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かけっこ

ファーストステージが終わって休憩中、わたしはいろんな人から声をかけられた。

「きみは勇気がある!」

「立派だ!」

「すばらしいわ!」

みんなからほめられる。貴族として当たり前のことをしただけなんだけどな。ふふふ、ちょっと鼻が高い。

「ケッ!いい子ぶりやがって!」

毒づかれてビクッとなる。振り向くと最初に隣にいたヤクザっぽい風体をした巨躯きょくの男がわたしをにらんでいた。番号は13だ。かおこわっ!頬と頭に刀傷がある。出入りの時にやられたのかしら。

「この先も誰かに身代わりになってもらおうって魂胆だろ?見え見えだぜwww」

「邪推よ。あなたは心が歪んでる」

「なんだとこのガキっ!」

「なによ!」

家名に傷がつくような侮辱を受けた場合は反論しないといけない。パパの教えだ。口喧嘩も場合によっては決闘に発展する。いちおう格闘技全般習ってるけど戦うつもりはない。絶対に勝てないのはオーラでわかる。あいつ人を何人か殺してるわね。手練れだ。決闘になりそうになったら「今日はここまでにしといてあげる」って逃げよう。わたしが怯むことなくまっすぐ13番の目を見つめると、目をそらされチッと舌打ちされた。

「そんなんじゃぜってぇ生き残れるねぇぜ!生き残れるのはオレみてぇな悪魔だけだ!」

言い放ってぷいっと去っていく。確かに悪魔のツノと翼としっぽが似合いそう。

「もう!なんなのよ!」

あたしは腕組みして怒って見せた。いい気分を害されてご機嫌ななめだ。若い女性2人が声をかけてきる。

「あなたが可愛いから絡んできただけよ」

「世間ではよくあること」

「別に可愛くないけどね」

わたしは髪の先をねじる。壁際で他のスタッフと話し込んでいたうさぎマンがみんなの前に立つ。休憩は終わりのようだ。

「セカンドステージはかけっこです。脱落者は49名とします」

北側の壁が真ん中で割れて開いた。

こういう仕掛けか!広大なステージが姿を現す。

デスゲームなのにステージは明るい色でデザインされていた。ドーナツやキャンディのオブジェも置いてあり、どこかメルヘンの世界を思わせる。主催者の趣味だろうか。絵本が好きそうだ。

「この白線がスタートラインです。1分後にスタートします。準備運動してください」

おのおの朝のラジオ体操のように体を動かす。

「位置について・・・よ〜い・・・・・・・どん!」

うさぎマンが手をパンッと叩くとみんないっせいに駆け出した。

坂道を駆け上っていると上から大きなボールが転がり落ちてきた。軽いのか重量あるのかわからないのでかわす。受け止めたマッチョな男の人はボールの勢いに負けて下敷きになりぺったんこ。鉄球ではなくレザー製なので死んではないはず。時間的なロスは大きい。何人かボールが直撃して下敷きになってる。かわして進むのが正解だ。

坂道を登ると木株ステップだ。地面に埋められた丸太の上をステップを踏むように飛び移っていく遊具である。問題なのは真ん中の支柱から回転する横棒が邪魔してくることだ。高さの違う丸太から丸太に飛び移りながら横棒にも注意を払わないと押し出されて落下してしまう。下はネットがあるので良心的だが脱落は免れないだろう。

回転する横棒のスピードがけっこう速いせいでみんな押し出されて落下していく。棒に抱きついた人はうまく丸太に降りられなくて目が回って落下していった。

わたしは大縄跳びが得意なのでふわっと飛んで横棒をかわしながら丸太を飛び移って行った。次はクライミングの壁だ。木登りは大得意よ。

角度があるし高さもあったので体力を削られたけど、なんとか登り切る。ハンカチで額の汗を拭っているとしたから「もう限界〜!」って声が聞こえてきた。

助けを呼ぶ声には体が反応しちゃう。メガネをかけたカジュアルな服の若い女性があとちょっとのところで動けなくなっていた。持つところを間違えて登れなくなったみたい。わたしは手を差し伸べる。

「つかまって!」

ファイトーいっぱ〜つ!ってなもんで女性を引き上げる。すごい軽かった。ガリガリにやせてるからだ。女性は顔を輝かせる。

「ありがとう!」

「どういたしまして!」

上に登って少し走るとゴールだった。セカンドステージクリアだ。脱落者はどんどんドクロ部屋に連れて行かれる。生き残った参加者は安堵のため息をもらした。

わたしもホッとした。

「10分休憩にします。ドリンクをどうぞ」

うさぎマンは懐中時計時計を取り出して参加者に支持する。壁に時計はあるのに懐中時計をいちいち出すのは自慢したいのかな。聞いてみたらそうだった。高い懐中時計らしい。

ネコのマスクを被った女性がドリンクコーナーにいた。ダイヤ、クローバー、ハート、スペードのマークが入った紙コップにスポドリが入ってる。

わたしは2杯お代わりした。さきほど助けた女性が声をかけてくる。

「あたしはハカセ。よろしくね」

「わたしはアリス。お見知りおきを」

スカートの裾を両手で軽く持ち上げ、膝を曲げてお辞儀をする。カーテシーだ。

「礼儀正しいのね。あたしジーパンだからできない」

「走りにくいけどね」

かけっこがあると聞いてたらこんな格好はしてこない。体操服なら1着だったかもしれない。まあ、生き残れたからいいけどね、べつに。

わたしはハカセとファッションの話で盛り上がった。ハカセはゴスロリに憧れてるっていうから、今度、うちに来たら着せてあげるって言った。

「やる気出てきた!ぜったい生き残る!」

ハカセの目は炎が宿っていた。

「生き残ろうね!」

わたしも力強く同意する。










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