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不人気投票

わたしはアリス12才。家はお金持ちで大豪邸に住んでいる。

服は水色のワンピースに白いエプロン(ピナフォア)、黒白ボーダー靴下に青いリボンがお気に入りの金髪青い瞳の美少女だ。ある日、健康診断のお知らせがハガキで届いてロールス・ロイスで会場に向かった。健康診断なんて学校でも定期的に受けてるんだけど、政府が国民全員に受けさせる健康推進政策を実施したのだ。断ると警察が来て強制的に連行されるので自分から行ったほうがいい。

なんで突然、政府が国民全員に健康診断を受けさせようと思ったのかはわからないけど、まあ、損するわけじゃないしみんな粛々《しゅくしゅく》と受けている。

結果はすぐにわかるらしくて結果が悪かった人は即入院でなかなか帰ってこない人もいるみたい。よっぽど体を悪くしていたのかしら?早期発見できて国が入院費用まで見てくれるっていうんだからお得ではある。

会場は全国の総合体育館やアリーナだ。ロールケーキを半分に切ったような形の総合体育館に着くと丸い番号札を渡された。1番だ。ラッキー縁起がいい。中に入ると健康診断の受診者は朝礼の時間みたいに整列させられていた。友人、知人の顔を探すがいない。残念だ。さびしい。しゅん。時計を見ると9時ぴったし。健康診断開始の時間である。

入り口の扉からうさぎのマスクをかぶった赤いジャケットの蝶ネクタイをした男が登場した。

「みなさんこんにちは!司会のうさぎマンです♩」

うさぎマンは笑顔の横で両手を開いて見せた。司会ですって?たしかにバラエティ番組の司会みたいな格好してるけど、クイズでもはじめるつもり?

健康診断の受診者が多いから案内人という意味かしら。

「こんにちは!」

いちおうあいさつを返す。横にいる図体のでかい凶悪な顔つきの坊主頭の男も「チィース」と返事をしていた。青龍柄のジャージ着てるし明らかに堅気じゃなさそう。あまりそばに来てほしくない人種だ。うさぎマンは高らかに宣言した。

「ではデスゲームをはじめます」

「!?」

わたしは耳を疑った。で、で、デスゲーム?

「ちょっと待ちなさいよ!」

1番先頭のわたしが抗議するしかない。

「健康診断って言われて連れて来られたのよ!おかしな冗談はやめてくれる?」

腰に両手をあててうさぎマンをにらむ。

「そーだそーだ!」

「ふざけるな!」

「ジョーダンがすぎるぞ!」

「趣味の悪いドッキリはやめろ!」

みんなが騒ぎ出すとうさぎマンは神妙な顔つきになった。マスクしているから表情はわかんないんだけど、わたしにはそう見える。

「わかりました。ちゃんと説明しましょう。いま世界各地でデスゲームが行われています。これは選別です。地球は人口が増えすぎました。大気汚染が大問題になっています。資源の奪い合いで戦争も勃発。このままでは早晩、人類は滅んでしまうでしょう。そこで『人類保存計画』が立てられました。優秀な人類だけを残すのです」

そういう設定のドッキリなのね。乗ってあげるわ。

わたしは胡乱な眼差しを向ける。

「だれが考えたのよ?」

「えらい人です」

「ぜんぜん納得できないわ。みんなで話し合うべきよ。きっともっといいアイディアが生まれるわ」

わたしの提案に拍手喝采が起きる。もういいでしょ。お芝居はこれまで。テッテレ〜♩って小さなドッキリパネルを懐から取り出しなさい。

しかし、うさぎマンが懐から取り出したのは拳銃だ。

「逆らうものは失格にします」

「なっ!?」

みんな息を飲む。空気がいっぺんした。いままではバラエティのドッキリだと思って緩んでいた空気が一気に張り詰める。

「我々スタッフはあなたたちの生殺与奪の権利を握っています。逃げようとしたりパニクって騒いだりする人も容赦なく失格にします」

ニワトリ、シカ、ブタのマスクを被ったスタッフたちが登場する。その手にはマシンガンや猟銃、ロケットランチャーを持っている。

「・・・・・・・」

わたしは額からたらーっと汗を流して絶句した。何よこれ?うそでしょ?やばいやばい!非現実的な展開に頭が追いつかない中、ルール説明がはじまる。

「今回の参加者は100人です。魅力・体力・知力・運を競ってもらいます。脱落者はドクロ部屋行きです」

会場の西側に不気味なドクロマークが描かれた扉がある。来た時は特に気にしなかった。何かのイベントで使用してまだ掃除してないだけかと思ってた。扉からは不吉なオーラが漂っている。

「ドクロ部屋に行った参加者は基本的に処刑ですが、もったいない人材は生かします。次回開催されるデスゲームに参加できますよ。ここにいないスタッフがカメラを通してすべて見ています。がんばっていいところをアピールしてくださいね」

天井を見るとすごい数の監視カメラ設置されている。上を見なかったのでまったく気づけなかった。

「選別に生き残ったかたは帰れます。もちろんデスゲームのことは秘密です。まあ、言ったところでファンタジー小説の読みすぎだと思われて信じてもらえないでしょうけどね」

そう言えば健康診断から帰って来た人にどんな感じだったのか聞いてもあいまいな笑みを浮かべてまともに答えてくれなかった。帰って来ない人は診断結果が悪くて即入院させられている、という話もテレビで言ってただけで自分の目で確認はしてない。

入院してるんじゃなくてデスゲームで命を落としてたんだ!

「ファーストステージは不人気投票です。この中で必要ないと思う参加者の番号を書いてください。脱落者は1名とします。制限時間は30分。よ〜いスタート♩」

あたしは思わず叫んだ。

「バカバカしい!わたしが犠牲になるわ!この世界に必要ない人間なんていないんだからねッ!」

胸の前で拳を強く握る。心の炎が天に昇る龍のように燃え上がって止まれなかった。後悔はしてない。うさぎマンは両手を広げて肩をすくめる。

「おやおや軟弱な思想ですね。唾棄すべきです。連れて行きなさい」

カッパとクマのマスクを被った細いスタッフと太っちょのスタッフがわたしの両腕をつかんだ。そのまま引きずられるようにドクロ部屋に連行される。

「自分で歩けるわ!」

死刑台に連れて行かれる死刑囚の気分だ。カッパとクマは両腕を離してくれない。逃走したり暴れると思っているのだろう。わたしはそんなことしないのに。まっすぐしっかりと歩いて死刑台に向かうタイプよ。いさぎよい最期が理想なの!

「お待ちなされ。老い先短いわしが代わろう」

1人の老紳士が名乗りでる。カッパとクマは足を止めた。腕から手を離してくれる。

「おじいさんだめよ!わたしはいいの!貴族たるもの命を惜しむなって教育を受けて育ってるんだから!」

ノブレス・オブリージュ(Noblesse oblige)だ。「高貴なる者の義務」を意味するフランス語由来の言葉で、社会的・経済的に高い地位や特権を持つ者は、それ相応の社会的責任や義務を果たすべきだという道徳観である。

わたしは名家に生まれてわたしの一族はずっとお金持ちで7代遊んで暮らしてきた。

こういう時にこそ民の代わりに犠牲になるべきなのだ。

「お嬢ちゃんは天使じゃ。絶対に生き残っておくれ」

おじいさんはわたしの手をぎゅっと握って涙ぐむ。わたしに天使の輪と翼が見えてるっのかな。それ幻覚だよ。悔しいけど、このご厚意は無碍にはできないわ。

「がんばってみる!」

わたしはおじいさんの手を握り返した。

「おじいさんのお名前は?」

「鉄郎じゃ」

「鉄郎おじいさん!ありがとう!ぜったい忘れないからっ!」

気づけばわたしの目から涙があふれていた。カッパとクマが鉄郎おじいさんとわたしを引き剥がす。鉄郎おじいさんはドクロマークの扉の向こうに消えていった。

「とんだ茶番でしたね。ファーストステージは終了です。5分休憩にします」

うさぎマンはポケットから取り出したチェーン付きの懐中時計を確認する。

わたしはハンカチで涙を拭った。いつまでもメソメソしていられない。鉄郎おじいさんに恥じない戦いをしなきゃ!わたしの闘志に火がついた。


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