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11 オッサン、昔を振り返る(単位:1時間)

 


『おとうさま』


 そう女神サマは呼んだ。

 モチロン、オッサンのことではない。

 神の応接室に現れた(オッサンが召喚した)白髪白髯の爺さんに対してだ。


 この女神サマ、実は創造神ではなく、その娘さんだったり。まあ、地球のギリシャ神話とか日本神話とかじゃ何の脈絡もなく新しい神サマが生まれたりするから人間的観点で考えちゃダメなのかもね。


 で、この爺さんが本物の創造神。ご尊名は『オールディン』。うん、微妙。あ、いやいや、悪い意味じゃなくて、『設定』のいい加減さに、ネタ? オヤジギャグ? と突っ込みたくなるぐらいちょっと引き気味なのです。娘さんなんて『イズミ』だからね。


 何でオッサンが知っているのでしょうか。

 それは今を遡ること少し前。具体的にはさっき門番と対決? した直後のことです。



(以下回想)


「さて、創造神サマはどこかな? スーパーケータイ、ポチッ」


 門番たちとの激しい戦闘? の影響か、オッサンは少しテンションがおかしかった。

 だが、このウルトラアトミックガラケーの機能を目の前にしては当然のことであろう。なんと! 人物名を入力すれば位置検索もできるのだ。GPSでもないのに。正にストーカーし放題! ストーカーダメ! 絶対!


『創造神』が人物名かどうかはさておき、おっ、検索できたようです。


「ん~? おや~?」


 オッサン、ケータイ片手に首を傾げます。

 検索結果がおかしかった。おかしいというより、予想と違ったというところか。


 オッサンの予想では、こんなファンタジーな成層圏に届きそうな高山の天辺に城を建ててるくらいだから、神サマの部屋も城の一番高いところにあるに違いないと、そんな感じでした。

 ところが、位置情報では地下にいることになっています。


 勿論、ここは地下でも標高何千メートルという馬鹿げた立地なのですが、どうもイメージと違います。


「まあ、行ってみるしかないんだけどな」


 正にその通り。行かないという選択肢はオッサンにはありませんでした。


 クエスト遂行中に対してのアカシックさんのサービスか、はたまた権力者にはプライベートなぞないということなのか、ストリー○ビューは建物の中までカメラが入れたので転移は簡単に行えそうだ。

 ふう、よかった。あんな無駄に広そうなお城を歩き回る羽目にならなくて。


 ケータイで確認したところ、更なる疑問に襲われるオッサン。


 だが、いくらここで悩んでいても仕方がないと『転移』発動。

 念のため『気配遮断』など各結界を展開したのは言うまでもない。


「う~ん。この眼で見てもやっぱり牢屋だよな~」


 オッサンの独り言ですが、結界のため聞こえる人はいません(アカシックさんとかを除く)。


 オッサンのいる場所は地下にある一室。日本的に言えば『座敷牢』でしょうか。無駄に広いのは仕様として、入り口は二重ドア、外側が鉄格子みたいなもの。地下室のため窓はありませんが豪華な照明、ここで何の仕事をするののか立派な執務机。加えてゆったりとしたソファーセットもあります。他にも何でも揃っているようなところでしたが、ないのは、そう、『自由』ってところかな。


 カッコつけすぎ? そうかもしれませんが、確かにそんなイメージなのです。


 さて、目的の人物ですが、目の前のソファーに座ってなにやら瞑想中のようです。

 勿論オッサンには気付いてもいません。


 アカシックさん! すごいです! 相手はこの世界の最高神だというのに。


「イズミ……一体どうしたというのじゃ……」


 何か呟きました。人の名前でしょうか。

 確かにこんなところ(豪華でも牢は牢)に閉じ込められていては愚痴の一つでも零したくなるのはわかります。オッサンも少しの間でしたがシュレに何億何兆倍のスケールの空間に閉じ込められたことがありますから。


 ところで、『のじゃ』って、この白髪白髯には似合ってるかも。流石シュレのバグとは一味違う。

 おや? そういえばこのヒト、最高神の創造神サマだよな? 何でこんなところに閉じ込められてんだ? 誰に? いつから? そもそも可能なのか?


 今更の疑問がいくつも湧いてきました。

 実際に聞いてみるのがいいでしょう。というか、それしかない。


 だが慎重に。

 ここは神をも閉じ込める牢獄。


 私はケータイを操作し私と創造神サマを『防音障壁』の範囲内に入れた。

 まだ『視覚隠微』の結界は外さない。


 さて、声をかけよう。

 大袈裟に騒がないでくれよ、神サマ。


「創造神サマですね。あっ、動かないでください。そのまま自然にしていてください。きちんと説明しますから」


 ファーストコンタクトはかなりの早口になってしまった。

 これは、現代の地球張りに監視装置があるかもれないという不安から来る措置である。なんせオッサンは石橋を(以下略)ですから。


「すみません。安全が確認できるまで私のことはいないと思って行動してください。一応防音の結界は張ってありますから声は外に聞こえないはずです。ですが、口が動いているのに声が聞こえないと逆に不振がられるかもですから話したい時は手とかで口を隠してにしてください。なるべく自然な感じで」


 ちょっとビクってしたみたいだけど、流石神サマ、オッサンの言うことが理解できたようで、さも考え事でもしているかのように俯いて顔の前で指を組むポーズをした。あ、右親指が上だ。このヒト左脳派かな?


「……何者かね。力を封じられているとはいえワシに気取られることなく近づけるとは」


 封じられてる、って言ったな。じゃあ、やっぱりここは牢屋なんだな。何か面倒な事態に巻き込まれてないか? アカシックさんもシュレも知ってたに決まってるし、オッサンの旅行の予定を切り上げさせたのもこのせいか?

 実は『秘密基地』の黒幕部屋かも、という予想もなかったわけじゃない。まあ、その場合はオッサンが不法侵入の罪に問われて話も聴いてもらえなかった恐れがあるからな。どっちがよかったかはわからない。


 白髯の神サマもオッサンの要請どおり口元を隠して話しかけてきたってことは監視の目もあるってことか。


「すみません。私は普通の人間ですが、ある神サマに力を借りてまして。それより確認したいのですが、あなたは『創造神』サマで間違いありませんか?」


「うむ。情けない話じゃが、ワシが創造神じゃ。ワシも聞きたいことがある。そなたに力を貸したという神は誰じゃ?」


「それを答える前にもう一つ。この部屋は牢屋ですよね? 規模が私の知ってるものとは別物ですが。ここって、監視されてます?」


「無論じゃ。じゃからそなたが入り込んで来れたのが不思議でならん。誰にも見つからなかったと言うのか?」


「いえ。始めは正門から平和的に訪問しようとしたんですが、門番というか天使みたいな人形のヒトに追い返されてしまって、仕方なくこんな訪問になってしまったんです。それより、やっぱり監視があるんですね? じゃあ、すみませんが私の姿を見せるわけには行かないようです。創造神サマもできればそのままの体勢でお願いします。あ、座ってもいいですかね?」


 門番人形が壊れてしまったことはスルーするオッサン。だって、向こうが勝手に結界にぶつかってきたんだもん。


「わかった。ワシを害する意図は感じられんし、ワシにも利になりそうじゃしな」


 えーと、利益があるかどうかはシュレ次第なんですけど……

 まあ、牢屋暮らしと比べればいくらかマシなのかなあ。


「では。改めまして。私はタケシといいます。ただの中年の人間です」


「うむ。ワシも改めて名乗ろう。創造神をやっていたオールディンじゃ。今は見ての通り、ただの虜囚じゃ。畏まる必要はないぞ」


 ハハハハ。

 笑えねえ。自虐? やけくそ? しかし確認しないと話が進まん。


「えーと。やっていた、といいますと、今は新しい『創造神』サマが他にいるということですか? それなら残念ですが交渉相手を変えなければなりませんが……」


「いやいや。すまんの。ちと戯れただけじゃ。ワシが『創造神』なのはこの世界を造ったのがワシじゃからじゃ。その事実は例えワシが死のうと変わらぬ」


 おい。余裕あるじゃねえか。

 しかし、『世界を造った』ねえ。これは事実を伝えていいものかねえ。アイデンティティー崩壊するんじゃね?

 それにしても、神サマの記憶も作り物なのか? 世界が既にできてから生まれてきた人間の記憶は実際に経験した出来事なのだろうケド、世界の誕生とともに存在が確定した人間の記憶って一体どうなってんだろうね? それだけ大量のデータ、確かにアカシックさんなら処理できそうだが、オッサンからすれば大変としか言えんな。シュレのバグの件もそうだが、苦労してんだな。


「そうですか……あの……理由、聞いてもいいですか? ここに掴まってる……」


「うむ。ワシも聞きたいことがあるのでな。情けない話じゃが聞いてもらうことにしようかの」


「ええ。是非」


 オッサンは、向こうからは見えないだろうが、ぐっと身を乗り出す。


「実はの、ワシには娘がいるんじゃが、その子がまた頭もよく可愛い子なんじゃが……」


 あ、ダメだ、これ。関わると面倒な話だ。教師生活二十年の勘がそう言っている。


「あ、あの! ご家庭の問題なら出直してきますけど」


 オッサンは監視に見つかる覚悟で爺さんの話を遮った。他人に話を聞いておいてそれはないんじゃない、というコメントはノーサンキューだ。


「いやいや。聞いてくれ。ワシをここに閉じ込めたのは、その娘なのじゃ」


「…………」


 これって、思いっきり親子喧嘩じゃねえか!








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