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19 魔法使いになろう。その2 初めての魔法

 


「では紹介しとこう。ウチの新人でクララじゃ。クララよ。話くらいは耳にしていると思うが、一応内密にな。タケシ殿じゃ」


「はじめまして。クララと申します。勇者様の先生でいらっしゃるそうで、私ごときが教えるなんて恐れ多いですがよろしくお願いします」


「こ、こちらこそよろしく……」


 宮廷魔術師の詰め所的建物の一階にある訓練室みたいなところに移動した私は、クレモンの爺さんから何人か訓練中のローブ姿の魔術師の中から一人紹介される。


 魔女っ子だ! まごうかたなき魔女っ子である!

 ローブ姿で体型はわからなかったが、オッサンに深くお辞儀をしたときそれがわかった。チョモランマか! それともアルプス山脈か!


 オッサン、どもってしまったじゃないか! 不意打ちだよ! 


 いかん! 冷静にならねば。通報されてしまう。


「ああ。そんなにかしこまらないでくれ。君には残念な情報かもしれないが、私は勇者の先生ではない。勇者の世界の教師というだけで勇者とも面識はないのだ。おい、爺さん、俺の情報がおかしく流れてるぞ。この説明何回目になると思ってるんだ」


「ほっほっほ。お主、メイドの間では有名じゃぞ。まあ、諦めるんじゃな」


「隠してくれるんじゃないのか?」


「隠すんなら消してしまった方が手っ取り早い。ま、陛下に感謝するところじゃろうな」


「怖いな! ……まあ、それもそうなんだが……見ろ! お嬢さんあからさまにガッカリしてるじゃねえか!」


「いっ、いえ! そんなことは……ただ、勇者様のお話を聞きたかったなあと……」


 お前もか! 王女といい魔女っ子といい、勇者、かなりのイケメンとみた。クソ、これだから主人公キャラは……


「ほっほっほ。残念じゃったな。この子はのう、もともと勇者殿の訓練に同行したがっておったのじゃが、希望者が殺到しての、とても全員は無理ということで選別に漏れた口なんじゃろう」


 なるほど。勇者の特訓のお供か。そこまでは詳しく聞いてなかったが、こりゃ、騎士団からも女騎士が選抜されてるのか。道理で王宮警護隊も王都警備隊も女騎士を見なかったわけだ。女性神官とか聖女とかもいそうだな。


 勇者、着々とハーレムストーリーの王道を歩いてるな。裏山だぜ。


 いやいや。オッサンにはオッサンらしいストーリー展開があるはずだ! メイドさんも女冒険者も残ってる!

 地味に『まったり異世界ライフ』のほうがいい。がんばろう。


 そのためにも、魔法、修行しないと。

 勇者ファンの魔女っ子だが、チェンジはできない。そういうシステムじゃない。


「わかった。こちらとしても、魔法が覚えられればそれでいい。お嬢さんも、ここは我慢してほしい」


「いえ! こちらこそ失礼しました!」


 王女もそうだったが、基本的にいい子みたいだ。魔女っ子が再び深々とお辞儀してくる。

 中世のヨーロッパにお辞儀文化があるのかだって? 

 そんな問題は揺れるアルプス山脈に比べれば全く問題はない! 大地震だ! 噴火しそうだ!


 爺さん、その生暖かい目は止めろ。


「ほっほっほ。では、落ち着いたところで早速始めようかの」


 くそ。全然落ち着いてねえっての。教師生活二十年も爺さんにかかってはまだまだということか。同年代って、シャルさんとギルド長ぐらいで、あの二人なら共感してくれるだろうか。全くタイプが違うが……


 そんなことを考えている場合じゃないな。


「ああ、頼む。何からするんだ?」


「タケシ殿は『土魔法』と『錬金術』がレベルⅠじゃったな」


「ああ、なんかそうなってたな。使い方もわからんが」


「うむ。では土魔法の初歩を見せてやりなさい」


「はい。『石礫(ストーンバレット)』!」


 爺さんの指示で魔女っ子が壁の的に向かって手を向けた。ラノベで御馴染みの呪文? とともに石礫が飛んでいった。おお、バシバシぶつかる音が聞こえる。


 スゲー。魔法だ。スゲーわかりやすい魔法だ。

 こちらの世界に来てこんなに魔法らしい魔法を見るのは初めてじゃないか? もっと早く見せてもらえばよかった。

 自分でもアイテムボックスとか鑑定とか使ってるけど、地味だよな。便利ではあるが。


 感動に浸っていると爺さんが感想を聞いてきた。


「どうじゃな? 今のは『詠唱省略』じゃったが、できそうかの?」


 詠唱省略? つーことは『詠唱』があるんだ。中二病的な?


「いきなりだな。やり方もわからんのにできるものなのか?」


「スキルがあるのじゃからできんことはないはずじゃがの」


 なるほど。この世界はスキルありき、で考えるのか。


「じゃあ、スキルにない魔法を覚えたい時はどうするんだ?」


「それはじゃな、使いたい魔法を思い浮かべて魔力を手に集めるんじゃよ。才能があればそのうちできるようになる」


「すごい大雑把な説明だな。じゃあ、才能がなかったら一生できないんじゃないか? それより魔力って何だよ?」


「お主、教師だけあって細かいのう。とりあえずやってみるのじゃ。できんかったらその時はその時じゃ」


 爺さんこそ宮廷魔術師とかいって大雑把過ぎるだろ! 研究職じゃないのか!


「まあ、そんなに言うならやってみるけどよ。技名を言わなきゃなんないのか……」


「何をゴチャゴチャ言っておる。さっさとやらんか」


「ハイハイ」


 私は魔女っ子の真似をして壁に手を向ける。

 バイブル(没収したラノベ)によると、魔法の発動はイメージ。魔力がなんだかよくわからんが、現代日本の科学知識を加えればいいということだ。

 石礫なら弾丸を模して、回転をかけて……


 待った! それって主人公キャラのパターンだよな。オッサンは地味ストーリー展開を望む。あまりハイスペックはマズイだろう。


 あー、でも、実際に試したい物件でもあるよな。初っ端からわざと失敗して今後の才能に影響が出てもアホらしいし、どうすべきか……


 爺さんの目が怖くなってきたので魔法を発動。どうにでもなれ!


石礫(ストーンバレット)!」


 パスパスパス。


「ほう。初めてにしてはまあまあじゃな。威力と数は落ちるが」


 あー。どうやら私のイメージどおり、しょぼい感じでいけたと思う。

 今度人のいないところで現代科学バージョンを試してみないと。


 あ、でも、オッサン魔法使えたよ! やった!


「出来だぞ! 爺さん! 魔法ってスゲーな!」


「ほっ、スキルがあるから当然じゃ。それより、魔力の流れはわかったかの?」


「いや、まったく……」


「仕方がない。クララよ。教えてやりなさい。タケシ殿は魔力が尽きるまで魔法を打ち続けるのじゃ。何、倒れるまでにはコツが掴めるじゃろう」


 スパルタだな!


「わかった。これも修行か」


「はい。わかりました。タケシ様。がんばってください」


「では、ワシは戻るぞ」


「なんだ? 爺さんが修行付けてくれるんじゃないのか?」


「そのつもりはあるのじゃが、今日は例の件で色々とな」


「あ、わかった。無理は言わねえ。王様によろしくな」


「ではの。ほっほっほ」


 笑いながら爺さんは訓練部屋を出て行った。なんか私のせいで面倒かけてスマン!


 さあ、もう爺さんのことは忘れて魔女っ子と魔法の特訓だ! オッサンは張り切っちゃうぞ!

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