『海王×海王妃(因縁編)』番外 海王の日記①
某月某日
萩波に日記でも書いてみたらどうか?と言われた。この戦いの最中、悠長に文字なんて書いている暇なんてないが、「将来、恋文の一つも書けなければ話にもなりません」と言われた。好きな相手なんて居ないし、これからも出来る予定は無いから無意味だが--まあ、恋文はともかくとして、読み書きは出来た方が良いだろう。字も長く書かないと書けなくなるので、字の練習として日記を付ける事にする。
某月某日
いつまで経っても終わらない戦。いい加減に嫌になるが、やめれば末路は奴隷だ。しかも、神は寿命なんぞないようなもんだから、永久的な奴隷になる。いっその事、奴隷として相手の懐に入ってそのまま権力者達を渡り歩いて次々と掌握してやろうかとも思ったけれど、紫魄に切れられた。「何を言われるのですか、我が君!」と怒鳴られた挙げ句、俺にやらせる位なら自分が--と五月蠅かったので素直に謝った。別に、今更貞操や貞淑うんぬんなんて話でもないし。まあ、軍を蜂起した中心神物は俺だし、俺が居なくなるという事は軍に所属する奴らを放り出す事にも繋がりかねないから……うん。
某月某日
萩波が『果竪』という少女を拾ってきたらしい。何でも幼馴染みだとか。萩波が幼い頃に済んでいた村が焼き討ちされた挙げ句に村神は皆殺しにされ、彼女一神が生き残ったそうだ。少女を直接は見てないが、暎駿が言うには痛ましい姿だったとか。珍しい話ではないし、同じ境遇、それよりも酷い目にあった者は大勢居る。むしろ、男達に暴行されなかっただけでも良かったと思う。
某月某日
『果竪』と出会った。かなり根性のある娘だった。萩波の軍は萩波に心酔する者達が多い。というか、あれはもはや教団で宗教だ。萩波は教祖的なものだと思う。だから、萩波に大事にされる『果竪』は萩波に心酔者達に酷い目に遭わされている。古参メンバー、それに準ずる者達のやりようといったら……萩波の右腕の明睡は少し違うが、それでも苛めはかなり酷い。彼女を苛めない者達は本当にごく僅かだ。
某月某日
周囲が『果竪』を溺愛する様になってきた。ここまで数年。長かったが、それも全ては『果竪』の努力のおかげだと思う。というか、よくあの性格破綻者で歪んで曲がりきっている上に壊れている者達の心を掴み取ったものだ。けれど、『果竪』からすればそれは良いとは言えないかもしれない。あいつらはその美貌故に、神生を台無しにされた。めちゃくちゃに壊された。そうして大事な物を全て奪われ、持つ事すら許されなかったあいつらは結構執着心が強い。当然、自分達が溺愛する存在なんてその最たるものだ。その愛情が彼女を押し潰さなければ良いが。
某月某日
なんか、『マッスル林檎』なるものが萩波の軍に出没しているらしい。作成者は『果竪』だ。しかし、萩波の軍はそれを否定する。天帝軍が生み出したものだと言う。万乗曰く「それは無いだろう」と言っていた。俺もそう思う。その後、『美脚林檎』も萩波の軍の拠点を走り回っていたらしいけれど、向こうは断固否定してきた。確かに天帝軍は悪辣非道だが、流石にその冤罪はどうかと思う。
某月某日
萩波が『果竪』を娶ったらしい。しかも名ばかりの妻ではなく、身体から始まる関係だったらしい。もちろん合意無しだ。いつか奴はやると思っていた。しかし、十二歳の子供を強引に妻にするとは思わなかった。他に交流のある幾つかの軍のトップ達は思い切り引いていた。一応、その後それぞれが会う機会があったが「貴方達だって同じ穴の狢ですよ」と言われた。しかも同じ匂いがすると言われた。それはつまりロリコンの匂いか?なんだろう?決して長くは無い神生だが、最大限の侮辱をされた気がするのは。
某月某日
戦が終わった。王になれと言われ、国土と国民、資源を与えられた。『海国』という国名も貰った。
某月某日
暎駿が『寿那』を強引に娶った。こちらも名ばかりの妻ではなく、身体から始まる関係だった。萩波はそれみた事か--という感じだったが、これだけは言わせてくれ。『寿那』は十四歳で妻にされた。だから萩波とは違う--じゃなくて。『果竪』と『寿那』は血は繋がらないが従姉妹だ。しかし、彼女達は夫達がそれぞれ違う国の建国王となる為、引き離される。彼女達は一緒に暮らしたいと願っていた。けれど、それは不可能だ。特に『果竪』は泣き叫んでいたらしい。恋というのは多くを不幸にするようだ。
某月某日
『海国』を建国して暫く経った。軍の古参メンバーやそれに準ずる者達の働きが大きいだろうが、何とか国は潰れる事なく成り立っている。
某月某日
炎水世界の統治者たる炎水家に呼ばれ、向かった。『●●●』という存在を知らされる。
某月某実
水を治める大国を上から数えて、十ヵ国の王達と会議をする。『●●●』という存在達をどうするか。炎の上位十ヵ国の方はその内の一つの国で保護するらしい。こちらもそうしたいが、どこの国が受け持ち、どの様に保護するかが問題だ。
某月某日
『後宮』を開く事になった。妃は男ばかり--まあ、男の娘と呼ばれる性別を超越した者達ばかりだが、一見どころか長く見ていても女にしか見えない者達だった。彼等は男の妃なので男妃となる。俺も過去は似たようなものであり、彼等にそのような境遇を押しつけるのは心苦しいが--彼等は納得してくれた。むしろお礼を言われた。彼等は自分達が『●●●』だという事を知っていた。いや、『●●●』という名前は知らなかったようだが、自分達の存在が他者にどういう影響を与えてしまうかは理解していた。彼等のせいでは無いのだが。
某月某日
うちの国がほぼ『●●●』を引き取る事が決まった。『後宮』で男妃と呼ばれる存在とすれば、他は手出しが出来ないだろう。まあ--『後宮』内にいる限りはだが。外に出た途端襲いかかるとはどういう事だ。見せしめが必要だろうか。とにかく、『●●●』である男妃達は今まで酷い目にあってきたから、少しでも心安らぐ場所になるようにしよう。
某月某日
『後宮』の男妃達も順調に増えてきた。そのせいか、男色家として世間に周知される様になった。まあ、それは別に良いか。あそこの男色家集団--大戦時代では共闘し、今では一国の王となったあいつから文が来た。男色家認定おめでとうという言葉から始まり、「俺と寝るか?天国を見せてやる」とか書いてきた。中身を検められたらどうするんだ。いや、王への手紙は検めないか--いやこいつのなら検められてもおかしくはないが。思えばあそこの国は--いや、軍の時から男色家が多い。両方いける者達も多い。他の水の列強十ヵ国の王や上層部も粉をかけられまくったし、誘われまくってもいた。
某月某日
あの男色家の王が来た。見目麗しい美貌に更に磨きがかかっていた。過去に強制的に同性愛を強いられた者達は、自分を『女』として扱われる事が嫌いだが、彼等はそれを上手に昇華したようで、同性愛もオッケーだし、両刀使いも実に多かった。紫魄も粉をかけられ、とても嫌そうにしていた。媚薬関係で結構世話になったと思うのだが。そういえば、この王の一番の好みは萩波だった。で、軍時代はよく萩波を誘惑しに行っていたのを思い出す。
某月某日
男色家の王が酒を飲みながら色々な国の近況を聞いてきた。他の国に比べて特殊な役目を持つこの王は、上層部同様に自国から余り出ない。まあ出たら男漁りに勤しまれるのでそれはそれとして。あと、複数と付き合う輩も居る。本神達が良いのならそれで良いが。で、萩波の話になった。王が両手で顔を覆った。自分が狙っていた相手が既婚者になった事を嘆いたのかと思ったが。「俺が、俺が萩波を力ずくでも物にしていれば、あの小娘は年頃になってから幸せな結婚が出来たかもしれない!」と言われたので俺は「無理」と答えた。この王は『果竪』を小娘と言ってはからかっていたが、彼なりに色々と思うことがあったらしい。後で向こうの上層部に聞くと「流石に十二の子供を強引に妻にするのは」と、とても常識的な答えが聞けた。そうか、向こうにも「ロリコン鬼畜大魔王」と萩波は思われているのか。
某月某日
「俺は今まで色々な事をしてきた。爛れた関係も沢山築いてきた。神様に言えない事だって沢山した。けど、流石に子供に手を出すのは駄目だろ」と、男色家の王がどこか黄昏れた様子で自国に帰るのを見送った。紫魄が「そのロリコン鬼畜大魔王が、水の列強十ヵ国の第一位なんですけどね」と言った。世も末だ。
某月某日
凪国で会議がある。面倒だが行かないとならないだろう。凪国は最大の同盟国だ。ただ、萩波の惚気話を聞くのが憂鬱だ。それを言う為に、本来の会議の時間をかなり短縮してくる。というか、必要な事は全て時間内に終えてしまうその能力の高さが恐い。あと、その惚気話の九割方は妄想だ。それをさも実話のように語る萩波の神経の図太さが--いやいや、妄想と実話は紙一重。ちょっとした事で真実となるかもしれない。ただ俺は思う。恋は恐ろしいものだ。恋なんてしない方が良いだろう。恋に憧れはあるけれど、自分よりも他者を不幸にする恋なんてしない方が良いのだ。
某月某日
凪国に来てから不眠だ。連日の夜這い。疲れてきた。萩波に殺って良いか?と危うく聞きそうになった。そこに萩波の惚気話を聞かされる。奴は鬼だ。あと、『果竪』が元気そうだったのが救いだったが……純愛の恋愛物小説を手にしていた姿に思わず涙が出そうになった。
某月某日
ある少女と出会った。食べ物をくれた。なんだろう?自国に帰ってからも忘れられない。
某月某日
あの少女の事が忘れられない。寝ても覚めても頭に浮かぶ。この気持ちは何だろうか?
某月某日
彼女の事がどうしても気になって、色々と調べてしまった。愕然とした。彼女に酷い事をした男達を皆殺しにしてやりたいと思った。
某月某日
彼女は今も失った子を思い、悲しんでいるという。どうして、その子の父親が自分では無かったのだろう。いや、どうしてその時に自分が側に居られ無かったのだろう。父親が誰だろうと構わない。子供ごと彼女を引き受けたのに。何故その父親は、そのまま彼女と子供を放置してくれなかったのか。
某月某日
部下の妻が流産した。憔悴する妻に付きそう部下を見ると、強い愛情が見て取れる。子を失った悲しみに潰れそうになる部下に言葉をかけながら思う。彼女もこうだったのだろう。父親が憎い。いらないなら、そのまま捨てれば良かったのに、どうして子を殺していったのか。血が繋がっていない子供の為によくそこまで思える--と浩国国王の利潤に言われた。そんなもの関係ない。誰の血を引こうと、彼女の子だ。それに、お腹の子に何の罪があるのか。
某月某日
うちの国の上層部と『後宮』の男妃達がとんでもない事をしていた。まず男妃達が凪国直訴し、そして上層部も……。簡単に言うと、彼女を俺の妻にという事だった。
会議が終わった後、萩波に呼び止められ聞かされた話に目眩を覚えた。というか、何故男妃達は、上層部は気付いていたんだ。
それはひとまず置いておくとして--萩波が話してくれた。彼女に関する話をしてくれた。彼女の過去を知っているだろう?と聞かれ、頷いた。今からでも男達を皆殺しにしたいとは思っている。
某月某日
萩波に認められ、彼女に縁談の話が行った。彼女は受け入れてくれたようだ。だが、その報せが来た時、俺よりも周りの喜びの方が大きいのは何でだ?特に紫魄は「良かったですね!我が君っ」と泣き崩れた。あと、双麝。「良かったのう、これで妾が拉致しにいかなくてもすむ」とはなんか違うだろう。何、犯罪計画を暴露しているんだ。
某月某日
とんでもない事が分かった。凪国は彼女に嘘混じりの説明をしたらしい。まあ、彼女は今までの経験から男嫌いだったし、子の産めない体になってしまったという事だから、世継ぎを求められる王妃になると分かれば全力で逃げ出すだろう。男からそういう対象として見られる事を嫌がってたらしいし。それは分かる。来てくれるだけでも幸せなのだ。けれど……ただ見ているだけがこれだけ辛いとは思わなかった。
某月某日
紫魄に「がっつく真似はやめてください」と言われた。余程物欲しそうに見ていたらしい。彼女は『後宮』の男妃達と仲良くやっているらしい。というか、最初の出会いで『後宮』の統括者たる四妃達の心を鷲掴みにしたというから凄い。あと、上層部も彼女にはとても好意的だった。
某月某日
『後宮』の男妃達に「王妃様」と呼ばれていたが、「お母様」と呼ぶ者達も居るらしい。主に年少組の男妃達に多いとか。彼女は沢山子供が出来たと喜んでいた。
某月某日
『後宮』の年少組の男妃達が彼女にベッタリとしている。彼女は理想の母親だった。彼等の中には最初から母親が居ない者も居れば、母親に売られた者も居たし、母親に虐待を受けた者も居た。けれど、彼女は慈愛と慈悲に見た理想の母親そのもので、母を恋しがる幼い男妃達を丸ごと受け入れていた。
某月某日
年少組の男妃達と年中組、年長組の男妃達が喧嘩した。話を聞けば、年少組ばかり彼女を独り占めにしているのでずるいとの事だった。そのうち、男妃達はマザコン集団と呼ばれるのではないだろうか?
某月某日
彼女に襲いかかってしまった。そして嘘をついて国に呼んだ事がバレた。しかし、嘘をついたの凪国の方だ。
某月某日
彼女は当然の如く逃げ回った。でも、諦めない。一度襲いかかってしまえば覚悟が決まった。本当の妻になってもらう。
某月某日
彼女にも侍女が必要だろうと思った矢先、彼女と共に保護された少女に適性を見た。彼女と喧嘩をした先日、そのまま王都へと飛び出していった彼女が奴隷商神に捕まり、その先で出会ったという。彼女の素性を知らないまま、彼女を守ってくれた奴隷の少女。本神が良ければ侍女にしようと思う。
某月某日
自分はずっと奴隷で何の勉強もしていないという少女に、そんなものは後からいくらでも学べると伝えた。そもそも、王妃は公式の場には殆ど出ないのだから、いくらでも勉強する時間はある。
某月某日
問題が起きた。楓々という王妃の新しい侍女のお披露目の際、四妃達の一神--徳妃が凍り付いたらしい。で、話を聞くと、なんと彼がずっと探していた少女だったという。そういえば、昔とある奴隷商神の所で一緒だった少女が居て、ずっと自分を守ってくれていたと聞いた。で何が問題かと言うと、徳妃が自分にくれと言うのだ。待て、そんな事をしたら王妃の新しい侍女が居なくなる。
某月某日
徳妃が楓々を追いかけ回しているらしい。楓々は他神のふりをしているらしいが、まず難しいだろう。徳妃は基本的に物事に執着しないが、王妃を除けば楓々に凄まじい執着を見せている。目を見れば分かる、あれは恋する男の目だ。いつか間違いが起こらなければ良いが。
某月某日
宰相が愛神を持った。躑躅というらしい。華蓮と婚約破棄し、彼女が愛する者と結ばれるように身を引いてからは女を相手にはしてこなかったが--。一目見て分かった。宰相--紫魄に遊びで手を出して良い相手ではないと告げるが、紫魄は関係を切ることを断固拒否した。
某月某日
紫魄が躑躅と関係を持ってどれだけの時が経ったか。紫魄に何度か忠告するが、あいつは躑躅に関する事だけは聞かなかった。たぶん恋なのだろう、彼女があいつにとって初めての。
某月某日
泉国の国王からとある相談を受けた。紫魄がその話を受けるという。王妹も良い性格だから良い戦友になれるだろう。夫婦は無理だ。間違っても本物の夫婦にはならない。本神達が断固拒否した。しかし知っているのは俺と泉国国王だけだ。
某月某日
躑躅が退職の申し出をした後、少しして行方不明になった。たぶん紫魄が関わっている。
某月某日
やはり紫魄が関わっていた。躑躅を拉致監禁していたという。漣と界、特に漣に至っては激怒していた。で、結局逃げられたという。
しかも、紫魄は躑躅への恋心を認識し、罪悪感の嵐に飲まれて発狂して阿蘭と雲仙を半殺しにしかけたので俺が止めに行った。他にも被害は甚大だった。
某月某日
躑躅は津国に逃げ延びたらしい。津国王妃に保護されたとあっては手が出せない。今は見守るしかない。
某月某日
楓々が食われた。いや、物理的にではなく--いや、物理的に?王妃が泣いて怒っていた。もう、徳妃と秘密裏に結婚させた方が色々と平穏な気もするが。秘密裏なのは、まだ徳妃が『後宮』を卒業出来ないからだ。一応、世間的には王である俺が夫だ。その状態で別の女性と結婚したら重婚だし、処罰対象になってしまう。一応、『後宮』の真の成り立ちを知る者達からすれば有り得ないが、王の寵愛を受けているという事で彼等を守っているからには、秘密裏でないと困るのだ。ただし、結婚と夫婦という関係が秘密裏であって、妻は妻、よく言う日陰の身とか妾とかそういうのではない。
某月某日
四妃の一神--淑妃の所に騒がしい客が来ているらしい。何でも、あの貴族の末娘だそうだ。かなりの高慢な我が儘娘だが……なんというのだろう?普通の我が儘娘とは違う感じがする。
某月某日
あの貴族の末娘と大喧嘩しながらも、なんだかんだと結局面倒を見ている淑妃。そういえば、あの娘は紫魄が手引きしたらしい。いや、手引きとは正確には違う。元々始末をしようとしていたのだが、ふと気が変わって淑妃に渡したとか。まあそうでもなければ、あの『後宮』には入れまい。
某月某日
そういえば、あの少女は紫魄の愛神だった少女--躑躅が逃げるのを手伝った少女な筈。それを生かしておくとは、紫魄にも思う所があったのだろう。まあ、殺すには惜しい少女だ。どうせなら王妃の侍女になってもらいたい。実家は色々と終わっていて最悪だが、あの少女は思わぬ拾いものだ。
某月某日
あの少女が家出をしてきた。なかなか行動力のある娘だ。あと、王妃と少女--紅藍は気が合うらしく、仲良くしている事が多い。やはり侍女にしよう。
某月某日
紅藍が地方の領主の後妻として嫁いだ。こちらも手が離せず、その情報を掴んだ時には、もう終わっていた。事情を知った淑妃が気も狂わんばかりになっていると聞く。紫魄も同じ境遇だからか。怜悧冷徹冷酷な紫魄にしては、淑妃に優しかった。
某月某日
夫を失い、領主の証を手に紅藍が戻って来た。跡目争いで民が巻き込まれるのを防ぐ為だったらしい。
某月某日
紅藍の姿が消えた。
某月某日
淑妃が紅藍を監禁していた。しかしそれを知った時には、彼女は王妃によって助け出されていた。そして王妃は楓々と一緒に紅藍を逃がしてしまった。
彼女は此処に留まった。それは正しい選択だった。彼女も共に逃げていれば、海国上層部が何神も追いかけただろう。それこそ、国を挙げての大捜索が始まった。それに気付いた四妃達が悔しそうにしていた。もし一緒に逃げていれば、きっと紅藍と楓々もすぐに捕まっただろうから。
某月某日
彼女達は凪国まで逃げたらしい。あと、以前逃げた躑躅も津国へと逃げ延びている。どちらもこちらからは直接手が出せない。淑妃と徳妃が恐ろしいと貴妃から話があった。しかし、これはこちらがどうにか出来る事ではない。まあ、どちらも情報収集だけはしっかりと行っておこう。付けいる隙があればそこにつけ込み、代償として彼女達の身柄を確保すれば良いから。