5-4
綾女の部屋
綾女は机に向かって勉強をしていた。問題集や参考書を広げるだけ広げたが、まるで頭に入ってこない。
―最近は繁充君、ずっと私たちと一緒に行動していたし…他校の生徒と知り合う時間なんてないはずだよね?
―でも…このsnsの発達した世の中だと、しようと思ったら世界中の人と簡単に知り合うチャンスはある…
―ん? でも繁充君、snsとか全くしてなかったよね…。興味も無いって言ってたし…。そんな仮想現実より実際の私がテーブルコーデして食べる料理やお菓子の方が何杯も価値があるって言ってくれたよね!
綾女はニヤけた。だらしなく開いた口からヨダレがこぼれそうになってハッと我に帰った。
―なのに! なのにだよ、繁充君っ! あなたは何て罪作りな人なの!? 人をこんな気持ちにさせといて他の女子とっ!
綾女は眉間に皺を寄せた。
ーハァ…ダメダメ…そんなこと思っちゃ…。彼女でも無いんだし、私にそんな風に思う権利は無い…。
綾女は溜息をついて頭をうなだれた。
“俺だって奢るよ。好きな子には…”
綾女はカッと目を見開いて頭をあげた。
―そうよ、繁充君! あの時確かにそう言ったよね! 好きな子ってのは…それは…その…私の事だと思っていいんですよねっ!?
綾女は何度も頷いた。
「…あや…ちゃん?」
いきなり声をかけられた。いつの間にやって来たのか、真横にお菓子とお茶を持って心配そうに綾女の顔を覗き込む母親が立っていた。
ひぃぃぃぃ
綾女は恥ずかしさで顔が真っ赤になってのけぞった。
「ごめんねっ! 何回ノックしても返事が無いから…。」
母親もバツが悪そうに言った。
「こっちこそごめん。気づかなかった。」
綾女は申し訳なさそうに言った。
「…あやちゃん…たまには息抜きしてね…。心配事があるなら…ママ、いつでも相談に乗るからね…。」
母親は見てはいけないものを見てしまった罪悪感か、お菓子の乗ったお盆を机の端に置くと、申し訳なさそうにササっと部屋を出て行った。
あぁぁぁぁぁ
綾女は頭を掻きむしった。




