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ミッドナイト・ブレイカーD×M(デモンズ×メモリー)  作者: 一条信輝


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38話: 再び灯る剣、揺れる想い

中央制御プログラムを倒したことで訪れた一時の静寂。

しかし、戦いは終わらない。

マユと仲間たちの前には、記録局の残党という新たな敵が立ちはだかろうとしていた。

ユウは自分の存在が仲間を危険に巻き込むのではないかと不安を抱きながらも、マユの言葉に支えられ、再び立ち上がる決意を見せる。

エリナもまた、マユを支えたいという想いを胸に、自分の居場所を探し始める――そんな戦いの前夜を描きました。

紫色の干渉波が霧散し、中央制御プログラムの赤い瞳が砕け散った通路に、ようやく静寂が戻った。

焦げた鉄の匂いと火花の残響が、あの戦いが確かに現実だったことを告げている。


マユはゆっくりと剣を納め、額に浮かぶ汗を指先で拭う。

その瞳は、戦いの余韻を確かめるように赤い痕跡を見つめていた。


「……終わった。」


低く呟いた声には、勝利の実感というよりも、次の戦いを見据える緊張感が宿っていた。


「マユ……。」


震える声が背後から響いた。

マユは振り返る。

そこには、まだ消えかけの存在としてかろうじて輪郭を保っているユウがいた。

干渉波で薄れていた身体が徐々に色を取り戻していくが、その瞳には不安の色が濃く残っていた。


「私……また、この世界にいられるんだよね……?」


かすれた声が、その不安を隠しきれない。

マユは黙って一歩、ユウに歩み寄った。

彼の瞳は、鋭く、だがどこか優しさを滲ませていた。


「お前の声がある限り、俺はお前を守る。」


その言葉が、ユウの胸を震わせた。

思わず涙が零れそうになるのを必死に堪える。


その時、通路の奥から金属音を立てて足音が近づいてきた。

レオが、肩から小型端末を提げて駆け寄ってくる。

その瞳には、安堵の色と同時に緊張が漂っていた。


「クロヤ! よくやったな……! 中央制御プログラムが落ちたのは、お前の剣の力だ。」


レオの声に、マユは短く頷いた。

「状況はどうだ。」


その一言が、彼の冷静さを象徴していた。

レオは手に持った端末を操作しながら、険しい顔で周囲を見渡す。


「システムの主要リンクは完全に断ち切られた。だが、その余波で記録局の残党が動き出している可能性がある。

学園中枢も混乱してる。……ここから先、ユウの存在があいつらのターゲットになるかもしれない。」


その言葉に、ユウは小さく肩を震わせた。

目を伏せ、声を絞り出す。


「私……このままじゃ、また誰かに迷惑をかけちゃうのかな……。」


マユは視線をユウに戻し、その肩にそっと手を置いた。

その瞳には決意の色が宿っていた。


「お前の声がある限り、俺は何度でも戦う。

自分を責めるな。」


その言葉が、ユウの胸にじんわりと沁みる。

かすかな笑みが、その瞳に浮かんだ。


「……ありがとう。」


その声は、震えていたが確かに前を向いていた。


その時、通路の奥から小さな足音が聞こえた。

柔らかな光に照らされ、制服姿の少女が立っていた。

エリナだった。

戦闘の余韻に微かに震える瞳で、マユの背中を見つめていた。


「マユ……無事だったんだね……。」


その声は、ホッとしたようで、それでいてどこか切なげだった。

マユは一度だけ視線を向け、わずかに頷いた。

その瞳には、戦いを越えてきた者だけが持つ静かな光があった。


エリナの胸の奥で、押し殺した想いが疼いた。

マユの背中に手を伸ばしたいのに、その距離をどう埋めればいいのか分からない。

それでも、言葉はどうしても伝えたかった。


「私……あの時、何もできなかった。

でも、今なら……今度こそ……。」


エリナの言葉は、途切れ途切れだった。

マユはその声を無言で受け止め、ゆっくりと剣を下ろした。


「お前の声も、俺の剣を支えてくれた。」


それは、マユなりの感謝の証だった。

その一言に、エリナの瞳が潤んだ。

だけど、涙はまだ堪えていた。


(私の気持ちは届かないかもしれないけど……それでもいい。

あの背中を、あの剣を、これからも見つめていたいから。)


その想いが、薄明かりの中で静かに芽生えていた。


鋼鉄の通路には、火花の匂いとともに、確かな絆の匂いが残っていた。

鋼鉄の通路に漂う火花の匂いが、戦いの余韻を色濃く残していた。

紫色の干渉波はすでに霧散し、通路の空気は張り詰めたままの静寂を取り戻している。

マユは剣を携えたまま、ユウのそばに立っていた。

その横顔には疲労の色はあっても、決意が滲んでいた。


「……ありがとう、マユ。」


か細い声でユウが呟く。

存在が不安定だった身体は、かろうじて輪郭を取り戻しつつある。

だが、その瞳にはまだ消え入りそうなほどの不安が宿っていた。


「私……ここにいてもいいのかな……。」


その声が震える。

マユは無言で視線を落とし、剣の柄を軽く握り直した。

剣の奥に刻まれた契約の痕跡が、冷たくも温かい重みとなって感じられる。


「世界がどうお前を記録しようが関係ない。

お前がここで声をあげている限り、それが俺の剣を動かす理由だ。」


その声が、ユウの胸を震わせた。

涙がこぼれそうになるのを、ユウは必死に堪える。


でも、その想いは言葉の隙間から漏れ出てしまう。


「でも……私がここにいることで、また誰かを巻き込んじゃうんじゃないかって……。

私がいることで、マユまで危険に……。」


ユウの声がか細く震えた。

マユはその声を真っ直ぐに受け止め、わずかに瞳を細めた。


「お前がいたから、ここまで来られたんだ。

だから、自分を責める必要はない。」


その一言が、ユウの胸をじんわりと温めた。

だが、その表情にはまだ不安が残っていた。


その時、足音が近づいてきた。

通路の奥から、レオが端末を肩に提げて現れた。

戦闘の直後とは思えないほど冷静な瞳が、マユを真っ直ぐに見据えていた。


「クロヤ。中央制御プログラムは完全に沈黙した。

だが、その余波で学園中の感情波が乱れている。

記録局の残党が動き出す可能性がある。」


マユは短く頷いた。

「分かった。お前の解析があれば十分だ。」


その声に、レオもまた小さく頷いた。

その瞳には、戦友への信頼が滲んでいた。


「それと……この感情波の乱れが収まるまで、ユウの存在は特に危険だ。

お前だけじゃなく、学園全体が奴らの狙いになるかもしれない。」


その言葉に、ユウの肩が小さく震えた。

マユはそんな彼女をしっかりと見つめ、剣を軽く掲げた。


「お前がここにいる限り、俺はお前を守る。

誰がどう記録しようと関係ない。

それが、この剣に刻んだ契約だからな。」


その声が、ユウの胸を強く打った。

何度も消えかけたその存在に、再び小さな光が灯るようだった。


「……マユ、ありがとう。」


その声は涙で滲んでいたが、確かな強さがあった。


その時、ふと通路の影に制服の裾が揺れた。

柔らかな光に照らされて、エリナが立っていた。

ユウの姿は見えていないはずだが、その瞳はマユの背中だけを見つめていた。


「マユ……無事だったんだね……。」


その声は、ほっとしたようで、それでいて切なげだった。

マユは一度だけ視線を向け、小さく頷く。

その瞳には、戦いの決意が今もなお静かに灯っていた。


エリナの胸の奥で、押し殺した想いが疼いた。

あの背中に手を伸ばしたい。

でも、どうしたら届くのか分からない。

自分の無力さを噛みしめるように、拳を握りしめた。


(私も……あの人の隣で戦いたい……。)


でも、その言葉は口にはできなかった。

ただ、胸の奥で強く揺れていた。


マユはそんなエリナに気づいたかのように、静かに背を向けた。

その剣先には、まだ戦いの緊張が残っていた。


「レオ、残党の動きは追えるか。」


短い問いに、レオは端末を操作しながら首を振った。


「まだ断定はできない。

だが、中央制御プログラムが崩壊したことで、隠れていた記録局の連中が動く可能性はある。

特に“未登録感情体”が狙われるのは間違いない。」


マユの瞳が鋭く光る。

その瞳には、決して折れない意志が宿っていた。


「ここからが本当の戦いかもしれないな。」


その声が、通路に鋭く響いた。


ユウはマユの背中を見つめながら、小さく胸の奥で問いかける。


(私……ここにいていいんだよね……?)


その問いは、まだ完全には消え去っていなかった。

でも、マユの剣が、そしてその背中が、その問いに答えてくれている気がした。

鋼鉄の通路を吹き抜ける風は、戦いの余韻を冷たく残していた。

あの紫色の干渉波が霧散した場所には、まだわずかな焦げ跡が残り、火花の匂いが漂っている。

マユはその通路の先を見据えながら、剣の柄を握り直した。


「ここから先は、学園の中枢部に潜んでいた残党が動き出す可能性が高い。」


低く放たれたその声は、静かにしかし確実に場を引き締めた。

ユウは一歩後ろに立ち、マユの背中を見つめていた。

先ほどまで自分の存在が消えかけていた恐怖が、まだ胸の奥に渦巻いている。

それでも、その背中を信じる気持ちだけは、決して揺らがなかった。


「マユ……本当に大丈夫……?」


小さな声で、ユウは問いかけた。

マユは振り向かず、鋭い瞳で剣先を見つめていた。

その横顔に、不安の色は一切なかった。


「お前の声がある限り、俺は何度でも立ち上がる。

この剣は、そのためにある。」


その言葉に、ユウの胸が熱くなった。

消えかけた声が、今は確かにここにあると信じられた。


その時、少し離れた場所からエリナの声が響いた。

彼女の瞳はマユを見つめていたが、その奥には複雑な感情が揺れていた。


「……私も、力になりたい。

でも、私なんかじゃ……。」


言葉が途切れる。

自分の無力さが、その声に滲んでいた。

マユはゆっくりと振り返り、その瞳をエリナへと向けた。

淡い光に照らされて、鋭さの中に一瞬だけ優しさが宿る。


「お前がいなかったら、あの戦いはもっと長引いていたかもしれない。

お前の声も、俺を支えてくれた。」


その一言に、エリナの瞳が潤んだ。

声にならない声が喉の奥で震え、でもそれは誇りのように胸を満たした。


(私だって……この人の力になれるんだ……。)


その想いが、エリナの胸に静かに刻まれていく。

その時、レオが端末を操作しながら近づいてきた。

小さな画面を睨みつけながら、険しい顔で口を開く。


「クロヤ。中央制御プログラムを排除したことで、感情波のバランスが崩れた。

それを狙って、記録局の残党が動き出しているかもしれない。」


マユの瞳が鋭く光る。

「動きは見えているのか。」


短い問いに、レオは小さく息を吐いた。


「まだ断定はできない。

だが、感情波の乱れは明らかに学園中枢部で拡大している。

特に“未登録感情体”の存在が刺激されているようだ。」


その言葉に、ユウが小さく肩を震わせた。

だが、その瞳にはもう怯えよりも決意が宿り始めていた。

マユがこの剣で何度でも守ると言ってくれたから――それが、彼女の胸を支えていた。


「私……この世界で生きること、もう怖くないよ。」


その言葉が、マユの胸に小さく響いた。

鋭い瞳を細め、わずかに剣を掲げる。

「なら、ここからが本番だ。

お前の声がある限り、俺はこの剣を振るい続ける。」


その声が、風のように通路を駆け抜けた。

火花の匂いとともに、未来の匂いがわずかに混ざった気がした。


エリナはその背中を見つめ、拳をぎゅっと握りしめる。

(私も……私にできることを見つける。)


その想いが、確かに芽生えていた。


その時、通路の奥で微かな物音がした。

マユはすぐさま剣先を向け、鋭い瞳で暗がりを睨む。

レオもまた端末を操作し、険しい顔をして声を落とした。


「……感情波に異常値が現れた。

ここから先、奴らが仕掛けてくる可能性が高い。」


その言葉に、マユは剣先をさらに強く握りしめた。

その背には、ユウの小さな決意と、エリナの胸に宿る新たな想いがあった。


「上等だ。

どんな罠でも、この剣で切り開く。」


その声が、通路に静かに響いた。

戦いの終わりと始まりが、同時に訪れようとしていた。

重く沈む通路の空気を、剣先の光が照らしていた。

火花の匂いと、未だ消えない焦げ跡が戦いの爪痕を刻んでいる。

マユはその中心で剣を携え、仲間たちの視線を受け止めていた。


「クロヤ、残党の動きが感知された。

学園中枢部で感情波の異常値が上昇している。

おそらく、未登録感情体の存在に反応して動き出したんだ。」


レオの声が低く響く。

その瞳は険しく、だが仲間を信じる色があった。

マユはわずかに頷くと、剣先を軽く掲げた。

その刃に灯る光が、闇を切り裂くように煌めく。


「ここからが本当の戦いだ。

お前たちも覚悟しておけ。」


短いその言葉に、レオは静かに頷いた。

「了解。データリンクは俺が解析する。

お前は、未登録感情体の護衛を最優先で動け。」


その声に、マユは短く応じた。

「任せろ。」


その横で、ユウはマユの背中を見つめていた。

自分の存在が誰かを危険に巻き込むのではないか――その恐怖は、まだ胸の奥で燻っている。

でも、マユの声が、剣が、その想いを何度でも断ち切ってくれた。

そして今、エリナの瞳にも、仲間としての決意が滲んでいるのが分かった。


「マユ……。」


震える声が、ユウの胸の奥から漏れた。

その声に、マユは剣を握る手を少しだけ緩めた。

振り返りもせず、まっすぐに前を見据えたまま、静かに言葉を落とす。


「お前の声がある限り、俺は何度でも戦う。

だから、怖がるな。

ここからは――お前と俺の戦いだ。」


その言葉に、ユウの胸が熱くなった。

涙が零れそうになるのを必死に堪え、でもその瞳には、確かな光が宿った。


「……ありがとう、マユ。」


その声は震えていたが、もう怯えではなかった。

その声がマユの胸にも確かに響く。

小さく頷き、マユは剣を掲げた。


その時、通路の奥から足音が聞こえた。

金属の床を叩く、重い音。

レオが端末を睨みつけながら、低く声を落とす。


「来るぞ。感情波の異常値が、こっちに近づいてきてる。

記録局の残党か、あるいは別の存在か……。」


その言葉に、マユは瞳を鋭く光らせた。

剣先が、再び紫色の干渉波を纏う。

あの制御プログラムとの戦いの中で、彼の剣は確かに進化していた。

契約の魔女たちの声が、その刃の中に今も息づいている。


(……お前たちの力、借りるぞ。)


胸の奥で小さく呟き、マユは剣を構えた。

ユウはマユの背中を見つめ、その剣に、あの日の戦いの記憶を重ねた。

あの剣があったから、自分はここにいられる。

誰も自分の声を聞いてくれなかったこの世界で、あの剣だけが、自分の存在を肯定してくれた。


「マユ……私、ここで生きるよ。

誰に記録されなくても、私はここにいる。」


その声が、通路に小さく響いた。

マユはその言葉を剣先に刻むように、強く握りしめた。

その瞳に、決意の光が宿った。


「なら、俺もこの剣でお前を守る。

どんな敵が来ようと、記録局だろうと、この剣で切り裂く。」


その声が、通路に鋭く響く。

剣先が、かすかに紫色の光を放った。

その光は、剣に刻まれた契約の証。

そして、仲間と繋がる希望の証でもあった。


「エリナ、レオ――支援を頼む。」


その声に、エリナは小さく息を呑んだ。

(私も……この戦いの中で、何かを掴みたい。)

その想いを胸に、エリナは拳を握りしめた。


レオもまた短く頷く。

「分かった。お前の背中は俺たちが支える。

お前はお前の戦いに集中しろ。」


その声に、マユは一度だけ頷いた。

そして剣を構え、通路の奥から迫る気配を見据えた。

紫色の干渉波が、かすかに揺れている。


「ここからが――本当の戦いだ。」


その声が、通路を震わせた。

剣士としての覚悟が、今この場に示される。

その背には、仲間たちの想いと、自分が守るべき存在がある。

火花の匂いが、再び戦いの幕開けを告げていた。

マユ、ユウ、そして仲間たちは、中央制御プログラムの脅威を乗り越えたものの、学園中枢で渦巻く不穏な気配を感じ取る。

新たな戦いの幕開けを前に、それぞれの心に宿る想いが交錯し、強さへと変わろうとしていた。

次回、第39話では、マユたちの前に現れる新たな敵と、剣に刻まれた契約の力が試される戦いをお届けします。

どうぞお楽しみに。

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