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12 オッサン、女神クエストを受ける。

 


 異世界転移から四日目。まだ序盤も序盤。

 ラノベの展開なら2パターンある。国の方針に従って勇者としての訓練を受ける。あるいは逆らって城から出る。である。


 実際、私より先に到着した勇者は修行中である。

 私は、勇者の称号もないことだしパターンに従って城を出ようとした。


 実際に出たことは出たのだが、何故かまたお邪魔している。しかも風呂・食事付きだ。風呂上りにジャージ&内履きに換装済みなのは、お泊りのアピールだ。洗濯も頼んだから伝わっているはずである。

『異世界まったり生活』希望ではあるのだが、何か違う。遺憾だ。


 ではどうするのかって?

 そんなのわからん。


 自分でも焦っているのがわかっているのだが、目標もないというのに年だけは中年、四十路のままなのだ。老後が不安になっているのかもしれない。さらに無一文で見知らぬ土地に放り出されたというのが不安に拍車をかけた。形の上は納得して来たことになるのだが、たかがニンゲンのことゆえ早々割り切れるものではない。結果、不安な気持ちが浮き上がらぬようハイテンションを維持していたのだと推測できる。


 そんな微妙な心持ちで食事しながらこの国の『勇者』のことを改めて聞いた。

 容姿は前に聞いたとおりだが、名を『ショウ・カンザキ』というそうだ。17歳。若いな。金髪という情報と相まって一瞬ハーフかなと思ったが、昨今の日本ではキラキラとかDQNとかのことを考えればまともな名前である。いや、主人公っぽい名前だ。幸い、教え子ではなかったよ。


 タイムラグは半日なので彼も来たばかりだ。

 嬉々として勇者としての訓練を受けていると説明されたが、一体彼の心境はどんなものなのだろう。

 日本に帰れないと本当に知っているのだろうか。死に直面したところを助けてもらったのは私と同じだろう。それを感謝して王国の願いを聞いたのだろうか。

 いつかは直接聞いてみたい。不安ではないのかと。


 やはり、ラノベはフィクションなのだ。よく登場人物は鬱にならないものだ。まあ、そうなっては文字通り話が進まないのだろう。多くの設定に、『異世界転移の影響で異能に目覚め、メンタル面でプラス補正が付く』などというのがあるが、実際はどうなのだろうか。

 私といえば、もしヤバイ薬が手に入ったら思わず使ってしまいそうなヤヴァイ心境である。


 そんな発禁モノにならないためには今しばらくテンションを自前で上げておかねばならない。

 そのためにも必要なチートがいまいち微妙なのだよ。『ヒャッハー!』までは要らないが、もう少しわかりやすいチートがほしい。


 で、その問題を解決できるかも知れないと、王様の好意で筆頭宮廷魔術師を個人的に紹介してもらった。

 わけのわからん私のスキルをどう活用するか。また、魔法が使えるようになれば今後の生活にも役立つだろうということである。


 シュレに頭を下げた方が手っ取り早いのだが、小心者の私としてはいきなりチートスキルが増えたりするのも騒動の元だと考え、遠慮なく王様たちの好意を受け入れることにした。

 あ、シュレにはやはり頭を下げよう。魔法の修行と同時進行でチートスキルをもらえば何とか誤魔化せるだろうし。


 ということで晩餐会は無事終了。

 今日は(というか今日も?)王宮に泊めてもらうが、今後は王都で軽く冒険者の仕事をしながらこの世界に慣れつつ、合間に王宮に来て魔術師の爺さんから色々と指導を受ける、ということに決まった。


 さて、一昨日まで借りていた部屋に戻ったら、お仕置きア~ンド土下座タイムだ。

 え? 矛盾してる? 

 フッ、人生とはそんなモンだよ。




「こりゃあああああああ! お前、ろくでもないスキルブッ込んでくれたなあ! そこに直れ! 説教だ!」


 私は、案内のメイドさんが立ち去った後、厳重に戸締りをしてスーパーケータイを取り出した。

『結界』機能の『防音障壁』を立ち上げ、神サマ回線に繋げた後、思いのたけをぶつける。


『なんにゃのよ! いきなり大声で叫ぶんじゃないっちゃ!』


 何がいきなりだ。全知全能の癖に。


「あの『毒』スキルって何なんだよっ! 結婚できないのかっ! 俺は!」


『タケシ、そんなに結婚したいのか? 相手は誰じゃっ!』


「そういう問題じゃねえだろうがっ!」


 そうなのだ。確かに結婚はしてもいいと思っている。特にギルドの受付のヌコ耳お嬢さんとなら……

 って、だから、そこが問題ではないのだ!


「あんなのスキルじゃねえだろうが! 呪いそのものじゃねえかよ!」


『の、呪いとは酷い言われようじゃのう。悪い虫が付かぬようにとの管理神からの祝福なんだポヨ」


「俺はどこぞのお嬢様か! 四十路の独身のオッサンに付けたらとんでもない嫌味だよっ!」


『そ、そうか? 独身貴族とか、お主の主義だったのではないのかニャ?』


「勝手に決め付けるな! 全知全能だろ! もう、お前よう! 察しろ!」


『そ、そうか。結婚できなかっただけにゃのか……』


「言葉にすんじゃねえよ! アカシックさ~ん! 娘さん、ポンコツすぎですよーっ!」


『こ、こりゃ! ママは関係ないJARO!』


「どこの広告機構だ! ウソ、オオゲサ、マギラワシイ、懐かしいな、おい。って俺のステータスのことじゃねえか! どこに電話すりゃいいんだよ!」


 この後二人でギャーギャー言い合った。

 アカシックさんは優雅に聞いていた。気がする。


『結界』機能がなかったら城中に響いたことだろう論争は、私の息が切れるとともに終了した。いや、一時休戦というところだ。まだまだ言いたいことはある。


 だが、ここでタイミングよくアカシックさんがナイスな提案をしてきた。


「ハア、ハア……あ、アカシックさん、よろしいんですか?」


『む~。ママがそう言うんなら……』


 シュレも渋々認めたのは、なんと私のステータス大改造である。


 シュレが決めたと考えられる私のステータスには一体何の意味があったのだろうか。どう考えても嫌がらせか面白半分だろう。何故シュレは改変に非協力的なのか。

 だが、アカシックさんの決定だ。まさしく宇宙の意思なのだ。


 ヤッフー! 土下座で頼まなくてもよくなったよ! お仕置きもできなかったけどね。仕方ない。ここは引き分けということにしといてやるぜ!


『じゃが、条件があるニョン』


 ここで条件とか言い出したよ。やはり意味がわからん。宇宙の意思とか全知全能の神にとっちゃ片手間の仕事だろうに。

 だが、断れない。それもシュレはわかっているのだろう。

 できるだけ穏便なモノを望む。


「何だ? 俺にできることなんだろうな?」


『うむ。お主のいる世界の神にメッセージを届けるのじゃ』


「はあっ? 何、その無理ゲー?」


 やっぱりここにも神様いるんだ。という感想の前に呆れるしかなかった。


 確かに、私はシュレという管理神(笑)に会ったことがあるし、連絡も取れている。

 だが、現実世界で神様を訪ねて三千里なんてシャレにもならん。どこの宗教家だよ!


「お前、仮にも神サマなんだから、そんなこと自分でできるだろ?」


『わらわにできるできないは関係ない。『条件』といったワン』


 条件ねえ。条件というより試練とか昇格試験みたいなもんか?

 それにしては厳しすぎないか?


 この後アカシックさんからも詳細を聞く。


『お主、この世界に来て、目標がないことに戸惑っておるじゃろ』


「うぐ……」


 素で『うぐ』とか言ってしまった。

 ポンコツでも神様か。お見通しかよ。


『とりあえず、それを目標にしておけ。そのうち気持ちも落ち着くんじゃけん』


 ありがたく……とは流石に言わなかったが、反論もしなかった。

 だが、何故その条件なのか、という疑問は残ったままである。


 アカシックさんによると、なんと『ついで』だそうだ。

 何それ?


 OTAKUの妄想の影響から生まれた世界には『設定』がある。なんとなく納得できた。


 だが、すでに生まれた世界は独自に存在する。これもわかる。

 この世界に来て出会った人たちは『ニンゲン』だった。ゲームのNPCではない。自我と意思を持った、極普通の、私と同じ『ニンゲン』なのだ。


 この世界と同時に生まれた神も同様で、意思がある。

 だが、『設定』のせいで、極めてニンゲン的な思考を持っているそうで、暴走の危険があるという。


『ワシもな、この『人間的思考』には悩まされておる。ママがわらわをシステムから独立させたのも当然じゃ』


 何気に深い告白を聞いてしまった。


『そんな世界が短期間に何千と誕生し、神を名乗るものも数え切れぬほど居るケン。『設定』と『現実』の狭間で葛藤し滅亡に至る世界もあるだっぴゃ』


「それで『管理神』として管理に忙しいわけか。だから俺に手伝えと?」


『ん? いや、特に管理せねばならぬということはないピョン。世界が生まれ滅びるのは摂理、なの。それを記録し見届けるのが本来の在り方だっちゃ』


「じゃあ何のために? 管理神だろ? 世界を管理してこそじゃないのか?」


『ぶっちゃけ、暇つぶしじゃな』


 私は、少しシリアスモードだったが、逆にそれが災いしてか、一人ずっこけた。

 そんなリアクション芸人のような真似をしてしまった私の気持ちなど知らぬかのように(全知全能め!)シュレは話を続ける。


『確かにママ本体からワシは切り離された。じゃが、そもそもは同じ存在なのだわさ。万一ワシが暴走でもしてみい、ママに影響があるかもしれんゾイ』


 ああ。確かに。人間的に心のバランスを取るために何か仕事らしきものをしてるわけだ。

 それに、万一暴走したとして、シュレの存在ごとデリートしてしまうという方法をアカシックさんが取るわけがない。短いお付き合いだが私にはわかる。、あの心優しい、淑女の見本のようなアカシックさんにはその手段は似合わない。


 グゴゴゴゴ!


「なんだ! 地震か!」


『ちょっ! ママ! 大丈夫?!』


 なんだって! これはアカシックさん絡みの振動なのか? 世界が揺れた? 

 まさか、シュレのバグの影響がアカシックさんに? 噂すれば陰、とか? このタイミングで?


 あ、アカシックさんから通信が来た。


 え? 大丈夫?

 振動は神域と結界内だけ?


 ああ、私のステータス改変のシュミレーション中に不具合が出た?

 あまり楽しい報告ではなかったが、アカシックさんが大丈夫というなら大丈夫なんだろう。


 しかし、全知全能のアカシックさんでもミスとかあるんですね。やはりシュレのバグの影響ですか?


 …………


 あれあれ? 

 何か、アカシックさんが目を逸らした気がしたよ。

 うん、気のせい。そういうことにしておこう。


 さあ、ステータス大改造だ!


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