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夫婦の日常

夫婦の日常 #4 〜 裏の裏は表 〜

作者:
掲載日:2025/12/29

今日はカレー作ります。


「ねー、今日はカレーでいい?」


「いいよ〜。どうせ残っちゃうから、市販のカレーでいいよ。」


うーん、なんでそういうやる気がなくなることをさらっと……。


「いんや、ツナカレーにします。作るよ。作っちゃうんだから。」


「そうなの。だったら、チキンカレーかなぁ。」


そこは、主張するんだね。


なんとか、このチキンカレー風味の流れを変えたい。


「じゃあさ、とりあえず、買い物行かない?玉ねぎとにんじんくらいしかないし。」


「行こうか。」


私たちは、車でスーパーに向かう。


店に入って、青果売り場を目指して歩いていると、


「さて、野菜は……。」


ん? いない。どこいった。


周りを見回すと、ブロッコリーの前で選ぶ体勢を整えている、彼を見つけた。


んん……ブロッコリーか。サラダが食べたい?


それを察した私は、きゅうりをバラで1本選んでカゴに入れた。

千切りキャベツも一緒に。

あ、ミニトマトもかな。


バッチリ。


一通りサラダの材料を整えて、夫の元へ向かうと、

まだ、ブロッコリーに足止めを食らっていた。


ポリ袋を手に選んでいる彼に、近づいて声をかける。


「いいのあった?」


「うーん、まぁ、これかな。」


「じゃあ、それでいこう。」

夫がカゴを覗き込みながら、ブロッコリーを入れる。


「サラダ作るんだ?いいね。」


……え?

サラダのブロッコリーじゃなくて?

何ブロッコリー?


「サラダに入れるブロッコリー、選んでたんじゃないの?」


「いやぁ?クリームシチューにはブロッコリー入れるかと思って。」


ん?どこで、シフトチェンジしたんだろう……。


「……なるほど、カレーじゃなくて、クリームシチューが食べたいのね。

ブロッコリー入ったやつが。」


「あぁ、そうか。カレーでもいいよ。サラダも食べたいし。」


よし、ここは折衷案で、クリームシチューに鶏肉、ブロッコリーを入れて、

サラダは、ツナサラダでいきましょう。


「いいよ。クリームシチューにしよう。

せっかく買い物しに来たんだから。一緒に食べるパンも買えるし。


ルーだって、カレーでもクリームシチューでもいいんだから。」


「パン?ご飯にかけないの?」


「え?パンが合うよ。……ご飯もドリアみたくなって、いけるかもしれないけど。」


「そうだね。どっちでもいけるね。」


うっ……。


「じゃあ、パンにします。シチューが残ったら、ドリアにします。チーズも買って。」


「恵に任せるよ。そこは。」


勝ち?たぶん……。


ん?どっちでもいいか。


どうでもいい抵抗に、若干反省しつつ買い物を終えて、自宅に戻る。


そして、私はクリームシチューに取り掛かる。


切った野菜を煮込み始める。顔に当たる湯気が厚いのに、

匂いに釣られてしまう。


鍋の火を少し緩めて、蓋をする。


その間にサラダの準備。

冷蔵庫を開けようとした時、


「なんか手伝おうか?」


夫が声をかけてくる。


「じゃあ、サラダ用の千切りキャベツ洗って。」


「了解。」

「きゅうりも、スライサーでシャッシャしといて。」


「了解。」

「あ、ミニトマトもあるからね。」


「……うん、まずはキャベツ洗うわ。」


「あ、そうだね。お願いします。」


私は、煮込み終えた鍋にシチューの素を溶かし入れる。


「いい匂いだねぇー。」


「うん。」


少し横目で様子を見ると、彼はきゅうりのシャッシャ中。


スライサーがカタカタずれてやりにくそうだ。

声をかけようとしたら、彼がスライサーの向きを変えて、音が止まった。


それを見届けたあとは、ブロッコリーを茹でるため鍋に火をつける。


夫は、その間にサラダの準備を整え、ミニトマトを添えているところだった。


あ、ツナサラダにしようと思ったんだ。

「ねー、ツナものせてね。」


「え?ツナなくてもいいよ。」

本当は、コーンも入れたいくらいだよっ。


「じゃあ、いいよ。私のだけツナのせるから。」


「いや、なら、俺ものせるよ。」


「うん、コーンものせていい?」


「少しね。」


夫の声を聞いて、たっぷりに決めた。

コーンをスプーンで掬い、2スプーンずつ入れる。


茹で上がったブロッコリーを添えて、完成。


楽しい調理時間が終わり、早速食事をしていると、


「パンはさ、焼かないで、柔らかいまま食べた方が好きだな。」

と、焼いていないパンを食べながら、ぽつりと言う。


「それ、焼いてないから、すごくいいってことだね。」


「はい、最高です。」


「美味しいねっ。」


食事を終えた後、私が洗い物をしていると、夫が言った。


「明日は、カレーがいいかな。」


ん、スポンジに洗剤をかけながら、返事をする。はっきりと。


「え、明日はドリアだよ。」


「……そっか。」


だって、私はもう、ドリアの舌になってる。


洗い物をしながら、少し彼の様子を覗き見ると、

彼はまた、パソコンのゲームを始めてしまいそうだ。


「ふぅ……。」息をついた後、洗い物の続き。


まだ、食べ終えたばかりのシチューの皿に水をかけたら、

すぐに流れ落ちていった。綺麗に。


水の流れる音が早すぎて、少し緩めた。


彼はもう、明日のカレーには興味はないだろう。


それでも、

ちょっとがっかりした声を聞くと、

考えてしまう。


私だって、意地を張ってみたい時も、あるんです。

いつも同じでは、いられないから。


——長い長い、人生だから。


それにしても……今日のご飯もおいしかったぁ。


大切な人と食べられるご飯は特別って、ことかな。


「恵、洗い物手伝おうか?」


「大丈夫。もう終わったから。」


こんなふうに、あたたかい言葉をくれる人と。


「じゃあ、コーヒー入れるよ。」


「うん。」






最後までお読みいただき、ありがとうございました。


夫婦の当たり前の日常の中で、

ほんの少し何かを感じながら通り過ぎた——


そんな一日を物語にしました。


そして、その中に残ったものが、

夫婦の積み重ねになる。


私は、そんなふうに感じています。

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