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「これって…」
綾女は呟いた。
「ふみさんの記憶なんだろうね…。」
繁充が呟いた。
「ほら…」
繁充は繁充が目配せした先には棺桶があり、そこにふみが横たわっている。二人はそばに近づいた。
「…死んでるの?」
「…。」
綾女はふみの頬をそっと触った。
その時、ふみの腕が動き、綾女の腕を掴んだ。
「キャー。」
綾女は叫んだ。綾女の腕を掴んだままふみは目を覚まし、ゆっくりと起き上がった。
「…あの人は…必ず迎えに行くって言ってくれたの…だから私…ずっと待ってた…。本当に…ずっと…。そして、やっとあなたは迎えに来てくれたのね。これからは永遠に一緒委いられるのね。」
ふみはゆっくりと繁充の方を顔を向けた。
「ち…違います! この人はあなたが待っている勝治さんじゃない!」
綾女は震えながらも力の限り叫んだ。ふみはすごい形相で綾女を睨んだ。そしてその顔は次第に般若のような鬼になった。
「あなたも…お父様の差し金なの? 私と勝治さんを引き裂こうとして!」
「違います! この人は私の同級生で繁充実くんなんです! 現代に生きている高校生なんですよ!」
「…繁充…繁充…うわぁぁぁぁぁぁ」
ふみは急に頭を押さえて喚きだした。
「繁充君! ふみさん急にどうしたんだろう。」
綾女は狼狽えた。ふみは起き上がって繁充に抱き着いた。
「違うわよね? あなたは勝治さんで、私を迎えに来てくれたのでしょう?」
ふみは泣きながら叫んだ。繁充はなすすべもなく、ふみの背中をさすった。
「こんなことをしている暇は無いわ。急がないとまたお父様の追手が来てしまう。行きましょう、勝治さん。」
ふみは繁充の手を握って立ち去ろうとした。
「ダメ!」
綾女は繁充の反対の手を取って引っ張った。
「…立川さん…」
「ダメよ、行ったら! どうして繁充君が行かなきゃいけないのよ!」
「…この人は…僕の先祖なんだ。勝治さんに対する執着がひどくて、誰かが付いて行かないと、永遠に浮かばれない…。僕はこの人と、この人を不幸にした人の子孫だから…助けてあげないと…。」
「私の気持ちはどうなるの! 私…まだ繁充くんに…何も言ってない。」
綾女は涙でボロボロになって叫んだが、力尽きて繁充を捕まえた手が離れてしまった。
繁充とふみは目の前の真っ黒い穴の中に飛び込もうとしていた。
その時、
「ふみちゃん!」
突然、声がした。




