03 まだ実験? 棚からぼた餅
どうも。グダグダなオッサンのタケシです。自分がこんな性格だったとは、日本じゃもうちょっとマシだったと思ってたんですけどねえ。
今オッサンは地球でいうイギリスにいます。アカシックさんによるグー○ルマップ補正の表示では『ケルト王国』だそうです。フランシスカ王国の時も思ったんですが、微妙に地球の地名と関連性を持たせているのは『設定』なんですかねえ。こちらの世界で一から地理の勉強というのも苦労しそうです。
私の感想はともかく、何故そんなところにいるかというと、もちろん転移魔法の実験の一環です。
え? 宇宙はどうしたって?
それはノリと勢いで言ってみただけです。良くあることでしょう。それに真っ赤なウソというわけではありませんよ。理論上今の全身結界&酸素発生術式があれば宇宙空間でも活動は可能だとは思っていますから。大気圏離脱も突入も耐久イメージと魔力で何とかなりそうですし、そもそも転移魔法を使えば考える必要もないのですよ。(ドヤ顔)
まあ、それもこれもバイブルに書かれてた知識ですから、先達には感謝です。
と言っても安全係数には非常にうるさいオッサン、石橋は叩いて叩いて、叩きすぎて逆に壊れやすくなったのではないかと心配が増える性格のようです。
宇宙進出はもっと安全性を検討してからにしましょう。成層圏内なら大丈夫でしょうか? それも要検討。
では、今何をしているのかと言えば、前回考えた通り長距離転移の実践です。今回は1000kmほど跳んでみました。
私の元の目的地であった『バルハラ神聖教国』、地球でいうデンマークも同じくらいの距離だったので、ちょっと行って買い物でもしようかなと考えたのですが、私の行動はアカシックさんは当然としてシュレにも見られているはずです。
ハッキリと『時間の無駄』とまで言われたものですから、後でグチグチ言われそうなのも簡単に予想できます。これは『危険察知』のスキルでしょうか?
と言うことで、あくまで私がやっているのは転移魔法の実験だという建前は取り繕わなければなりません。
実はもう一つ理由があります。
港町の冒険者ギルドに用事がありました。グー○ルマップで探すとロンドンの東、テームズ川の河口にそれらしき場所を見つけたので来てみた、というわけです。
「というわけで、買取を頼む」
「何が、というワケだかわからんが、買取ならしてやる。だが、モノはどこだ?」
街に入った経緯は省略する。転移でどうにでもなったから。今ギルドを探して受付のオッちゃんと和やかに交渉中なのだ。残念なことにきれいな受付嬢はいなかった。
「アイテムボックス持ちだ。大物だから、広い場所で頼む」
「そうか、ならコッチに来い」
昼下がり、テンプレでは冒険者が少ない時間帯とされているが、実際ギルド内は閑散としていた。『異世界の歩き方』使える。
受付のオッちゃんに連れられて、オッサンはギルドの建物の裏手にあるでかい倉庫みたいな場所にやってくる。
そのわずかな移動時間にオッサンは考えた。このオッちゃん、よもやギルドマスターではなかろうかと。ありがちな展開だ。まあ、今回は買取だけの予定なのでどうでもいいことではあるが。
「ここに出してみろ」
「ふむ。何とか足りそうだな。出すぞ」
「おわーっ!」
小さい体育館ぐらいの倉庫だったが、オッサンの持ってきた獲物はギリギリ収まった。あ、向こうの壁、穴が開いた……
受付のオッちゃんの叫び声が原因なのか、壁をぶち抜いた音が原因なのか、ギルド職員がわらわらと集まってきては悲鳴を上げている。
「し、シー・ドラゴン……」
「は? シードラゴン?」
オッサン、ギルドマスター(仮)の呟きを耳にして思わず聞き返してしまった。シードラゴンて、タツノオトシゴのことじゃなかったっけ。確かにオッサンの持ってきた獲物は『竜!』って感じだけど、ネーミングがシンプルすぎやしないか?
もっとこう、『シーサーペント』とか『リバイアサン』とか、心振るわせる名前じゃないのか?
あ、アカシックさんからプチ情報が入った。
はいはい。
なるほど。『シーサーペント』とか『リバイアサン』も別の個体で存在している。ふんふん。それらは上位の魔物で、はあはあ、それら以外の竜系の魔物は海のものなら『シードラゴン』と総称される。
なるほど、わっかりました。
ありがとうございます。アカシックさん!
だそうですよ。
「あ、アンタ……これを一人で?」
下位の魔物だと聞かされたが、ギルドの人たちにとってはかなり珍しい獲物だったようだ。海の魔物って討伐が難しそうだし、仕方ないかな。内陸に持っていったら更に騒ぎになりそうな予感。
「いや、討伐したわけではないぞ。偶然死骸を見つけて拾ってきただけだ」
「拾ったって、アンタ、これ、どう見ても死んだ直後……」
「拾っただけだ」
「わ、わかった」
オッサンは念を押す。
騒がれたくないという異世界人特有の心情も無論あるが、その前にオッサンは一言もウソはついていない。
詳細は省くが、実は先ほどまで行っていた全身結界の耐久実験で、最後の1km上空からの落下着水実験の際、着水点に偶然この魔物が浮上してきたらしく、ピンポイントでオッサンと人身事故を起こしてしまったというわけなのだ。メテオインパクトとまではいかないが、かなりの衝撃に加え、オッサンの魔力のこもった結界が相手では魔物さんもひとたまりもなかっただろう。
推測だが、度重なる着水実験で、小物はその水域から逃げたものの、逆に大物を呼び寄せたのではないだろうか。まさかシュレの悪戯ではあるまい。
ホント悲しい事故である。
特に襲われたわけでもないし、もしかしたら知性のある魔物で友好的な性格かも知れなかった。
そう考えると後悔しそうになる。
だが、遺体を打ち捨てるわけにもいかず、ならば人の役に立てば(特にオッサンの)彼もきっと喜んでくれるだろうと考え、水産系魔物が取引されていると考えられる港町のギルドにお邪魔した、というワケなのだ。
「アンタ、すまないが、査定に時間がかかる」
「構わんが、いつになる?」
「徹夜でやって、明日の朝には何とか」
「わかった。また来る」
オッサン、クールに退場。
ギルドマスター(疑惑)が何か呼び止めようとする気配があったので、面倒ごとは御免とばかりに増えつつある野次馬の群れを掻き分けて外に脱出するのだ。
「ふぃー。全く、テンプレどおりだな……」
オッサンは愚痴を零しながらギルドから離れる。
金は入りそうだが、それは今日ではない。豪遊はまたの機会になる。とりあえず拠点に戻ろう。
人気のない路地を探し、転移!
ハイ! あっという間にアイスランド西岸、テント前でございます。
「どうするかな~」
時刻はまだ夕方と呼ぶには早い。
だが、これから神サマの国を訪れてすぐに交渉を始めることができたとしても、そのときはもう夕食時だろう。
うん。そんな時間にお邪魔したら迷惑だよね。
よし、今日は遠慮しておこう!
完璧な理論武装のもと、オッサンはクエストの先延べを決定する。いや、だって、転移魔法の習得と実験に時間がかかると思ってたから。今日一日でできるようになるなんて思わないだろ、普通。
予定では長い修行の末やっと習得できて、それから本番、って思うじゃん。
シュレめ。チートにもほどがある。実感がしにくいのがネックなんだよな~。
オッサンは昼食を取っていないこともあって、早めに野営の準備をする。
と言っても、料理は出来合いのものがあるし、気分的に焚き火をするくらいだ。短距離転移で薪になりそうな枯れ木を拾い集め、点火の魔法で火をつける。
うん。それらしくなった。
で、食事にしようとも思ったが、我慢できずに一服。プカ~。
そういえば、旅に出たきっかけってコレなんだよな。早く美味いのが吸いたいものだ。
今ならすぐにでも探しに行けるようになったけど、シュレに後からイヤミでも言われるのがオチだな。クエスト終わらせるまで我慢するか。もともとの予定も何ヶ月かかるかわからない旅のつもりだったしな。
あ、どっちにしても、今は先立つものがなかった。
地球でも異世界でも、そういうところは世知辛いねえ。




