5-13
「ふみちゃん!」
男は叫んだ。ふみは繁充を引っ張る手を止めてその声の方へ耳を傾けた。
「ふみちゃんごめん、遅くなって。」
男は息を切らして言った。
「…勝治…さん…なの?」
ふみの目に涙が浮かんだ。そしてふみは勝治の元へ駆け寄り抱き着いた。
「勝治さん…勝治さん…」
「待たせすぎたね…。」
勝治はふみをギュっと抱きしめた。鬼の形相だったふみの顔は、ゆっくりと元の顔へ戻って行った。
繁充たち三人は呆気に取られてポカンと開いた口が塞がらなかったが、綾女が小さく拍手をした。繁充と砂原も綾女に倣って拍手をした。すると男は恥ずかしそうに頭を掻きながら三人にお辞儀をした。
「…やっと目が覚めました。どうやら私たちもあちらの世界に行けそうです。」
ふみは言った。
「ありがとう。君たちのおかげだよ。そして君! 砂原くんだっけ? 君のおかげでやっと出てこれたよ。あの石のせいで100年近く身動きとれなかったから。」
勝治は頭を下げた。
「ほんとだよ。暴風雨のなかあんなデカい石を動かして、もう冷え切ったし筋肉痛で体中痛い。中華鍋くらいのラーメンでも食べなきゃ収まらないよ!」
砂原は勝治をジトっと睨んで言った。
「ハハハハ。本当に砂原くんには世話になったね!」
勝治は笑いながら頭を掻いた。その時空から二人の元に光が射した。
「…名残惜しいけど…お迎えが来たみたいだな。」
勝治はふみに優しく目配せした。
「…私の子孫に…こんなに素敵な子が出来るなんてね…。」
ふみは繁充に微笑みかけた。
「この子をよろしくお願いしますね。」
ふみは綾女にふかぶかと頭を下げた。
「えっ? あっ! はいっ!」
綾女も深々とお辞儀をした。綾女が頭を挙げると繁充が優しく微笑みかけていた。綾女は耳まで真っ赤になった。
「そろそろ行かなきゃ…」
ふみと勝治は手を取ると、光の中へ消えていった。




