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日々充実したいだけの僕と食物部の立川さん  作者: まんまるムーン
5 雨
62/62

5-14

本日、完結です。



 気が付くと三人は店の軒先に座り込んで寝ていた。繁充が目を覚ますと、右肩にもたれかかって寝ている綾女の頭が乗っていて、左肩には砂原の頭が乗っていた。繁充は安堵の息を洩らした。


「…私たち…寝てたの?」

綾女が目を擦った。そしてふと見上げると繁充の顔があった。


「ご、ごめんなさいっ!」

綾女は体を起こした。


「う~ん、何で俺こんなとこで寝てんだ?」

砂原も目を覚まして伸びをした。


「…えっとえっと…繁充くんは覚えて…るのかな…ってかアレ、全部夢?」

綾女は少し離れた所でぐるぐる回りながらブツブツ独り言を言っている。繁充はそれを見て目を細めて微笑んだ。


「なんか腹へらね? ラーメンでも食い行く?」

砂原が言った。


「うん!」

繁充も綾女も頷いた。






「…え…何で? 俺、こんなの頼みましたっけ?」

砂原は狼狽えた。店の店主が砂原に大きな中華鍋にたっぷり入ったラーメンを持って来たからだ。


「…何でって言われても…俺にも分かんないんだけど、君の顔見てたら何故か体が勝手に動いちゃったんだよ…。しょうがないからさ、コレ、タダでいいから三人で食べて!」

店主はそう言うと、首を何度も傾げながら厨房の中へ入って行った。


 そしてまたひょっこり顔を出すと、

「…なんか頭の中で誰かがさ、君たちに11杯奢ってあげてって…もううるさくてしょうがないんだよ。あと10回タダにしてあげるから来てね!」

と言って、何でも首を傾げながら去って行った。


「プッ…勝治さんだっけ? あの人、俺の言った事、守ってくれたんだな。」

砂原は噴出した。


―やっぱりあれは夢じゃなかったんだ。ってことはだよ…私の告白未遂も夢では無いって事よね? キャ~~~!

綾女は真っ赤になった。


「立川さん、顔真っ赤だよ! 熱でもあるの?」


「い…いや、これは何でもないの! さ、食べよ食べよ!」

綾女は取り皿を配った。


「そう言えば立川さん…何か俺に言いたい事があったんじゃないの?」

繁充が意地悪そうに言った。綾女は頭は恥ずかしさで火山のように噴火した。


「な、な、何も無いよっ! うん。何もない!」

綾女は耳まで真っ赤にしてラーメンを取り分けた。


「あっそ。」

繁充は綾女に取り分けてもらったラーメンをすすった。


「俺は嬉しかったんだけどね。好きな子に行かないでって泣きながら言われたこと…。」

繁充は小さく呟いた。


 ブッ

綾女は噴出した。


「ご、ごめん!」 

綾女が振り返ると、繁充は全く平然な顔をしてそんな重大な発言無かったことのようにラーメンをすすっている。


―ちょっと繁充君っ! そんな大事なこと、こんな時に言う? だいたいあなたって人はデリカシーが無いのよっ!

綾女は一人ヤキモキした。


「立川さん、どうしたの? お腹でも痛いの? 寒かったから下痢でもしちゃった?」

砂原が言った。


―キーッ砂原くんまでっ! どうして私の周りの男たちはこんなにデリカシーが無いのっ!!!


「お腹も痛くないし下痢でもないしタイミング悪すぎるしもうっ!」

綾女は鍋からラーメンをたくさん取ると思いっきりすすり上げた。





 

「あ…雪だ…」

綾女の手のひらに雪が舞い落ちた。三人が店の外に出ると、雨は雪に変わっていた。


「もうすぐ冬休みだもんね。」

綾女が呟いた。


「食物部はさ、クリスマスケーキとか作んの?」

砂原が目を輝かせて綾女に聞いた。


「作るよ~! ラグビー部にも差入れ持って行くね。」


「やり~! じゃ、俺、こっちだから。また明日な!」


「うん、また明日。」

砂原と別れた後、何となく何を話したらいいのか分からず、しばらく無言で歩いた。


「…立川さん。」


「はいっ。」

突然話しかけられて綾女は声が裏返った。


プッ

繁充は噴出した。


―そんなに笑わなくても

綾女は眉間に皺を寄せた。


「…家に着いたよ。」

繁充に言われて気が付いた。あっという間に綾女の家の前まで来ていた。


―もう少し一緒にいたかったな…。


「じゃあ、また明日ね。」

綾女はそういうと玄関の門を開けた。


 その時、繁充が綾女の手を取った。綾女は驚いて振り返った。


「…ありがと。」

繁充は綾女を抱きしめた。


「…私は…何も…その…」


「嬉しかった。引き留めてくれて。」

繁充は綾女を抱きしめたまま言った。綾女は突然の事に心臓が爆発しそうだった。


「冬休み…デートしてくれる?」


―急に抱きしめるわ、デートに誘ってくるわ、そんなタイプだったっけ、繁充くんっ! っぽくない、っぽくないっ!


「…っぽくない…。あなたは本当に繁充くんですか…?」

綾女は気づかずに心の声をつぶやいてしまった。


「ハァ…俺、立川さんにどんな男と思われてんだろ…。」

繁充は空を見上げて溜息をついた。


「だって繁充くん、女の子にグイグイいく感じじゃないもん。」


「俺だってグイグいくよ、好きな子には。」

繁充は綾女に微笑みかけた。


 雪は勢いを増していって、あっという間に二人の頭にも雪が積もった。


「この分だと…明日は積もるかな…。」


「そだね…積もったら…またかまくら作ってお餅を焼こう!」

綾女と繁充は鼻を真っ赤にして微笑んだ。


 辺りはすっかり白銀の雪景色へと変わっていった。



最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

もしかすると続きを書く事があるかもしれないので、その時はまたお付き合いしていただけると嬉しいです。そして来年はもっとたくさん投稿出来たらなと思ってます。^^b

それではみなさま、お付き合いありがとうございました! 良いお年を!

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