12 オッサン、爺さん(創造神)との交渉を始める
ブクマ感謝です。
『ワシをここに閉じ込めたのは、その娘なのじゃ』
ありがたい創造神サマのお言葉でした。
オッサン、言葉もない。
どうしろっての女神クエスト! 別の意味でハードルが高いよ! 異世界転移してまで家庭問題に悩まされたくないよ!
しかし、今更思ったんだが、クエストってこんなんだっけ? フツー、神サマからの特別なクエストって、序盤は仲間を集めてザコ敵を相手にレベル上げして四天王とかの中ボスを倒してやっとラスボスと対決ってパターンじゃないのか?
んでもって、その後裏ボスとか真の黒幕とか出てきて強さのインフレが起こるのがセオリーだろうが!
オッサン、特に主人公役をやりたいとは思わないけどさ、それにしても一足飛びで神サマの家庭問題を聞かされるって、想定外もいいトコだよ。
まあ、裏ボスも真の黒幕もアカシックさんににしてみればデータの一部でしかないんだろうなあ。シュレこそゲーム感覚でこの場面を見てるんだろうよ。
あっ、シュレに一応聞いておこう!
「すみません、創造神サマ。ただの人間には荷が重い話のようなので私をここに使わした神サマに連絡を取ってみてもよろしいですか?」
「構わぬぞ。ワシもその神が誰か知りたいしの。後で話してくれるのじゃろうな?」
「あ、はい。善処します。あ、一旦結界を外しますので言動にはお気をつけください」
「うむ」
「それでは失礼します」
防音結界の範囲を変更。
創造神の爺さんは特に何もしゃべらなかった。一応信用されているみたいだ。
さて、『視覚遮断』と『防音』の結界はオッサンの周りに張ってあるからどこで電話しても同じなんだが、小市民ゆえ目の前に関係者がいる状況でクレームまがいの会話はしたくない。
ということで場所移動。
牢屋にしては広すぎるので選び放題だ。視界が広すぎてどこに行っても爺さんの姿は見えるけどな。
『なんじゃ? もう泣き言かポヨ?』
電話の第一声がコレ。
ムカつくが事実なので反論できない。
「知ってたなら教えろよ! 何が悲しくて他人の家庭問題に首をつっこまにゃなんねんだ!」
結界の信用度はオッサンの中で急上昇しているので遠慮なく大声を出す。うん。現代人はたまには何かでストレスを発散させないと。
『やはりというか、流石というか。お主、ブレないのう、なの』
「何の話だ。知ってたら断ってたってえの!」
『いやいや。世界の危機を『家庭問題』などと言える人間はそうはおらんぞ、ニャン』
「せかいのきき~?」
なんだろう? 今、途轍もなく物騒な単語を聞いた気がする。
ハハハ、キノセイダヨネ?
『ん? なんじゃ、わかっておらんのかの、ノシ。神々の争いといえば世界の終末に決まっておろうがだっちゃ』
「はあ!?」
『地球の神話にもあったじゃろ? ラグナロクとかいうヤツじゃピョン』
ラグナロク。
聞いたことがある。というかファンタジーでは有名だ。確か『神々の黄昏』とかルビ振ってたな。北欧神話で主神が『オーディン』、最後はロキ神の子供のフェンリルに食われてしまうんだ。
待て待て! まだ慌てる時間じゃない。
地球のオタクの妄想から生まれた『設定』なんだから似ている部分があっても当然だ。だからそこは気にしなくていいし、神同士の戦いも地球の神話に山ほどあるがそのせいで人類が滅亡したわけじゃない。
だからほっといても良さそうなもんだが、問題は、シュレが断言したってことだ。
もう予言を通り越して確定事項じゃないか!
オッサンにどうしろっての!
「それで、俺はどうすればいいんだ?」
丸投げだ。ゲームの駒として使われるのは業腹だが、人類の滅亡には変えられん。なにせオッサンがこれから第二の人生を送る世界だからな。
『ふむ。安心せいポヨ、今更条件は増やさないっちゃ。お主のすべきことは変わらずこの世界の神との交渉だピョン』
交渉……あれ? 何だっけ? 確か、1シュレの管理下に入る。2ほかの世界に移住。3人間になる。の三つから選ばせるんだっけ。
あれあれ? なんとかなりそう? 力づくで大魔王を倒せって言うんじゃなし、交渉もアカシックさんの名前を出せばスムーズに行くんじゃないか? 不調に終わったらそのときこそシュレに丸投げでいいだろう。
「……転移魔法の力を返すからこのクエストもなし……ってワケにはいかないんだよな?」
『当然じゃ! つまらんであろうニャン!』
「ぐっ……くそ、わかってたが、むかつく……だが、いざって時は呼ぶからな」
『わかっておる。安心して遊んでくるがよいなの』
それほど創造神の爺さんを待たせずにシュレとの通話は終わった。
確認できたことは二つ。
シュレがやはり世界の滅亡をゲーム感覚で見ていることと、どちらにしろ私が面倒な家庭問題に関わらねばならない、ということだ。
オッサンの足取りは重い。
同じ部屋の中だというのに爺さんのいるところが遥か遠くに感じる。
そんなわけもなく爺さんは目の前である。
「爺さん、もう話してもいいぞ。結界張った」
「な、なんじゃな? 口調が違うぞ」
創造神の爺さんはオッサンが指示してからずっと同じポーズを取りっぱなしだったが、オッサンの態度の豹変とドサッとソファーに腰掛けたときの音に驚いたらしく顔を上げてキョロキョロしている。
「ああ。なんつうか、面倒になってな。爺さんも落ち着け。まだバレない方がいいだろ?」
「ああ、うむ……」
爺さんがどんなに偉そうな肩書きを持っていたとしても、自分が不利な状況にあることは判っているようで、素直にオッサンの意見に従ってくれた。少なくともこの爺さんは老害と呼ばれるような意固地な性格ではないらしい。
「さてと、さっさと用件を済ませちまおうか。爺さん、聞きたいことはあるだろうが、俺の話が終わってからにしてくれねえか?」
「お主をここに遣わした『神』の話なのじゃな?」
「ああ、そうだ。俺はメッセンジャーでしかないからな」
「わかった。聞こう」
よし。じゃあ、何から話すか……
「いきなりだが、俺をここに寄越したのはこの世界の神じゃない」
「何じゃと? 森の神辺りがワシの窮状を知って密かに手を回してきたのかと思っておったが、『この世界』じゃと? ……ならば……異世界の神か?」
流石最高神を名乗るだけはある。単に疑ってかかるのではなく可能性のある回答を引き出してきた。これなら話は早いかな?
「う~ん、ある意味そうなんだろうケド、違うのかな。わからん」
「わからんとは何じゃ!」
「爺さん、顔、顔。そう興奮すんな」
「う、うむ。しかしじゃな……」
「俺自身はただの人間だからな、わからん事だらけだ。わかるとすれば『格』ぐらいだな」
「『格』とはどういう意味じゃ?」
「まあ、ハッキリ言えば爺さんよりエライってことだな」
「なんじゃと……いや、今のワシでは反論の仕様がないのう……」
「まあ、信じるか信じないかは爺さんの好きにしてくれ。どうせそのうち直接会うんだ。そん時に実感できるだろ」
きっと、必ず、もしかして、神サマたちにはデフォルトで『神レベル察知』とかのスキルがあるに違いない。ないと困る。シュレのちんちくりんな、威厳の欠片もない姿を見て話が拗れたら面倒じゃないか。
「お主の完璧な『隠微』を見れば信じざるをえんじゃろうな。で、そのお方の話とはなんじゃな? 見ての通り囚われのジジイじゃ。何もできんぞ」
「そこなんだよなあ。話ってのは爺さん一人じゃなくってこの世界の神サマ全員にしなきゃ、なんだよ。最初は『創造神』に話を通してもらって全員集めてもらってから交渉したかったんだけどねえ」
「役立たずでスマンのう。ここから出られれば何とか役に立てると思うんじゃが……」
オッサンの姿は見えていないはずなのに、爺さん、オッサンの方をチラチラ見てくる。
やっぱり親子喧嘩に首を突っ込まないといけない訳?




