第一話 中沢晃の寝相の罪深さ
〜登場人物〜 中沢 晃 南鳥高校三年 生徒会会長 林 千絵 南鳥高校三年 (鬼の)生徒会副会長 伊賀 ジュリア 南鳥高校二年 天然ハーフ書記 松谷 進 南鳥高校二年 生真面目会計 〜内容〜 学園コメディなはず。生徒会の面々のおかしい日々を書きます。 ……まずいことになった。否、しかし君たちにはそうでもないだろう。でも、俺にとっては己の命と次の時代の俺の命がかかってるんだ!
FUNNY DAYS … やってしまった。この前あんなに言い聞かされたのに…。これが最悪(最も悪い)と言うんだな。 と、ハワイの民族衣装を着ている金髪のなかなかイケ面のしかし、ハワイの民族衣装を着た少年、中沢晃は南鳥高校の生徒会室で顔を青くして立ちすくんでいた。
「イヤ、ホントドウシヨウ」
カタコトの日本語の状態で生徒会室の現状を見渡した。
綿が出たソファ(副会長の私物)、割れた花瓶(副会長の私物)、首が取れたくまちゃんのぬいぐるみ(副会長の私物)……。それにプラスして、今日の朝会の挨拶をサボった…。
死刑確実だ! 中沢晃は仮にも我が南鳥高校の生徒会会長なのだ。こんな状態を会長がやりました。だなんて……、 誰が言えることか!
これはうっかりしてたんだ。そう!事故なんだよ!青春真っ最中のまだケツの青い少年が犯した一時の過ちなんだよ! しかし、真実を言えば朝会をサボった中沢が生徒会室で寝ていたところ、彼の寝相でこんなことになったのだ…。至ってしょうもない…。
「どうすれば、林ちゃんに見つからずに済むか…。」そこらじゅうをうろうろしながら考えるハワイ民族。林ちゃん……本名林千絵は南鳥高校の鬼の生徒会副会長だ。彼女が副会長になったら学校の経費が激減したと言う伝説持ちのクールな美少女だ。そして、サボり魔の会長、中沢のお目付け役(悪く言えば彼の犯した罪の執行人)である。しかも、今回は壊れた物の八割は林千絵の私物。
死刑どころじゃない…来世の俺にも危険が迫っている! とにかく、まずソファとくまちゃんだ。
これは縫い付けておけばいい。
次に花瓶。これは直す時間なんてない。この割れて粉々になった状態をどうすべきか…。ごみ箱に入れるだけでは俺が瞬間的に粉々になる。そうだ!俺のカバンに入れておけばいいんだ!花瓶はビニール袋に入れられ、中沢のカバンの奥に押しこめられた。 ふぅ…我ながらに上手くやったな。これで放課後の生徒会の時間にバレなければ問題ないのだ。
中沢晃死刑まであと三時間
ついに来た。
この時間が…俺の作戦は完璧だ。
俺は何も恐がる必要はない!
そんなことを何十回思ったことか…。さっきまでハワイ民族だった少年はひどくそわそわしている。トイレだって三十分に五回行ったのだ。完全なチキン野郎である。
――ガチャ
ドアが開いた。しかし中沢は何故かビクビクはしなかった。 「会長ォォ、来タヨ。」
声の主は南鳥高校二年、フランスと日本のハーフで目がブルーの少女、伊賀ジュリアだ。彼女もまた生徒会に入っていて書記である日本語が苦手でカタコトだ。そしてもちろん、副会長の恐ろしさも経験済だ。 「やっぱり伊賀っちゃんだ!」
中沢は不適に笑って見せた。
「ナンデ?私だってワカッタ?」
伊賀は可愛らしい顔で小首を傾げる。「フッ、俺は女の子のことなら何でも分かるのさ」
中沢の辺りにバラが散る。
「スゴイよ、会長!コレガ一石二鳥か!」
伊賀が目を輝かせて言った。
「いや、全然違うよ伊賀っちゃん…。なんでそこに一石二鳥がきたのか分かんないよ。」
しかし、真実はこうだ。林千絵のドアの開け方はガチャではなく、バンッなのだ…。それだけで人が誰か分かるのはある意味、彼の才能だ。 その時だった。「副会長、落ち着いてくださいっ!」
ドアの向こうから悲鳴に近い少年の声が聞こえた。この声は二年の会計の松谷進だ。
「まっちゃん、何かアッタノカ?」
伊賀が不思議そうに言う。その隣で中沢は半分石化していた。
後に彼はこう語ったと言う――あの時が夢だったらとどんなに願ったことか…。バンッと生徒会室のドアが開く。それと同時に黒髪の鋭い目をした色白な美少女が入ってきた。そう、彼女こそが鬼の副会長、林千絵様その人だ。その横でゼェゼェ息をしている茶髪眼鏡少年が松谷進だ。必死に林千絵を止めようとしたらしい。
「中沢…、あたしが言いたいこと分かってるよね?」
副会長の後ろに鬼がいる。
「はい…存じ上げております。」
中沢の石化は順調に進んでいく。
「アンタ、朝会っ……」
その時林千絵は気付いた。 部屋がおかしい! そして一分で全てを悟った…。「中沢…ごまかしたつもりみたいだけど…くまちゃんの顔が何で背中にあるんだよ!」
「アァァァァァァ!」
中沢晃死刑確定、十六時十二分。 END
ちょいと展開が早すぎたような気がします…。まだまだですが頑張ます!