21 魔法使いになろう。その4 生活魔法と錬金術とその他
初めて感想いただきました。
モチベーション上がりますね。
生活魔法は覚えた。
『純水』『浄化』もイメージすることが重要で、テンションの下がったオッサンは魔力を暴走させることなく小さな水球を出現させ、身体から汗やら汚れやらを除去できたのだ。
はぁー。つまらん。
「すばらしいです! タケシ様! 魔法の才能がお有りですよ! このまま修練を続ければ火魔法も水魔法も光魔法もスキルが取れるかもしれません!」
私の内心を知らぬ魔女っ子は『純水』よりも純粋に薄汚れたオッサンを賞賛してくれた。
ううっ、浄化されて消えてしまいそうだ……
「そ、そうか、ありがとう……と、ところで、錬金術についても教えてもらえるだろうか?」
「錬金術ですか? すみません、私はスキルを持っていなくて……」
「ああ、かまわないよ。なら、教科書、魔道書というのかな? そういう本はないかな?」
「あります。ここの三階に書庫があって、魔法関連の書物がたくさん置いてあります」
「そこ、私でも利用できるのかな?」
「う~ん、タケシ様なら大丈夫だと思いますが……私の一存では……やはりクレモン様にお聞きするのがよろしいと思います」
人差し指を顎に当てるポーズで悩む金髪魔女っ子。うん、いいね! だ。
「そうか、そうだな。では、聞いてくることにしよう」
「あ、私もご一緒します」
「すまないな」
というわけで、一旦修行を中断し、爺さんを探す。
幸い、先ほど行った執務室にいたのでスムーズに用件を伝えることができた。
「ほう。生活魔法ができたか。流石異世界人と言うべきじゃな。勇者殿も初日にあっさりと魔法を覚えての、それですぐに修行に向かわれたわけなのじゃ」
ほう。どうやら転移者特典らしい。おかげで王宮では私だけ変に目立つことはないようだ。一応私の場合はシュレ絡みなんだけどな。
「ということは、魔力操作もコツを掴んだのじゃな?」
「いや、そちらはまだ完全というわけじゃないんだが、その練習のためにもなると思って魔道書みたいなのを読んでみたいんだよ」
「なるほど。うーむ、本来は宮廷魔術師以外立ち入り禁止なのじゃが、よかろう。クララよ、スマンが監視役として付き添ってやってくれぬか」
「はい。わかりました」
「すまないな。こんなことにまで付き合わせてしまって」
「いえ。勇者様と同じ世界の方ですから」
爺さんの部屋まで付き合ってくれたクララ嬢に素直に感謝したら、向こうも正直に答えていた。
ありがとう勇者。マジむかつく。
いかんいかん。オッサンは心を広く構えねば。
「あ、例の件、どうなった?」
「おお。その件なら、陛下とも話は済んだ。明朝騎士団から十人、ウチから五人連れて行く。お主もそのつもりでな」
「そうか。それなら、またここに泊まらせてもらうか。そうすりゃギリギリまで本読めるしな。あ、お嬢さんにそこまで付き合わせるわけにはいかないか。どうすっかな。とりあえず晩飯時まではつきあってもらうか。爺さん、それで頼む」
「うむ。夜も、あまり遅くならなければ付き添いのものを誰かしら見繕っておこう。クララよ、それまで頼む」
「はい」
そんなこんなでオッサンと魔女っ子は三階に向かった。
「へー。ここが」
魔女っ子に案内された部屋は書庫や図書室というより、学校の資料室に近かった。日光の当たらない向きに書棚が並び分厚い本が並んでいるが百冊程度であろう。本が貴重品だという『設定』でもあるのかもしれない。
適当に一冊手に取ってみると、分厚い割りにページ数は少なそうだ。実際に見たことはないが『羊皮紙』というヤツなのであろう。
「こりゃ、知識チート第一弾は『紙』に決まりだな……」
「タケシ様、錬金術に関する本はこちらですよ」
オッサンが異世界のお約束展開を思い描いていたら魔女っ子が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
うう、いつもすまないねえ。
「ありがとう。ここで読んでいいのかな」
「はい、どうぞ」
窓際にテーブルセットがあるので二人でそこに座る。夕方にはまだ間があるのでランプは使わなくてもいい。夜の読書は辛そうだな。
魔女っ子は隣に座ってオッサンが読んでいるところを覗くようにしていた。
近い近い! 『浄化』かけたばかりだけど、オッサン、加齢臭が漂っていないか不安になるじゃないか!
「あー、クララ嬢、すまないが、他に生産系の資料があったら見せてほしいのだが……」
「生産系ですか?」
「ああ。たとえばポーションを作ったり、魔道具を作ったりするヤツだ」
「わかりました!」
魔女っ子が張り切って探しにいってくれたおかげでホッとするオッサンだった。
さあ、今のうちに読むか。
なんちゃって、ページ数も少ないし写真にとってしまおう。中年の記憶力より確実だ。
魔女っ子が来ないうちに百ページもない錬金術の魔道書を写メる。
「持ってきました!」
おっと、ギリギリセーフ。スーパーケータイはアイテムボックスに瞬間収納だ。
魔女っ子は前が見えないほど本の山を抱えている。
「スゴイ量だな。重くないのか?」
「身体強化のスキルがありますから」
ドサッと、音を立ててテーブルに本の山ができた。実際重かったようだ。
「へー、それは便利そうだな。しかし、魔術師より騎士向きのスキルじゃないか?」
「う……タケシ様まで……勇者様にも言われました……」
「ははは。すまんすまん。でも、肉弾戦もできる魔法使いっていいと思うぞ、うん」
「そ、そうですよね。えへへへ」
そんな風にも笑えるんだなと、少々ほっこりしつつ、魔女っ子の持ってきてくれた本を確認する。
いくら王宮関係者とはいえ、ケータイを見せるのはマズイだろう。
日が暮れるまでそんなに時間はないし、今日は魔法の種類の確認だけでいい。後日、改めて写真に収めていくことにしよう。一人きりになるチャンスがあればだが。
『各ポーションの作り方とレベル』、『魔道具のすべて』というシリーズ物初級編・中級編・上級編・アーティファクト編、『植生魔法』とはなんだと思ったら、魔力で植物の成長を促進させるというヤツだった。そういえばエルフっているんだよなあ。
他にも、『鍛冶魔法』『建設魔法』『付与魔法』『召喚魔法』などがあり、確認するだけで一苦労である。
折角アドバイザーがいるのだし、質問しながら斜め読みしていく。
「ふんふん。なるほど。こういった生産関係の魔法は職人の弟子になって覚えるわけか」
「はい。生まれつきスキルを持っている場合もありますが、長時間修行していれば大体スキルを取れます」
なるほど。商売するにしてもぽっと出のスキル持ちの素人より、どこそこの職人の下で何年修行した、と言うほうが信用があるわけだ。
こりゃオッサンの将来設計に影を落としそうだ。
空も大分暗くなってきた。
「ここまでにしよう。クララ嬢、今日はありがとう。本当に助かった」
「いえ! こちらこそお役に立てて光栄です!」
これが、勇者と同じ世界の人間だから、というのでなければ最高なんだが……
いやいや。ここは素直に感謝するところだろう。おかげで今日から間違いなく『魔法使い』になれたのだし。
「では、機会があったらまた色々と教えていただこうかな?」
「はい! よろこんで! 今度は私にも勇者様の世界のこと教えてください!」
「……いいとも」
ま、主人公キャラじゃないオッサンなんてのはこんなものだ。




