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29 王都最後? の夜(宵の内)

ユニーク、1000人越えました。

ありがとうございます。

 


 何とか食料集めを終えたオッサンは、既に暗くなった頃王宮に帰って? 来た。


 こんな時間だが、宮廷魔術師の爺さんに用があると門番さんに告げたら通してくれた。オッサンの素性を知らない騎士さんの監視付きだったが。

 魔術師の詰め所まで行くと、いつかの魔術師のお兄さんが出迎えてくれたので監視の騎士さんも納得してくれた。


「おお。遅かったな」


「すまない。食料を買い込むのに手間取った」


「そんなところじゃろう。急に旅立とうとするからじゃ。まあよい。では、陛下の所に行くぞ」


「わかった」


 オッサンは入った詰め所をものの五分で出ることになる。

 王様(シャルさん)には既に話が通っているらしく、心配していたとのこと。うん、悪いとは思っているよ。


 しかし、このままだと、王宮に居候しっぱなしの未来しか見えないのも事実。

 タバコは本気でほしかったが、よく考えると無謀だとは思う。それでも旅の決心が揺るがなかったのは、王宮から、この微温湯(ぬるまゆ)の状態から一度抜け出さなきゃと思っていてのことかもしれない。自分でもわからんが、まあ、勢いだな。


 王様(シャルさん)にこの気持ちが伝わるといいのだが……


 王様の執務室に来た。

 何度か来たことはあるのだが、夜の訪問は始めてである。


「おお、待ちかねたぞ。と言いたいが、少し待っててくれ。すぐに終わらせる」


「わかった。こんな時間に済まない」


「気にするな。ワシはいつものことだ」


 魔道具の照明が結構明るい。流石は王様の部屋。夜でも仕事してるんだなあ。文官さんと引っ切り無しで書類に目を通していた。

 オッサンも少しは進歩したことを見せてやろうかな。


「爺さん、照明の魔法、使ってもいいか?」


 王宮の、それも王様の前でいきなり魔法を使うとどんな事態になるかくらいはわかっているので、サプライズは無しにする。


「陛下。タケシ殿がこう申して居りますが、よろしいでしょうか?」


「ん? 構わんぞ」


「タケシ殿。許可が出ましたぞ。お使いなされ」


 オッサンは軽く頷く。


「ライティング!」


 オッサンバージョン・天使の輪が出現する。


「おおっ! 変わった魔法だな。クレモン、これは光魔法なのか?」


 照明の魔道具より数段明るいことに、そして形状が通常の照明魔法と違うことに王様は驚いていた。


「はい。光魔法初級の照明(ライティング)に間違いはございません。おそらく、タケシ殿の世界にこのような照明があって、それを思い浮かべたのだと思います」


 はい。流石『筆頭』の爺さん。正解です。


「そうか、タケシは魔法の才能があるのだな」


 王様は書類から目を離さず話しかけてくる。器用だな。ミスっても知らんぞ。

 サプライズではないと言ったのだが、事実そこまで驚いてはいないようだ。おそらく勇者の同郷だから、で納得したのだろう。勇者は一日目で成功させたらしいし。


「はい。ワシもそう思います。流石は召喚者かと。生活魔法をあっという間に覚え、おそらく火魔法、水魔法、光魔法のスキルは取れたのではないかと」


「ほう。それは大したものだ。レベルが上がれば大魔法使いになれるぞ。どうだ? 今一度ステータスを調べてみぬか?」


「いやいや。面倒だから遠慮する。取れてないとみっともないし、旅から帰ってきたら調べてくれ。その時は絶対取れてるから」


 今調べられても困る。オッサンのステータスはガワだけの、なんちゃってステータスなんだよ。


「そうか。タケシは旅に出るのだったな……」


 あっれれ~? お~い、シャルさん、何しんみりしてるの?

 またこのパターン? 

 勘弁して。オッサンこういうの苦手なんだよ。


 それからシャルさんは無言で仕事し続けていました。

 オッサンと爺さんはその間立ちっぱなし。ここにも応接セットはあるけれど、王様が忙しくしてる目の前で寛ぐわけにはいかないでしょ。


「よし。これでよかろう。マルケル、酒宴の用意だ。それから人払いせよ」


「は。かしこまりました」


 オッサンたちが執務室を訪れて数十分後、やっと仕事が一段落したようで、シャルさんは文官さんに次の指示を出していた。

 酒宴の用意って、文官の仕事なの? ああ、取次ぎね。秘書みたいな感じか。

 人払いはありがたい。腹を割って話したいからな。


 すぐにメイドさんたちがやってきて、執務室の応接セットのテーブルに料理を並べていく。ワイングラス? 銀の脚付きコップが三つ、他のゲストはいないようだ。


 オッサンたち三人はようやくソファーに腰を下ろした。シャルさんはオッサンの正面、爺さんは私の隣に。


「では、タケシの旅の無事を祈ろうではないか! 創造神の加護に感謝を!」


「「創造神の加護に感謝を!」」


 こちらの世界の乾杯の仕方だ。あー、創造神サマにも会わなきゃならないんだよな。面倒だ。旅から戻ったら考えよう。


 銀のコップでワインを飲む。オッサンはワインには詳しくないので特に感想はない。まあ、不味くはないかな、という感じ。ビールの方がいいよ。あるんだろうか? あるよな。あってくれよ。

 あ~、異世界に来て、時間が経てば経つほどほしいものが増えていく。逆に言うと、麻痺した感覚が次第に戻ってきた感じだな。麻薬中毒の禁断症状に似てるな。なったことないけど。文明は毒にもなりうるってとこか。


 それはいずれ自分で解決するとして、あれ? メイドさんたちがまだ居るな。入り口に警護の騎士さんたちも立ってるし、人払いじゃなかったのか?


 オッサンがキョロキョロしていると、シャルさんが疑問に答えてくれた。ツーカーってヤツ? それともオッサンの表情が読みやすいだけ?


 で、改めてメンツを見てみたらわかった。

 メイド長さんに第一村人のフランちゃん。もう一人のメイドさんもよくお世話になっている人だ。警護の騎士さんは当然ガブリエルさんたちだ。


 オッサンが異世界に来て、王宮に済し崩しに居候するようになって特に面倒をかけた人ばかりだった。

 さすが王様。別れの挨拶をするのに手間がかからないというわけだ。


 納得したオッサンは気分よく酒盃を傾ける。フランちゃんがその都度お酌してくれた。おーとっと。


「それでタケシよ、バルハラ神聖教国についてだが、本当の目的はなんなのだ?」


 適当に今日あったことを話したりしてまったりとした空気だったのだが、シャルさん、目がマジですよ。


「ホントにちょっと買い物のつもりなんだが……そうだな、願掛けの意味もあるかな」


「教会なら我が国にもあるぞ、ワシは真面目に話しているんだ」


「俺だって真面目に考えたさ(さっきだけど)、俺がこの世界で暮らしていけるかどうか、一人で旅でもしてみないと自信がつかないだろ? いつまでもシャルさんたちの好意に甘えていたら、それこそダメ人間になっちまう」


「む……だ、だが、いきなりバルハラでなくとも、友好国家なら他にもあるぞ」


「いきなりじゃないさ。途中にも国はあるだろ? 最終目標がバルハラ神聖教国(そこ)ってだけだ」


「むう……」


 シャルさん、かなり心配してくれているみたい。


「陛下。タケシ殿の決心は固いようです。ここは見送ってやりましょうぞ」


「……わかった。クレモンまでそういうのであればワシもこれ以上引きとめはせん。ただ、必ず戻って来るのだぞ」


「ああ、わかってるさ」


 ふう。なんか、大袈裟なことになってるけど、これがこっちの常識なのかね。


 湿っぽさもなくなって、オッサンの送別会はやっと盛り上がるのであった。



 ◇◇◇



『ほう、勇者がわが国に来るとな?』


「いえ、勇者ではなく、勇者と同じ世界の者のようです」


『同じならばそれこそ勇者ではないか。歓迎せねばのう』


「では、私はいかがすれば」


『引き続きフランシスカの動きを探るのじゃ。魔族との決戦、勇者を率いて戦いを決めるのは我が国でなければのう』


「は。かしこまりました」


 フランシスカ王国王都の片隅でローブ姿の男が一人(・・)呟いていた。


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