旅の途中
君は、今どこで何をしているのか…。
何に対して悲しんで、嘆いているのか…。
どれを怖いと思って、どれが君の宝なんだろう…。
君は一体、何を守ろうとしているんだ??
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「ここが…華街か…」
夕日が沈み、薄暗さが増してきた夜。
少年は一人、佇んでいた。
背は150cm位だろう。
大きなフードを被っているが、フードの隙間から見える大きな瞳は、まだ幼さを見せる。
すぐそこにあった家に自分の身を委ね、しばらく待っていた。
同じく旅をする事になった仲間を待っているのだ。
少年は、何かを思い出しているかのように明後日の方向を向いた。
その蒼い瞳には懐かしむような、悲しむような…そんな色がにじみ出ていた。
その時、不意に声がする。そして、少年の名を連呼する。
「レクト、レクト、レーーークト!!」
「一回言えば分かる…。んで、宿は取れたの??」
「バッチグー!!俺様に出来ない事は無いんだぜ!!」
少年──…レクトは黄緑色の髪の毛をした少年の下へと歩き出す。
ため息まじりであるくレクトより、その少年の方が年上であろう。
身長も160cm後半位…レクトと並ぶと結構凹凸がハッキリする。
「レクト、ため息ついてるとシアワセが逃げるぞーー??」
「シスカはもう少し物事をちゃんと考えるようになってくれよ…」
シスカと呼ばれた少年はプッ、と頬を膨らますとレクトにのしかかり──簡単に言うとおんぶする前の状態──小言を吐いた。
「なんだよー…俺様は、人見知りの激しぃーレクトに変わって宿探したり、買い物行ったりしてやってんのにさーー」
「ひ、人見知りじゃないッ!!」
レクトは自分にのしかかってきたシスカを振り払った。
それでも、またシスカはレクトにのしかかる。
「じゃーー、何だって言うのさ」
「そ、それは………」
諦めたようにシスカの体重に耐えながら再び歩き出す。
目線はシスカに合わせまいと、どこかを向く。
「それは????」
「それはアレだよ…俺は慎重だからそうゆうの決めるのに時間がかかるから…」
「ふーーん……えいっ!!」
そういうが速い、シスカはレクトの被っていたフードを取った。
レクトの顔があらわになる。
以外に、女顔で整っている。
瞳は大きく、口は桃色。肌は白すぎず黒すぎず…まぁ中間地点だろう。
不細工とは嘘でも決していえない顔立ちである。
やはり、その顔立ちに不釣合いなくらい大きい剣は特に目立つ。
「な、何するのさ!!」
「いやーー、そんな可愛いのに何故フードで顔を隠すのかな、って」
シスカは口笛を吹きながらレクトの顔を覗き込む。
そして、レクトに向かってニヤニヤしながら一言。
「それとも、恥ずかしいからイヤだった??」
その言葉を聞くとレクトは耳まで顔を真っ赤にし、なみだ目で俯いた。
さっきまで、止まることなく動いていた足も同時に止まる。
その様子を見て、シスカはヤバイという顔をして急いでフォローに入った。
「ま、まぁ恥ずかしがる事は…ね??ホラ何ていうか…悪い事じゃないし!!…ね!?」
「……べ、別には、恥ずかしく、なんて…無いもん」
レクトは既に涙声であった。
はぁー…と長いため息をつき、シスカは頭に手をやった。
「そんなんじゃ、アイツと会った時、涙腺爆発すんぞ??」
「!!!!!」
『アイツ』という単語は効果があったらしく、レクトは一生懸命に前をむいた。
どこからかふふっ、と笑い声が聞こえた。
あたりを見渡すと、すぐそこにはちょっと変わった格好をした可愛らしい少女がいた。
「だぁれ??その『アイツ』って。恋人かしら??」
そういうと、レクトの顔を覗き込む。
多少、人見知りのレクトはフイ、と目を逸らす。
「あ~らら…私より可愛い顔してるよ」
「か…可愛くなんか無いですから…」
「謙遜しちゃってぇーー。ねぇ連れの人。この女の子、何て名前かしら??」
少女の目はかなり本気のようで、レクトを女だと思っている。
それに気がついたシスカは笑いをこらえるのに必死で、その質問には答えられなかった。
──…ここで笑ったらレクトに殺される…
そう思いつつも笑いが奥から止まらない。
そして、ついに──…
「ぶっ…あっははははははははははははッ!!」
「…………」
「????」
大爆笑。
その意味が分からない少女と怒りをこらえるレクトは強くシスカを睨みつける。
そして、剣を鞘から抜き出して先をシスカの喉元へと向ける。
反射的に笑いは止まり、両手を挙げお手上げのポーズ。
「Ok、分かった。もう笑わないから剣を鞘へ戻してくれ」
「……ふん」
そう言うと剣を鞘へと戻し、またその少女と向き合った。
「あなた、強いの??」
「微妙」
と、即答。
「いやいや、強いだろ…」
「そうなの??」
「微妙」
と、またまた即答。
どうしても微妙で留めておきたいらしい。
「どのくらい強いの??」
「ドラゴンなんて一撃だぜ!!」
「嘘です」
レクトは耳を傾けずに適当に流す。
そのレクトの言葉を誰一人と聞き入れず、少女とシスカで和気藹々(わきあいあい)としている。
「あーら、以外にいける口ね」
「あんたもな。名前は??」
するとその少女は金髪の長い髪を耳にかけると鼻で笑った。
「私はエルビーク。なんて呼んでも良いわよ。気軽にエルって呼んでもいいわよ。っていうかそれ以外には認める気は無いから」
「俺様は、シスウェード。シスカって呼んでくれ、エル」
「………っていうか、エル以外に受けつけないのなら何でも良く無いじゃん……」
普段、本当に人見知りの激しいレクトは話には参加せずに後ろで小言ばかりを言っていた。
そのレクトにようやく気付いたシスカはレクトの頭をクシャクシャと撫でていった。
「コイツはレクト。こんなんで人見知り激しいけどめちゃくちゃ強ぇーーんだからなッ!!あ、ついでんに男な」
「へーー、このちっこいのが…しかも、男って」
以外、というのを口に出さなくても顔に出ている。
小さい、という単語に少し反応したが、シスカが邪魔で剣を抜く事が出来ない。
それも実はシスカの計算のうちだったのかもしれない。
「ヘー…そんなに強いの。まぁ半分信じてあげる」
「…半分って、信じてるに入るのか??」
「まぁ入るんじゃねぇか??俺様はこの目でしっかり見てるから言えるけど、まぁ普通はしんじねぇわな」
そう言ってレクトを見て、目を逸らした。
後ろに居るからさすがに切り付けるわけにはいかなかったので、シスカのみぞおちに拳を入れた。
グハッ、と少し変な声を出し後ろへとよろけるシスカ。
「なにすんだよ、レクトーー!!」
「今のはお前が原因だ…」
「だからって、みぞおちはきついぞ…」
そんなコントみたいな事をしていると少女はクスクスと笑って、紙を取り出した。
そして、それをレクトたちに手渡すといった。
「それは格闘大会みたいなものよ。優勝商品はなんと……!!…なんだっけ??」
「おいおい…そこ一番大事だろー」
「いい。別に出ない」
「恥ずかしいから??」
「………」
一瞬にしてレクトの顔が怒りに満ちた。
自分の事を知ってる人ならまだしも、知らない人に言われるのは屈辱的なのだろう。
そして、その怒りはレクトを煽るのにはちょうど良かったのかもしれない。
「あーーーぁ!!!!恥ずかしくなんてねーよ!出てやろうじゃないか!!」
「レクトが出るなら俺様もーー」
それを聞いた少女の口元は妖しく笑っていた。