08 オッサン、戦闘する?
色々考えて今週から月水金に投稿することにしました。
これからもよろしくお願いします。
ついに辿り着いた神の国。神の住まう巨大宮殿の大門の前に佇むオッサン。
そこへ現れたのは!
はい、女神クエスト絶賛履行中のオッサン、タケシです。
なにやら『前回までのあらすじ』風で始まりましたが、これからどうしようか困ってるのは確かです。
現れた二人、仮面を被った金髪ロンゲで、白のヒラヒラ衣装です。神サマは白がデフォルトなのか? スカートのようにも見えますが、女性とは限らないでしょう。ギリシャのトーガ、スコットランドのキルト、他に枚挙に暇がないほどです。日本だって、袴は別としてキモノはスカートのようなものである。
失礼にならない程度に観察していたら、あ、人間じゃない。
ここは神サマのおうちだから当然だ、という意味じゃない。彼ら、肘とか膝とかの関節が『球体関節』だよ! 生物じゃないと言いたかったんだよ!
コレ、アレだ、人形とか、パペットとか、ゴーレムとかいうヤツじゃん。
すると、梵語マークみたいなデザインの仮面は仮面じゃないのかも。目とか口とかは? 相変わらず謎テクノロジーな世界だなあ。
とか考えていたら、
「侵入者ハ排除スル」
「命が惜シクバ速ヤカニ立チ去レ」
と言われてしまいました。
え~? 問答無用ですか? せめて来訪の理由くらい聞いてほしいんですが。
「怪しい者ではありません」
オッサン、地球にいたときもしたことがなかった、無抵抗をあらわすポーズ、両手を挙げて~手のひらをひらいて~、を敢行した。バンザイのポーズとも背伸びの運動とも違う何かぎこちない動きだったことを実感した。
だが、
「攻撃ノ意思ヲ確認。排除スル」
無抵抗だって言ってんだろうがーっ! あ、言ってなかったか。だが、神サマならわかれよ!
二人とも大して違いはなさそうだが、特に沸点の低そうな方がオッサン目掛けて攻撃してきた。どこからかわからないが銀色に輝く槍みたいなものを取り出して、ランス、とかいったけ、パラソルチョコレートのでっかいヤツ、アレを突き刺そうとするんだぜ。
え? よく武器までわかるな、って?
見えるんです。たぶんシュレの適当に改変したステータスに関係あるんでしょうが、オッサン、体力が強化されているから視力もよくなったらしいです。
ただし、『よく見える』と『瞬時に対応できる』は全く違う項目で、オッサンは迫り来る槍の穂先を呆然と見ていることしかできませんでした。
やられる! と思った瞬間、ガシン! と大きな音が響き渡りました。
見ると、槍の穂先が空中で止まっています。
あ、結界張ってたの忘れてた。ぅふ~い。死ぬかと思った。
「あ、あの! 怪しい者じゃありませんよ!」
私は再度呼びかける。
だが、相手は聞く耳を持っていないようだ。
「抵抗スルカ! 脅威度ヲ上方修正! 排除スル!」
「物理攻撃ニ対シ効果ガ低イト判断スル。神力ヲえねるぎーニ変換シテ攻撃スル」
「ちょ! 待って!」
表面的に冷静に見えて結局沸点が低い方まで攻撃しようとしている。それを見てあからさまに沸点の低いヤツが一瞬で槍をどこかに消し去って追従しようとしていた。
四つの手のひらがこちらを向く。ああ、人形の手だということがよくわかる。
ここまでオッサンの体感で1秒足らず。
ネタスキル『高速思考』は結構使用頻度が高い。機能していると実感できたのは今が初めてだが、オタオタしているだけのオッサンには宝の持ち腐れだろうか。
オッサンが何の対策も取れぬうちに攻撃が始まったようだ。
人形たちの手のひらが光ったと思ったら目の前、結界部分も一瞬光る。
ああ、コレはレーザー光線だな。
目に見えないのは純粋に攻撃用だからなのだろう。レーザーポインターのように見えないと意味がない商品は別として、敵に攻撃の軌道を教えるような真似を実戦でするわけがない。
ところでレーザー光線は物理攻撃なのだろうか、それとも魔法攻撃に分類されるのだろうか。
この結界、透明だということは太陽光線などの光は透過させているということのはずなのだが、それならばレーザーだけが遮断される仕組みが理解できない。まあ、所詮は物理のシロウトが思いついた疑問。おそらくファンタジーな理由があるに違いない。
アカシックさんに聞けば教えてくれるかもだけど、聞く側が理解できないだろうからキャンセルで。
え? 何故そんなに余裕があるのかって?
撃たれてわかる結界の凄さ、ということかな。いやー、シュレに土下座してまでもらった結界のおかげで命が助かった。こりゃ神社に盛大にお供えしないと。あ、そういえば昨日今日と拝むの忘れてた。
ドタバタしすぎてたからなあ。ま、予定時刻に本人直接話してたし、今日も電話来たし、問題ないだろ。
おっと、いくら『高速思考』があるからってのんびりしすぎだ。
「あの~。そろそろ止めてもらえませんかねえ。創造神サマに用事があるんですが~」
結界にレーザーが当たってチュインチュインうるさいけど、どうやら声は届いたらしい。音が止んだ。
「敵ハ極メテ強固ナ結界ヲ所持シテイル。火力不足」
「おい! 敵ってなんだよ!」
「徹底排除!」
「お前それしか言えねえのかよ!」
ダメだ。突っ込みすら無視されている。
「我ラの最大えねるぎーヲ以ッテ挟撃スル」
挟撃? 挟み撃ちってこと? 作戦バラしちゃっていいのか? まあ、知ろうが知るまいがオッサンには手も足も出ないけど。
「たいみんぐハ任セル!」
沸点低めの人形が冷静(仮)の作戦を了承すると、二人とも空に舞上がった。うおっ! 羽が出てるよ! 翼だ! 天使か!
二人は大門を飛び越え空をグルグル回っている。ちょうどオッサンを中心にしているようだ。とんびがくるりと輪を描いた。ホーイ、ホイ。みたいな?
挟撃? 言葉の意味はわかるが、これから何されるかはサッパリわからん。ホント何がしたいんだか……
門も開けっ放しで、今ならこっそり入れそうだ。
一歩踏み出してみる。
パシュンッ!
ぅおわっ! 上空から攻撃された。
勿論結界のおかげで被害はないが、小心者のオッサンはそれ以上足を動かせなくなってしまう。
上空を跳んでる二人は徐々に輪を大きくしているようだが、ちゃんとオッサンの動きも見張っているらしい。ホント結界があってよかった。シュレ頼むぞ~。挟撃? の攻撃が来るらしい。耐えられるよな? 信じてるぞ、信じてるからな!
あ、シュレの、ニヤッと表情が見えた気がする。
おい! フリじゃねえよ! 本当に信じてるからな!
シュレには心の声は聞こえていないハズなのだが、そこはかとなく不安になるオッサン。
と思ったら、上空の二人が一際大きく弧を描いた。オッサンを挟み左右に展開する。あ、いつの間にか二人ともでっかい光る槍を持っている。
まさか、オッサンを槍でサンドイッチにするつもりか!
距離をとったのは助走? をつけてスピードを出すため。二人が反対方向から攻撃するのは衝撃が逃げないようにするためだな。オッサンでもわかる初歩的な物理。これで威力は倍増だな。バイのバイの倍! ってド○フか!
折角の『高速思考』を無駄にしてオッサンは結界の中で立ち竦んでおりました。
え? 攻撃が当たる直前に一瞬で避けて相手を自滅させる?
無理無理無理!
オッサンはどこぞの戦闘系主人公じゃないんだから、足が竦みっぱなしだよっ! って、キターっ!
スキル『高速思考』と無駄にいい動体視力で二人の人形が左右から迫ってくるのがわかる。わかりたくなかったけど、わかってしまう。これ、きっとコンマ何秒の世界なんだぜ。
オッサンは神? に祈りながら目を瞑ってしまった。だってしょうがないじゃん。
轟音がした。そりゃもう描写できないぐらいの音が響いた。シュレが悪戯してくる可能性も少し考えて全身結界の性能をこれでもかってくらい上げてたけど、それでも音が聞こえるくらいの衝撃だったようだ。
ん? こんなこと考えられるということは……
恐る恐る目を開けてみる。
目の前には誰もいなかった。
じゃあ、左右には……いた。かつて人形だったモノの成れの果て。オッサンの両側の地面がえぐれていてナニカの破片が散らばっている。
……言葉も出ない。
オッサンはしばらく、今までと同じように、呆然と立ち尽くしておりました。




