16 オッサン、子連れ○になる?
ブクマ、評価感謝です。
『パパ』
それは父親に対する呼称の一つ。英語圏その他多くの言語圏で使われているが近年は元々使われていなかった日本でも外来語として定着してきている。
その用法として大辞泉では次のように説明されている。
1 父親。お父さん。また、子供などが父親を呼ぶ語。⇔ママ。
2 第三者がその人の父親を親しみを込めて呼ぶ語。普通、その相手が幼い子供の場合に用い、大人には用いない。「パパと一緒で良かったね」
3 子供のいる家庭で、家族が子供の父親を呼ぶ語。子供の視点に立って、母親が夫を、祖父母が息子を指して言う語。「パパと相談して決めましょう」
4 子供をもつ男性。父親。「おめでとう。パパになった気分はどうだい」
5 父親が自分を指して言う語。「パパの会社では」
6 女性が、そのパトロンに対して甘えていう語。
7 ⇒パーパ
なるほど。とオッサンはスーパーケータイで地球のネットにアクセスした結果に頷く。
1から5は論外だな。オッサンは花の独身貴族だ。身に覚えはない。となると6か7なのだが、違うだろう。援助○際ダメ、絶対! 7はよくわからんが、確かどこかの国で神父さんのことじゃなかったっけ。オッサンが? 確かに今神サマのお使いをしてるから絶対に違うとは言い切れないんだよな。でも、資格とかが要るんならやっぱり違うような気もするし……
「パパ? どうしたの?」
オッサンの腰に抱きついているゴスロリ幼女に再び呼びかけられ、ハッと我に返った。ケータイ持ったまま呆然としていたらしい。
「お? おお……どうしたんだろうな……」
周りを、神サマズを見渡す。
当事者のオッサンだけでなく、神サマたちも呆然としていた。好戦的だった獣神すらだ。
「あ~。すみません。召喚に失敗したようです。少しお待ちください」
思わず丁寧な言葉遣いになってしまった。だがこれは仕方ないだろう。
そう、失敗だ。何故アカシックさん由来の召喚魔法が失敗したのかわからない(シュレを疑うと切がない)が、失敗に違いない。何かの間違いだ。同様に、ゴスロリ幼女がオッサンをパパ呼ばわりしてくるのも何かの間違いのはず。幼女だから、子供だからね、オッサンを自分の父親と間違えているだけだろう。よくある話だ。授業中に先生に対して『お母さん』と呼んでしまう、アレだ。教師として何度か経験している。対処法は決してその呼び間違いをからかったりしない事。
「パパ!」
おっと、また『高速思考』を発動させていたようだ。
クエストがもう少しで完了しそうなのだ。問題はこまめに解決しないと。
「え~と、お嬢ちゃん? 名前は? どこに住んでるんだい? おじさんが送ってあげるから教えてくれないかな?」
抱きつかれたままなので、目線を合わせることはできないができるだけやさしく聞いてみる。
しかし、セリフだけ聞くとどこの人攫いか、と言われそうだ。現代日本なら一発通報間違いなし! 事実、イズミちゃんとチビ妖精の視線が冷たい。極寒だ。
仕方ないだろ! 召喚しちゃったものは! 無事に送り返さないと、それこそ事件じゃないか!
「なまえ……ない……ずっとひとり……さびしかった……さびしかったよお、パパァ……」
幼女は泣き出した。オッサンは頭を撫でてやるしかできない。
何となく(一部の特殊な)日本人のセンスを感じるため、異世界召喚をしてしまったのではないかと密かに戦々恐々としていたのだが、幼女の答えは何とも判断に困るものであった。ある意味幼児特有のものだろう。あの童謡の如く。犬のおまわりさんの気持ちがよくわかると言うものだ。
オッサンが困ってしまってワンワン泣いても誰得だという話なのだが、『寂しい』と言って泣いている幼女を放り捨てるわけにはいくまい。
家族はどうした。長期の迷子か? 孤児か? それにしては服装が良過ぎるだろう。あと可能性としてはHENTAIに捕まって観賞用奴隷にされているパターンだ。異世界物でありがちだ。よし、そのHENTAIコロコロしよう!
「すみません。この子の素性、わかりませんか? 助けてあげたいんですが」
素で『神の眼』を持っている連中だ。すぐに調べられるだろう。ポンコツでも神らしい仕事をしてほしい。
「しょうがないわねえ。でも嫌いじゃないわよ。『神の眼』発動! えっ? キャーッ!」
『慈愛』も司るというチビ妖精がオッサンの頼みを聞いてくれたのだが、悲鳴を上げた。何事?
「離れなさい! ソレは『邪神』よ!」
今度はイズミちゃんが叫んだ。神サマズ、特に武闘派連中が臨戦態勢になる。
え? イズミちゃん、何て言った?
邪神? この子が?
「キサマ! 怪しいと思ったら、邪神の親だったか! まとめて始末してやる!」
元々オッサンにいい感情を持っていなかった獣神が短絡を起こす。おい! 口からカメハ○波出すな! ここは他人んちだろ!
「なに! 俺の『極大獣咆哮』が効かないだと!」
当たり前だ。アカシックさん謹製の結界舐めんな。しかし、技名が……
おっと、それどころじゃない。幼女泣いてるぞ!
「爺さん! やめさせてくれ! こっちは何もしていないだろうが!」
「む。し、しかしじゃな……」
「しかしもかかしもあるか! 元々こういう予定だろ! 失敗したと思ったら実は成功していたってだけじゃねえか!」
「あ……」
あ、じゃねえよ。レスポンス悪いなあ。
ただの人間に自信のあった攻撃をあっさりと無視された獣神も悔しさ半分、ストレス解消半分ってところなのか、二度目の攻撃はなかった。だが念のため結界は張りっぱなしにしておこう。
さて、もう一度確認しておこう。
「お嬢ちゃん。お嬢ちゃんは『邪神』なのかな?」
「……しらない……ずっとひとり……」
困った。本人は自覚がないようだ。オッサンの眼力では嘘をついているようには見えないし、本当に困った。
だが、本当なのだろう。オッサンが召喚したんだ。アカシックさん由来の召喚魔法、それだけで信用に足る。この子は『邪神』。これで神サマはコンプリート。
といっても、自覚もないまま神サマとして交渉させていいのだろうか? ううっ、次から次に問題が……シュレ、楽しんでるだろうな。クソ!
よし! シュレの思惑なぞ知るか! このまま話を進めてやる!
「爺さん! これでコッチの神サマ全員揃った! 話し合い始めるぞ。それらしい席を用意してくれ!」
「わ、わかったわい!」
そう言うと爺さん、何もない空間に手を翳してブツブツ呟く。あ、円卓が出てきた。スゲー。これも魔法か? オッサンのなんちゃって召喚魔法とは違う正当な召喚魔法かな? それとも『創造神』だけに『物質創造』とかだったりして。
すぐに人数分の椅子も用意され、オッサンは遠慮なくその一つに座った。そのための上座のない円卓なんだろう。ただ、その前に邪神の幼女に一人で座るか確認したところ涙目で拒否されたのでオッサンの膝の上に置いておくことにしたことをここに明記する。でないと、いい歳したオッサンが幼女に強要したと受け取られ、社会的HPがゼロになるからだ。
神サマズもスムーズとはいかないがそれぞれ椅子に腰を落ち着かせた。あ、チビ妖精はテーブル上に特注のミニテーブルセットを爺さんに造ってもらって着席している。テーブル・オン・テーブルだ。
さあ! 今度こそ交渉の始まりだ!




