1・いじめっ子
空はいつも表情を変えている。
毎日写真を撮っていても飽きない。
同じ晴天でもどうしてここまで違うんだろうか。
カメラを下ろそうとしたら、腕が柔らかいものに触れた。
「ぅ・・・ん。」
あ、先輩もう寝てる。
おでこを触っちゃったけど、ちょっと唸っただけだった。
膝の上にある頭がごろんと寝返りを打つ。
あぐらから落ちないで寝返り打てるなんて器用だなぁ。
少し短めの髪を撫でてみる。
・・先輩の寝顔ってホント綺麗だ。
最近は綺麗というより可愛いと思うようになった。
くっきりと整った眉毛も、形のいい唇も無防備な寝顔になると可愛くなる。
これで先輩が女の子らしい性格だったら絶対モテてるのに。
普通スカートでねっころがらないよな・・。
めくれても気にしないし、口調も勇ましいし。
この屋上がなかったら、先輩と関わることはなかったかも。
「ん・・くはぁぁ。」
起きた。
大口を開けて欠伸をしている。
せめて手で押さえろよ。
おまけに大きく伸びをしている。
まるで猫みたいだ。
キリっとした大きな目も、小さな獣を思わせる。
「涼、膝痛くない?」
「大丈夫。」
いつも載せてるし。
まだ眠いのか、目尻が下がっている。
目を擦って覚まそうとするが、なかなか目が開かないらしい。
ホント可愛い。
先輩のこういう行動はよく見ないと発見できない。
さりげなさ過ぎるのだ。
自然体なのだろう。
そして俺はどうしてもこういうのを見ていると
「−先輩。」
「ん?」
「おはようの、キス」
「はぁっ?!」
いじめたくなる。
先輩は案の定赤くなっている。
俺も恥ずかしくないわけじゃない、でも表情に出ないから優位に立てる。
表情が変わらないって便利だ。
この頃は先輩に見抜かれてる気がしなくもないけど。
「そんなことはしなくていいっ。」
後ろを向いてしまった。
それでも、可愛い。
「嫌、なんだ。」
「そ、そういうわけじゃ・・っ!」
振り向いた先輩の口を捕らえる。
「おはよ、先輩。」
「・・はよ・・。」
耳まで赤くしちゃって。
ホント慣れないなぁ。
−こんな先輩にも、困らされる時はあるんだけどね。
つづくー。