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僕と影のラストデイ

作者: ウェル

 夏休み、僕に初めて友達ができました。

 名前はシャドウです。なぜかというと、その子は僕の影だったからです。ある日突然僕の影が勝手に動き出して、びっくりしました。でも、シャドウはとても僕のことをわかってくれて、僕もシャドウのことがよくわかりました。シャドウには友達がいないそうです。僕にも友達がいませんでした。だから、僕たちは友達になったのです。


 シャドウはいつも僕のそばにいてくれました。光によって大きくなったり小さくなったり歪んだりまっすぐになったりして、少し怖かったけど、それも最初のうちで、一緒にいるうちに全然気にならなくなりました。

 遊びも食事もお風呂も勉強もシャドウと一緒でした。お父さんもお母さんも何も言いません。だって、シャドウは僕の影ですから。シャドウと僕はどんどん仲良くなりました。僕は友達っていいなぁと初めて思いました。


 でも、僕が「友達はシャドウしかいらない」と言うと、シャドウは首をかしげて、「どうして?」と言いました。そして、夏休みが終わりに近づくにつれ、僕の影が動き出す時間はどんどん短くなっていくのです。僕はシャドウにいなくなってほしくありませんでした。僕には影の友達しかいないのです。

 何とかしてシャドウにいてもらおうと、部屋の明るさを変えたり、僕自身の雰囲気を明るくしてみたりしたけど、シャドウは笑って首を振りました。もちろん影に顔なんかないのですが、なぜだか笑っていることがわかりました。


 そして、夏休みの最終日。

 僕の努力もむなしく、シャドウが片手を上げて『おはよう』のあいさつをしてきたのは昼頃でした。

「いなくならないよね?」

 僕が聞くと、シャドウはうん、と頷きました。消えないとわかったらなんだか安心しました。

 今日はなんだか遠出してみたかったので、シャドウと街を散歩しました。公園で、顔に覚えのある何人かのクラスメイトが遊んでいます。すると、シャドウは僕に『行っておいで』と言ったのです。口はありませんが、僕の頭の中に聞こえてきました。僕とまったく同じシャドウの声が。

「シャドウは?」

 あっちに行くとシャドウがいなくなってしまうような気がしました。僕はうすうす感づいていたのかもしれません。シャドウが何のために動き出したのか。

 シャドウは何も言わず、笑っていました。

 僕にとって、クラスメイトに声をかけるのは不安なことでした。でも、シャドウが『がんばれ』とずっと応援してくれていたので、とうとう僕は声をかけました。顔が真っ赤でした。聞こえるかわからないくらいの声で「入れて」と言うと、クラスメイト達は一瞬びっくりした顔をして、それから笑いました。

「やった、シャドウ!」

 公園の入り口を見ると――シャドウはいませんでした。どこを見ても、影は見当たりません。

「どうしたんだよ?」

 クラスメイトが不思議そうな顔をして僕を見ます。

「僕の友達がさっきまでそこに……」

 僕はうつむいて、気づきました。足元に暗がりがあることに。シャドウはそこにいたのです。いるべき場所に帰ったのです。

 シャドウは僕にほんの少しの勇気をくれるために僕の足元から離れたのでしょう。そして、クラスメイトに声をかけた時、確かに聞こえました。

『ただいま!』

 というシャドウの声が。

「何でもないや」

 僕はクラスメイトに言うと、サッカーを始めました。


 あれから僕の影が動いたことはありません。でも、確かにシャドウはいたのです。いえ、今だって僕の下にいます。いつだって支えてくれています。僕たちはいつまでも友達です。

 影はきっと、僕たちを見守っているためにあるのではないでしょうか。シャドウは人の数だけいるのです。どこにだってついてきているのです。

 もし、何かあった時にふと頭の中で声が聞こえたり、ある日突然影が勝手に片手を上げたら、それはきっと――。



 これで僕とシャドウの夏休みの思い出の発表を終わります。

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