24 オッサン、再び森へ。
10万字到達しました。
評価も初めていただきました。感謝です!
「おはようございます。今日はちゃんと起きれましたね」
「おはよう、メイド長殿。朝から(ご褒美)ありがとう」
まるで高級ホテルのように至れり尽くせりだが、メイド長さんの冷ややかな眼差しはオッサンの眠気を吹き飛ばす威力がある。これもサービス?
宮廷魔術師の爺さんから連絡があったようで、今日は今までよりかなり早めに起こされたようだ。防音結界を解除してくれたシュレにマジ感謝である。
そして朝食も早め。
食べてすぐ王宮の門に集合とメイド長さんから爺さんの伝言を受け取る。
感謝の印に、オッサン唯一のアドバンテージである『リンゴ』をメイドさんたちに一つずつ配る。みんな喜んでくれた。メイド長さんの眼差しも心なしか穏やかに。
食後の一服はもうできそうにない。みみっちく一本だけ取ってあるのだ。あ、タバコも探さなきゃ。
何となく物足りなさを感じつつ、冒険者装備に着替えて王宮の門に向かう。
既に騎士さんたちと魔法使いさんたちが集まっていた。わー。皆さん朝に強いですねえ。
馬が十頭、馬車が一台用意されている。私も馬車かな。何気に初めて。
「申し訳ない。遅れましたか?」
「いえ、クレモン様がまだですので」
見た顔の騎士さんがいたので聞いてみると意外な答えが。
「え? 筆頭自ら出陣ですか?」
「いえ。おそらく見送りかと……あ。見えられました」
振り向くと、王宮から爺さんとガブリエルさんが出てきた。なるほど、見送りね。
「おお、タケシ殿。今日は起きられたようじゃな」
メイドさんといい、爺さんといい、寝坊したのは昨日だけじゃん!
「まあな。それで、爺さんは行かないのか?」
「うむ。調査結果を待ってからじゃな」
「そうか。何もなければいいな」
「ほんにのう」
何もないことはわかってますがね。口にできないのがもどかしい!
「では! 出発! くれぐれも油断せぬように!」
「「「はっ! 了解です!」」」
結局、話していたのは私と爺さんだけ。
騎士十名、魔術師五名、プラス私の十六名は、ガブリエルさんの号令で王宮の門を潜り、王都城下町に向かう。あ、ガブリエルさんも居残りだったよ。部隊は違うんだけど結構偉いんだって。
とりあえず冒険者ギルドに向かう。そこでまた高ランク冒険者と合流し、南門から東の森に出発する予定だ。
ギルドに着くまでは皆歩きなので、騎士さんとお話をしてみる。でかい馬に囲まれるのは少々怖かったが。
大きな括りで『王国騎士団』があって、五つに分かれているそうだ。今回の調査は各二人ずつ選出されたとのこと。
その中の二つがオッサンもよく知っている『王宮警護隊』と『王都警備隊』。親衛隊と警察みたいなものだな。
その他はそのまま『第一騎士団』から『第三騎士団』だそうだ。これが所謂『軍隊』だな。人数も最大だそうだ。王宮には少数が残っていて、今は大部分が魔族との戦いのために国外に出ているらしい。
ただ、他に『将軍』もいて、歩兵部隊もあるので結構ややこしい。オッサンにとっては。
ここで勇者情報が。
勇者はやっぱり騎士団から『女騎士』を連れて行ったそうだ。それも、王都残留組ほぼ全員。元々男女比が偏った職業だから少人数ではあるのだが、躊躇しないヤツだな。
道理で今日の十五人が全員男だったわけだ! 勇者め! 神敵に認定してやるぞ! 呪ってやる!
あ、いかん。今のオッサンだと、軽く魔法が発動してしまう。自重せんと。くやしいが。
オッサンが心の中で憤っているうちに冒険者ギルドに到着した。
「お、来たな」
オッサンゴリマッチョのギルド長自らが出迎えてくれた。結構大事なのね。今更ながら冷や汗が……
「とりあえず十人集めた。ランクはBとC。中の上だな。調査だけなら問題ないと思う」
ギルド長は、暫定的にリーダーとなっている第一騎士団の騎士さんにギルド員を紹介した。
おや? 何人かがオッサンに手を振っている。ああ、ゴリマッチョに絡まれた時、最後に加勢してくれた連中だ。たしか……マックスだっけ?
「わかりました。こちらは精鋭とはいきませんが、それなりに訓練を積んでいるつもりです。森の中は不慣れですが戦闘はお任せください」
暫定隊長さん、腰が低い。これはギルド長の威光なのかな?
「戦闘になるほど魔物がいれば、異変は起きていない証拠だ。おかしな話だが、魔物が出ることを祈ってるよ」
「は、そうでした。肝に銘じます」
「ああ、よろしく頼む。お、タケシ、お前今日はどうする?」
暫定隊長さんと話していたギルド長が私に話を振ってきた。
「どうって、何が?」
「ああ、まだ言ってなかったか。今回の調査は王宮からの依頼となった。当然ギルド員には依頼料が出るが、調査に加わるか? 森までの案内なら大銅貨五枚、調査にも同行するなら銀貨三枚だ。他の連中は大銀貨一枚だがな」
「なんだ、その落差は」
「お前は低ランクだからしょうがない。Gランクで一日銀貨三枚なら多い方だぞ」
「そうか。だが、断る!」
通じないとわかっていて、いや、通じないからこそ言ってみました。
いや、真面目な話、私が森の中で結界を張ったら結局『異常あり』とか判断されて、更にややこしい事態になるのは目に見えているし、結界を張らずに高ランクの魔物と遭遇なんてシャレにもならないからな。今回は、君子危うきに近づかず、だ。今回も、か。
「そうか。じゃあ、案内が終わったらギルドに戻って来い。大銅貨五枚だが報酬は報酬だ。あ、ランクアップもあるから必ず来いよ」
「ランクアップ?」
「詳しいことは戻ってからだ。そろそろ出発だ」
見ると、冒険者たちも二台の馬車に分乗していた。
「わかった。だが、森に行ったついでに周辺で薬草でも探すつもりだが、構わんよな?」
「あまり遅くならなきゃいい。さあ、出発だ!」
「「「おおっ!」」」
王宮と同じパターンで総員が出発する。今は総勢二十六人だ。
ここからは馬車に乗った。南の城門まではゆっくりと進む。
南門を出ると当然南方面に街道が続いている。しかし、東西にも分岐路がある。分岐路は王都を囲むようにぐるりと湾曲している。通称、王都外周路。王都城壁の外側にも町があるからだ。比べたことはないが、東側の町は小さめで生活水準も低いそうだ。東の森の脅威を知った私は納得する。
ここで御者席に乗って道案内をしている私は左に進むように指示する。ケータイのマップはないがそれくらいは覚えている。
しばらく進むと『外町』が見えてくるが、王都外周路が町の手前で更に分岐しているのだ。
ここを右折する。すると、雄大なアルプス山脈が目の前に。いや、こちらの世界での名前は知らないが。
その山脈の麓が『東の森』である。
「おい、本当に東の森だぜ」
「ああ。こりゃ調査に本腰を入れないとな」
道案内のオッサンの乗った馬車が先頭とはいえ、一応護衛に二人騎乗した騎士が横を併走している。
分岐を東に向けた辺りで二人はそんな会話をしていた。
何かの間違いであってほしかったんだろうなあ。
残念ながら、オッサンの乗った馬車はどこまでも東に進むのだ。
流石に徒歩より早く、日もあまり高くないうちに目的地に着いた。
「ここだ。私はここの森に入ったのだ」
森の一歩手前、潅木が疎らに生えている場所に馬車を止め、私は記憶にある森の入り口に向かって指を差した。
「やはり本当か……おい! 全員集合!」
暫定隊長の騎士さんが一箇所に調査員を集める。
馬車と馬の警護に冒険者・騎士団から二名ずつ残し、二十一名が森に入ることに決まった。すぐに調査の開始のようだ。
「タケシ殿はどうする? やはり帰るか?」
一応暫定隊長から確認された。
「ああ。足手まといは必要ないだろう。私は森の中には入らず、周辺だけを見てみるつもりだ。大変だろうががんばってくれ。ご武運を」
こちら式の敬礼は知らないし、下手にフラグが立ってもアレなので挨拶だけに留めておく。
暫定隊長さんも納得してくれたようだ。
「出発!」
暫定隊長さんの掛け声で調査メンバーが森に入っていく。
さて、オッサンは別の調査をしようか!




