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夢の勇者ナイトブレイカー  作者: 財油 雷矢


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第二十六話 緊急発進ロードチーム!

「実は昨日退院しました。リハビリも通院で良くなりましたので、そのご報告を、と思って来たら…… というわけでして。」


 研究所のリビング。謙治けんじ以外の全員と良がテーブルを囲んでいる。

 小鳥遊たかなしは戦闘中に和美かずみから聞いた話と、前に謙治から聞いた話を総合して大体の事情は掴めたが、美咲みさき隼人はやとはサッパリ分からない。大体この二人はバスタータンク盗難のことを全然知らなかったわけだ。和美も知らなかったのだが、それは小鳥遊とりょうの二人がかりで教えてもらった。


「……でもどこに隠してたんだろうね?」


「さぁな。」


「いや、ですから……」


 トンチンカンな事を言ってる美咲と隼人に思わず苦笑の小鳥遊。


「……と、唐突ですが僕はここでお暇しますね。そろそろ帰らないと家がうるさいので……」


「そうね。気をつけてお帰りなさい。」


 どうやら調子を取り戻したのか、いつもの口調の麗華れいかに良は見えないようにイタズラめいた笑みを浮かべる。


「はい。それと師匠……じゃなくて謙治さんにもよろしくお伝え下さい。」


「分かったわ。」


「それと……」


 良はカバンから一枚のMOを取り出し、麗華に手渡す。


「謙司さんに頼まれていたデータです。後で渡しておいてもらえますか?」


「なんで私が?

 ……ま、いいわ。」


 理解不能半分、納得半分でMOを受け取り、通学カバンにしまう。

 良が帰ってしまったのがキッカケで話が途切れてしまった。

 夢魔も倒したし、もう陽も落ちている。

 折角だからと小鳥遊や大神おおがみ兄妹の為に夕食を作る美咲はともかく、麗華は謙治を起こして研究所を辞することにした。

 ……が、その時にMOを渡し忘れたことに麗華は気付かなかった。



「あら……」


 自分の部屋に戻って、明日の準備をしようとした麗華。カバンの中のMOに気づき困ったような声を上げる。

 まぁ、明日学校で渡せば…… と思ってハタと気付く。

 麗華と謙治――それどころか四人ともクラスが違うのもあって、校内での交流はほとんど無い。強いて挙げれば美咲と行動することはあるが、それでもそんなに多いわけでもない。

 ふと考える。休み時間にでも謙治の教室に行って呼び出して貰ってMOを渡す。

 ……ダメだ。一歩間違えなくても「良からぬ関係」として噂になりそうだ。

 放課後はどうだろう?

 いや、それも色々問題がある。最近麗華は美咲たちに付き合ってお寺の方に日参している。一方の謙治は今日の戦闘の前からも毎日のように研究所か自宅にこもりきりで、思い返せば久しくロクに顔を会わせてなかったような気もする。


「ま、いいわ。」


 考えれば渡す方法は色々あるだろうが、そこまで急ぐ必要も無いだろう、と麗華は考えることにした。

 MOをカバンにしまい、麗華は翌日の授業の予習を始めることにした。



「え~と……」


 数時間とはいえ睡眠をとった為、だいぶ回復した謙治。まだ怠さは残るものの、普通に生活するには問題ない程度、と自己判断した。

 自室のPCを立ち上げて、キーボードに手をかけたところでふと気付く。


「あ……」


 データのほとんどを研究所に置きっぱなしであることに気付いた。

 寝台で半分寝ているところを起こされて慌てて研究所を出てきたため、持って帰ってくるのを忘れてきたのだ。


「う~ん、やっぱり研究所にサーバを構築し、うちからもデータを……」


 と言ってから、一度研究所のコンピュータがハッキングを受けたことを思いだした。

 あれ以来、ブレイカーマシン絡みのデータは基本的にスタンドアロン(つまりは独立した)のマシンに入れることにしている。

 そういう風に主張したのはまさに自分なのだが、やっぱり利便性を考えると…… というところだろう。


「仕方がないですね。」


 今日のこともあってさっさと寝るのかと思えば、机の引き出しから手のひらに乗る程度の箱と様々な電子部品を取り出す。


「さて、と……」


 左腕にはまっているブレスレットを外し、慣れた手つきで分解を始める。

 研究所から半ば無断で持ち出した設計図と見比べながら、別に置いてあった手書きの図面にスラスラ修正を加えていく。


「うん、僕の思ったとおりだ。

 これならアレに作り替えても性能に問題はない、はず…… と。」


 本人にしか分からない図面の通りに箱に小さな部品を組み込んでいく。

 こうしてこの日も睡眠不足になったりする。



「……また寝不足のように見受けられますが?」


 小鳥遊の困ったような口調にハハハ、とかわいた笑いの謙治。


「まぁ、AIの調整だけでなく、色々やりたいことが山積みで……」


 小鳥遊は心理学者として、一応は医者として言いたいことはあるのだが……


(気持ちは分かるのですよね。いやいやいやいや……)


「とりあえず今日はこの『ロードコマンダー』の実験をしようかと……」


「ほぉ?」


 ここにいたって初めて小鳥遊は謙治がブレスレットをしていないことに気付いた。ブレスレットにはめ込まれている精神増幅結晶ドリームティアはその「ロードコマンダー」の中央だ。


「ブレスレットの機能を継承・強化してみました。こちらにもメモリを搭載して、リアライザーの補助も出来るように作ってはみたのですが……」


「どれどれ……」


 謙治からロードコマンダーを受け取って、色々チェックする。近くの測定機器を作動させて、ロードコマンダーの動作を確かめる。


「……ん?」


 あることに気付いて小鳥遊は声をあげるが、直後何か企むように小さく口元を歪めた。


「謙治君。君の精神疲労は慢性的に高まっているのは前にも言ったと思いましたが。」


「ええ……」


「今見ましたら、ちょっと手直しがする必要がありましてね……」


 ロードコマンダーに何かしらのケーブルを繋ぎ始める小鳥遊。


「これを指摘して自分で修正させるのも簡単ですが、どうも私の領分に入っているようなので、謙治君だとだいぶ手間取ると思います。」


「はぁ……」


「それで前にも話した提案です。少し……」



 石段は長かった。


 貰った住所を頼りに、と言いたいが、この周辺ではそんなお寺は一つしかないのですぐ分かった。

 すぐ分かったはいいが、この石段を登ることを考えるとやる気がみるみる失せていく。


「はぁ……」


 溜息と共に謙治は一歩足を踏み出した。

 仮にこの石段を登ったとしても、その先には更に疲れることが待っているのだ。

 いわゆる「秀才君」にありがちなタイプで、謙治は「疲れること」が苦手というか嫌いであった。


神楽崎かぐらざきさんが来ているそうですし……)


 ある意味些細な、それでいて結構な心の支えを頼りに一段一段昇っていくと、少しずつ上の喧噪が聞こえてくる。

 コン、コン、と細い木同士を打ち合わす音。


(そういえば神楽崎さん、槍の練習してる、って言ってたなぁ……)


 単調な石段を昇っているため、ついつい色々考えてしまう。

 カキン! といきなり甲高い音が響いた。甲高くはあったかが、おそらくは木同士を鋭く打ち付けたのだろう、と謙治は判断した。

 もう数段で「上」が見えてくる。

 萎えてきた足にもう一踏ん張りさせて、残り僅かの石段を踏みしめる。

 と、謙治に「上」について最初に見えたのは慌てた様子でこちらに走ってくる美咲の姿だった。

 何か叫びながら走ってくるが、良く聞こえない。耳をすます。バクバク言う自分の心臓の音に重なって美咲の声と、何かが風を切る音が聞こえた。


(風切り音?)


 疑問符を浮かべながら、美咲に意識を集中すると、少女の叫んでいる言葉が分かった。


「謙治くん、危ない!」


(危ない…… ああ、なるほど。)


 疲れのせいでちょっとばかりハイになっていたのかもしれない。やけに冷静に状況を判断していた。


(今の僕の疲労度他を総合的に考えたら……)


 風切り音の聞こえ方から、大体何が「危ない」のか想像できた。


(あの棒は…… 避けられませんね。)


 練習中にすっぽ抜けて飛んできた棒が謙治の頭を直撃したのはその直後であった。クリーンヒットしたせいで薄れゆく意識の中、「うわ、」と悲鳴らしく聞こえない美咲の声と、驚いたような、そして妙に切羽詰まったような麗華の声――いや、悲鳴が聞こえたような気がした。



「……という訳で、このバカはいつ目が覚めるの?」


「麗華ちゃ~ん……」


寝かされている謙治を視界にも入れず辛辣な言葉を放つ麗華。それを聞いて美咲は困ったような表情を浮かべる。


「おいおい、こんなモヤシで更にバカだったら目も当てられんな。」


「そんなこと――!」


 と、玄庵げんあんの言葉に過剰に反応して声を荒げてしまったことに気づき、麗華は口をつぐんだ。


「まぁ、そんなこたぁいいや。

 しかし隼人、お前さんもえらく顔が広くなったもんだなぁ。」


「ほっとけ。」


 最初から謙治に目もくれず、 黙々と腕立て伏せをしている――しかもその背には美咲と和美がちょこん、と座っている――隼人は、小柄とはいえ人二人乗せてる割にはまだまだ余裕がありそうだ。


「しかしつまらんなぁ。最近あの黒い奴来ないから隼人しかイビれないじゃねぇか。」


「おい。」


 文句を言いながらも腕の伸縮運動を繰り返す。


「しかも、黒いのか来たら一つずつ乗せようかと思ったけど、二つ乗っけても平気だったら意味ねぇなぁ。」


「ちょっと待てぇ!」


 両腕を真っ直ぐ伸ばす。背中に乗った「二つ」もいきなりのことでバランスを崩しそうになるが、片方の運動能力が尋常じゃないので、もう片方を支えてても落っこちるようなことはない。


「隼人くん重くない?」


「お兄ちゃん大丈夫?」


「別にそんなことはないが…… 二人ともそろそろ降りろ。」


 あ、うん、と美咲の和美が隼人の背から降りる。


「まぁ、冗談はともかく。」


「玄庵殿の冗談はいささか面白みに欠けますな。冗句たるもの、人に笑顔を振りまくものでありませんと。

 いや、拙僧のような堅苦しい者が申しても仕方ありませんな。」


 ほっほっほ、と柔らかな笑みを浮かべて湯飲みを傾ける。和尚の的外れな、それでいてある意味的確な言葉に毒気を抜かれてしまう隼人と玄庵。

 言葉に詰まった玄庵がゴホン、と咳払い。


「まぁ、それはともかく、ホントにあの黒いのはどうした?」


「俺が知るか。」


 隼人と美咲が玄庵の所に通いだして、それにバロンや麗華が加わったのはそんなに昔ではない。本心からでは無いが、不満を漏らしながらも隼人と肩を並べて毎日「ハードな」スケジュールをこなしていたバロンが姿を見せていない。

 知るか、と素っ気なく言ってみたものの、隼人は何となく嫌な予感にとらわれていた。

 前に――確か美咲の両親の墓前に手を合わせに行ったときだ――会ったバロンの言葉。


『今回は俺が関与していないとはいえ、俺“たち”の所業だ。すまない。』


 前々から分かっていたとはいえ、バロンは夢魔側の人間であり、それにも関わらず夢魔を倒したこともある。そしてバロンはその夢魔の軍勢の中では異端だったのではないだろうか? バロンが駆るシャドウブレイカー。あれは夢魔などではなく、おそらくブレイカーマシンと同質、いや同じ物なのだろう。謙治や小鳥遊の分析が無くとも、それは分かる。

 もしだ、もしバロンがそのシャドウブレイカーに乗っていることを理由に独自行動をとっていることを許されているとしたら、多少の逸脱行為を見逃してもらえているとしたら……


「ま、あいつなら大丈夫だろう。」


「うん。そう、だよね……」


 隼人の表情の変化を読んだのか、それとも美咲も同じ事を考えていたのか、ちょっと顔を伏せ気味にして少女が呟く。


「お兄ちゃん? 美咲お姉ちゃん?」


 そんな二人を心配そうに見る妹に、隼人はいつものように素っ気なく答える。


「あいつの家はでっかい城でな。来てない、ってことはそのでっかい城の掃除でもしてるんだろう。」


「ふ~ん……」


 半信半疑の和美。だが追及の手はそこで止まった。


「でもお城かぁ。バロンさん、そういうの似合いそうだもんね。」


「…………」


「…………」


 美咲も隼人も諸処の事情でバロンの居城に行ったことがあるのだが、そのことは和美に話していない。ここのところ、ただでさえギリギリの戦いが続いていて、見守るだけの和美の心中は穏やかじゃないだろう。最近はなし崩し的に「仲良く」はなっているが、「敵」であったときの事をわざわざ話すつもりはない。


(でもやっぱりあいつ…… ヤバいことになってるんじゃないだろうか。)


 顔を突き合わせれば気に入らないし、事あるごとに衝突している。でもいなけりゃいないで気になるし……


(って、何考えてるんだ、俺は。)


 その先はあんまり考えちゃいけなそうな気がして、慌てて思考を止める。と、


「よぉ、なんて顔してるんだ、ハヤト。」


 どうやら心配する必要無かったようだ。


「あ、バロンさん。今日はどうしたんですか?」


妹がバロンに笑顔を向けるのが何故か腹立たしい。


(なんかそれはそれで屈辱だな。)


 わけの分からない苦悩を感じながら、黒衣の青年が歩いてくるのを睨み付ける。


「なに、ちょっと『城の掃除』に手間取ってな。」


 和美に向かって小さなウィンク。頬を赤らめて顔を伏せてしまう和美。これが美咲相手なら「目にゴミが入ったの?」と流されそうなので、彼女相手にはやったことがない。


(悪いな、心配かけたようだな。)


「!」


 横を通り際のバロンの呟き声が隼人の耳を叩く。


(状況は良くもないが、悲観するほどでもない。分かってると思うが……)


 その先は容易に想像が出来たので、ちょっと顔を背け、美咲の死角になるところで小さく「ああ」と口だけを動かした。


「遅れてすまなかったな。今日は何をするんだ?」


 さっきと違った陽気な口調でバロンは玄庵に言った。



 どこから用意したのか分からないが、古タイヤに荒縄をつけ、それを引っ張って走る男二人。それぞれのタイヤにはさっきの「二つ」を分けて乗せてある。どちらにどっちが乗るか、というのに(特に隼人から)一悶着があったが、実は大差ないことに気付いてどうにか収まったりする。

 そんな様子をずっと窓越しに見ていた麗華。今日はやる気が起きないのか、謙治が運び込まれてからずっと表を眺めている。

 と、本人はそういうフリをしてるつもりだが、偶然にしては多すぎるほど未だ寝ている謙治の方に視線が向いている。


「なかなか目を覚ましませんな。」


 不意に背後から言われて、驚きで飛び上がりそうになるのを必死で堪える。


「そうですわね。」


 つとめて平静にして振り返る。


「しかし、いきなり後ろから声をかけるなんて悪趣味じゃございません?」


 ややトゲ混じりに言うと言われた和尚はホッホッホ、と笑った。


「いやいや、愚僧年甲斐もなく悪ふざけが過ぎましたな。」


 と、和尚は麗華の隣に正座し、まだ眠っている謙治に目を向ける。棒が見事に命中した額には濡れタオルが置かれている。


「どうやら眠っているようですな。どうやら疲れが溜まっていたみたいですね。」


「…………」


「皆まで言った方がよろしいですか?」


「結構よ。

 ……分かってるわ。」


 麗華は不機嫌そうにそっぽを向く。謙治を気絶させた棒は麗華が槍代わりに使っていた物だった。謙治が来たのに気付いた美咲がよそ見をした隙に棒を振り下ろしたのだが、達人の美咲がその程度でどうにかなるわけがない。が、美咲もよそ見しながら手加減できなかったようで、振り下ろされた棒を思い切り払ってしまった。

 初めて数日の麗華に美咲のちょっと本気入った一撃に耐えられるわけもなく、手からすっぽ抜けた棒は遥か空へと飲み込まれて行ったのであった。

 麗華のせいであるとも言えるし、美咲のせいとも言える。謙治が悪いのかもしれないし、究極的には運が悪かったのだろう。

 色々考えるものの、責任の一端が自分にある以上、放っておくのはやはり気が咎める。

 ……ということにしておきたい。


「まぁ、これは拙僧が口出しすべきことではないのは十二分に承知しておりますが、」


 と、前置きしてから持っていたお茶をすする。無駄に時間をかけてタイミングをずらすのはこの和尚の手だ。隼人を見ているので、その辺はよく分かっている。

 少なくとも隼人みたいな醜態はさらすまい、と和尚の言葉を待つ。

 半分ほどお茶を空けたところで、コトリと湯飲みを置く。


「そういえばですね、」


「…………」


 思わず睨み付けた麗華に、和尚はまた楽しそうに笑う。


「いやいや、年はとりたくないものですな。最近物忘れが出てきまして……」


 そんなわけないでしょ、と言いたくなるのを押さえて、自分も湯飲みに口をつける。

 今回はどうやら麗華の優勢勝ちらしく、和尚は諭すような口調で語り始める。


「自分を変えぬ事も重要ですが、あるべき姿になるのも必要な事です。」


「あるべき姿?」


「おや、向こうが終わったようですな。」


 絶妙のタイミングで会話を切り替えた和尚に、内心敗北感を感じながら麗華は視線を外に向ける。

 いつものように、というべきか、隼人とバロンは無駄に競い合って、これまた無駄に疲労困憊して倒れている。そしてこれまた見慣れた光景で、二人の少女が二人を介抱していた。


「いや、しかし大神さんも幸せでございますな。」


「幸せ?」


「ええ。

 昔の大神さんは孤独でございました。強くなる理由も分からなければ厳しい鍛錬も意味がありません。

 ですが今は良き友、良きライバルに恵まれ、そしてどうやら良き『理由』にも気づき始めたようで。」


「そうね……」


 冷めたわね、と思いながら便利な返事も思いつかず、湯飲みに口をつけることで会話の間合いを開ける。


「ところで神楽崎さんにとっての『理由』は見つかりましたか?」


「!」


 いきなりの不意打ちに口に含んだお茶を吹き出すのだけは免れたが、変なところに入って、思わずむせてしまう。


「おや、どうかなされましたか?」


 いけしゃあしゃあと言ってのける和尚。驚きとむせたのので激しくなった鼓動を必死で静めると、麗華は年長者への礼儀も忘れ、突き刺さりそうなほどの鋭い視線を向ける。

 それでも和尚は平然としたものだ。


「それがあなたの『答え』というところですな。

 ……良いことです。」


 全てを見通した口調で語る和尚に、麗華は返す言葉を見つけられなかった。

 それ以上の追求もなく――いや、その気も無いのだろうが――、再び境内で繰り広げられている微笑ましい光景に目を向ける。

 復活した男二人が、どういう経緯かいつものようにいがみ合いからの殴り合いになりそうになり、美咲が「実力」で二人を止めようとする。そしてそれをオドオドと和美が、ニヤニヤと玄庵が眺めている。


「平和ね……」


 そう呟きながらも「平和」に眠り続けている謙治をどうやって叩き起こそうか考えている麗華であった。



 結局、うやむやの内に今日の「鍛錬」も終わり、麗華は一人車中の人になっていた。

 忘れ物があるから、という謙治と、美咲&大神兄妹は歩いて研究所に戻って行ったからだ。バロンはさっさと姿を消していた。


「……ふぅ。」


 今日はそんなに動いたわけじゃないが、なんか疲れた気がする。


(理由、かぁ……)


 和尚の言ったことがどこか奥底に引っかかってる。

 戦いに身を投じたのは自分を犠牲にしても必死に戦う美咲が見ていられなかったから。戦い続けているのは一度関わったことを途中で投げ出せない、という自分のポリシー故。

 ……本当だろうか?

 ふと、今まで考えてなかった疑問がいきなり沸き上がってきた。

 戦う理由が分からなくなった、というわけじゃない。

 ただ今までの理由と、今の理由が違っているような気がするのだ。いや、そうではない。変わってない、でも違うのだ。


(……訳分からないわ。)


 小さく溜息。自分でも何を考えているのが分からなくなってきた。


(でも…… やっぱりそうなのかしら?)


 誰かの顔が脳裏に浮かびそうになって、ふと別なことを思いだした。


「あ……」


 ポツリと呟いてから、その秀麗な顔が年相応の少女の困惑の表情となった。自分の失態にあらぬ方向に視線を背けながら、照れ隠しのように頭をかく。


「また渡すの忘れたじゃない……」


 自分のわきに置かれた通学カバンを睨み付け、そしてそこにメガネをかけた人畜無害そうな顔が見えたような気がして麗華は更に目を鋭く細めた。

 ハンドルを握っていた運転手は、後部座席で繰り広げられている少女の百面相に、小さく気づかれないように、そしてとても嬉しそうに笑みを浮かべていた。



 街を歩いていた人たちは、不意に巨大な影が落ちたことに気づいた。飛行機が通るような所でもないし、たとえそうだとしてもそんな低く飛ぶはずもない。

 気になった何人かが空を見上げる。そこには翼竜を思わせる怪鳥が飛んでいた。

 あれはなんだ? という声に引かれて、まだ怪鳥に気づいていない人々も空を見上げる。

 晴れ渡った空を悠々と飛ぶ怪鳥。

 そんな非現実的な光景。

 TVで謎の怪物とロボットが戦っているのを見たことある人もいるが、実際に見てもその異常さに現実味が感じられない。

 しかし厳しい現実はすぐに訪れる。

 怪鳥が口を開くと、そこから火球が吐き出される。火球はビルに当たると破片と共に派手に炎をまき散らした。炎は周囲の建物に燃え移りだした。

 悲鳴と怒号が飛び交い、我先に逃げ出す。他人を押しのけ、あちこちで車の事故が、逃げ出した人の衝突が、そして火事が怪我人を増やしていく。

 ビルの瓦礫や落下した天井が地下からの出口を塞ぎ、闇の中に沢山の人を閉じ込める。迫りくる炎が脱出口を奪い、ビルの中にも多くの人が逃げ場を失っていた。

 すぐさま救急車や消防車が救助に駆けつけるだろう。現場の混乱をおさえる為にパトカーも来るだろう。

 でも来たところで彼らに何ができるだろうか? 人を助けることは出来るかもしれない。地震などの大規模災害に対するマニュアルは存在するかも知れないが――ただ、この地域は比較的地震が少ないのでどこまで存在するかは怪しいのだが――空を我が物顔で飛ぶ怪鳥と戦う術は持ち合わせていない。

 そして勇敢な彼らの活躍は初っぱなから頓挫することになる。

 消火にかかろうとしたはしご車がいきなり怪鳥の火球に吹き飛ばされたのだ。炎上する消防車に逃げ出す消防士や救急隊員。

 このような状況では救助は不可能であった。そして再び火球を放とうと怪鳥が口を開いた。



「フルブラストっ!!」


 大量の火線が怪鳥――夢魔むまの横っ面を直撃した。その眼前を怪鳥夢魔よりも二回り近く小さい深紅の鳥型戦闘機が駆け抜けていく。

 夢魔がその戦闘機――フェニックスブレイカーを追おうと頭を巡らすと、その背中に二条の光線が突き刺さった。

 グレートフレイムカイザーへの合体と共に、カイザージェットにバスタータンクが搭載されることになり、その形態をドラゴンフォートレスと呼称することになった。そのドラゴンフォートレスが夢魔に集中砲火を浴びせる。

 上で二機が夢魔の相手をしている間にフラッシュブレイカーとウルフブレイカーは人々の救助にあたっていた。

 とはいえ、そういう装備も経験もない二人には崩れそうなビルを支えるとか、窓から助けを求める人に手を差し伸べるくらいしか出来ない。

 人がいる建物の炎を消すのにブリザード・ストームを使うのは危険だし、兎にも角にも救助はままならない。かといって、夢魔と戦闘しようにも射撃戦を主体とした高速飛行型の相手に対してはスターブレイカーもウィングブレイカーもやや決め手に欠ける。

 そういう意味ではいてもいなくても大差無さそうなのだが、サンダーブレイカーは前回の戦闘による損傷が激しく、出動できなかった。



「こんなときの為にロードチームを設計したのですが……」


 苦い顔の謙治。研究所の地下でサンダーブレイカーの修理のかたわら、夢魔の分析を行っている。

 ピー、と何かが終了した音が響く。


「……と、これで一応バスタータンクとしては運用できますか。」


 変形機構や合体システムを後回しに修理をしたのだが、これ以上修理を続けたところで今回の戦闘中に終わるものでもない。夢魔の能力を考えればナイトブレイカーで戦う意味もないし、フレイムカイザーに合体するくらいなら(グレート)フレイムカイザーの方が性能が高い。そう考えれば無理に完全修理をする理由がない。


「あのデータさえあればなぁ……」


「あのデータ、とは?」


 立ち上がった謙治に調整を済ませたロードコマンダーを渡した小鳥遊。ちょっと引っかかることがあったのか、聞いてみる。


「ええ、こういう場合を想定して、救助活動もできるAIマシンの設計をしていたのですが……」


「ああ、あれですか。」


 そう言われて確かにここのところずっと新しいマシンの開発に追われていた。小鳥遊の見たところ、ほとんど出来ていたように見えていたのだが……


『そんな便利なものがあるなら、さっさと出しなさい!』


 いきなり耳元に麗華の声が聞こえてきて、思わず身をすくめる。それでずっとヘッドセットをつけっぱなしであることを思いだした。


「それはそうなんですけど……」


 麗華の勢いについつい言葉が尻すぼみになってしまう。


「良君に頼んだデータがあったんですよね。彼ならもうできているとは思うのですが、それがないと……」


『りょ、良……?』


 不意に麗華の口調が弱くなる。もし面と向かって話していたら視線をそらして冷や汗をかいている姿が見られたかもしれない。


『そ、それってもしかしてMOとかそういう物に入ってたり、する?』


「そうですねぇ。容量的に言うとそれくらいだと思いますが。」


 麗華の動揺の理由どころか、それ自体気づいた様子もなく淡々と言葉を返す。


「そう言えば、前に……」


『小鳥遊さんは黙ってて下さい!』


「はぁ……」


『……ともかく、車の中から私の通学カバンを持ってきなさい。』


「は?」


『時間がないから早く!』


 事実、未だ戦闘中だし、美咲と隼人の救助活動もうまくいってない。更に夢魔の吐いた火球が時折街を襲っている。

 弾かれたように表に飛び出すと、すでに連絡を受けていたのか、麗華の家の運転手がカバンを手に待っていた。

 カバンを受け取り慌てて階段を降りて地下に戻ったときにはすっかり息を切らせていた。ヘッドセットをつけなおして、深呼吸してから口を開く。


「持ってきましたが……?」


『ああもう! 一から十まで言わなきゃ分からないの!

 だから、私が良からデータを受け取ってたのを、あんたに渡し忘れてたのよ。

 ……悪い?』


「たぶんそれなりには……」


『……そうよね。悪かったわ。』


 恐る恐る答えた謙治に、麗華は案外素直に謝った。


『とにかく! データはカバンの中のMOに入ってるわ。こちらの状況は決して良くないから急いで。』


「はい。

 あ、でも……」


『何よ!』


「いえ、その…… 神楽崎さんのカバンを勝手に開けて良いものかと……」


 謙治の言葉に通信機の向こうから『あ、』と困ったような呟きが聞こえた。


『……緊急事態だから許すわ。

 ただし、余計な詮索は……』


「は、はい。分かっています。」


 聞こえてきた声に凄みに直立不動で応える謙治。躊躇いが混じりながらも、自分の使っている物よりも仕立ても素材も良さそうなカバンに手をかける。


(やましい気持ちはありません。やましい気持ちは…… ないはずです。)


 カバンを開けて中を探る。持ち主の性格を反映してかちゃんと整理されている。

 それこそ会えたらすぐに渡せるように、と取り出しやすいところにそのMOはあった。少なくとも麗華がコンピュータを始めた、という話も聞かないので、これに間違いないだろう。

 見つけたMOをコンピュータに通し、すぐさまデータを取りだし始める。



「……そういえば、和美ちゃんに見てもらえば良かったのよね。」


 夢魔への攻撃を繰り返しながら一人呟く。


「馬鹿みたい。もう……」



「よし、これで完璧だ。」


 コンピュータに繋いだロードコマンダーからケーブルを抜くと、表に飛び出す。

 ロードコマンダーを開くと「蓋」の裏側にディスプレイ。内部に幾つかのボタンと黄色のドリームティアが埋め込まれている。


「行きますか……」


 1から6までの数字が書かれたボタンを全て押すと、ロードコマンダーを上に掲げる。


「ロードチーム、エマージェンシー!」



「隼人くん、火が消えないよ!」


「俺に言われても……

 くそ、ブリザード・ストーム!」


 夢魔との戦いは苦戦を強いられていた。

 相手が積極的に戦ってこないので麗華とカイザーによる攻撃もなかなか効果をあげられない。

 しかも二機の隙をついて放たれる火球が地上をたびたび襲い、ウルフブレイカーがそれの対処をしている。フラッシュブレイカーが一機で救助活動をしているが、これも燃えさかる炎の勢いが強く、なかなかはかどらない。更にいえば地下の人々にはまだ何も出来ていない。


「……? あれ、なんか来る!」


 美咲の耳が炎の轟音に混じって、何かしらのサイレンを捉えた。

 音源を振り返ると、つんざくばかりにサイレンを鳴らした消防車と救急車の赤い回転灯が見えた。その後ろにドリルタンクとパワーショベルが続き道路を疾走。その四台の上に戦闘機と水空両用潜水艇が飛行していた。

 そしてその後ろには……


「二人とも一度離れて!」


 聞き慣れた声にフェニックスブレイカーとドラゴンフォートレスが夢魔から距離を開ける。バスタータンクの主砲から続けざまに発射された大量の対空砲弾が夢魔の周囲に炸裂し、夢魔が閃光に包まれた。


「遅いわよ! ……と、フルブラストッ!」


〈真打ち登場としてはいかがなものでしょうか?

 ……はぁぁっ! ドラゴンブラストッ!〉


 二機の一斉射撃が夢魔に突き刺さった。


「遅くなってすみません。色々ありまして……」


「…………」


 その「色々」に関わった麗華としてはちょっと言葉が出ない。


「その分、しっかり働きますよ。

 ロードチーム、フォームアップ! フェイズ1!」


 ――pipipopipopipo


 謙治のかけ声に電子音で応えると六機のマシンが次々と人型に変形する。


「ロードレスキュー、ロードファイヤー、ロードドリル、ロードショベル、レスキュープログラムドライブ!

 ロードアタッカー、サポート! ロードダイバー、アタック!」


 次々に指示を飛ばす。


 ――pipipopipipipipi


 ロードファイヤーは背中のハシゴと両手に持った武器から放水。ロードレスキューは負傷者の救助を。ロードショベルが巨大な瓦礫を力任せに排除し、ロードドリルはビークル形態に戻って地中を進み人々が脱出できるようなトンネルを作る。

 ロードアタッカーは他の機体の翼となり、また単機で高い位置の人々を救助。ロードダイバーは手にした高圧縮ウォーターガンで夢魔を、そして夢魔の放つ火球を撃つ。

 各機が一つの機械のようにお互いを援護するように黙々と作業をこなしていく。

 ブレイカーマシンよりも小振りな六機とバスタータンクの参入が一気に流れを変えた。


「スターライト・イルミネーション!」


「グレート・コンビネーション!」


 美咲がスターローダーとコメットフライヤーを召喚し、麗華がドラゴンフォートレスと合体隊形をとる。


「流星合体、スターブレイカー!」


「竜・神・降・臨! グレートフレイムカイザー!」


 バスタータンクとウルフブレイカーが夢魔を攻撃している間に合体した二機が空中で夢魔を前後に挟むように停止した。


「とっとと決めちゃうわよ、美咲?」


「うん。」


 二機がそれぞれの武器を構える。

 と、不意に夢魔の姿が霞むように消えた。

 直後、高速移動をかけた為の衝撃波が二機の間を通り抜けていく。


「え?」


「な!」


 驚くのも刹那の事で、スターブレイカーが空の彼方に視線を向ける。


「来るよ!」


 反射的に振るった左のコズミックブレードが叩かれたようにはねた。一瞬遅れて衝撃波が二機の装甲に細かい傷をつける。


「超高速度で一撃離脱をしている模様です。たちばなさんや大神君なら捉えることが出来るかも知れませんが、その為には機体の運動性やパワーが不足しています。」


 ウルフブレイカーは空を飛べない。スターブレイカーでは速度が足りない。ウィングブレイカーでは力が足りない、というところなのだろう。


「速度は高いのですが、小回りが利かないようですので……」


「つまりはこういうことかしら?

 チェンジコンビネーション、カイザーフォートレス!」


 Gフレイムカイザーが赤光に包まれると、ドラゴンフォートレスにフェニックスブレイカーが合体したカイザーフォートレスに組み変わっていた。

 美咲のスターブレイカーが夢魔の体当たりをかわしたと同時に夢魔を追いかけるようにエンジンを全開にする。

 炎の尾を引きながら夢魔を追跡するカイザーフォートレス。こうなるとヘリコプター程度の飛行性能しかないスターブレイカーや他の二機にはもう手が出せない世界である。

 カイザーフォートレスの方が飛行能力に関しては上のようで、付かず離れずに夢魔の後ろをとり続けられる。背後から攻撃をかけ何発かが命中するが、それくらいでは夢魔の体勢を崩すこともできない。


「ちょっと謙治! カイザーフォートレスって大技何も無いの?!」


〈……そのようでございますな。〉


「そう言われましても……」


 カイザージェット及びブースタータンク共に謙治の設計ではあるが、最初は想定していなかったドラゴン形態への変形とかフレイムカイザーへの合体とか、設計者の理解を超えたメカニズムになっていた。ブースタータンクはGフレイムカイザーへの合体を意図して造られているが、それでもいわゆる「必殺技」に関する部分は全くの未知数である。

 そして飛行性能が勝っているとはいえ、再合体して必殺技を叩き込むほどの余裕も無い。そんなことをしたら距離を離されて反撃の機会を与えることになってしまう。


「神楽崎さん、そのまま夢魔をこちらに誘導願いますか?」


「……分かったわ。」


 夢魔の片側を集中的に狙って、麗華は夢魔を大きく旋回させることにした。



「ボク達に何か出来る?」


「ロードチームを下げるので、出来ましたら救急車両の進路確保などを……」


「……なんか今日は雑用ばかりだな。」


「まぁ、そう言わずに…… お願いしますね。」


 隼人の言葉に苦笑を返しながら謙治はコクピットの正面に据え付けられたロードコマンダーのキーを叩く。


 ――pipo?


 送られたコマンドにロードチームの動きが止まる。更に幾つかキーを叩きディスプレイのある蓋の部分を反転させて閉じ、高らかに叫ぶ。


「ロードチーム、フォームアップ! フェイズ0!」


 走り出したバスタータンクに追従するように六機のマシンがビークル形態でフォーメーションを組む。


「トランスフォーメーション、フェイズ2!」


 バスタータンクを囲むように並び各機が変形を始める。


「ユナイト、サンダーストライカーッ!!」



 バスタータンクを挟むように左右にロードファイヤーとロードショベル。ロードアタッカーが両翼を分離させると、先程の二機の外側について主翼を形成。中央部が垂直尾翼となる。

 ロードレスキューが垂直尾翼の前に収まり、バスタータンクの前部にロードダイバー、そしてその更に前にロードドリルが合体して機首となる。

 こうして完成した重攻撃機はそのパワーに物を言わせて一気に舞い上がった。



「レーダーに反応?」


 街への被害を恐れて高空で夢魔を追うカイザーフォートレス。遥か下から巨大な飛行物体が迫ってくるのが視えた。


〈これは……〉


「……まったく、何て物を。」


 苦笑しながらも、急上昇をかけるサンダーストライカーの雄姿に顔がほころぶのを感じた。


「神楽崎さん、一瞬でいいので相手の動きを止めて下さい!」


「分かったわ。行くわよ、カイザー!」


〈かしこまりました!〉


「カイザーバーストッ!!」


 カイザーフォートレスの全火器が夢魔の前方に展開される。目の前に広がった爆炎に夢魔の速度が僅かだが落ちる。


「それと…… 先に謝っておきます。

 すみません。」


「何が?」


 謙治は応えずにブースターを全開にした。姿勢制御用のスラスターも後ろに向け、爆発的な加速で夢魔に肉薄する。


「決めてやる!」


 サンダーストライカーの機首のドリルが回転し、回転が増すにつれドリルの先端に稲妻がまとわりついてきた。

 翼を鋭角にたたみ、ドリルとは反対方向に機体を回転。機体のディティールが分からなくなるほどの速度になる頃には、サンダーストライカーは稲妻を纏った一陣の竜巻となっていた。


「ローリング・サンダー・クラッシュ!!」


 夢魔に追いついた雷の竜巻は途中にある「もの」を粉砕しながら一気に突き抜ける。


「……何よ、私の技じゃない。」


 不満そうに麗華が呟いた。



「へぇ、なんかかわいいね。」


「あ、動いてる動いてる♪」


 美咲と和美が覗き込んだディスプレイの中でロードチームが荷物運びの作業を行っていた。最初は各機がバラバラに運んでいたのを、しばらくすると連携して効率よく運ぶようになっていく。


「自立型AIを搭載して、経験を積ませることにより行動の最適化を行っていきます。」


「ふ~ん。」


 なんて答えるが、美咲には謙治の行ったことの半分くらいしか分かってないのだろう。


「お喋りできないのかな?」


「なんかピポピポ聞こえたけどな。」


 期待混じりに聞く和美に、腕を組んだ隼人が首を傾げる。


「まだ英語によるコマンドを認識できる程度ですから、もう少しAIが成長しないと言語による会話は難しいかと。」


「おっさん、頼むから分かりやすい言葉で言ってくれ。」


 ……そんな五人の様子を少し離れていたところから眺めていた麗華。冷めかけた紅茶に口をつけて小さく溜息。


「今回はなんか貧乏くじ引いた気分ね。」


 タイミングが悪いことが続き、無駄に自分のカバンの中を見られ(しかも男にだ)、戦闘でもいいところを持ってかれたような気がする。しかも全部同じ人間が原因なので余計癪に触る。


「……独り言増えたわね。」


 再びもれた溜息が、紅茶の表面にさざなみを立てた。




謙治「重力を操る夢魔。

 超重力の牙が僕たちを大地に縛り付けます。

 戦闘に参加したロードチームも身動き一つ取れずに潰されそうです。

 せっかくこの世に生まれてきたのに、むざむざ壊されてたまるか!

 行くぞ、ロードチーム、フォームアップ!


 夢の勇者ナイトブレイカー第二十七話

『重力の王』


 夢の力が明日への原動力です。」

時代を感じさせる表現。MO。

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