっぽい。これは面倒だ。神サマズも全員ではないが何か思うところがあるようだ。
「創造神様、それはどういう意味?」
チビ妖精がストレートに尋ねる。うらやましい性格だ。
「言葉どおりじゃ。確かにワシには何かを『創造』する力がある。このテーブルのようにな。実際にこの世界を創り人間その他もワシが創り出した。じゃが、ワシ自身はどうじゃ? 誰かに創り出されたのならその方こそが『創造神』を名乗って然るべきじゃろうが」
地球では良くある話題。飲み会でですら酒の肴に口の端に上る。
だが、この世界の神サマにとっては青天の霹靂に等しかったようで、全員が固まる。
「何故こんな簡単な問題に長年気が付かなかったのか。それもおかしいと思わぬか?」
それは『設定』のせいです。
言ってあげたいが、問題が複雑化するだけなので後回しにしよう。最悪シュレに洗脳されてしまいそうだ。
「それは……『精神攻撃』じゃないのか! 創造神様を狂わせてこの世界を征服しようとする連中の!」
ライオン丸君、すごい発想だ。オッサンには否定できないよ。なんせウチの管理神サマは全知全能だからねえ。できるできないの問題だったら確実に『できる』だ。
「必然性がないのう。使者殿の力だけでもワシら全員を『奴隷化』するのは容易いとは思わんか?」
「そんなワケが……」
「奴隷イヤーッ!」
創造神の合理的&物騒な発言に一部納得一部パニックに陥った。
爺さんがオッサンをどういう目で見ているのか一端がわかった。おい!
オッサンはどちらかと言うと『奴隷解放』派なんだけど。奴隷商から助けて恩を売る。これがお約束でしょう。オッサンが『奴隷術』とか使ったらマッチポンプじゃん。
「必然性はないが、嫌がらせにはなるんじゃない?」
お、魔神サマ、いい線行ってる! それこそシュレを知ってれば真っ先に思う浮かぶよね。
「どちらにしろワシにはどうにもできんよ」
爺さんの悟りきったお言葉に項垂れる神サマズ。
再びオッサンに全員の視線が集まったところで方向を修正せねば。
「えー。その話題は今は置いておいてですね、こちらの要求のどれを選ぶのか決めてください」
「御遣い様! 私は今聞きたいです! 疑問をそのままにしては何も決められません!」
イズミちゃんが食い下がる。気持ちはわかるけどさあ。
「あー。これはある意味単純な問題です。ある異世界の神が、ハッキリ言えば侵略に来ました。戦争で白黒つけるか、その前に平和裏に全面降伏するかの二択です。こちらが示した条件は、『戦争という手段を選んでほしくない』という意思表示です。上から目線ですが、神サマとしての格を考えると仕方ないと思いますよ」
「ですが!」
「イズミ、落ち着け」
なおも引き下がろうとしないイズミちゃんを止めたのはクールな竜神様だった。
「私も一つ聞きたい」
「なんでしょう?」
「異世界の神、その管理神は『何故』この世界をほしがるのだ? 確かに力関係を見るに選択の余地はなさそうだが、理由如何によっては命を賭して戦わざるを得ぬやもしれぬからな」
なんか背景に『ゴゴゴ』とでも入りそうな迫力だ。
アカシックさん! どう答えれば!
え? いいんですか? あー、はい。
「正確には、特にほしがっているわけではありません。精々口を出してそれがスムーズに聞き入れられてほしいって感じです。あなたたちより上位の存在がいるぞー、と言う主張ですかね。まあ、それはともかく、理由ですか、言いたくなかったんですが、こうなるとしかたありませんね」
オッサンはここでイズミちゃんを見る。
目が会うとビクッとされた。ちょっとショック。でも、これから話すことは仕返しじゃないよ。
「私の私見になりますが、よろしいですか?」
「構わん」
「そうですか。では、今回こうなった原因は『知性の神』にあります」
オッサンの爆弾発言に、全員がイズミちゃんに注目する。
「え、え、わ、私……お、お父様を閉じ込めたから……」
本人も、その他の神も納得しそうな空気だ。だが、違う。ただし、すべてを話すつもりもない。
「それは単なる経緯ですね。問題は他にありますが、ちなみに何故そんなことを?」
「それは……お父様が、私がいくら『この世界におかしなところがある』と言っても耳を貸してくれなかったから……あ!」
「たぶん、それです」
オッサンも結構不思議に思っていた今回の女神クエスト。単なるシュレの気まぐれにしては面倒な処分ではないだろうか。アカシックさんにオッサンの推論で構わないと言われてそれがほぼ正解であることがわかったのだ。
「もし、私利私欲、単なる権力争いで下克上を起こしたのだとしたら、ウチの神サマも関わろうとしなかったでしょう。結果的にこの世界が滅亡しようともです。ですが、『知性の神』イズミ様は、知るべきではない、いえ、『知らないほうがいい』ことに気が付いてしまったのでしょうね」
「わ、私のせいで……」
「イズミよ、ワシが不甲斐ないばかりにすまぬ」
青褪める娘と慰める父親。うわー罪悪感。
「異世界人よ。お前は『知らないほうが良い』ことを知っているのか?」
オッサン、竜神様の質問にどう答えたものか。
「知りたいですか? お勧めしませんよ」
「知っているのか、答えてくれ」
うわ、誤魔化せない。
「ええ、まあ……」
「人間が知っていて神には秘密とは道理に合わぬのではないか?」
「それこそ『宇宙の神秘』というところでしょうか」
「それを知るとどうなる?」
「そうですね、先ほどの創造神様みたいになるでしょうね。性格にもよるでしょうが、イズミ様のように思いつめる方なら最終的に精神に異常が出るんじゃないでしょうか。いくら考えても答えが出ない問題ですからね」
「では、人間であるお前はどうなのだ」
「人間といっても、私の世界の人間は色々と特殊でしたからねえ。精神耐性があると言うか、もともと狂っているというか」
「それでも構わぬから教えてくれと言ったら?」
あー。問題がずれてきてる。修正修正。
「えーと、私の管轄外です。この後ウチの管理神が来ますから、そのときに質問してください」
必殺技、ザ・丸投げ。
「……わかった。そちらの条件だが、私は支配下に入ろう」
おお! 竜神様、突然の決断。
一体何が決め手に? だが、これで二人目だ!
うわー、先はまだ長そうだな。




