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ミッドナイト・ブレイカーD×M(デモンズ×メモリー)  作者: 一条信輝


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24/119

24話:空席、ふたり分(挿絵あり)

“ただ並んで食事をする”――それだけのことが、こんなにも特別になる世界で。

第24話では、真夜とユウが初めて「昼休みを共にする」という、ささやかな日常のひと幕を描きました。


登録されていない存在。誰のログにも、記録にも、名簿にも存在しない少女――ユウ。

けれど彼女の隣に座った誰かの心には、確かに“感情”が残りはじめます。


食事の温もり、誰かに見られていた気配、そして……届いてはいけない照会の波紋。

少しずつ世界が、ふたりを“許さなくなっていく”兆しが見えはじめます。

昼休みのチャイムが鳴った瞬間、教室の空気が微かに弛緩した。

 ピンと張り詰めていた魔導投影の光が消え、生徒たちの体から緊張が抜けていく。


 


 誰かが椅子を引く音。

 鞄の中から取り出される端末のカチャリという起動音。

 交わされる私語、笑い、無言のあくび。


 それら全てが、“学園の昼”という名のリズムを紡いでいた。


 


 真夜――今は“クロヤ・マユ”という名で仮に存在している少年は、

 静かに端末を取り出し、画面を一瞥した。


 


 〈本日の学食メニュー〉


 スクロールすれば、カロリー、成分、気分推奨バランス、感情波影響率まで表示されている。


 (……学食ってのは、もう少し“適当”でよかった気がするんだけどな)


 


 選ばされた“栄養バランスランチセット”の項目に目を細めながら、

 彼はふと教室の右隅へと視線を移した。


 


 そこには、一席だけ――椅子があった。


 名前のない、生徒名簿にも感情波記録にも載っていない空席。

 けれど、そこには少女が座っていた。


 


 ユウ。


 


 誰も気づかない。いや、記録されないから“気づけない”。


 それでも、わずかに回避するような動線、視線の逸らし、妙な空白感。

 それらすべてが、彼女が確かに“ここにいる”ことを静かに示していた。


 


 「ねえ、クロヤくん。お昼、どうするの?」


 


 隣からの声に、真夜はゆっくり顔を向けた。


 ミナミ・エリナ。


 栗色の三つ編み、揺れるリボン。制服の襟元には、感情安定証の銀色バッジ。

 明るさと安定感を絵に描いたような存在だった。


 


 「決めてないけど、学食でいいかなって思ってる」


 


 「じゃあ一緒に行こうよ! 今日もきっと混むから早めに抜けよう?」


 


 エリナの提案に軽く頷きながらも、真夜は机の上に手を置いたまま、しばし黙った。


 


 「……先に行ってて。すぐ行く」


 


 「了解! 私、チョコクロワッサン先に確保しておくねー!」


 


 元気よく手を振って去っていくエリナの背中を見送りながら、

 真夜はゆっくりと立ち上がり、ユウの方へと歩いた。


 


 足音は静かだった。

 だが、その歩みには確かな意志があった。


 


 少女は、気配に気づいたように顔を上げる。

 長い黒髪が肩から流れ、机の上で揺れる指先がほんの少し止まった。


 


 「ユウ」


 


 短く名を呼ぶ。


 その響きだけが、この空間で彼女を“存在させる唯一の記録”だった。


 


 「……なに?」


 


 ユウの声は掠れ気味だったが、どこか安心しているようにも聞こえた。


 


 「昼、学食に行こうと思う。お前も一緒にどうだ?」


 


 ほんの一拍の沈黙。


 少女は少し眉を寄せて、伏し目がちに呟く。


 


 「……私、記録されてない」


 


 「それでも、席はふたり分ある」


 


 真夜は静かにそう言った。


 それは理屈でも慰めでもない、“ただの事実”として。


 


 ユウの視線が、ゆっくりと真夜の目に重なる。

 その目に、かすかに――ほんのかすかに、光が宿った。


 


 「……うん。じゃあ、“もらう”」


 


 それは、彼女がこの学園に来てから初めて見せた、“昼休みらしい返事”だった。


 


 学食はすでに、昼休みの喧騒に包まれていた。


 自律配膳機のアームが伸び、トレイを叩き、金属音を立てている。

 学生たちの声が重なり、席を巡る小競り合いがそこかしこで起きている。


 


 「ねえ、あの子……転入生だっけ?」


 「いや、名簿にはいなかった気が……」


 


 そんな噂めいた囁きが耳に届くが、誰もユウに直接言及はしない。


 “登録されていない”相手には、干渉の仕方が分からない。

 それが、この学園に染みついた習性だった。


 


 真夜は端末を操作し、食券を2枚発行する。

 ひとつは正規の自分のもの。もうひとつは――


 


 (……管理番号、仮発行)


 


 不正アクセスの記録が、一瞬だけ端末に残った。

 けれど、それでも構わないと思った。


 


 「はい、これ」


 


 トレイを受け取ったユウは、戸惑いがちに手を伸ばす。


 


 「……いいの?」


 


 「“席はふたり分ある”って、言っただろ」


 


 ふたりは窓際の席へと腰を下ろした。


 そこにはただ、あたたかい食事と、昼の光と、揺れる感情があった。


 


 そして――その一瞬の穏やかさを。


 遠く離れた記録塔の監視室が、静かに、正確に捉えていた。


 


 《異常記録検出:登録外食券発行・感情波動共鳴・照合エラー》


 “クロヤ・マユ”と、“存在しない誰か”が、同じ席で、同じ食事をしている。


 それは、記録されない者たちが共有した“昼の物語”だった。

ふたり分のトレイが、温かな湯気を立てながらテーブルの上に並んでいた。

 ガラス越しに浮遊都市の外縁部が見え、遥か下には雲海と霞んだ街の灯りが揺れている。


 この席は“静かすぎる”と言われて、いつも避けられている場所だった。


 真夜はスープを一口啜った。

 適度な塩気と温度。だが、味覚の奥で感じたのは、感情の揺れだった。


 


 向かい側で、ユウはまだフォークに手をつけていなかった。

 じっと、自分のトレイを見下ろしている。


 


 「……変な感じ」


 


 ぽつりと、彼女が言った。


 


 「食べるのって……こんなに、“誰かと並んでる”感じがするんだね」


 


 「そういうものだ。たとえ黙っていても、同じものを食べるってだけで、意識は繋がる」


 


 「じゃあ……“記録されない感情”も、誰かと一緒にいれば、残ったりするのかな」


 


 真夜は言葉を選んだ。


 


 「残るよ。……俺が今、それをしてる」


 


 ユウはようやくフォークを持ち、スープを一口。

 その瞳が微かに揺れた。


 


 「……あったかい」


 


 ただの一言だった。


 でもその言葉に、“誰かと同じ時間を生きている”実感が宿っていた。


 


 周囲では、他の生徒たちが騒がしく食事をとっていた。


 だが、そのざわめきの中に――明らかな“違和感”があった。


 


 「……ねぇ、あの席、空いてたよね? 前まで」


 


 「え? いや、なんか……誰かいたような……」


 


 複数の生徒が、ふたりの席をちらちらと見ては、目を逸らす。


 けれど、誰も「ユウ」という名前を口にすることはない。

 記録がないのだから、彼女は“学園の中にいないことになっている”。


 


 ――それでも、空気が彼女の存在を“感じて”いた。


 


 そのとき、ひとつ離れた席に座っていた生徒が、紙ナプキンを落とした。


 風に流されたそれが、ユウの足元へ滑ってくる。

 彼女は無言でそれを拾い、静かに差し出した。


 


 受け取った生徒が一瞬、戸惑い――それから、気づいたように目を細めた。


 


 「……ありがとう、えっと……あれ、君……」


 


 言いかけて、止まる。

 名札がない。登録もない。端末で顔認識も反応しない。


 


 「……ごめん、誰だっけ」


 


 「あ、いいの。名前、ないから」


 


 微笑んでそう返したユウに、相手は戸惑いながらも頭を下げ、去っていった。


 


 真夜はスプーンを止めた。


 


 「……平気か?」


 


 「うん。でも……“消えそうだな”って、ちょっと思った」


 


 「消えない。俺が覚えてる」


 


 真夜のその言葉に、ユウの目が揺れた。


 それは、少しだけ涙を含んだ光に近かった。


 


 「……変だね。記録もされてないのに、“覚えてる”って、安心するなんて」


 


 「記録が全てなら、人間はいらない。

  でも、“誰かの記憶に残る”っていうのは、生きてるってことだ」


 


 その言葉のあと、ふたりの間に小さな沈黙が流れる。

 食器にスプーンが当たる音、スープの湯気、漂うパンの香り――すべてが、平和だった。


 


 だが。


 


 その昼の空間を遠く離れた場所――記録監査局・中層観測室では、緩やかな異変が進行していた。


 


 「クロヤ・マユ補助監査官が、登録外IDで食券を発行?」


 


 「はい。対象名義は不明、端末上の身元照合に失敗しました。

  だが同時刻、学食内で“感情共鳴波”が発生しています。強度:E-2」


 


 「記録対象は……?」


 


 「共鳴波片方が、存在しません。“未登録”と判定されています」


 


 監視官たちが顔を見合わせる。


 


 「未登録のまま、誰かと感情を交わした? ……そんなことが、できるはずがない」


 


 「だが、感情は確かに“残っている”」


 


 誰かが呟く。


 誰かが、不安を覚える。


 


 ――それは、まだ小さなさざ波だった。


 けれど、確かに制度の水面を揺らし始めていた。


 


 学食の隅、窓際のテーブル。


 そこには、**記録には存在しない“昼休みの風景”**が、確かに広がっていた。


 


 空席ではない。


 そこには、“ふたり”がいた。

昼休みが終わりに近づくと、学食のざわめきは潮が引くように静まっていった。

 清掃ゴーレムが自動で椅子を戻し、返却されたトレイの片付け音だけが残る。

 その中に、静かに立ち上がるふたりの姿があった。


 


 真夜とユウ。

 食器の温もりがまだ指先に残っている。

 けれどその温度は、まるで幻のように、確かな実感を残しながら失われていく。


 


 「……ありがと」


 


 ユウが呟いた。

 それは、午前中にはなかった声音。

 体の芯に少しだけ、色が差し込んだような気配。


 


 「気にするな。……席がひとつだけだったら、俺が立ってた」


 


 ユウが目を瞬かせ、小さく笑う。

 笑顔はまだ不器用で、それでも確かに“ここにいること”を肯定していた。


 


 ふたりが学食を出ようとしたそのとき――


 


 その反対側。通路奥の列の隅で、ミナミ・エリナがひとり、席に座っていた。


 


 彼女の前には、ふたつ分のパン。

 そのうちひとつ――チョコクロワッサンは、誰かのために取っておいたはずのものだった。


 


 手にした紙カップのココアをかき混ぜながら、彼女はささやく。


 


 「……来ないんだ、クロヤくん」


 


 その声に怒気はなかった。

 あるのは、ほんの少しのさびしさと、肩すかしを食らったような脱力。


 


 ふと、彼女の目がガラス越しに動いた。


 


 ――窓の外、通路を歩く真夜と、黒髪の少女。


 


 エリナはしばらく目を細めて、それから首をかしげる。


 


 (……あれ? 今の子……)


 


 記録にない顔。


 視認端末も何の反応も返さない。

 名前も浮かばない。ログにも表示されない。


 


 でも、心のどこかが“見たことがある”と訴えていた。


 


 「……なんでだろ。ちょっとだけ、悔しいな」


 


 誰に聞かせるでもないその言葉は、湯気に溶けて消えた。

 けれど、感情は確かにそこに残った。


 


 真夜とユウは、講義棟へと続く回廊を並んで歩いていた。


 真昼の光が天窓から降り注ぎ、影が足元をゆるやかに滑っていく。


 


 「ねえ、さっきの子……」とユウが口を開いた。


 


 「うん?」


 


 「お昼、私のこと“見ようとしてた”気がする。

  たぶん……初めてのこと、かも」


 


 真夜はしばらく黙っていたが、やがて応えた。


 


 「エリナは、感情の反応が強い。……無意識に、お前を感じたのかもな」


 


 ユウはうれしそうで、でもどこか不安そうでもあった。


 


 「……私、“いない”のに、どうしてそんなことが起こるんだろう」


 


 「“いる”からだよ。……少なくとも、俺の中ではな」


 


 そう答えたときだった。


 前方から足音が近づいてきた。


 


 制服の襟を正しく整えた少年が、歩くたびに視線をまっすぐに向けてくる。

 キサラギ・レオ。


 記録波監視の統括生徒にして、感情倫理分野の“異物”検出に長けた男。


 


 「……学食、静かだったか?」


 


 真夜とレオの視線がぶつかる。


 言葉は柔らかいが、明らかな“探り”があった。


 


 「まあ、悪くはなかった」


 


 「俺の端末だと、あの席で“共鳴波”が出てた。

  高密度。しかも、“ふたり分”」


 


 レオがホログラムを展開する。

 淡い青と赤の波形――そのひとつに照合エラーの警告が重なっていた。


 


 「ひとつは君。もうひとつは……“誰でもない”。

  システムにとっては、“いなかった”ことになってる」


 


 ユウがわずかに身を引く。


 真夜は、その前に一歩踏み出した。


 


 「波形のノイズだろ。混んでたし、感情の残滓だって可能性がある」


 


 「可能性……そうかもしれない。

  でも、不思議なんだ。俺、誰かの“視線”を感じたんだよ」


 


 レオの言葉に、真夜の拳がわずかに強張る。


 


 「記録にはない。顔も、名前も。

  でも、確かに“そこにいた気がする”――

  ……それって、おかしいと思うか?」


 


 レオは歩を進めながら問う。


 


 「君の隣にいたあの子、誰だ?」


 


 問われた瞬間、真夜は言葉を飲み込んだ。


 ユウは、じっと彼の背を見つめている。


 


 けれど、沈黙の中でレオは答えを得たようにふっと笑う。


 


 「記録されていないものに、名はない。

  でも、記憶には“名前のようなもの”が残る」


 


 そう言って彼は踵を返した。


 


 「安心しろ。今はまだ、観測中だから」


 


 その背中が曲がり角に消えるまで、真夜は言葉を返さなかった。


 


 ふたりきりの廊下に、静寂が戻る。


 ユウがぽつりと尋ねた。


 


 「……怖くない?」


 


 「なにが?」


 


 「“いないのに、誰かに見られる”って」


 


 真夜はしばらく考え、それから答えた。


 


 「怖くない。むしろ……それは、存在してる証拠だ」


 


 ユウは、目を細めて微笑んだ。


 


 「……じゃあ、私、“ここにいていいのかな」


 


 「ああ。もちろんだ」


 


 ラグナが、真夜の背で微かに震えた。


 それは、記録されないままの“感情”が、確かに世界を揺らした証。


 


 廊下の奥、静かな陽光の中に――

 ふたり分の影が、しっかりと並んで伸びていた。

その日の午後、講義棟の片隅――

 生徒が立ち入らない“感情波観測室”の第二分室では、いつもと違う静寂が広がっていた。


 挿絵(By みてみん)


 蛍光の魔導照明が淡く灯り、複数の端末が無人で処理を続けている。

 数値、波形、グラフ。規則的な鼓動のように感情の流れが画面上に記録されていた。


 


 その中心に、ひとつだけ異質なファイルがあった。


 


 【照合不能波形:E-00428】

 【関連端末ID:クロヤ・マユ】

 【共鳴反応:感情同調率83.7%】

 【対象:未登録】


 


 照会不可能。

 登録されていない。

 認識できない。

 だが、確かに“誰か”と感情を交わしていた。


 


 「……出たな。今日もまた、“名前のない共鳴波”が」


 


 低く、抑えた声で呟いたのは、キサラギ・レオだった。


 彼は端末の前に立ち、背筋を伸ばしたまま、無言でファイルを展開していく。


 


 「明らかに不自然な波形。

  記録反転とは異なる。これは“未記録干渉”――感情が対象から発されているのに、ログが追いついていない」


 


 彼の手が動く。

 照会フレームの中に、新たな項目が打ち込まれる。


 


 【推定対象:不明(視認情報あり)】

 【記録処理:保留】

 【識別名(仮):空席感応体・ユウ】


 


 “ユウ”――誰にも知られていない仮の名。

 それを、レオはあえて記録端末に“打ち込んだ”。


 


 「存在しないまま、存在しようとする……か」


 


 彼の声に、感情はなかった。

 だが、わずかな共鳴がその瞳に滲んでいた。


 


 (記録は、全てを測れるわけじゃない。

  だが、無視するには――彼女の波形は、強すぎる)


 


 レオは報告用の音声記録を起動した。


 


 【記録報告:第24講義日 第三報】


 「対象:クロヤ・マユに連なる未登録存在の確認。

  仮識別名“ユウ”と称す。

  本日昼休み、学食東端の席において、共鳴波形を観測。

  同調率は基準値を超過。視覚的確認あり。

  ただし登録照合不可、魔導感情ログへの記録拒否反応が発生。

  これにより“記録阻害対象候補”として初回照会を申請する」


 


 報告の最後に、レオは一瞬だけ口をつぐんだ。


 


 (本来、報告しないこともできた。

  けれど、これは“俺の判断”じゃない。……あのふたりが、進むのなら――)


 


 「……俺の“役目”は、観測だ。追わない。

  ただ、記録するだけだ」


 


 そう言い残して、レオは端末を閉じた。


 


 一方その頃――


 


 ユウは講義棟の渡り廊下で、ひとり立ち止まっていた。

 真夜と別れてから、初めての“独り”。


 


 眼下には緑と人工湖が広がり、空を漂う魔導霧が静かに流れている。


 


 人の波から離れたその空間で、ユウは自分の存在を、手のひらのように確かめていた。


 


 「……見られてた、よね」


 


 誰に、とは言わない。

 でも、自分に“目が向いていた”ということだけは分かる。


 


 「なんで、私……ここにいちゃ、いけないのかな」


 


 その声に、誰も答えない。

 でも、空気だけが、そっと彼女の髪を揺らした。


 


 (“記録されない”ってことは、“消える”ってこと?)


 


 胸の奥に小さな痛みが走った。


 それは、スープのぬくもりと、クロヤ・マユのまなざしが教えてくれたことと、反する感情。


 


 「……でも、あったかかったな。今日」


 


 その言葉に、風が優しく吹き返した。

 ラグナが、遠く離れた場所で微かに震えていた。


 


 まだ誰にも知られていない、けれど確かに“名を持ち始めた存在”が、そこにいた。


 


 だが――


 


 彼女に向けられた“照会”は、すでに記録網の中に放たれていた。


 静かに。正確に。感情を伴わず。

 けれど、確実に、“彼女を捕まえるため”の第一歩だった。


 


 終わりはまだ遠い。

 だが、“始まり”は、もうとっくに過ぎていた。

ご覧いただきありがとうございました。

第24話は、“学食で一緒に食べる”という一見穏やかな場面の中に、

ユウの存在が揺らぎながらも“確かにここにいた”と感じられるような時間を描きました。


一方で、すれ違ったエリナの心の揺れ、

レオの観測者としての冷静な判断、

そして学園が静かに動かしはじめた“未登録者への照会処理”。


少しずつ、少しずつ、“普通”という日常が崩れていきます。


次回、第25話――

日常に戻ったようで、どこか歪みはじめた学園生活が、また新たな感情の扉を開きます。

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