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ミッドナイト・ブレイカーD×M(デモンズ×メモリー)  作者: 一条信輝


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39/119

39話:決戦の扉を越えて

ついに記録塔最深部へと足を踏み入れようとするマユたち。

この学園を支配する記録局の残党たちは、未登録感情体であるユウの存在を排除すべく、再び干渉波を放って牙を剥く。

仲間を守りたいというマユの決意と、守られるだけでなく共に戦いたいと願うユウの想いが交錯する中で、最後の戦いの扉が開かれようとしていた。

それぞれの覚悟が、剣に、瞳に、声に宿る。

第39話、いよいよクライマックスが近づいてきました。

薄暗い通路を進むたびに、金属の床がきしむような音を立てた。

灯りの届かない最深部へ向かうその道は、中央制御プログラムとの戦いで荒れ果てたままだった。

焦げた匂いと火花の跡が、まるで昨日のことのように残っている。


マユは先頭を歩き、剣を片手に握りしめていた。

その瞳は前を向き、どこまでも冷静だった。

後ろからユウが、その背中を追いかけるように歩く。

存在が不安定だった彼女の輪郭は、マユの剣の光に照らされ、少しずつ色を取り戻していた。

でも、その瞳の奥には、消えかけた声がまだ揺れていた。


「マユ……本当にここから先、大丈夫かな……。」


小さく震えるその声が、通路の空気を一瞬だけ揺らした。

マユは振り向かず、低く答える。


「お前の声がある限り、俺は何度でも立ち上がる。

たとえ世界がどう記録しようと、お前を消させたりはしない。」


その言葉に、ユウの胸が熱くなる。

マユの背中が、どこまでも大きく見えた。

その時、遠くから聞こえてきたのは、誰かの足音。


「クロヤ、状況報告だ。」


レオの声だった。

通路の影から姿を現したその瞳は険しく、それでもどこか安心感を与えるものだった。

マユは剣を軽く下げ、短く問いかける。


「学園中枢部の残党の動きは。」


レオは端末を操作しながら答えた。

「中央制御プログラムを失った影響で、学園全体の感情波が大きく乱れてる。

記録局残党は、未登録感情体をターゲットに動く可能性が高い。

学園の警備網もまだ混乱してる。お前たちが一番狙われやすい状態だ。」


その声に、ユウの肩が小さく震えた。

(私がいるから、みんなが危険に巻き込まれる……。)

そんな不安が胸を締めつけた。

でも、その隣でマユが剣を握り直す音が聞こえた。


「問題ない。

俺はこの剣で、すべてを斬り捨てる。

お前は俺の後ろにいろ。それが一番安全だ。」


その言葉が、ユウの胸を強く打った。

(マユ……。)

その背中に、どこか憧れにも似た想いが芽生えていく。

(私も、あの背中みたいに強くなりたい……。)


その時、通路の奥に制服姿のエリナが姿を見せた。

その瞳はマユの背中をじっと見つめていた。

火花の匂いがわずかに漂うその場で、彼女は静かに唇を噛みしめる。


(私も、戦えるようになりたい。

あの人の背中に並んで、支えられる存在でいたい……。)


でも、その言葉は胸の奥で燻るだけで、声にはならなかった。

それでも、マユはエリナの気配を感じ取ったのか、ふと振り向く。

鋭い瞳で、その姿を見据えた。


「エリナ、お前も来るのか。」


短い問いに、エリナは一瞬だけ瞳を揺らしたが、すぐに真っ直ぐに頷いた。


「……私も、この戦いの中で自分の居場所を見つけたい。」


その声が、火花の匂いの中に力強く響いた。

マユはわずかに頬を緩める。

「なら、背中は任せる。」


その言葉が、エリナの胸を震わせた。

拳を握りしめ、小さく息を吐いた。


「私も……あの背中を信じる。」


ユウはそのやり取りを見つめながら、胸の奥で小さく笑みを浮かべた。

(私も……。)

その想いが、今まで以上に確かなものになりつつあった。


その時、マユの剣先が小さく震えた。

視線を上げると、通路の奥にかすかに揺れる紫色の干渉波が見えた。

それは、記録局残党の気配だった。

火花の匂いが、再び戦いの予感を運んできた。


「行くぞ。」


マユの声が、通路の空気を震わせた。

その声には、揺るがない決意と、守るべきものへの誓いが込められていた。

剣を強く握りしめ、仲間たちがその背に続いた。

通路の奥に紫色の干渉波が揺れ、微かな金属音が響く。

その気配は、まるで感情そのものが怨嗟の叫びをあげているかのようだった。

マユは剣を握り直し、その刃先をゆっくりと通路の奥へ向けた。

「気配がある。……奴らだな。」

低く呟いたその声には、微塵の迷いもなかった。


「マユ……私も行くよ。」

ユウの声が震えていた。

だがその瞳には、かつての怯えだけではなく、今は確かな決意が宿っていた。

マユは振り返らず、静かに答えた。

「お前の声がある限り、俺は何度でも戦う。

だが、決して無理はするな。」

その言葉に、ユウは小さく頷いた。

(この人の剣は、私の声で動いているんだ……。)

その事実が、胸の奥を温かく満たす。


そのとき、後方からレオの声が響いた。

「クロヤ。学園中枢部で感情波の異常値が増幅している。

どうやら、記録局残党が記録塔最深部へ感情波を集中させているようだ。

恐らく、未登録感情体を消去するための最終プログラムだ。」

その声には、いつもの冷静さがあったが、どこか焦りも感じられた。

マユは短く頷くと、剣をさらに強く握りしめた。

「なら、全員まとめて叩き潰すまでだ。」

その言葉に、剣先がかすかに紫色の光を放った。


「マユ……気をつけてね。」

後方でエリナが拳を握りしめていた。

その瞳には、戦う者の覚悟が宿っていた。

マユはその視線を感じ取り、ほんのわずかに頬を緩めた。

「お前も無茶はするな。背中は任せる。」

その声が、通路の奥で小さく響いた。


ユウはそのやり取りを見つめながら、小さく息を吐いた。

(私も……何かできるはずだ。)

これまで、守られることしかできなかった。

でも今は、マユの背中を見つめながら、確かに戦う覚悟が芽生えていた。

その時、紫色の干渉波が一際強く揺れ、通路全体が低く唸った。

その中央に、黒いフードを纏った数人の人影が浮かび上がった。


「やはり来たか、未登録感情体。」

先頭の人物が、冷ややかな声を放つ。

その声は機械のように無機質でありながら、どこか感情の揺らぎを孕んでいた。

マユは一歩前に進み出て、剣を構えた。

「消去命令なら、ここで断ち切る。」

その瞳は鋭く、揺るがなかった。


フードの男は静かに首を振った。

「お前の剣に刻まれた契約の魔女たちの力は、確かに脅威だ。

だが、未登録感情体はこの世界に不要だ。

お前がどれほど守ろうとしても、記録の外に存在するものは必ず排除される。」

その言葉が、ユウの胸を深くえぐった。

でも、その隣でマユが剣を強く握る音が聞こえた。


「世界がどう決めようが、俺はお前を守る。

この剣に誓った。」

その言葉に、ユウは胸を震わせた。

(私……この人に守られているんだ……。)

涙が滲みそうになったが、必死に堪えた。


その時、フードの奥から何本もの細い干渉波が伸び、通路全体を覆い始めた。

紫色の光が視界を埋め、空気がきしむような音を立てる。

マユは剣を振り上げ、その刃先に契約の魔女たちの声を宿した。

ルーナの声がかすかに聞こえた気がした。

(この剣で、未来を切り開け――。)

その声が、胸の奥を熱くした。


「ユウ、後ろに下がれ。」

マユの声が鋭く響く。

その一言に、ユウは小さく頷くと、一歩下がった。

でも、その瞳はマユの背中を必死に見つめていた。

(私も、あの背中みたいに、強くなりたい……。)

その想いが、剣士の瞳を支えた。


フードの男が右手を掲げると、干渉波がさらに広がり、マユたちを飲み込もうとした。

マユは剣を構え直し、静かに目を閉じた。

(ここから先は、俺の剣で切り開く。)

その瞳が開かれた瞬間、剣先が紫色の光をまとい、強く輝いた。


「全員、ここは俺が通す!」

その声が、通路全体に響いた。

そして、戦いの火花が再び弾ける。

紫色の干渉波が、通路を激しく満たした。

その中で、マユは一歩も引かずに剣を構え、鋭い瞳で敵の動きを見据えていた。

記録局残党のフードの男が、冷たい声で言葉を投げつけてくる。

「その剣の力は確かに脅威だ。だが、未登録感情体とともにある限り、その存在は記録の外だ。お前たちがいかに足掻こうと、排除される運命にある。」


その声が、通路に冷たく響いた。

ユウは震える身体を必死に支え、マユの背中を見つめていた。

(私は……この人の背中に守られているだけでいいの?)

その問いが、胸の奥で渦を巻いた。


だが、そのとき――。

マユの剣が、低く唸りをあげた。

契約の魔女たちの声が、その刃に宿る。

ルーナの声が静かに響く。

(マユ……この剣は、あなたの決意を映すもの。)

その声に、マユの瞳が揺るがぬ光を放った。


「世界がどう決めようと、俺の剣はお前を守る。

誰がどう排除しようとしても、俺はここに立ち続ける。」

その声が、干渉波をかき消すように鋭く響く。


フードの男が右手を掲げ、干渉波をさらに濃くし、通路全体を紫色の霧で覆った。

「ならば、その剣ごと消去するまで。」

その声が冷たく響いた。


マユの剣先がわずかに震えた。

干渉波の中から、契約の魔女たちの声が重なり合う。

セリスの声が響く。

(傷を負い、血を流しても、それがあなたの誇りになる。)

アリエルの声が微かに混じる。

(神を憎む私が、あなたの剣を信じる。)

ヴィオラの声も加わる。

(欲望を抑えてきたあなたが、その本音を曝け出す時。)


その声たちが剣に宿り、マユの刃が紫の霧を切り裂いた。

「ユウ、お前の声が俺の剣だ。」

その声に、ユウの胸が大きく震えた。

涙が零れそうになるのを、必死に堪える。


その時、フードの男の干渉波が一層激しくなり、マユの視界を奪った。

紫の霧の中で、無数の黒い影が渦を巻く。

その中心で、フードの男が右手を掲げる。

「未登録感情体は、世界にとって不要だ。」

その言葉と同時に、干渉波がユウを包み込もうとした。


「やめろっ!」

マユの剣が、その霧を切り裂いた。

契約の魔女たちの声が、刃の中で共鳴する。

(未来を信じたいという決意のキスを。)

(怒りであっても、それが誰かを守る力になる。)

(自分を赦した時、その光は開かれる。)


その声たちが、剣を通してマユの胸を熱くした。

剣先が強く輝き、干渉波を押し返す。

「お前たちに、ユウは渡さない。

この剣で、必ず守る!」


その言葉が、紫色の霧を震わせた。

フードの男が目を見開き、声を荒げる。

「ならば、その剣ごと存在ごと、消去するまでだ!」


無数の干渉波が一斉にマユへ向かって放たれる。

その瞬間、ユウが小さく声をあげた。

「マユ、お願い……私を守って!」


その声が、マユの剣に力を与えた。

紫色の霧を切り裂き、契約の魔女たちの声が剣に重なる。

(信頼、そして契約。あなたが選んだその道を、私たちは支える。)


「行くぞ!」

マユの声が通路に響いた。

剣を振り下ろした瞬間、干渉波が霧散し、光の刃が敵の中心を切り裂く。

フードの男の声が途切れ、紫色の霧が弾けるように消えた。


残響が通路を満たす中、マユは剣を構えたまま立ち尽くしていた。

その背中を、ユウは息を呑んで見つめていた。

(この人の剣があったから、私はここにいるんだ……。)

胸の奥が熱く震えた。


マユの剣がかすかに揺れ、契約の魔女たちの声が静かに囁く。

(まだ……戦いは終わらない。)

その声に、マユは短く頷いた。

剣先をゆっくりと持ち上げ、視線を前に向ける。

紫色の霧は晴れたが、その奥にはまだ暗い気配が残っていた。


「ユウ、ここからが本当の戦いだ。」

その声が、通路の空気を震わせた。

ユウは胸の奥で、小さく拳を握った。

(私も……あの背中を信じる。)


その決意が、マユの背中に新たな力を与えていた。

干渉波の霧が完全に晴れると、そこには崩れ落ちた記録局残党たちの影が、静かに横たわっていた。

火花の匂いと焦げた鉄の香りが、まだ通路を満たしている。

マユは剣を握ったまま、少しだけ呼吸を整えた。

その瞳には、戦いを越えてきた者の光が宿っていた。


「ふぅ……。」


小さく息を吐き出す。

その声が、通路の冷たい空気を揺らした。

ユウはマユの背中を見つめていた。

消えかけた存在だった自分が、こうしてここに立っていられるのは、この人の剣があったから。

胸の奥が温かく震えた。


「マユ……ありがとう。」


その声は小さかったが、はっきりと届いた。

マユは振り返らず、低く答えた。


「お前の声がある限り、俺は何度でも戦う。

だから、怖がるな。お前の存在は、ここにある。」


その言葉が、ユウの胸に深く響いた。

もう、あの日のように声が消えかけて泣きそうになる自分はいなかった。

今は、この背中が自分を守ってくれると信じられた。


「マユ。」


その声に、マユはわずかに振り返る。

ユウの瞳には、不安よりも決意が宿っていた。

その瞳を見て、マユは小さく頷いた。


「ここから先、もっと厳しい戦いになる。

記録局の本隊が待ち構えているだろう。

けど、お前の声があれば、俺は何度でも立ち上がる。」


その言葉に、ユウの胸が熱くなった。

(私……この人の剣の声になりたい。)

そう強く願った。


その時、背後からレオの声が響いた。

「クロヤ、感情波の乱れが収束しかけている。

でもまだ完全には安定してない。

記録塔最深部――あそこに何かあるんだろうな。」


その言葉に、マユは剣を握りしめ、深く頷く。

「この剣で、すべて切り開く。」


その言葉が、通路に鋭く響いた。

レオは短く笑った。

「頼もしいな。」


その声の奥には、信頼が滲んでいた。


一方、エリナは少し離れた場所でマユを見つめていた。

その瞳には、戦う者としての誇りと、少しだけ切ない想いが宿っていた。


(私も……あの人の背中に並んで戦いたい。)

その想いを胸に、エリナは拳を握りしめた。


「マユ、私も一緒に行く。

あの背中を支えたい。」


その声が、通路の奥で微かに反響する。

マユはその声にわずかに目を細め、鋭い瞳で頷いた。


「なら、背中は任せる。」


その一言が、仲間たちの胸に深く刻まれた。

火花の匂いがまだ残るその場で、マユは剣を掲げた。

紫色の干渉波が再び剣先に灯る。

契約の魔女たちの声が、かすかに刃の中で囁いた。


(その剣は、決意の証。)


その声に応えるように、マユは一歩を踏み出す。

視線の先には、記録塔最深部へと続く巨大な扉がそびえていた。

その扉には、これまでの戦いで見たこともないほどの感情波が渦巻いている。

火花が散り、扉の表面に刻まれた紋章が微かに光を放った。


(ここからが、最後の戦いかもしれない。)

マユは剣を握り直し、静かに息を整えた。


「ユウ、ここから先、絶対に目を離すな。

俺はお前の声を聞き続ける。

だから……お前も、俺を信じろ。」


その言葉が、ユウの胸を震わせた。

「うん。

私、信じてる。

だから……マユ、お願い……生きて戻ってきて。」


その声が、小さく、でも確かに響いた。

マユの剣先が一層強く光を放ち、扉の前で鋭く輝いた。

剣士としての誇りが、その瞳に宿っていた。


「行くぞ。」


その声が、火花の匂いを震わせた。

そして、剣士たちは記録塔最深部へと進み始めた。

マユの剣に契約の魔女たちの声が宿り、仲間たちの想いが一つになる。

守られるだけではなく、誰かの力になりたいと願うユウの決意、そしてマユを信じて支えたいというエリナの気持ち。

それぞれの想いが重なり合い、いよいよ記録塔最深部での最終決戦が幕を開けようとしている。

第40話では、マユたちの戦いがいよいよ決着へ向かいます。

どうぞお楽しみに。

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