3幕 日常の風景
今回はコメディー少な目です_(_^_)_
色々あった次の日。
俺は一睡も眠れず一人考えていた。
メルをうちに泊める事になったのは百歩譲って許す事にするが、問題なのは元々魔界に住んでいて鬼…なのか分からんが、鬼のメルが人間界で普通に暮らしていけるのか?
魔界に行く手段を見つけるまでの間だからそんなに長くは居ないだろうが…。
そんな事より何でメルが俺の部屋で寝ているのか?
実はそれが一睡も出来ない理由の一つでもある訳で…。
母親が昨日
「今空いてる部屋無いからとりあえずメルちゃんは皐月の部屋で寝ときなさい」
何て言うからな。全く…青春真っ只中の中学生男子と同じ部屋に普通女の子を寝かすか?
俺は人間が出来てるからいいが、そこら辺の男子だったら間違いなくヤバい方向に…。
でも、鬼って案外人間じみてて普通に寝るんだな。外見も角が生えてなきゃ普通の人間だし…。
う〜ん…世の中って不思議だ。
そういえばメルが寝る前にちょっと話ていたが、どうやら俺と同い年らしい。聞く所によれば鬼も人間と同じ寿命なんだと。
う〜ん…。しかし、アイドル並の可愛さだな…。寝顔が可愛い…。いっそこのまま…。
っと!止めろ俺!止めろ俺の理性!
とまぁこんな事をしている間に時間はもう午前8時を回っている訳で…学校8時30分からなんで…。
「うぉぉい!時間やべぇじゃねぇか!おいババァ何で起こさなかった!」
急いで制服に着替えながら台所に向かう。
「二人の邪魔をしちゃ悪いと思って…。どうだった?」
台所でタバコをふかしながら母は言う。
「どうだった、じゃねぇぇ!あんたは息子にそんな不埒な行為をさせる気だったのか!?」
「ほら!あんた今まで彼女出来た事無かったから丁度いいかなぁ?何て!」
何ちょっと照れてんだよ…。まぁいい。とりあえず学校へダッシュだ。運が良かったらまだ間に合うかもしれない。
「とりあえず行ってくる!」
そう言って俺は玄関の扉を勢いよく開けながら出ていく。
「おう!頑張ってこい!あっちをな!」
「この変態女!」
俺の毎朝はいつもこんな感じで始まる。いい加減あの母には疲れが出てきた。
俺の家から走れば学校まで15分位だ。確か家を出たのが8時13分位だったから多分間に合うだろう。
「どわっ!」
何かにぶつかった。
おっと…ボンタンをはいてて金髪のオールバック…って事は…。
「いてぇだろうがボケが!何処見て歩いとんのじゃワレ!」
「いや…走ってたんすけど…」
「やかましいわ!おんどれ…公衆の面前に二度面見せれんようにしたるわ!」
不良なのか?何か言葉使いがヤクザ以外の何者でもないが…。
「死にさらせぇ!」
ヤクザは俺に顔面ストレートを喰らわせてくる。
「おっと!」
それを俺は片手で顔面の前で掴んだ。
「いやぁ!ヤクザさん!良かったですね!僕の顔面にぶつからなくて!」
ヤクザは不思議な顔をしながら言う。
「ああ!何が言いたいんじゃ!」
「だってあたってたら…この世からあんたの存在消えてましたよ。まぁ、今回はあたらなかったから100分の99殺しで勘弁しときますけど…」
凄いにこやかに俺は言った。ヤクザは少し怯えつつも
「わしがワレを殺すんじゃボケ!」
と言い俺に今度はローキックを浴びせてくる。
それを俺はもう片方の手で止める。
「う〜ん。残念でしたね。せっかく一応この世に残っていられたのに…やれやれだぜ!」
本気モード俺!
掴んでいたヤクザの手を引きそのままヤクザの腕に膝蹴りを喰らわし腕を折る。
「ぐわっ!」
「だから言っただろ?しかも今俺は急いでんだ。お前のせいで完璧学校に遅刻じゃねぇか…骨も残さねぇ」
「ひぃ!」
ヤクザは腰を抜かしている。
「時よ止まれ!スター〇ラチナ・ザ・ワー〇ド!」
もちろん時は止まらないが俺の速さの前では時など止まっているも同然だ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!」
凄い速さで俺はヤクザめがけてパンチを連打した。
「そして時は動き出す」
俺が殴るのを止め、そう呟く。
ヤクザは悲鳴をあげる暇も無く吹き飛んだ。
「ふん。雑魚が…って!こんな格好つけてる場合じゃな〜い!」
俺は急いで学校にまた走り出した。
さぁ。俺が学校に間に合ったかしりたい?
無理に決まってる。ヤクザをボコボコにした時点でもう28分。後2分しか無かった。
おかげで廊下に立たされる羽目に…。
という事で今廊下に立っている俺。先生の声しか聞こえない学校というのも中々不気味なものだ。たまに答えを言う生徒の声も聞こえるが、大した事じゃない。
もっとも授業が終わった瞬間に解放感MAXの学校に早変わりするが…。
チャイムが鳴った。クラス別々に号令をかける声がする。
そして、さぁ始まりました。さっきとはうってかわってとてつもなく賑やかな学校に早変わり。
教室の中では女が賑やかに雑談している。男は廊下に出て走り回っている。
この学校は授業さえ真面目に受けていれば大抵の事は許される、超解放学校だ。
「お!皐月また遅刻か?お前もついてない奴だな。また不良かヤクザに絡まれたのか?」
勘が鋭いこの男。辰島 優斗は俺の一番身近な友達であると言える。言い換えれば親友だ。
「優斗か…。よく分かったな…」
俺は廊下に立たされていたせいもあり結構テンションが下がっている。
「だってお前毎日のように絡まれたって俺に言ってくるじゃねぇか。お前の自慢してる時の顔とかそんな簡単に忘れないだろ」
「お前ちょっと妬んでない?」
「いや、全然。むしろお前には何度か助けてもらったからな」
一つ言い忘れていたがこの男。優斗は自分は自覚していないがかなりの格好良さである。男の俺から見ても少し羨ましいような顔だちだ。そのせいなのかよく不良に絡まれている。理由は『顔が気にくわない』という理由が多いみたいだ。
それと、この学校では唯一まともな人物は俺と優斗しか居ない事は知らせておこう…。
「あ!皐月君だぁ〜!」
向こうから女が走って来る。瀬戸 亜紀だ。顔は可愛い系で見た目は良いのだが…。
「皐月君!いつデートしてくれるの!?聞いてからもう1ヶ月位経ったよ!」
「俺はお前とデートしてやると言った覚えは無い!」
「えぇ〜!デートしてくんなきゃ皐月君をストーキングしちゃうぞ!」
「いや…それはちょっと…。しかし、何でお前は俺なんだ?今横に居る優斗の方が格好良いだろ?」
「何で俺を話に出す?俺を関わらせないでくれ」
優斗は少し嫌そうだが内心まんざらでもないに違いない。
「嫌!あたしは皐月君が良いの!優斗君も格好良いけど皐月君も格好良いの!」
「おいおい…」
まさか。俺が格好良いの部類に入る訳がない。きっと亜紀がどうかしてるんだ。
しかし、困った。優斗を餌に亜紀をまくのもいいが、今は一応立たされている身だ。下手にここから動かない方が良いだろう。
優斗の奴俺が困ってるのを見て少し笑ってやがる!
その時運良くチャイムが鳴った。
「ラッキー♪」
と小さい声で呟く俺。
「あぁ!鳴っちゃった!皐月君!絶対デートして貰うんだからね!」
亜紀はまた走って行った。
「俺も教室戻るわ!じゃあな!」
「おう!じゃあな!」
優斗も自分のクラスに走って行く。
また学校の雰囲気が一変して物静かになる。俺はどっちかっていうとこっちの雰囲気の方が落ち着いて良い。
しかし、一体いつまで廊下に立ってればいいんだ!?先生達も俺を見て見ぬふりして通り過ぎて行くぞ!?
良し!どうせなら学校サボろう!あの俺の家に居候している天然凶器を魔界に帰すために魔界に行く方法も探さないといけないしな。
俺は元々置き勉しているので荷物は殆ど持って来ていない。昼食は珍しくこの中学には食堂があるのでそこで買って食べている。
いまさら教室に入って少量の荷物を持っていくのも面倒なので俺はそのまま学校を出た。