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14 オッサン、少し真面目に考える。

 


 じゃあ、心安らかに就寝。と思ったのだが、シュレが気になる発言を。


『そなたはこの世界の神の加護を受けておらんからのう。面倒ニャン』


 いい加減シュレの語尾は慣れたが、聞き捨てならないことが。


「どういうことだ? 加護がないからって?」


 シュレとアカシックさんに解説を頼む。知らないことが多すぎだよ、もう。


 なんでも、『設定』が機能していて、この世界に住む人は、どの種族も『創造神の加護』というものがあるそうで、そのおかげでレベルアップなんてものがあったり、スキルをゲットできたりするそうだ。

 転移者も次元を超えた時点で特殊スキルを授かるとのこと。まさに『設定』である。

 私の予想は正しかった。いや、テンプレすぎる、生徒から教育指導の名目で没収したバイブル(ラノベ)通りだった。


 アカシックさんの説明によれば、私はこの世界の創造神の加護がないため、ステータスシステムとやらを利用できないらしい。

 つまり、地球人のままの能力しかないし、ステータス上のレベルアップもしない、ということだ。

 それはわかっていた。ステータスレベルがいくら変動しても欠片も実感できないのだから。


 だが、実際に『異世界言語』は効果があるのだし、アイテムボックスも間違いなく使えた。魔力があるということだ。

 これはシュレが真面目に付けてくれた能力ということなのだろう。

 システムによるオートマチックではなく、マニュアル操作なのだな。シュレが面倒くさがるわけだ。暇だと言っている割にはおかしなことだが。それも『人間的』といえるのだろう。


 じゃあ、何故私には『創造神の加護』がないのか?

 単純に考えてシュレの嫌がらせか? と思ったが、半分正解だそうだ。なんだよ半分って!


 シュレが普段? している日本人転移者に対する嫌がらせはテンプレート化していて、真っ白部屋監禁&素っ裸送還だ。

 しかし、私の場合、シュレの嫌がらせを受ける前に転落? してしまった。

 全知全能にしてはお粗末な手際だったが、あれだけ興奮させたのだから私にも原因があるといってもいい。


 で、とっさの判断で私とこの世界の神サマの接触を回避したそうだ。

 何でか聞いたら、この世界は最新の世界でまだこちらの神には管理神の存在を伝えていないとのこと。

 加護の付いていない異世界人である私をメッセンジャーにして接触しようと考えたらしい。


 なんて面倒くさい!

 だが、まあ、暇つぶしとハッキリ言われたら返す言葉がなかった。

 なるほど。アカシックさんが『ついで』と言った意味がわかった。


「まあ、わかった。どちらにしろ条件は飲まなきゃならんのだ。どうでもいいさ」


『そんなことはないぞよ。こちらの神に会えば加護を授けてくれるはずだ。さすればこの世界のステータスシステムも利用できるようになろうて。今のお主にはもう必要はないのじゃが、確かに周りに溶け込むには役立つニュロン』


 へ~そうなのか~。と適当に相槌を打つ。


 大体、シュレがさっさとこちらの神サマにコンタクトを取れば済む話なのだ。

 私が今苦労しているのは、すべてシュレの暇つぶしに巻き込まれたからだ。フツー? に異世界転移していればこちらの神様からチートがもらえたはず。まあ、勇者をやることになって別の苦労をしたと思うが。

 その辺の可能性もあって、シュレにあまり強く文句は言えないのだよ。


 だが、ステータスシステムは魅力的だ。『チーン! レベルアップしました』とか脳内アナウンスがあるのだろうか。アカシックさんに頼めばやってくれるだろうけど、なんか違う。この世界で私一人が使えないのも寂しいし。少し前向きに考えよう。


『メッセージか? 中身に大した意味はない。ポヨ。こちらの神に会えたらワシが出向く。なの』


 お使いの内容を聞いたら返事がこれだった。

 おい、テンションが下がるだろうが!


 具体的にはまだ細かい条件を聞いていないが、期限も何もあったものではないらしい。流石モノホンの神サマ。

 しかし、ただのニンゲンとして一生をかけてお使いするわけにはいかない。さっさと終わらせて『まったり異世界ライフ』を堪能したい。


「神様の居場所は教えてくれるんだろうな。移動方法もな。あ、空間魔法とか転移魔法忘れてた。ゴホン……決して趣味に走ったわけじゃないぞ。人間に行けなかったら意味ないから、だからな」


『なら、追加条件じゃ。お主が交渉しろピョン』


 来たよ! なにその我が侭ぶり!


「そんなことできるわけないだろ! 神サマ怒らせて天罰なんてどんな罰ゲームだよ!」


『怒るとは限らん。それこそ交渉次第だニャン。まあ、お主のわらわに対する態度も自覚はあるようじゃのう』


 ぬぐぐぐ。痛いところを。

 好き勝手に自由に第二の人生を始めよう、なんてカッコつけていたけど、よく考えなくても天罰モノだよな。あ、冷や汗が……


『まあ、交渉の結果に関してはあまり気にしなくてよいぞよ』


「と、ところで、交渉って何についてなんだ? 管理神サマの支配下に下れ、とかか?」


 何とか天罰は免れたようだ。今は、だが。

 適当に話題を変えて、いや、本題に戻しておく。


『そうじゃのう……』


 おい! 今考えるのかよ!


 で、しばらくして出された交渉内容は三つ。全知全能にしては悩んだようだな。


 1、管理神の支配下に入って、このアーシアヌ世界をシュレの指示通り委託管理する。

 2、アーシアヌ世界の神すべてがこの世界を放棄して、別次元で独自に神族のみの社会を作る。

 3、アーシアヌ世界の神すべてが人間種に生まれ変わり、人として一生を終える。


 うわー。どれもハードル高そう。まずは最高神であろう創造神と交渉して全部の神様を集めるとこからか……


 一番は私でも思いついた。無難といえば無難。

 アカシックさんの存在を知ったら間違いなく軍門に下るだろう。ネックは交渉人がただの人間だということ。私、詰んだ……


 二番目の提案は面白い。他にも異世界がゴマンとあるっていうから、すべての神様が集まったら確かに一つの世界ができそうだ。神様の神様による神様のための世界ねえ。


 三番目は……いいんだろうか? これ。口にしたとたん天罰覿面! とかならないだろうか。

 あ、そういえば、この世界はOTAKUくんたちの妄想が影響してるんだ。神様たちも人間的思考を持ってるんだよな。『人間になりたい!』とか考えていたりして。


 二番か三番を神様たちが選んだとしたら、この世界から神様がいなくなるんだよな。

 するとどうなる? 魔法は? ステータスシステムは?

 もしかしたら地球と同じになるかもしれない。それがシュレの狙いか?

 そうだとすると、一番もシュレ指示というのは人間に関わるな、ということなのかもしれない。


『あまり深く考えんでもよいっちゃ。ただの暇つぶしじゃけん。交渉に応じずワシに反旗を翻してもこの世界ごと滅ぼせばよいだけ、なのじゃ』


「おい! 物騒なこと言うなよ! 俺まで巻き添えじゃねえか! せめて世界だけは残しとけよ!」


『はっはっは。冗談じゃ』


 ったく、本当に冗談なんだろうな。実際にできるといえばできるんだから怖い。


『じゃから、交渉は時間がかかってもよい。お互い神なのだから時間はある、なの』


「……俺は寿命があるんだが……」


『ま、任せろ! 迅速に処理する! だワン』


 そこはかとなく不安を感じる。ヤツの『迅速』な処理が終わると私は定年を迎えていた、なんてことがないように祈ろう。あ、祈る相手はアカシックさんだよ。


 これでシュレの出した条件については大まかなことは理解できた。


 あとは、まともにスキル等を使いこなせるようになるだけだ。

 時間は気にしないと言ってるのだから、その辺は余裕がある。

 焦ってまた失敗しないようにしよう。

 だが、もう一つ……


「……やっぱりあれか? 異世界の神様も突然生まれてきて神サマをやることになって悩んでたりするのか?」


 突然ではないが、疑問に思っていたことを聞いてみたくなった。


『なんじゃ、急に……に、人間にワシの苦悩がわかるとでも?』


「わかるさ。お前、人間的思考とやらを植えつけられた状態だって言ってたろ? 人間ならわかるさ」


 例えて言えば、そうだな『異世界に転生したら木になってしまった』とかかな。売れそうにないけど。

 人間的思考を持った直物になったら、まさに植物状態。チートがあって人化できて人間社会に溶け込めれば別だろうけど、もし私一人でそのままだったら気が狂うね。真っ白部屋監禁など目じゃない。


『うう~っ、うう』


「おい? どした? 泣いてるのか?』


 ヤヴァイ! 泣かせちゃった? 前回と違ってマジ泣きか? シリアスすぎる!


『タケシよ! 流石ワレが見込んだだけのことはある!』


「は?」


 どうやら泣いてはいないようだ。ホッ。


『聞いておくれ! わらわの苦労を!』


「お、おお……」


 泣いていないどころか大興奮ですよ。どうすんの、この空気。


 このあと、延々と愚痴を聞かされました。ほぼ真っ白空間で聞いた話です。やれ語尾がウザイだの、一人でゲームしてばかりはつまらんだの、やれコンビニがないだの……


「うんうん。それはつらいね~」


 私はベッドに寝転がりながら相槌を打つ。

 お休みなさい。アカシックさん。シュレはそのまま寝言こいてろ。




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