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その温かな手を離す日は近い  作者: キムラましゅろう


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その後の事〜答え〜

『そうだよミルル、大好きだ。どうか俺と結婚して欲しい』



ハルジオから告げられた、プロポーズの言葉が頭から離れない。


あの後、いっぱいいっぱいになって何も考えられなくなったミルルをまた抱き上げて、ハルジオは病室へと送ってくれた。


そして「返事は急がないから、ゆっくりと考えて」と言って帰って行った。



「…………………………………………」



結婚? 誰が? 誰と?


「わたしと……ハル先輩が……?」


その瞬間、ミルルの頭の中で大聖堂の荘厳な鐘の音が響き渡る。


ーーいやいやちょっと待って!


ミルルは頭をぶんぶん振り、慌てて鐘の音を打ち消した。


「ハル先輩……本気なの?」


俄には信じられなかった。

ミルルがハルジオに淡い恋心を抱いていたとしても、ハルジオはそうではない。


大好きだと言ってくれたがそれは後輩として可愛くて大好きという事に違いない。


……それが何故急に。



ーー責任を取って退職される事ばかり考えていたから、これはかなり想定外だったわ……

でも良かった、責任を取って辞めようと思ってるんじゃなく、…て………


“責任を取る”という言葉をきっかけに、

ミルルはある事に気付く。


ーー違う、ハル先輩は……



ハルジオは変わらず責任を取ろうとしている。


それは退職する事ではなく、

傷と後遺症の所為で結婚を望めなくなったミルルと結婚をする……そういう形で責任を取ろうとしているのではないだろうか。


そう考える方がハルジオらしい行動だ。


退職すればミルルとは無関係になりそれで終わり。


でも誠実で責任感の強いハルジオなら、それは選ばないだろう。


結婚して側にいて一生ミルルに尽くす……精神面でも身体面でも経済面でも……それこそが責任の取り方だと、ハルジオなら考えるのではないか。


ーーどうしてそこまでハル先輩が背負わなくてはいけないの……!


ミルルは胸苦しさを感じた。


皆でハルジオに責任を取れと追い詰める。

ハルジオに残された道はミルルと結婚する他ないではないか。




そして、ミルルのその考えを裏付けするような情報が、お見舞いに来たレアからもたらされた。


「検務部長と課長が減俸処分ですって」


「え……」


「まぁ上の人はね、責任を取る為にいるんだからね」


聞かされた事実に、ミルルは言葉を失う。


「そんな……」


ーーじゃあハル先輩は?ハル先輩はどうなるの?


顔色を悪くするミルルの気持ちを慮ってか、レアは包み隠さず正直に言った。


「今回は上の人が責任を取ったから、バイス先輩が直接的に責任を問われる事はなくなったわ。でも……」


「でも?」


「バイス先輩以外でも、あの魔術札のトリックを見抜けなかった職員は皆、何かしらの処分を受けるべきだという声がチラホラあるの」


「そんなっ、じゃあもちろんわたしも処分対象よね?」


「ミルルは新人だし、何よりもその身に酷い傷を負ったのだから、誰もこれ以上追及をする事はないと思うわ」


「でもね、安心して。そういう声があるだけで、部長と課長が責任を取ってこの件はもう終わりになると思うわ」


「そう、なの……?」


「うん。情報部のレアさんが言うんだから間違いないわよ」



ミルルはレアに、どんな些細な事でもいいからこれからも色々と教えて欲しいと頼んだ。

レアは力強く頷いて了承してくれた。



レアが病室を去った後、ミルルは目を閉じて様々な事を考える。


責任。

ハルジオは公的に責任を取らされる事はないだろうとレアは言っていた。


だけど周りの人間が、何よりハルジオ自身が、それを良しと思っていない。



「…………」



それなら、それならば、ハルジオの立場を考えて、責任を取らせてあげるべきなのだろう。


ミルルを妻に迎える事でハルジオが責任を取った事になるのなら、それにより今後魔法省でハルジオが肩身の狭い思いをせずに済むのなら、それに従おうとミルルは思った。



ーーでも、ハル先輩……リッカ先輩の事はいいのかしら……


二年後、リッカが戻ったらきっとやり直す筈だと職場の人が言っていた。


でもミルルと結婚してしまったらそれが叶わなくなってしまう。



……ハルジオなら、自分の気持ちに蓋をするのだろう。


リッカへの想いを捨てて、自分の幸せを犠牲にして、ミルルへの献身とするのだろう。



「そんなのはダメ。誰も幸せになれない」


……二年だ。


リッカがこちらに戻るまで二年間だけ、ハルジオの妻となり、この件を終わらせよう。


二年後、ミルルの有責という形で離婚すれば、ハルジオは誰にも責められない。


むしろちゃんと責任を果たしてご苦労様くらいに思って貰えるはずだ。


それが一番いい、ミルルはそう思った。



ハルジオの求婚を受ける。


もう決めた。



つきん、胸の痛みを感じる必要はない。


ミルルにしてみれば期間限定でも仮初めでも、大好きなハルジオの妻になれるのだ。


もう結婚なんて望めないと思っていたくらいだ。

それを想い人と結婚出来るなんて夢のようではないか。


ーーごめんなさいハル先輩、ごめんなさいリッカ先輩。

もうこうするしかないの、こうするしか……




ミルルは次の日、


病室を訪れたハルジオに、


プロポーズを受ける旨を伝えた。


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