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16 オッサン、やっと冒険者ギルドで依頼完了報告する。

 


「再びやってきたぜ、冒険者ギルド!」


 王様との会合の後、今度こそ予定通りに物事を進めるため王都に繰り出した。昼食も勧められたが断ったよ。食べたばかりだったし。


 ちゃんと異世界服&皮鎧に換装して出勤だ。魔物を狩る予定は全くないが、冒険者ルック、見た目は大事だよね。


 二日ぶりになる無骨な入り口を潜りカウンターへと歩み寄る。

 お、ヌコ耳お嬢さん。なんか久しぶりの感じ。何故だろう。


「あ、タケシ様。ご無事でしたか。心配しておりました」


 ラノベの知識どおり昼は冒険者の数も少なく、すぐに私の順番が回ってきた。今日は絡んでくる愚か者もいないし、すこぶる順調である。

 ヌコ耳お嬢さんは笑顔で迎えてくれた。

 心配? あ、ゴリマッチョの一件か。素で忘れてた。


「心配かけたようで悪かった。見ての通り疑いは晴れたよ。あ、そうだ……」


「これは?」


 私はアイテムボックスから一通の手紙を取り出しヌコ耳嬢に渡す。ラブレターじゃないぞ。


「ギルドのお偉いさんに渡してくれ。読めばわかるが、簡単に言うとギルドの登録やり直しの嘆願書みたいなもんだ」


「え? やり直しなんてできませんが……」


 実はこの手紙、王様と宮廷魔術師の爺さんが書いたもので、私のステータスの変化は本来ありえないのだが、特殊例として内密に扱われることになったのだ。それに以前の出鱈目なスキルでは妙な疑いを持たれる可能性もあるから以前の資料は破棄した方がよいと判断してくれたようだ。

 持つべきは最高権力者のお友達だね。


「その辺は上の連中が判断するだろ。とりあえず渡してくれればいい」


「はあ、わかりました……」


「でだ。本来の用件なんだが、一昨日受けた依頼の完了報告をしたい。期限はなかったよな」


「あ、はい。薬草採取でしたよね。あれは常設ですのでいつでも大丈夫です。ハイ、この上にどうぞ」


 きちんと私の受けた依頼を覚えてくれていたヌコ耳嬢はカウンターの下からトレイを取り出した。なるほど、ここは受付と買取が同じカウンターでできるシステムか。


「……おっと」


 一瞬アイテムボックスに手が伸びかけたが、ふっふっふ、慌ててはいけない。冒険者ギルドには新人イジメのほかにもまだまだお約束があるのだ。

異世界の歩き方(ラノベ)』を読み込んだ私に隙はない!


「その前に聞いていいか?」


「はい? 何ですか?」


「今まで薬草採取で最高何束持ち込まれた?」


「? え~と、確か30束ぐらいかと……」


「そうか。気にしないでくれ。ちょっと聞いてみただけだ」


「はあ、そうですか……」


 このやり取りは、新人でオッサンの私が変に目立たないためだ。ステータスはともかく、アカシックさんのバックアップがある限り薬草採取など雑草むしりと変わらん。

 案の定、アイテムボックスの謎機能によるアイテム件数は『薬草:2487本』と出ている。


 依頼表によれば、


 薬草の採取

 推奨ランク:F

 期間:無し

 買取数:十本で一束

 買い取り金額:一束大銅貨三枚(30アース)


 となっている。

 オッサンはランクGだが、テンプレ通り一つ上のFランクまで依頼を受けられるのだ。


 未だこの国の物価基準がわからんが、十本で大銅貨三枚って安いのか? 百本で銀貨三枚、300アース。ギルドの登録料や安宿一泊分くらい。オッサンの装備一式は金貨二枚だから20,000アース、薬草およそ6,666本分か……あり? もう二回森に行けば軽く達成できるな。


 それはともかく、私の所持数はこれまでの最高記録の八倍である。

 そんなもの持ち出したら騒ぎになるに決まっているのだ。


 というわけで、分割して買い取ってもらおう。序盤は目立たずに生活費が稼げればOKだ。クレモンの爺さんとの修行もあるし、ちょうどいい。


「二日かけてやっと同じくらい採れた。確認してくれ」


「……」


 アイテムボックスからきっちり三百本取り出してトレイの上に載せた。わざわざ『二日間』分と言ったのも実質記録の半分ですよ、というアピールだ。

 あれ? ヌコ耳お嬢さん、あたな、目が点ですよ?


「どうした? そうだ、リンゴ食べるか?」


 挙動不審な女の子に対する気遣いを忘れないオッサン。アイテムボックスから山ほどある『なんちゃってマンゴーりんご』を取り出した。

 そのおかげでヌコ耳嬢は復活する。


「り、りんご……」


「あれ? 嫌いだった?」


「これ、高級品ですよ。いいんですか?」


「構わんさ。薬草採取の途中で取ってきた物だし。ところで、何に驚いていたんだ?」


「タケシ様、ソロ……ですよね?」


「ん? ああ。知っての通り登録したばかりだからな」


「先ほど申し上げた30束の記録は三人パーティーでした」


「え……」


 ヤバイ。方向は合っていたが計算がずれた。


「ゴホン。これ、もっとあげるから内緒にな」


 幸いギルド内は人が多いというほどではない。ここはゲスいと言われようとも餌付けに限る。カウンターにゴロゴロとリンゴを並べてやった。


「えっ! こ、こんなに! た、タケシ様、一体どこで採取されたんですか!」


 声が大きい。ほら、せっかく隠蔽を図ったのに目立っちゃうじゃないか。


「どこって、東の森で……」


「東の森っ!!」


 ヌコ耳嬢が叫びながら勢いよく立ち上がった瞬間、ギルド内がザワリとどよめいた。

 おいおい。私の華麗な計画が……

 どうなってんの?


「ひ、東の森がどうかしたのか?」


「タケシ様! 大丈夫なんですか!」


「だ、大丈夫って……何が……」


 立ち上がったヌコ耳嬢はカウンター越しに、身を乗り出すようにして私の身体を見回していた。

 状況が状況だけに劣情は起こらなかった。逆に冷や汗が出る。


 私の後ろで順番を待っている冒険者たちも同じようにオッサンを見回してくる。キモいぞ!

 しばらくして少し落ち着きを取り戻したようなヌコ耳嬢が椅子に腰を下ろした。なんか、ストン! って感じで。


「普通、低ランクの冒険者は北か南側の森で仕事をこなします。川も街道も近いので安全だからです。魔物のランクも低めですし。それに、この依頼をお願いする時に私、言いましたよね。南の森がお勧めですって」


 オッサン、ピーンチ!

 淡々と仕事モードに戻ったヌコ耳嬢の説明にオッサン心当たりあります。

 王都は南北に城門があるらしいが、私はお嬢の言葉を聴いて南門から出ましたよ。


 しかしその後、無一文になりかけた動揺からシュレに情報を求めて、スーパーケータイのナビ通りに……


 ああ、ヌコ耳嬢のお勧め無視しちゃった。好感度ダダ下がり?






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