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夢の勇者ナイトブレイカー  作者: 財油 雷矢


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第十二話 竜の伝説

(これは夢ね……)


 夢の中で麗華れいかはさも当然のことを認識していた。自分の姿を見下ろす。中世の甲冑に盾、腰には剣まで下げている。


(俗にいう幻想世界のようね。あら……?)


 麗華は何となくこの夢を子供の頃から何度も見たことがあるような気がした。


(確かこの続きは……)


 麗華の身体は誰かに命令されたわけでもなく、それがさも自然な行動のように暗い洞窟の中を進んでいく。奥からシューシューと空気の吹き出すような音が聞こえてくる。気温が少しずつ上がっていくのが感じられる。


(そしてこの奥には……)


 硫黄のような臭いがきつくなる。巨大な生物の気配が鎧越しに肌に直接感じられる。そしてそれが見えてきた。

 遥かな高みに見える鋭い二つの眼光が麗華を見下ろしている。その下いある口からは炎がチラチラ見え隠れしている。深紅の巨大な爬虫類、神にもっとも近い生物、ドラゴンと人間には呼ばれているものがそこにいた。


(思い出した……)


 夢の中で幼い頃から何度もこの怪物と戦っていた。そしていつもこのドラゴンの炎の吐息で一瞬の内に焼き尽くされていた。

 不埒な侵入者に必殺の火炎を吐こうとドラゴンが口を開く。鉄をも溶かす灼熱の炎がまっすぐ麗華に伸びてきた。

 反射的に盾で身を庇おうとするが、それは無駄であることはすでに知っていた。いつもやっていた行動で、次の結果もよく知っていた。盾はわずかな時間も耐えることなく融解し、炎の舌は麗華を包み込む。

 そのはずだった。

 しかし、盾の内側で真紅の光が爆発すると、炎は見えない障壁に遮られ、しかもその炎は渦を巻きドラゴンの方へと舞い戻っていった。

炎に包まれ苦悶の声を上がる。その声を聞きながら麗華は真紅の光の元を捜す。


(ドリームティア……)


 そう、いつも左腕にあるクリスタルが光を放っていた。麗華のドリームティアは炎を操る。その力がドラゴンの持ちうる最強の攻撃を跳ね返したのだ。

竜は炎に身体を焼かれ苦しんでいる。今まで生きてきて初めての激痛に悶えていた。その苦痛の表情に麗華は左手を一振りする。するとドラゴンを苦しめている炎が消えた。


〈娘…… このようなことをして後悔しても知らぬぞ……〉


 炎の吐息が通用しないと解ると麗華を引き裂くかのように鋭い爪を振り上げる。しかし少女は恐れた様子も見せずに毅然とした態度を崩さない。


「自分の負けを悟った者に追い打ちをかけるほど暇じゃないのよ。それにあなたを倒しても私は楽しくないわ。」


〈…………〉


 麗華の言葉にドラゴンは振り上げた爪を下ろした。そして騎士が姫に忠誠を誓うかのように頭を下げた。不意に口調を改めると静かに語り始める。


〈貴方様のような方をお待ちしておりました。貴方様に絶対の忠誠を誓います。我は皇帝の名を持つ者。我が真の名は……〉



「なんでこんなことになったんだ……」


 隼人はやとはとある遊園地の前で腕を組んで人を待っていた。相手が相手だから遅れることは無いが、それでも慣れないシチュエーションのせいで待ち合わせの場所に一時間も早く来てしまった自分を何となく責めている。


「なんでこんなことになったんだ……」


 もう一度同じ言葉を呟く。

 こういうことになってしまった理由を隼人は回想していた。



「もうやだぁ~ やめようよぉ~」


 隼人は美咲みさきの泣き言を見えなかったように無視し、指先でコツコツと卓袱台ちゃぶだいを叩く。


「クスンクスン……」


 もうちょっとしたらホントに泣き出しそうな美咲の表情に、隼人は何となく罪悪感めいたものを感じる。大きくため息をつくと、困ったように首を振る。


「分かった……」


「え! ホント?」


「いや……」


 目を輝かしたと思ったら再び落胆の表情に戻る美咲に、こんなことでやる気が出るのか疑問に思いながら言葉を続ける。


「宿題は続けるが…… 今日は二十九日だな。もし今日中に終わらせられれば明日は一日中ゆっくり眠れるな。」


「うん……」


 ちなみに隼人は二十八日の夜からずっと寝ずに美咲の宿題を手伝っていた。麗華や謙治けんじもいるのだが、すでに眠りの世界の住人になっていた。


「すると夏休み最後の日は空くわけだ。」


「うん……」


 言ってるそばから美咲が船を漕ぎそうになっている。額をつついて目を覚まさせると説明を続ける。


「最後の日くらいは遊びたいよな? というわけでみんなで遊園地にでも行こう。

 ただし、今日中に終わったらだ。」


 遊園地という言葉に美咲が過剰ともいえるほどに反応する。身を乗り出して隼人に迫ってきた。


「ホント? ホントに遊園地?」


「あ、ああ……」


「よ~し、ボク頑張るよ!」


(単純な奴……)


 このとき、夢から醒めた麗華が片目だけ開けて二人のやりとりを見ていたことに美咲も隼人も気づいていなかった。



「はい。」


 手渡された紙切れと麗華を交互に見て隼人が理解できないような顔をする。


「なんだ、これは?」


「遊園地のチケット。二人分よ。」


「だからなんだ?」


 美咲の宿題が終わった後、力つきた少女を寝かせると、それぞれが家に戻った。徹夜した隼人も寝ようかと思ったところで不意の来客だった。その客、麗華は何も説明せずに隼人に二枚のチケットを渡す。


「残念ながら三十一日は小鳥遊たかなしさんに呼ばれているのよ。あ、謙治も一緒ね。

 約束するのはいいけど、他人の予定くらい確認しておくものよ。」


 そう言う麗華は全く残念そうではなく、むしろ何か楽しんでいる様子だった。嫌な予感めいたものが隼人の頭をよぎる。


「と、いうことは……

 もしかして俺とたちばなの二人だけか?」


「あら、そういうことになるわね。」


 焦り混じりの言葉に麗華はいかにもその時気づいたような口調で応える。もともと二枚のチケットを持ってきたのだから、それくらいは周知の事実のはずのだが、冷静さを失った隼人にそのことを気づくのは不可能だった。


「ちょ、ちょっと待て……」


「自分で言ったことには責任を持つことね。ま、男なんだから女の子のエスコートはしっかりするのよ。いいわね。

 あ、それとこれも渡しておくわ。ポケベルよ。緊急のときは連絡を入れますから。」


「お、おい、待て、神楽崎かぐらざき!」


 慌てる隼人を慇懃いんぎんに無視すると、優雅に懐中時計を取り出し、時間を見る振りをする。


「あら、こんな時間。忙しいのでこれで失礼するわ。じゃ、美咲のこと任せたわよ。」


「おい! 神楽崎!」


 隼人の叫びは麗華には届かず、空に吸い込まれていった。



「帰ろうかな……」


 本心からの言葉でないのだが、何となく隼人は弱気になっていた。もとより人付き合いのいい方ではなく、身近な異性も妹くらいしかいない。そんな隼人に女の子と二人きり、ほとんどデートのような状況に不安を抱くのは無理らしからぬことだ。


「はぁ……」


 何度目かのため息に混じって、小さな弾むような足音が聞こえてくる。顔を上げるまでもなくその正体は分かっている。


「隼人く~ん!」


 バスケット片手に、反対の手を大きく振りながら美咲がかけてくる。少女には珍しくスカート姿だった。おそらく麗華に言われて自分なりにおしゃれしてきたのだろう。隼人も野暮にならない程度には服を整えてきてある。


(これじゃホントにデートみたいだな。)


 内心の言葉を頭を振って打ち消す。飽くまでも遊園地に来たのは美咲をやる気にさせるためで他意は無い。そう考えてみても嬉しそうな美咲の笑みを見ているとそんな考えも霧散しそうになる。


「ま、いいか。」


「え? どうしたの隼人くん。」


「いや…… じゃ、行くか。」


「うん!」


 言うが早いか美咲は隼人の手を引っ張っていく。その手の小ささと暖かさに思わず照れそうになるが、できるだけポーカーフェイスを装って後をついていった。


 遊園地の中は夏休み最後の日だけあって、子供達でにぎわっていた。かといって乗り物の前に長蛇の列ができているほどでもない。


「ねぇ、ねぇ、どれから乗る?」


「好きにしろ。」


「もぉ~」


 ちょっと拗ねたように美咲が見上げてくる。


「いっつもそんなにツンツンしていると女の子に嫌われるよ。」


「俺は昔からこうだ。いきなりそんなこと言われてもな……」


 隼人のいつもの素っ気ない、そしてわずかに困ったような声におかしそうに美咲がクスクス笑い出す。


「何がおかしいんだ?」


 更に困惑したように美咲を見ているが、その純真な子供のような笑みに、気がつくと隼人は見入っていた。


「だって…… 前の隼人くんならそんなこと言わなかったよ。言われても『それがどうした』みたいにしてたと思うよ、きっと。」


「……かもな。」


 隼人が控えめに肯定の意を示すと、更にニコッと美咲が微笑んだ。直視したくなかったのか、隼人はなんとなく目をそらしてしまう。


「やっぱり変わったよ、隼人くん。でもボクはそっちの方が好きだな。」


 少女としては深い意味で言ったのでは無いのは解っているが、それでも思わずドキッとしてしまう。その表情を誤魔化すようにわざとらしい咳払いをする。


「あれ? 隼人くん、風邪?」


「いや…… なんでもない。それより橘、何に乗るんだ?」


「あ! あれがいい!」


 美咲が指さした先にはこの遊園地一番の目玉のジェットコースターがある。ちょうど人が途切れたところですぐに乗れそうだ。


「そうか……」


 美咲と一緒に、その方向に足を向け、不意に皮肉めいた笑みを浮かべる。


「身長制限に引っかからないといいな。」


「あぁ~ 隼人くん、ひどぉ~い。」


「悪い、悪い。」


 子供をあやすように美咲の頭に手を置くと、さほど嫌でもないのか少女は嬉しそうに目を細める。そして隼人の手をとると、ジェットコースターの方に走っていった。



「はぁ~」


 横に座っている麗華のため息に謙治が顔を上げた。謙治の前のディスプレイでは相変わらず墜落シーンが流れている。


「どうかしたのですか?」


「うん? あ、ちょっとね…… そう、気になる夢を見てね……」


 別の意味だったため息に慌てて理由を取り繕う。美咲達の様子を見たい、なんて言うのは自分らしくない、と考えてしまった。


「夢ですか…… そういうのは小鳥遊博士の専門ですね。相談してみたらどうですか?」


「そういえばそうよね…… あら、小鳥遊さんはどこ?」


 あたりを探すように麗華が振り返るとすぐ背後に小鳥遊が立っていた。どうやら会話に参加しようとして入るタイミングを待っていたらしい。


「……!」


 驚いて悲鳴を上げようとするが、はしたないと思ってかそれを喉の奥で無理矢理飲み込む。一瞬の沈黙の後、柳眉りゅうびを逆立てて小鳥遊の方を睨んだ。


「小鳥遊さん…… いらっしゃるのでしたらお早くお教え願いますか?」


 丁寧な言葉の中に棘が大量に混じっている。それに対し小鳥遊はハハハとかわいた笑いを浮かべるだけであった。


「すみません。驚かすつもりは無かったのですが…… で、さっきの話ですが、気になる夢とは……?」


「ああ、そうでしたわね。実は……」


 麗華は夢の中で会った竜、そしてその竜と戦って勝ったことを説明した。小鳥遊も謙治も興味深そうに聞いている。


「ふむ…… どうやら通常の夢とは違うようですね。しかもドリームティアの力を発揮したとは…… 何かの暗示なのでしょうか?

 ま、聞いたところでは危険な存在とも思えません。注意するに越したことはありませんが、もしかしたら我々の味方になるのかもしれません。」


 そこまで言ってから小鳥遊が不意に周りを見回し、不思議そうな顔をした。


「そういえば…… 美咲さんと隼人君はどうしたんですか? 今日は朝から一度も見てませんが……」


「あ、僕もずっとここにいましたけど、一度も来てませんでしたね。」


 その言葉に麗華は自分の策略で美咲と隼人が遊園地に行っていることを二人に話していないことを思い出した。


「言い忘れてたわ。あの二人ならね……」



「隼人く~ん。」


「おう。」


 …………。

 …………。


「隼人く~ん。」


「おう。」


 メリーゴーランドが一周する度に下で休んでいる隼人に手を振る美咲。疲れながらも律儀に手をあげる。


(元気だな……)


 少女の底なしの行動力に隼人はついていくのがやっとであった。それでも彼女の嬉しそうな表情がまぶしく見える。


(心底嬉しそうだな…… 連れてきてよかったか。)


 そんなふうに考えていると目の前のメリーゴーランドがゆっくりと停止する。美咲が飛び跳ねるように隼人の方にかけてきた。


「ねえねえ、次は何に乗る?」


 美咲の言葉に目眩めまいがしそうになる。いい加減、隼人も疲れがきていた。それでも表情には出さないのがプライドのなせる技なのだろうか。時間も頃合いなのでそのことを話題にして休みをとろうとする。


「そろそろ昼か。腹は減ってないか?」


「おなか減った? じゃ、どっか空いた場所ないかな…… あ、あそこがいいかな?」


 美咲がスタスタとベンチの方に歩いていく。隼人が後を追うと、少女は後生大事にかかえていたバスケットを開いていた。中身はギッシリ手作りのお弁当。色鮮やかで、作った者の料理の腕が容易に想像できる。


「ほぉ……」


「ほら、早起きして作ったんだよ。隼人くん、食べよ。」


「あ、ああ…… そうだな。」


「たっくさん食べてよね。腕によりをかけて作ったんだから。」


 とびっきりの笑顔で美咲が微笑んでくる。隼人の顔にもつられて笑みが浮かんだ。



「私たちも行けばよかったかしら?」


「おや麗華さん、どうしたんです?」


 小鳥遊の言葉に耳を貸さないようなそぶりで栄養価的には満足できるものの、味覚に対する刺激は語るに落ちた程度の食事をモソモソと口に運ぶ。


「きっと美咲のことだからお弁当でも作ってきて『はい、隼人くん』なんてやっているでしょうね。」


「神楽崎さん…… 実はあなたも遊びたかったんですか?」


 もしかして図星だったのかも知れない。自分の理性は認めていないが、感情が謙治の言葉をわずかながら肯定していた。


「かもね…… 少なくとも食べる物はまだマシになるんじゃないかしら?」


「それは言わないで下さい。」


 本日の料理人である小鳥遊が困ったような笑いを浮かべた。


「私だって少し後悔しているのですから。こんな事なら最初から出前でもとればよかったですねえ。」


「後悔先に立たず、と言いますから……」


 謙治の呟きを甲高い電子音が切り裂いた。夢幻界むげんかいに何かしらのエネルギーの乱れ、つまり夢魔むまの出現を表していた。三人の表情に緊張が走る。

 不味い食事から逃げるためなのか、すぐさま謙治と小鳥遊がコンソールに駆け寄った。二人の手がキーボードの上を滑るように動く。すぐさま夢魔の分析が始まる。


「……おかしい。センサーがうまく働かないようだ。原因はなんだ……?」


「前回の夢魔とパターンが似ています。」


「どういうこと、謙治?」


「本体でないのかも知れませんが、今見える範囲では敵のサイズは…… 花粉くらいの微粒子でしょうか。」


 麗華が呆れたように髪をかきあげる。


「まったく…… 向こうも色々やってくるわねえ。で、現実世界への影響は?」


「いえ…… それがまだ……」


 言いかけた言葉がわずかな振動に止められる。直後、全ての照明が消えた。地下の研究室が闇に包まれるが、自家発電機が備えてあるためすぐに電源が回復する。


「なんだ一体…… 謙治君、どこか外の映像を出せるかね?」


「ちょっと待って下さい……

 外のカメラの一つに侵入できました。三番に出します。」


 ディスプレイの一つにまるで暴動さながらの映像が映し出された。車を破壊する者、誰それ構わず殴りかかる者、血を流し倒れる者。商店街のガラスは割られ、車も至る所で建物を破壊して止まっていた。

 音無し、しかも画面越しで現実感にかけるが、見慣れた風景だったものが実在の出来事であることを示している。


「なんてこと……」


 あまりのことに言葉が続かない。すぐにその原因に思い当たる。安直なようだが、非日常的なことが起きれば理由は他に考えられない。


「夢魔……!」


「おそらくそうでしょう。麗華さん、謙治君、急いで出てくれ!」


 言われるまでもなく、二人が寝台に横たわる。ドリームティアを光にかざした。

「「ドリーム・ダイブ!」」



「ね、美味しかった?」


「ああ。そうだ橘、アイスでも食うか?」


 視界の隅にアイスクリームの屋台を見つけた隼人はお弁当を片付けている美咲にそれとなしに声をかける。打てば響くかのように美咲が目をキラキラ輝かせる。


「あ! ボクね、チョコがいいっ!」


「分かった、ちょっと待ってろ。」


 ズボンのポケットから財布を取り出しながらアイスクリーム屋に足を向ける。本人は気づいていなかったが、ポケットから何か小さい物が落ちた。


「?」


 美咲が落ちたことを教えようとするが、普段から早足気味の隼人はすぐに声の届かないところまで行っている。


「何だろう、これ……」


 そのプラスチック製の物を拾い上げる。それは前に麗華が隼人に渡したポケベルだった。予告もなしにそれが電子音をたて、その前面の液晶に文字が浮かんだ。


 N・I・G・H・T・M・A・R・E


 ナイトメア、つまり夢魔のことだ。英語は苦手であっても、何かの拍子に何度か聞かされたことがあって、すぐにその意味が理解できた。


「夢魔……!  行かなきゃ!」


 急いでベンチに戻ると腰掛けてドリームティアを構える。普段、麗華に言われ続けていることなんてすっかり忘れていた。


「ドリーム・ダイブ!」



「チョコレート一つと…… さて俺は何にするかな。」


 アイスクリーム屋でガラスケースの中のアイスを眺める隼人。そして自分と美咲がベンチで並んでアイスを食べている姿を想像して肩をすくめる。


(俺はいつからこんな風にになったんだ?)


 自分の記憶が正しければ、昔の隼人はどんなときも一匹狼を気取っていた。少なくとも女の子と一緒に歩き、それを楽しいと思うような人間ではなかったような気がする。


(橘のせい…… いや、おかげかな、俺が変わったのは。)


 回想を無理矢理遮って、再びガラスケースに向き直る。が、不意に殺気を感じ、後ろに跳ぶ。目の前をアイスクリームスクープが通り過ぎた。名前を挙げてもピンとこないかも知れないが、あのアイスクリームをすくうスプーンの大きいようなやつだ。迂闊に当たればアイスクリームのようにすくわれそうな勢いだ。


「なにぃ!」


 売り子の女性が血走ったような目でカウンターを乗り越えて来ようとする。本気で殴るわけもいかず、しばし考える。

 ふと思いついて、売り子を軽く突き飛ばすと屋台のシャッターを思い切り引き下ろした。横に出口があるのだが、半狂乱に見える売り子は判断能力を失っているのかガンガンとシャッターを叩くのみで隼人を追いかけることができない。

 殺気が張りつめてる。まるで周り全てが敵で自分を狙っているようだ。しかしその殺気の主はさっきまで楽しく遊んでいた一般市民なのである。自分の身を守ろうとし、それ以上の最優先事項があるのを思い出した。チケットを手渡したときの麗華の言葉が脳裏をよぎる。


(男なんだから女の子のエスコートはしっかりするのよ。いいわね。)


 その言葉を脳裏から振り払うと背後の少女を振り返る。美咲はさっきまでいたベンチの上で眠ったように身動き一つしてなかった。事実そうなのだが、隼人にはそれを知る術はなく、ただ困惑するだけだった。その無防備な少女を狙うかのように半ば暴徒と化した一般市民が手に棒などを持って美咲に近づいていくのが見えた。

 考えるよりも先に体が動いていた。

 鋭い蹴りが分け隔てなく美咲に近づく者を打ち倒していく。それでも一応手加減をしていた。別に再起不能になるような打撃を与えることができ、そんなことをしても良心の呵責など感じない。しかしそんなことをした後に美咲の真摯な瞳でジッと見つめられ、責められた方が隼人としてはつらい。

 一通り周りの戦闘力を奪うと、美咲のそばに駆け寄る。外見的に損傷らしきものはない。ただ単に眠っているだけのようだ。


「…………?」


 右手に握られているポケベルとドリームティアに残った意識の残滓が事の次第を隼人に説明する。呆れたように口の端を片方だけつり上げ、皮肉めいた笑いを浮かべる。


「やれやれ…… 神楽崎がいつも愚痴るのが分かったような気がするぜ。」


 そして表情を引き締めると周囲の気配を読む。一般市民が近づいてくるのが分かる。ポケベルの情報からも夢魔のせいだと分かる。


(広い場所じゃ不利、か……)


 ヒョイと右手だけで美咲を抱え上げると隼人は走り出した。



 ところ変わって夢幻界。


「謙治…… 最近、あんたの言うことって良く当たるわね。」


「はあ……」


 二人が見たものは煙のように夢幻界全体に広がる微粒子と、巨大な花を頂上に掲げたツタ状の植物型夢魔だった。


「確かに花粉だわ…… で、分析の方は終わったかしら?」


 麗華の言葉にコクピットの中で謙治は顔をあげる。

 組成的には植物に酷似。しかしその構造的、強度的には遥かに強固にできている。そしてその攻撃方法や特殊能力は未だ不明。これだけの事をざっと説明する。


「おそらくこの花粉のような物が人々の精神に影響し、あのような行動をとらせるのでしょう。」


「なるほどね。じゃ、本体を倒せば何とかなるの?」


「おそらく…… 相手は植物をベースとしているようですから移動速度が遅いと考えられます。また、熱にも弱いでしょう。しかしその構造上、多少のダメージでは倒すことができないと思います。」


「ま、やるだけやってみますか。」


 その言葉を合図にフェニックスブレイカーが上昇した。上と下からの二面攻撃を仕掛ける。麗華はいつものように一撃離脱、謙治は相手の攻撃範囲外からの射撃を繰り返す。夢魔は謙治の予想通り動きが鈍く、二機の攻撃を全身に浴びていた。葉のような部分がすぐに穴だらけになり、茎の部分も少しずつ削られていった。


「楽じゃない。これなら私たちだけでも何とかなりそうね。」


 と麗華が言った瞬間、サンダーブレイカーの下の大地がひび割れた。異変に謙治が反応する前に夢魔の根がブレイカーマシンの足に絡み付いていた。パワーと重量を誇る機体がそれ以上の力に引き倒される。


「しまった……! サンダーショット!」


 サンダーブレイカーの手首が反転しビーム砲に変化すると、その先端から光線がほとばしった。しかし簡単には焼き切れない。手間取っている内にも更に根が絡み付いてきて装甲を締め上げる。ミシミシと嫌な音が響く。


「謙治!」


「いえ…… まだ大丈夫です。」


 返ってきた声は少し苦痛が混じっていた。もっとも強固な装甲を持つサンダーブレイカーだからまだしばらくは持ちこたえられる、そう謙治は判断した。


「それよりも神楽崎さん、不用意に夢魔に近づかないようにして下さい。装甲の薄いフェニックスブレイカーではひとたまりもありません。」


「そんなことよりも自分の心配をしなさい。

 ヒート・パルサー!」


 熱線も根を焼き切るには至らない。心の中で麗華は舌打ちをする。フェニックスブレイカーでは夢魔に有効な打撃を与えることができないようだ。

 そしてサンダーブレイカーが夢魔の根に埋没しようとした瞬間、光の刃が走った。光は夢魔を切り裂き、フラッシュブレイカーの手にへと戻っていく。


「謙治くん、大丈夫?」


「美咲! ……そういえば隼人は?」


「あ……」


 口ごもる美咲にその意味をだいたい理解する。思わず怒鳴りつけそうになるが戦闘中であることを思い出し、その衝動を抑える。その間にも謙治は夢魔の根から脱出していた。


「気をつけて下さい。攻撃力、防御力ともに生半可な相手ではありません。」


「それじゃあ…… スターローダー!」


 美咲の呼びかけに夢幻界の彼方から大型のマシンが光の道を通って駆けてくる。


「スターライト・イルミネーション!」


 スターローダーが鋼の巨人の手足に変形し、フラッシュブレイカーが四肢をたたみコアになる。この二機が合体し、スターブレイカーとなるのだ。しかしその寸前、それまで不規則に揺らめいていた夢魔のツタが合体中で身動きのとれないその二機に絡み付いてきた。

 フラッシュブレイカーはともかく、単体のスターローダーでは抵抗することもできずに夢魔にされるがままになる。手足がねじられ各部で小爆発がおきる。さほどの時間もかけずに物言わぬ金属の固まりにされてしまった。合体するどころか、もう動くこともかなわない。


「ああっ! スターローダーが!」


「美咲! 変形を解除して脱出しなさい!」


 麗華の言う通りにしようとするが、フラッシュブレイカーよりも夢魔の方が力が強い。まさに手も足も出せずにギリギリと締め付けられる。装甲が嫌な音を立てた。


「橘さん! フラッシュブレイカーでは……

 うわぁっ!」


 美咲に気をとられている間に夢魔の根が地上のサンダーブレイカーに再び絡み付いてきた。二機ともこの夢魔から自力で脱出できず、フェニックスブレイカーではその手助けにもならない。必殺技を使えば片方だけでも何とかできそうだが、それでは夢魔を倒すところではない。


「う……」


「れ、麗華ちゃん……」


「どうすればいいの……」


 麗華は生まれて初めて心の底からの恐怖というものを感じ始めていた。



「う……」


 肩に担いだ美咲が不意に苦しそうな表情を見せた。他人がダイブしているところを外から見たことないから自信はないが、どう考えてもピンチに陥っているようだ。


「くそ……」


 呟く間にも鋭い回し蹴りが暴徒の一人を蹴り飛ばす。足の軌道が空中で変化するとそのまま別の暴徒に踵を落とす。かれこれ隼人は相当の数の一般市民を倒してきたが、さほど減った感じがない。このままでは美咲達を援護することはもとより、ちょっと気を抜けば二人まとめてやられかねない。


(俺はともかく……)


「こいつだけは護んねえとな……」


 隼人は少女を抱く手に少し力を込めると、再び走り出した。夢幻界で戦う仲間を信じて。



 夢魔が二機のブレイカーマシンを締め上げる。まだ装甲が強固なサンダーブレイカーは耐えられそうだが、フラッシュブレイカーは今まさに潰されてしまいそうだった。


「美咲! 謙治!」


 麗華の言葉にも苦しげな声が返ってくるだけ。操縦桿を握る手にブルブルと震える。


「悔しい…… なんで私はこんなに無力なの…… 友達が苦しんでいるのに何もできないなんて……

 お願い…… 誰か…… 誰か助けて……」


〈貴方様に絶対の忠誠を誓いましょう。〉


 ドクン。

 不意に脳裏に響いてきた声に麗華の心臓が跳ね上がった。


〈我は皇帝の名を持つ者。〉


 ドクン、ドクン。


〈我が真の名は……〉


 ドクン、ドクン、ドクン。


(私は知っている…… あの竜の名は……)


 麗華は残りの希望の全てを込め、声の限りに叫んだ。


「カイザァァァァッ!」



 夢幻界の空が一瞬光ったかと思うと、そこから何かが飛んでくる。

 それは巨大な航空機だった。謙治がずっと開発し続けていたあの機体だった。それはまるで自分の意志を持ったかのように飛来する。そしてフェニックスブレイカーに並ぶように飛ぶと、そこから声が聞こえてくる。


〈お呼びによりただいま参上いたしました。我が名はカイザー。さあ、麗華様、早速御命令下さい。『あの夢魔を倒せ』と。〉


「待って、その前に二人を助けて!」


 麗華の言葉にカイザーはわずかにため息のようなものをもらした。慇懃な口調の中に嘲りの色が混じる。


〈あのような未熟者、無理に助ける必要もないでしょう。ここでやられるようならそれまでのこと。麗華様が気に病むようなことではありません。〉


 カイザーの物言いに麗華は自分の嫌う言葉を使うことにする。もう二機のブレイカーマシンは保ちそうにない。説得している時間はないのだ。


「カイザー、『命令』よ。今すぐあの二人を助けなさい。」


〈かしこまりました……〉


 不承不承の声を発してから航空機、カイザージェットは翼をひるがえした。


〈お前ら、麗華様に感謝するのだぞ。

 カッター・ウィング!〉


 主翼が鋭いエッジになると美咲と謙治をとらえている夢魔のツタと根を切り裂く。その中から装甲がひび割れてボロボロになったブレイカーマシンが現れた。カイザージェットは機体下部からワイヤーを射出すると動けない二機をつり上げた。


〈これでよろしいですかな?〉


「美咲! 謙治!」


 何度か名前を呼ぶと、ブレイカーマシンがわずかに反応した。


「う、うん…… ボクは何とか……」


「こちらも大丈夫です。ただ…… 二機ともまともに動けるかどうか……」


「そんなことはいいわ…… あなた達が無事なら……」


 何かをこらえるようにしていた顔を伏せていた麗華が面をあげた。すぐ横に浮かんでいるカイザージェットに顔を向ける。


「カイザー…… どんな方法を用いてもいいわ。あの夢魔を倒しなさい!」


〈その御言葉を待っておりました。〉


 カイザージェットはいきなりエンジンを全開にすると半ば強引にワイヤーを切り、二機のブレイカーマシンを振り落とす。そしてパワーにモノをいわせて瞬間で夢魔に肉薄する。


〈麗華様の許可も出たことですし、本気で参ります。

 チェンジング・ドラゴンッ!〉


 カイザージェットが紅の閃光を発した。光の中でそれが姿を変える。瞬時にそれは強靱な尾、鋭い爪、そして全てを噛み砕く牙を備えた深紅のドラゴンとなっていた。


竜王りゅうおう変化へんげ、カイザードラゴンッ!〉


 スターブレイカーよりは小柄だが、恐ろしいまでの威圧感をもつマシンが大地に降り立った。夢魔に向かってその口を開く。


〈まずは小手調べと行きましょうか……

 サラマンドラ・フレア!〉


 夢魔が灼熱の炎に包まれる。しかし夢魔は燃えながらもツタと根をカイザードラゴンに向けた。無数のツタと根に絡み付かれて姿が見えなくなる。


「カイザー!」


〈いえ麗華様、ご安心下さい。〉


 内部からブチブチと何かが引きちぎられるような音が聞こえてくる。最初に腕、次に頭が見えてくる。再び口から炎を吐くと一気に焼き払い脱出する。


〈この程度で私を倒そうとは笑止千万。まったく…… あっさりとやられてしまうとは情けない者達だ。〉


 燃えさかる夢魔は炭化した部分を無理矢理切り離し、延焼を最小限にくい止める。後はその再生力で何とか体勢を立て直す。


〈なるほど…… しぶといとは聞いておりましたがここまでとは。感心するやら呆れるやら……〉


 そう呟いた瞬間、再び夢魔がツタを伸ばしてきた。面倒くさそうに腕を振るい払おうとするが、その寸前ツタが幾つにも分裂し絡み付いてきた。


〈なんと!〉


 さっきの失敗を反省するかのように念入りに絡み付いてくる。関節部にまでツタに覆われパワーが上がらない。そしてツタの表面に微細な刃があらわれ、それらが高速振動を始めた。カイザーの表面で激しく火花が散る。


〈グワァァァァッ! ば、馬鹿な……〉


 悲鳴をあげ、鋼の竜が膝をついた。


(このままじゃみんなやられちゃう。)


 ボロボロのフラッシュブレイカーの中で美咲は何かを探すために辺りを見回す。視線の先に破壊されたスターローダーが見えた。


(スターローダー、お願い。ボクの声が聞こえるなら…… まだ戦えるのなら…… ボク達に力を貸して!)


「コズミックブレード!」


 さほど破壊されなかった左腕部から一本の剣が飛び出す。無我夢中でフラッシュブレイカーには大きすぎる剣を掴むとカイザーをとらえているツタに斬りかかる。しかし機体の破損状況と合わない武装がその威力を削いでいた。コズミックブレードはツタの半ばまで埋まったものの切断するまでには至らない。


「美咲! 離れなさい!」


 麗華の言葉に白い機体が夢魔から跳び退く。そこにフェニックスブレイカーとサンダーブレイカーが己の武器を向けた。


「フルブラスト!」


「サンダーショット!」


 ブレードに切り裂かれたところに火線が集中する。少しの間の抵抗を見せていたが、カイザーに絡み付いていたツタが根本からその力を失う。


「カイザー、今よ!」


〈うおぉぉぉぉぉっ!〉


 雄叫びをあげると一気にツタを引きちぎる。装甲にいくつもの傷ができていたが、機体自体には損傷がないようだった。

 夢魔は切られた部分を再生しようとするが、その前にカイザーが夢魔の正面で腰だめに構える。胸のエンブレムが赤く輝いた。


〈再生する暇など与えません。喰らえっ!

カイザー・コロナ・ブレスターッ!〉


 エンブレムから放たれた深紅の光線が夢魔を包み込む。炭化する間もなく、瞬間的に蒸発させられてしまう。カイザーが少し体を振るだけで夢魔は夢幻界からその姿を消した。本体が消滅させられたせいだろうか、夢幻界に漂う花粉もその後を追った。


「カイザー、ご苦労様。」


〈いえ麗華様、礼には及びません。それが私めの使命でございますから。また何かありましたら私をお呼び下さい。

 ああ~ それとですね……〉


 カイザーがちょっとばかり口ごもる。


〈そこの二人、お前達も何かあったら私を呼ぶと良い。手が空いていたら行ってやってもいいぞ。

 ……チェンジ! カイザージェット!〉


 言うだけ言うと航空機に変形して夢幻界の空の彼方へと飛び去っていく。そんなカイザーの態度に麗華はクスリと笑みをもらした。


「素直じゃないわね。ただ一言『ありがとう』って言えばいいのに……」


「誰かさんにそっくりですね。」


「謙治…… そのことに関してはじっくり話し合う必要がありそうね。

 ……それよりも美咲。あんたはさっさと隼人のところに戻りなさい。男を待たせるのは女の子の特権だけど、少し待たせ過ぎよ。」


「う、うん……」


 美咲の視線が破壊されたスターローダーから離れない。それに気づいて謙治が優しく声をかけた。


「スターローダーは僕達に任せてもらえませんか? ちゃんと修理しておきますので。早く戻らない大神君がいじけちゃいますよ。」


「……ゴメン。じゃ、ボク行くね!」


明るい声と共にフラッシュブレイカーが夢幻界から姿を消した。



「目が覚めたか?」


 美咲が現実世界から返ってきて最初に見えた物は焦茶色の物体だった。それからはヒンヤリとした冷気と甘い香りが漂ってくる。

 声の主の少年は美咲の鼻先にチョコレートアイスを突きつけると、反対の手にも同じ物を持って憮然とした表情でそれを舐めている。


「隼人くん……」


「溶けない内に食った方がいいぞ。」


 言われるままにアイスを受け取り、口に運びながら美咲は辺りを見回した。壊されたベンチやゴミ箱、自分の身に何が起こったのか解らずに困惑する客や従業員。そして美咲達の周りには何となく他と比べて困惑していた人間が多いような気がする。

 わけが分からず首を傾げる美咲。隼人はいつもにも増して更に無愛想だった。恐る恐る彼の方を覗き込む。


「隼人くぅん……」


 その鼻にかかった泣き出しそうな声に、隼人は半分怒ったように少女を振り返った。思わず美咲はビクッと体を震わせる。


「悪かった…… そんなつもりじゃなかったんだがな。

 ……そろそろ行くか? この調子じゃあ今日はもう無理だろう。せっかく来たのに残念だったな。」


「うん…… でも、また来ようね。」


「ああ、暇があったらな。」


 素っ気なく答え、立ち上がる隼人。美咲はその時、彼がわずかに片足を引きずっているのに気づいた。美咲が夢幻界に行っている間に彼にも何かがあったのだろう。その事を聞くのは簡単だが、隼人が隠そうとしている以上、美咲は聞かないことにした。しかし……


「隼人くん…… ありがとう。」


「ん? ああ、気にするな。……大したことじゃない。」


 いつもながらの態度に美咲はニッコリ微笑むと、少女は少年の後を追った。




次回予告


カイザー〈どうも人間というものが理解できません。麗華様、なにゆえ彼らは他人のためにあそこまで戦えるのですが? 傷つくのが怖くないのですか? ……何が彼らをあそこまで動かすのですか?

 誇り? 誇りでございますか。それでは私の誇りとはいったい……


 夢の勇者ナイトブレイカー第十三話

『誇りにかけて』


心に夢がある限り、人は燃えることができる。〉

時代を感じさせる表現が一つ

ポケットベルなんてもうありませんよね。前の話でも黒電話登場してるし。

もう今はスマホなんでしょうけど……

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