05 まだ続けるのか? 今度はストーカーの練習?
オッサンの悲痛な心の声を聞き届けてくれたのか、はたまた、元から用意してあったのか、それは正に神のみぞ知るなのだが、アカシックさんはすぐに別のポールをマップ上に示してくれた。
女騎士がいなければ男騎士を侍らせればいいじゃん、などとどこぞのマリーさんみたいなことを言わないアカシックさんは素敵です。
感謝しつつマップを確認すると、同じくフランシスカ王国内でした。それも王都の近く。
「あれ、ここって……」
マップを拡大してみると、昨日行った場所の近くにポールが立っています。
北の森。
中級冒険者の稼ぎ場。北街道がそこを迂回しているので手元不如意のオッサンが旅の途中というか初っ端に寄り道した場所です。
ただ、オッサンが入ったのは森の南側で、アカシックさんの示すポールの位置は森の北側。予定ではそこから再び北街道に再アクセスするつもりでした。ですが、探索途中野営してその場所から神隠しにあったので森全域どころか縦断もできませんでしたよ。
ですからポールの場所はまだオッサンが行ったことのない場所。
何故アカシックさんがここを示したのか。誰かオッサンの知り合いでもいるのでしょうか。
考えていても始まりません。『○トリート・ビュー』で確認しましょう。
「うーん? ローブ? 魔法使い? 爺さんたちか?」
数名のローブ姿の人物が森の入り口に屯してます。
そう、屯、という表現があってます。何故かというと、この時間、野営の準備をするでもなく、全員が森の方に顔を向けてたったままなのです。
これでメンバーが冒険者風だったら仲間を待ってるとか、魔物を警戒しているとかの理由が思い浮かぶところですが、フードで顔を隠した集団というのは怪しさ満点です。
この世界、ローブといえば魔法使い、というのはお約束のようで、オッサンも一瞬宮廷魔術師の爺さんを思い浮かべましたが、どうも雰囲気が違います。そういえば魔法使いは尖がり帽子もセットだった。
オッサンはマント姿で、どっちかって言うと『荒野のガンマン』風だ。あ、カウボーイハットみたいなのほしいな。自作するか。
「えーと、どうすれば……」
あ、メール。ちょっとワケがわからなくなってきたところで天の声です。
アカシックさんからだ。何々……ほう、結界に新機能追加? ありがたいけど、何故今?
オッサンは結界アプリを立ち上げ機能を確認。ふむ。
「視覚隠微、気配遮断? コレは結界の効果なのか? 別枠でスキルとかありそうなのに?」
今使えということ? タイミング的に?
…………
珍しくアカシックさんからのお返事はありませんでした。わかりました。自己責任ということですね。
『○トリート・ビュー』に集音機能でも付いていれば楽だったのだが、あれはあくまでも地図で、盗聴装置ではないということなのだろう。アカシックさんのちょっとしたこだわり?
元々長距離転移の練習は使用と思っていたのだ。場所決めで時間がかかっていたが北の森にしよう。そういうことだ。
ただ、新機能の効果も確認しないと。
オッサンは二つの機能に加え、更にいつもの『防音(内側からの)』と『物理・魔法攻撃無効』を立ち上げる。ついでに今日習得したばかりの自前の全身結界(今度は透明)も張っておく。完全装備過ぎる。
そして、長距離転移前に島内の魔物の巣に転移した。
すぐに魔物発見。豚みたいなの、テンプレどおりなら『オーク』ってヤツか。
「おお! 見えてな~い!」
今朝の練習中は魔物の近くに転移する度に襲われていたが、今回は目の前を歩いても、大声を出してみてもオーク(暫定)は反応無しだった。音はともかく、明らかに地面の下草を踏み潰しているのも目に入っていないようである。
『隠微』の効果スゲー。
よし、色々と実験してみよう。
結界を這ったままケータイの他の機能は使えるかな?
とりあえずカメラを向けてみる。パシャリ。
うむ。カメラは使える。
じゃあ、鑑定は……
・・・・・・・・
名前:(なし)
種族:オーク
職業:ノーマル
年齢:4
性別:オス
クラス:8
HP:207 MP:20
力:232
素早さ:160
器用さ:42
知力:17
運:11
スキル
棒術Ⅲ 盾術Ⅲ 威圧Ⅰ 毒耐性Ⅳ
・・・・・・・・・
はい! 出ました! 久しぶりの鑑定さんです。異世界では大活躍かな~と思っていたら、意外に使わなかった。多分アカシックさんやシュレと連絡不能だったら生命線だったのかもしれないですねえ。
まあ、それはともかく、目の前のオーク君、写真を取られても鑑定されても気付いた様子はありません。ステータスを見る限り見事な脳筋ですが、ガラケーさんもいい仕事してます。
それじゃあ、次は思い切って、
「ストーンバレット(単発)!」
「ブギ?」
しょぼい威力の石礫をオーク君の背中にぶつけてみる。何気に初戦闘?
スライムはティム失敗だし、シードラゴンは純粋な事故だし、昼間遭遇した時は逃亡一択だったしで、やっぱり攻撃を加えたのはこのオーク君が初めてということかな?
しかし、オーク君、全く攻撃されたとは思ってないようで、振り向いたはいいもののキョロキョロしているだけ。虫か小鳥がぶつかったと思ってるのだろうか?
オッサン、オーク君が振り向いた瞬間はビビリました。ヘタレですみません。
ところで、『ブギ?』って言ったけど、アレって言葉? ただの鳴き声?
魔物に言語はあるのだろうか。あるとしたら異世界人特典の『異世界言語』は魔物の言葉を翻訳してしまうのだろうか。要検証。魔物とのコミュニケーションも立派な異世界もののロマンですよね。
これで最後にしよう。バレたら逃げる!
オッサンはまだキョロキョロしているオーク君に正面から近づき……
「ブヒっ?」
オッサンとの距離1mのところでオーク君が結界にぶつかった。
だが、空中に見えない何かがあるのがわかるくらいで、やはり私の姿は見えてなさそう。しきりと結界を触っている。攻撃の意思はなさそうである。
なるほど、外側のは『物理・魔法攻撃無効』結界で、触っても『視覚隠微』の効果はそのままか。何その最強コンボ。存在がバレても姿は捉えられないって隠密特化しすぎじゃないか。オッサン、NINJAになるべきなのか?
よし! ケータイの新機能、確認終わり!
早速森の調査に出発だ!
結界を這ったままマップで位置確認。OK! GO!
「おい。本当にこの森にいるんだろうな」
森の出口付近に転移したオッサンは、見つかった時のことを考えて、いかにも森から出てきた冒険者のように歩いてローブ集団に近づいたのだが、いきなり声を掛けられてびびった。
だが、それはオッサンにかけられた言葉ではなかったようだ。
近くにいた別のローブがそれに答える。
よかった。『視覚隠微』は完璧に機能しているようだ。
「歩いての旅だ。この先の宿場町に現れていなかった以上、俺たちが追い越してしまったとしか考えられん」
「だがなあ……」
「一応更に先の村まで人を遣わせただろう。向こうは歩きだ。馬なら必ず追いつく。王都方面にも一人戻した。ヤツが引き返していたとしても門番に確認すればすぐにわかることだ。後はこの森にいるとしか考えられない」
なるほど。ローブ集団は誰かを探しているわけね。
「くそっ! いつまで待てばいいんだよ!」
「落ち着け。司教様の指示だぞ」
ん? シキョウ?
「それだよ! 何だって司教様はいきなり計画を変えたんだ?」
「説明しただろう。例の異世界人は異端者だ。我が神聖教国を潰すと公言した」
んん? 異世界人? 神聖教国?
あれれ? どこかで聞いたような……
「ホントなのか? 異世界人は選ばれた勇者じゃないのか? だから俺たちが迎えに……」
「本人も自分は勇者ではないと明言しているらしい」
んー。ますますどっかで聞いた話だ。
「……わかった。とにかく、タケシ・ハンムラという冒険者を捕まえればいいんだな」
「そう言っただろうが……」
ハイ! オッサンのことでした!




