5-11
「ったくまいったな。」
タオルで体を拭きながら砂原が呟いた。雷が鳴り出したので、急遽部活が出来なくなってしまったのだった。
「砂原~、ラーメン食ってく~?」
部員たちが聞いた。
「…あ、いや、俺、今日はやめとくわ。」
いつもなら飛びついていくのに、今日に限って砂原はラーメンの気分じゃなかった。砂原は時計を見た。
―繁充どうなったかな? やっぱり親友の俺としてはノロケ話でも聞きに行ってやらなきゃだろ!
砂原はニヤニヤしながら部室を後にし、いつもの帰り道とは別の、繁充の家の方向に向かって歩いて行った。
“ちょっと、そこのお兄さん!”
急に声が聞こえた。砂原は周りを見回したが誰もいない。
―気のせいか…。
砂原は不審に思いながらも気にしないことにした。
“ちょっとちょっと、お兄さんったら!”
砂原はピタッと立ち止まった。確実に声がした。これは気のせいではない。
“やっと気づいてくれた! お兄さん鈍いよ!”
「おいっ! 鈍いとは失礼だろ!」
砂原はどこにいるかも分からない相手に怒鳴った。そして周りを見回したが、誰もいなかった。
―気味悪い…
砂原は鳥肌が立った腕をさすった。
“ごめん、ごめん。やっと俺の声が聞こえる人に会えたもんだから調子に乗っちゃったんだよ”
声は謝った。
「…あんた…どこにいんの? 全然見えねんだけど…。」
砂原は腕をさすりながらキョロキョロ辺りを見回した。
「この下だよ! 石の下!」
砂原がふと見ると、そこには大きな石があった。
―この下って…
砂原はさらに鳥肌を立てた。
―やべえもんに関わってしまった。無視して帰ろう。
“無視して帰ったら祟るぞっ!”
声には砂原の考えがお見通しだった。
「ハァー…。で? 俺にどうしろってんのよ?」
「悪いけど、この石をどけてもらえない?」
「はぁ? 無理だろ…。」
「無理を承知で頼んでる! これは君にも関係があることなんだよ!」
「こんな石が何で俺に…」
「僕も手伝うから思いっきり押してくれ! 頼む!」
無視して帰ろうとギリギリまで思ったが、人の良い砂原は困っている声を無視できなかった。




