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32 今度こそ!

第一章完結。

明日4月1日は登場人物紹介にして、次回は4月3日掲載予定です。

 


 ヌコ耳受付嬢に連れられ、二階のギルド長室に向かう。

 その部屋は初めて入ったが、王宮の執務室と変わりなく緊張することもなかった。


「何か下が騒がしいと思ったら、またお前か……」


「なに、ちょいと主義主張をぶちまけただけだ」


「なんだよ、その主義主張って?」


「ギルド長、それは私の方から」


 デスク越しにギルド長と向かい合い、階下での出来事を説明するヌコ耳嬢。後で騒ぎのことをあれこれ聞かれるよりはいいだろうという判断らしい。

 その後、私も堂々と持論を展開する。


 二回目となるヌコ耳嬢、感情が抜け落ちたような表情だった。

 ギルマスのオッサンは呆れ顔。案ずるな。想定の範囲内だ。


「でな、また王宮に顔を出すのも気まずくてな。決して逃げるわけじゃねえぞ」


「……わかった。手紙ぐらい届けてやる。どうなるか知らんがな」


「おお。頼む。迷惑はかけん。あ、紙とペン貸してくれ。買う金がない」


「このヤロウ、厚かましいことを……まあ、いい。判断するのは陛下たちだ」


 ブツクサ言いながら快く紙を渡してくれるゴリマッチョ。いい人だ。

 私は応接セットを占領し、その場でシャルさん(王様)宛ての手紙、要請書というか嘆願書? 意見書? を書いていく。形式など知らん。ほぼ箇条書きだ。


「なあ、本気なのか?」


 デスクから向かいのソファーに場所を変えたギルド長がそんなことを聞いてくる。退出のタイミングを失ったらしいヌコ耳嬢もまた心配そうな顔でオッサンを見ていた。


「本気さ」


「……勝算はあるのか? どんな手を使うつもりだ? 相手は神だぞ」


「簡単なことだ。奴等の教義が出鱈目で創造神サマの意図するところじゃないって証明すればいい」


「そんな当たり前のこと聞いてんじゃねえ! そんな方法があるのかって言ってんだ!」


「心配するな。当てはある。不本意ながらな」


「当てってどんな?」


「そりゃまだ言えん。確定してからだな。あと、実際にナントカ教国も見てみないと」


「……まあ、わかるが……陛下には何て言うつもりだ? まさか本気で魔族と協力しろって書いたんじゃないよな?」


 ギルマス、心配そうに手紙を覗き込む。


「別に見ても構わん。どうせアンタが届けるんだろうしな。それに、過激なことを書くつもりはない。そういう道も選択肢に加えておけって感じだ。


 重要なのは世界の発展にどちらの勢力が邪魔かってことをもう一度考えてほしいだけだ。


 国の決定に口を挟むつもりはなかったが、ま、縁あってこの国に呼ばれたわけだ。創造神サマも何か考えていることがあるんじゃないか?」


 私の出自を知っているギルド長にしれっとウソをついてみた。いや、ウソとは言い切れない。曲がりなりにも神サマ。もしかしたら本当に何か考えているのかもしれない。いつか直接聞いてみよう。機会はあるのだから。確実に。


「……なるほど。ないことはないな……」


 ああ、やっぱり異世界転移者のブランドは効き目がある。納得してくれたらしい。


「さて、できた。これを頼むな」


 書きあがった手紙をそのまま渡す。封筒も何もない。オッサンらしくていいだろう。


「わかった」


「じゃあ、予定が随分変わっちまった。このまま旅に出る。元気でな」


 私は立ち上がると、挨拶もそこそこに部屋を出ようとする。

 ギルド長も敢えて止めはしなかった。


「ああ、お前こそ気をつけろよ」


「おおよ! お嬢さんも、元気で。じゃあな」


「え、あ……」


 呆然としていたヌコ耳嬢の返事を待たず、私は部屋の外に出た。

 案内もなかったが、建物の外に出るだけなら問題はない。そう思っていたが、それはまずいらしく、ヌコ耳嬢、慌てて私の後にギルド長の部屋から出てくる。


「……」


 私に追いついて先導してくれるヌコ耳嬢。無言である。ちょっと空気が重い。

 やっぱり宗教問題は危険だな。


 この世界に来たばかりの時はなるべく関わらないようにするつもりだったんだけどな。どうしてこうなった?


 でもなあ、実際に『亜人』とか目にして、その子が可愛らしくて、その子の口から『差別を受けてる』なんて聞いたら黙っていられないだろ。主人公キャラじゃないにしてもさあ。


 あと、女神クエスト受けてるのも私にとって強気になれた原因の一つだ。

 この世界の神サマに会えるんだぜ。

 聞いて見たいじゃないか、『亜人差別は神サマ主導ですか』ってな。


 違うとは思う。

 テンプレどおりなら、『下界には干渉できない』とでも答えるんじゃないか?


 それでもいい。

 だが、それならそれで方法はなくはない。

 上位存在であるシュレは『干渉はしないが、してはならないという決まりもない』と言ってた。


 冗談ではなく利用させてもらおう。クエストの報酬に追加してでも、土下座してでもな。


「それではタケシ様。旅のご無事をお祈りします」


 お、無言で案内されてたから、つい考え込んじまったぜ。もう冒険者ギルドの入り口だ。


「ああ。色々面倒をかけたな。じゃあ、オレはこれで……」


 あ、また名前聞くタイミング逃しちまった。足が建物の外に出てるよ。これで振り返って名前を聞くのは、どうなんだろ? 


 足を踏み出したまま固まっちまった。

 あー、なんか情けない。ビミョー。挙動不審。


 よし! 黙って立ち去ろう! 


 ということで、最後は周囲の目を気にしながらの退出でした。

 ちょっと後悔。



 ◇◇◇


『なに? 勇者じゃない? 今更何の報告だ? 勇者と同じ世界から来たなら十分に勇者の資格はあるだろうと言ったはずだが?』


「実は……


 ……ということがありまして……」


『なんだと! なんと神をも恐れぬ不埒者が!』


「如何いたしますか?」


『今そやつはどこにいる!』


「予定通りバルハラに向けて旅立ちました」


『すぐに追え!』


「は? しかし、私はこの国の監視を……」


『黙れ! 手勢を集めてそやつを討伐するのだ! ……いや、待て。利用できるものはしないとな。


 討伐ではなく、捕縛せよ! 神の名を以ってな!』


「……は。かしこまりました……」



 ◇◇◇



 中央通をまた王宮方面に向かうが、立ち寄るつもりはない。

 そのまま北に向かう。

 足早に進むこと数十分ほど、幸い何事もなく北門に到着した。門番に冒険者カードを見せる。


「あ、おま……いえ、あなた様は……」


 どうやら先日警備隊の本部で私のことを見たことがあるらしい。


「北の森で魔物狩りですか?」


「いや、私は……まあ、そんなところだ」


「お気をつけて」


「ああ、ありがとう」


 そんな挨拶を交わし、ついに私は王都を出ることになった。




 王都北門を通過したところで、オッサンは一人呟く。


「さて、オレたちの旅はこれからだ!」





 え? オレたちって誰と誰? いえ、勢いです。




まだ終わりません。

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