13 劇的? びふぉー・あふたー
異世界転移四日目の夜。
何故か遅々として『異世界まったり生活』が始まりもしない現状、ある意味『のんびり進行』には違いないが、その現状を打破するためにも原因の大半を占めている私のステータスを見直そうということになった。
場所はもう三泊目となるフランシスカ王国・王宮の使用人用の一部屋。
『結界』機能で防音処理がされているので安心して作業ができる。
シュレは、八つ当たり&暇つぶしの私のステータスが正常化するのが不満なのか、条件をつけてきた。
なんと、『この世界の神様にメッセージを届ける』というものだ。
神サマの存在を今更疑ったりはしないが、ハードルが高いんじゃないのか?
この提案を蹴って、異世界の片隅でひっそり暮らすという選択もできなくはないのだが、何か負けた気がする。『働いたら負けた気がする』人種ではない私は断腸の思いでシュレの出した条件を飲んだ。アレ? 矛盾してるかな?
まあ、このクエストを受けるためにも、報酬先払いということで真面目に役に立つスキルを授けてもらえることになったのは私の交渉の賜物である。アカシックさんの保証付だ。
シュレにしてみれば、どんな形でもいいから私が苦労すればOKなんだろう。くそ。
では早速現在の私のステータスを確認してみよう。
え? その必要があるのかって?
それこそお約束というものだよ。
・・・・・・
名前:タケシ・ハンムラ
人種:ヒューマン
職業:教師(元勇者候補)
年齢:42
性別:男
血液型:A
レベル1
HP:42 MP:42
力:42
素早さ:42
器用さ:42
知力:42
スキル
異世界言語 アイテム・ボックス 高速思考 毒
ユニーク・スキル
*** **** ご都合主義
称号
二度落ちた者 管理神の**
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ふむ。いつ見てもいい加減なステータスだ。これがどう変わるのだろうか。少しワクワクする。
ちなみに、参考ステータスとしてこの世界の私と同年代の男性のステータスをアカシックさんに教えてもらった。
・・・・・・
名前:シャルル・デュボア・フランシスカ
人種:ヒューマン
職業:聖騎士
年齢:40
性別:男
レベル21
HP:320 MP:205
力:299
素早さ:306
器用さ:220
知力:211
運:777
スキル
剣術Ⅵ 盾術Ⅲ 槍術Ⅲ 弓術Ⅴ 馬術Ⅳ 話術Ⅵ 威圧Ⅴ
火魔法Ⅱ 光魔法Ⅲ 身体強化Ⅳ
加護
創造神の加護
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へ~。これが一般人のステータスかー。って、おいっ! これ、シャルさんのステータスじゃん! 王様のステータス見ちゃったよ! いいのか? これ。そもそも参考になるんだろうか。
ま、まあ、気を取り直して……
まず、やはり血液型の項目はない。
今後科学が発展して輸血という治療方法が一般的にならないと意味がないからな。
ここの神様も知らないんじゃないか? それとも、まさかの全人類同じ血液型?
次、職業。
やはり国王だからって『王様』とかじゃないだろ。
『聖騎士』か。あれかな、『騎士』の上位職でレベル20で職業選択できるとか。
あ、はい。アカシックさんの『正解』いただきました。
次は……各ステータス値か。
これは以前聞いたとおりだな。レベル1で平均10だっけ。レベル21なら210だな。わかりやすい。
そうすると、シャルさん結構高いのか? 特に肉体的に。流石『聖騎士』というところなのかな。
経験値の項目とかステータスポイントの観念はなさそうだ。そこまでゲームっぽくないということか。あればもっとわかりやすかったのだが、ないものは仕方がない。なんとなくレベルが上がった、って感じでいいのだろう。
あれ? 『運』なんて項目があるぞ。私のにはなかったのに。シャルさんメチャ高え。しかもスリーセブン大当たり! 私はどうなんだろうか。シュレの気分次第ってのが怖すぎる。
運は天に任せて次だ。
スキル。
うん! これぞスキルだ。何だよ『毒』って。意味がわかんねえっての。
各スキルの横にもレベルがある。非常にわかりやすい。流石はOTAKUの『設定』。シュレにも見習ってほしいものだ。
このスキルってのは、修行して力をつけた証明なのか、それとも持っていれば勝手に補正がかかるのか。素人の私としては後者を希望するのだが……
『アイテムボックス』とかは持ってるから使えた、としか言えなかったぞ。あれってどうやって修行するの? レベルが上がるとスキルのレベルも上がる? スキルのレベルが上がったからステータスレベルも上がるの?
……卵が先か鶏が先かという問題はひとまずおいといて、ユニークスキルはシャルさんは持ってない。持ってるから特にエライ、とかはなさそうだ。後で傾向を調べておかないとな。
最後、『称号』ではなく『加護』。
もしかしたらユニークスキルと同じように人によって『称号』があるのかもしれない。シャルさんたちも初めて私のステータス見たとき自然に話題にしてたからな。ビックリしたのは中身だってことか。
『加護』は『創造神の加護』。
創造したのは地球のOTAKUたちの妄想なのに『創造神』とはこれいかに。これって全人類に付いてるわけ? 意味なくない?
あ、多分あれだ。この世界も神様がウジャウジャいるんだ。ベースが『創造神の加護』で他に信仰によって別の神様の加護も付くんじゃない? 魔族なんて『邪神の加護』とか付いてそうだ。
あ、ウジャウジャはいないけど、ほぼ正解ですか。どうも。
ってことは、邪神いるんだ……
え? あれ? 神サマへのメッセージってまさか邪神様にもお届け?
勘弁してください! 魔王の親玉みたいなヤツじゃないですか!
は? いいヒト? 邪神なのに?
アカシックさんがそう言うなら……
さて、一応検証は終わった。
つーかする必要はなかった。シュレだってこちらのステータス平均くらい承知のはずだ。
これはあくまでもシュレの悪ふざけを看破するための確認。
後は私の要望がどこまで通るのか。がんばるぞー。
『さて。タケシよ。ステータスを変更するぞ。よし、終わったニャン』
「あ、待て。まだ俺の希望は……」
なんて早業だ。こんなところで神業を見せるな。
ぼやきながら再び自身のステータスを確認する。
「なんじゃこりゃ!」
・・・・・・
名前:タケシ・ハンムラ
人種:ヒューマン
職業:魔法剣士(#元勇者候補)
年齢:42
性別:男
レベル∞
HP:∞ MP:∞
力:∞
素早さ:∞
器用さ:∞
知力:∞
運:∞
スキル
#異世界言語 アイテム・ボックス 高速思考 #毒
ユニーク・スキル
#*** #**** #ご都合主義 魔道の極み 武術の極み
称号
二度落ちた者 #管理神の**
・・・・・・
『これでいいじゃろ? #が付いておるのは隠微効果がある。それも、この世界では『神』レベルなければ見破られん、ぞよ』
「おい! 何がいいJARO、だ! なんでオール無限大なんだよ!」
『……ぷ、プレゼントじゃ』
「……アカシックさ~ん! お宅のお嬢さん、不真面目すぎるんですけど~!」
『こら! いちいちママに言うな! ちょっとした冗談ではないか!」
「やっぱりふざけてんじゃねえか。ったく」
『ハイハイ。わかったのじゃ~わかったのじゃ~』
ムカッときたが、話が進まないのはこちらも困る。
おとなしく要望を告げることにした。
「やっぱり、生産職は外せんな。土魔法と錬金術と鍛冶と、ポーション作成は薬師とかかな?」
『何でもかまわん。どうせステータスは飾りなんじゃから、じゃけん』
「……薄々はわかっていたが、どういうことだ?」
『言葉の通りじゃヨ。じゃが、『魔道の極み』と『武術の極み』あるから習得には苦労せん、ですわ』
アカシックさんのフォローにより大体納得した。
シュレがいちいち私のステータスを改変するのが面倒だからと究極スキルを付けたそうだ。マジチートらしい。
へ~。と感動しつつ、今度こそ他の人に見られてもおかしくないステータスを作っていった。偽装って……
でもって、これが真の私のステータスだ。
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名前:タケシ・ハンムラ
人種:ヒューマン
職業:魔法剣士(#元勇者候補)
年齢:42
性別:男
レベル5
HP:42 MP:100
力:42
素早さ:42
器用さ:56
知力:60
運:10
スキル
剣術Ⅰ 土魔法Ⅰ 錬金術Ⅰ アイテム・ボックス 高速思考Ⅰ #毒 #異世界言語
ユニーク・スキル
ご都合主義 #*** #**** #魔道の極み #武術の極み
称号
二度落ちた者 #管理神の**
・・・・・・
ふむ。これで少しはまともになったのかな?
運なんて、アカシックさんと知り合えたのはまさしく無限大。しかし、シャルさんたちは召喚魔法の失敗でステータスがおかしくなったと思っているから低めに設定した。他の怪しいスキルも封印。『異世界言語』は異世界人だとバレないように。ギルドの資料はどうしようか。
しかし、他の人には見えないといっても『毒』スキルは健在だ。シュレのこだわりがあるらしい。他の不明項目もそのままなのだよ。ほんと意味不明。
まあ、ステータス自体が偽装なんだから、シュレに面白がられるくらいは我慢だ。称号も『自分でもわかりません』で通そう。
相談の結果、ユニークスキル『ご都合主義』はそのままにした。
運が10と低いのに色々技術を習得できる理由としては好都合だろうとの判断だ。
あと、剣術は日本で剣道くらいは習ったことがあるからOK。土魔法と錬金術は、宮廷魔術師の爺さんからなるべく早く教えてもらおう。バレる前に。
ああ。これで安心して眠れる。
気が付けば日付が変わっていた。




