13 オッサン、親子の仲立ちをする
爺さん、顔の前で指組んでこっち見てる。
見ようによっちゃ渋いポーズかもしれんが、祈られている気もしないでもない。
アンタ、神サマだろうが!
「は~。わかったよ。ここから連れ出せばいいんだろ」
「うむ。頼む」
オッサンに他の選択肢はない。どちらにしろこの世界の神サマを一堂に集めなければならないのだから。
「で? どうすればいい? ドアの鍵を開ければいいのか?」
監視されていると聞いているから派手な方法で脱獄とかしない方がいい。あ、爺さん連れて転移してしまえばいいのか。
「それなんじゃが、ワシ、力を封印されていてのう。それを取り戻さんとここを出ても意味がないのじゃ」
なにその設定! こんなトコだけクエストっぽくなくてもいいのに。
「……どうすればいい?」
「ドラウプニルとグングニル、二つの神器にワシの神力が貯められている。それを手にすれば」
グングニルね。有名だからオッサンでも知ってる。もう一つも北欧ネタだろうな。
「グングニルは槍だな。もう一つのドラ何とかは何だ?」
「いや、グングニルは普段は杖に形をしておる。世界樹の化身じゃ」
ハイ! 新設定来ました! 枝とかじゃないんだ。スケールでけー。
「ドラウプニルは金の腕輪じゃ。おそらく娘が隠しているじゃろう」
「わかった。とりあえず杖を探してみる。それを持って来れば力が戻るんだな?」
「半分じゃが、何とかなるじゃろう」
「わかった。少し待っててくれ。家捜しするが、構わないだろうな」
「仕方あるまい」
よし! 言質は取った!
マップ上の検索欄にアイテム名を入力。薬草探しで実績はある。他人の家の中ってのが気になるが本人の許可もあるし、問題ないだろう。
ホラ、出た。
「見つけたから取ってくる」
「なんと。お主、どういう能力の持ち主じゃ」
「言ったろ。借り物の力だって。あ、ところで、娘さんと何が原因でケンカしてたんだ?」
「それなんじゃが、ワシにもわからん。あのやさしかった娘が何故変わってしまったのか」
「はあ? 神サマだろ? 娘さんも神サマなんだろうケド、何の神サマなんだ?」
「『知性の神』じゃ。だというのに突然『この世界は間違っている』などと言い出しての」
ん? 何か嫌な予感が……
「それって、いつごろのことだ?」
「つい最近じゃ。ワシがここに閉じ込められてからも十日と経っておらん」
あれ? これって、オッサンが転移してから……いや、この世界ができてすぐってことだよな。確かこの世界できたばかりとか言ってたし。もしかして、その娘さん、自力で事実に気か付いたんじゃ? 知性の神とか、頭良さそうだし……
そうか。だからシュレもこの世界を管理しようなんて言い出したんだ。世界の滅亡なんて普段は見てるだけって言ってたのに。
はあ~。事実説明も含めて、結構他人事じゃなくなったなあ。
「……爺さん、ちょっと予定変更だ。娘さんに話聞いてみる」
「今のあの子じゃ話は通じんぞ」
「ホントにちょっと反応を見たいだけだ。どうせ娘さんとも交渉しなきゃだし、まともそうなら爺さんをその場に呼ぶ。おかしくなっていたらここに戻って撤退だ」
「呼ぶとは、力のないワシでは移動もままならんぞ」
「大丈夫だ。召喚魔法を使うから」
「お主、やはり只者ではないのう」
「言ったろ? ウチの神サマは格が違うって。じゃあ、少し待っててくれ」
オッサンは爺さんの返事を待たずに転移する。
まずは念のため爺さんの杖のある場所に。宝物庫のような部屋であった。所狭しと金銀財宝が摘まれている。魔剣だか聖剣だかわからん武器も山ほど。日本刀ならオッサンも少しは心惹かれたかも。
おっと、杖を探さないと。
ケータイ便りですぐに発見。ついでにドラ何とかっていう金の腕輪もここにあった。娘さん、使っていないらしい。
二つのアイテムをアイテムボックスに放り込んで準備完了。逃げるにしても娘さんと対決するにしても爺さんに任せられそうだ。
それから爺さんに聞いていた娘さんの名前で検索してその部屋の前に転移。
とまあ、ここまでが回想になるわけです。
オッサンが知らん振りして娘さん、『知性の神』を『創造神』扱いしていたのは別にからかっていたわけではない。ちゃんとした理由があるのだ。だって、『あなた、創造神サマを閉じ込めていますね?』などと直球投げたらバトル展開しか思いつかんよ。
バレるのもバラすのも、少しは情報を引き出して、更に娘さんの性格なんかの一端でも掴まないと泥沼になりそうだからさ。
まあ、父であり最高神である爺さんをただ閉じ込めただけで殺していないって辺りでかなり安心感はあったけどね。それでも、いずれ生贄にするため生かしておいただけっておっかない展開の可能性もあるから慎重にならざるを得なかったんだよ。
面接の結果、合格判定出しました。
勿論、『知性の神』だけにオッサンの行動すべてお見通しで、こちらに合わせて今までの態度は演技でした、って可能性もなくはないが、『知性の神』であって『演技の神』じゃないし、仮にそうだったとしたらオッサンにはどうしようもないわけで、予定通りシュレに丸投げでいいと思っている。
おっと、いくら『高速思考』があっても二人を放っておくとまたぞろ親子喧嘩になるかもだ。
「爺さん、親子の対面を邪魔して悪いが、例のものだ」
オッサンはアイテムボックスから杖と金の腕輪を取り出し、『創造神』サマに渡した。
娘さん、呆然としている。
「うむ。すまぬな。……お主、今始めて顔を見たが、いい年なんじゃな」
ほっとけ!
「だ、騙していたのですね! お父様と示し合わせて!」
娘さん、再起動した。このパターン、続くなあ。オコですか?
「あー……。言っとくが、俺は一つもウソは付いてないぞ。むしろ騙された方だが?」
「むぐっ、そ、そもそも! 異世界人がいきなり出てくるなんてズルイです!」
おい知性の神! 子供か!
「異世界人? お主、異世界の人間じゃったか?」
「あ? 言ってなかったか? まあ、それも含めてもう一遍最初から説明するから、まずは座らないか?」
ここは神の国で創造神の居城なのだが、オッサンが主導した方がよいだろう。
爺さんは牢から出してやった恩もあるし、娘さんは折角封じた創造神の力が戻ったせいか渋々ながら指示に従っているようだ。
親子が向かい合わせに座ったのでオッサンは間に座ることにした。議長席だな。
「さて、娘さんには大体話したけど、爺さんにももう一度話しておくか」
「ま、待ちなさい! 人間風情が勝手に話を進めないで!」
娘さん、二対一で形成不利だから大人しくしていたようだが、流石に人間に主導権を取られるのは我慢できないらしい。
「お嬢さん、『知性の神』のイズミちゃんだったな。俺の話を聞けばアンタの疑問も解けると思うぞ」
「い、イズミちゃん……ぶ、無礼な! 子供扱いするつもりですか!」
「あ~。悪かった。だがな、『この世界はおかしい』んだろ? 実はアンタも生まれたばかりだ、ってこともあるかもしれんぞ」
「ば、バカなことを!」
「イズミよ。今は大人しくこの者の話を聞こうではないか」
「……はい……」
「すまんの。タケシの言うとおりならワシも生まれたばかりかもしれんのう」
昔々のついさっき、生まれたばかりの爺さんが、って、懐かしいな、おい。まあ、ここは異世界だから黒い白馬くらいは居るかもしれんが。
「ああ。その辺はウチの神サマが説明してくれるだろ。じゃあ、話を続けるぞ。
まず、俺がここに来た理由は二つ。
一つは創造神に加護をもらいに来た。これは取り込み中みたいだから後でも構わない。
二つ目がウチの神サマに頼まれたことだ。この世界の神サマを集めて交渉して来いだとよ。
で、その神サマ達の召集を爺さんに頼みたいんだが……」
「ふむ……それで、交渉の内容は?」
「教えてもいいんだが、それで話が拗れて神サマが集められなくなっても面倒だから、やっぱ後でだな」
「ふむ……」
「あ、あの。聞いてもいいかしら?」
「なんだい? お嬢さん」
「その、異世界の神がこの世界の異変に関わっているということなのかしら」
うわー。なんか思いつめた顔。もしそうだったとしたら許さない! って表情だ。
さて、どう答えるべきか。




