34 やっとバルハラ観光?
新作・ヘイスが征く!! ~邪神の使徒になってしまった男の苦労譚~
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異世界リゾートは二日目で終了した。
さすがに海しか遊ぶところがないと子供組も厭きるらしい。二日目はセーラはちょくちょく浜辺に上がってきてオッサンに付き合ってくれた。
といっても料理の仕込みの手伝いぐらいだが。
そうそう、一日目は子供たちが遊びに行ったきりだったので忘れていたが、二日目はちゃんとカキ氷も作った。大好評だったので、一日目も出してやればよかったと反省した。
概ね成功といってもいいバカンスの次の日から旅を再開する。
出発地点は当然バルハラの港町。
観光というほどでもない。海産物を買いあさりながら街を歩いてそのまま出ていくだけだ。
最終目標地点は『バルハラ神聖教総本山』がある、地球でいうとコペンハーゲンだ。港町は西端にあるので東進する。いくつか島を越えていかなければならないのが面倒だ。一々身分証が必要なのだろうか?
オッサン的にはタバコが買えればバルハラのどこでもいい。いっそ港町でタバコを買い占めて旅を終わらせてもかまわないのだが、この旅の個人的目的を実は神サマズに言っていない気がする。何か途中で『奴隷解放』なんて凡人の身に余る計画を掲げちゃったものだからますます言えなくなった。
そもそも神サマたちだって現地に行く必要はないんだけど、バグ関連で『人間っぽく』なったせいか、自分の目で見て、体験することで今後の指標にするようだ。
「辛気臭せえな、ここはよ」
リゾート島で痛飲してストレス解消できたはずの獣神・アニマがイライラしている。
オッサンが先日一人で買出ししたときは感じなかったが、今日皆揃って街を歩いていると確かに視線がうざい。
買い物の交渉なんかはオッサンが担当していて、拒否されることはなかったが、オッサンの後ろを見てあからさまに嫌な顔をされた。
原因は獣神サマと竜神サマである。
この街もジャマーン帝國とおなじく亜人奴隷がいる。なので亜人自体が街を歩いているのは珍しくないが、奴隷でない、立派な冒険者姿をしているのが気に食わないのだろう。よく入国できたなと思う。まあ、神サマパワーで誤魔化したんだろうが、だったらいっそのこと姿形も『人間』に変装すればいいんじゃないかとも思う。
「アニマやセイリュウには悪いが、人々の反応も知りたいのじゃ」
そんな答えが創造神の爺さんから返ってきた。○門様ですね?
「それはそうと、各国の受け入れ態勢が整い始めたようじゃ。懸念は食料じゃが、国を挙げてとなれば何とかなるじゃろ」
そうか。ようやくか。
いや、難民の受け入れなんて地球でも難しかったことを考えると極めて迅速といっていいかもしれないな。これも『神』がいるのが常識の世界だからこその反応なのだろう。『神託』のおかげで受け入れ自体は通達時に決定事項となるわけだ。
オッサンたちが何カ国も漫遊できるほどの時間がかかったのは単純に各国の政策実行能力の問題。魔族の国を含めた6カ国で平均2千人弱を受け入れるに当たって当然領主たちにも協力させるのだ。領主が10人なら200人ずつ、領主が100人いたら20人ずつ割り当てられるが領地の広さも一定ではないので話し合いが必要となる。幸い資金は奴隷商から取り上げた分や竜神サマ提供のドラゴンの鱗があるし、住居は神サマズが用意すると通達してあるのでそれを理由に反対はできないだろう。
あとは国からの指示や会議のため王都と領地を行ったり来たりしなければならない。これが現代の地球と違って一番時間がかかる。オッサンが最近知った『遠話』の魔法、これがあれば簡単じゃね? という疑問はあるが、さすがに国からの指示書なんかは正式な使者が送り届けたり領主自らが王都で受け取らなければならないようだ。
そして受け入れの決まった領地では領民に周知させる必要もある。バルハラ教国やジャマーン帝国と違って亜人差別はそれほど強くはないが完全にゼロというわけではないだろうし、種族うんぬんというよりも『難民』で『よそ者』という点が忌避される可能性がある。都市部より地方ではその傾向が大きいと思われる。
これも一筋縄ではいかないな。
「割り当ての決まった領主のところにはワシの眷属たちを派遣することにした」
「え!? それって前言ってた白翼族だっけ? 天使じゃん! 大騒ぎにならないか?」
「うむ。なるじゃろう。だが、管理神様に自由にやれと言われたのじゃ、この際ワシらのスタンスをアピールしようと思うてな」
「スタンス?」
「うむ。勝手に神の名を使われるのは我慢ならん、特定の種族だけを贔屓するつもりはない、とな」
「へー。爺さん、吹っ切れたのか?」
「まあ、そうじゃな。神としての存在意義に疑問を持ち、落ち込んでいたと思ったらこの国の人間の態度に腹が立つ。神とて感情のある存在じゃと気付かされた。先般の管理神様のお言葉もある。さすがに感情に任せて人類を絶滅させようなどとは思わぬが、言いたいことはハッキリ言ってやろうという気にはなったの」
「はー。なるほどねぇ。前の世界じゃ言いたいことも言えない世の中だったんだけどな。結局は心の持ちようってことか。後先考えないだけって気もするが、大丈夫か?」
「なに、ワシが好き勝手やって神にふさわしくないと管理神様に判断されたなら、ワシは喜んで神を辞めようではないか。もともとそのつもりだったしのう」
「……そうか。じゃあ、俺も言いたいこと、やりたいこと、好きにやってみようかな」
「そなたはすでにやりたい放題ではないか」
「いやいや、かなり自重してると思うぞ。まあ、俺のことはともかく、一つ思いついた」
「何じゃな?」
「派遣する眷族、爺さんのだけじゃなくて魔神サマの眷属も一緒に派遣した方がいいんじゃないか?」
「……なるほどのう。黒翼族は魔族扱い。それが創造神の眷属と協力して亜人を保護していると見せ付けるわけじゃな」
「さすが神サマ。理解が早い」
「よい案じゃ。早速魔神に手配を頼もう」
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 魔神降臨!」
創造神の爺さんの言葉に被せるように魔神サマが現れた。現在港町を出て次の町へ向かう街道を歩いているところなので幸い目撃者はいない。まあ、これが街中だったとしても魔法で誤魔化したんだろうけどな。
「……そのネタはもういいから。で? このタイミングってことは話は聞いてたのか?」
「異世界人クンは冷たいねぇ。OKOK、また新しいネタ考えておくよ。力がほしいか、とか、世界を半分やろう、なんてどうだい?」
「肩書きがシャレにならないので勘弁してください。それより爺さんの話は?」
「せっかく管理神様からネタ仕入れたのに。ああ、話は聞かせてもらったよ。もちろん協力するよ。魔族とヒューマンの戦争も主旨を変えるだろうしね」
「主旨を変える? やっぱり戦争がなくなるとは思わないんだな」
「あはは。それは神が口を出してもムリなんじゃない? しばらくはおとなしくしてるだろうけど、そのうち神の名を出さなければ干渉されないって気付く連中も出てくるだろうしね。僕もそこまで面倒看たくないし」
「まあ、そうだよな。争う理由なんて五万とあるからな。一々神サマに対処してもらうわけにはいかないよな」
「うん、そうそう。今回は管理神様の配下になった記念活動みたいなものかな? 世界の修正? みたいな?」
「ふむ。魔神はワシよりもよほどなすべきことがわかっとるようじゃ。どうじゃ? ワシの代わりに創造神をやってみぬか? タケシには断られてばかりでのう」
「あはは。僕も謹んでお断りするよ。それより仕事終わらせなきゃ。早く済ませてのんびりしたいしさ」
「創造神の肩書きは人気がないのう……どれ、始めるとするか」
そうして創造神の爺さんと魔神サマは眷属たちに指示を出した。
◇
その日、各地に白い翼の天使と黒い翼の悪魔が現れたとして騒ぎが起きる。すわ神同士の戦いか、と思われたが、あにはからんや、2体協力して領主・領民に指示を出している。
信心深い者が恐る恐る尋ねたところ、神は人種によって差別しない、と答えたという。
これによって感動した者もいれば深く悔悟した者、絶望した者もいた。
その日のことは後世に『天使大降臨の日』として伝わっている。
次話は16日0時の予定です。




