5-3
閉店した店の軒先で繁充は他校の女生徒と待ち合わせをしていた。
綾女は咄嗟に電柱の影に隠れた。そして傘の下からそっと二人の様子を垣間見た。二人は親し気に見えた。
繁充はいつものクールな表情だったが、女生徒の方はあからさまな態度で繁充を見つめていた。
「あいつも普通の男だったんだなぁ…。」
綾女の背後から砂原が呟いた。
「きゃっ! 砂原君! どこから湧いて出たのっ?」
綾女は小さく叫んだ。
「湧いて出たって、ちょっと酷くない? 立川さんがスマホ忘れてたから俺走って追いかけてきてやったのに!」
砂原は口を尖らせて言った。
「ご、ごめん。」
綾女は必死に頭を下げた。
「いいよ。今日は旨いもん食わせてもらったし、チャラってことで。ってか…雨やんだね。」
「え?」
綾女は頭をあげて空を見た。雨雲が消えて光が射し込んだ。
―眩しい
綾女は手で目を覆った。
―あれ?
綾女は繁充たちがいた店先を振り返ってみた。そこには繁充一人だけがいて、女生徒の姿は無かった。
「繁充~! おまえ彼女出来たんなら言えよ~。水臭いなぁ~!」
砂原は無邪気に繁充に駆け寄った。
「砂原…おまえいつのまに湧いて出たんだよ…」
繁充は呆れて言った。
「ほらっ、また湧いて出たなんて…おまえがそんなこと言うから立川さんも口が悪くなってるだろ!」
砂原は繁充の下腹を軽く殴りながら言った。
「…立川さん?」
繁充が前を見ると、バツが悪そうにもじもじしながら立っていた。
「あ、あの…私は…その…」
必死に言葉を探している綾女を見て繁充は微笑んだ。
「なんか腹減らない? ラーメン食ってく?」
繁充がそう言うと綾女はウンウンと頷いた。横で砂原も目を輝かせながら頷いた。
綾女はラーメンから湧きたつ湯気の向こう側の繁充の顔をチラチラ眺めた。
「おまえさ、俺たちの間で隠し事するなんてありえねーだろ! あの子誰なんだよ? どこで知り合ったの?」
砂原は繁充に問い詰めた。
綾女はさっき見た女生徒を思い浮かべた。艶やかな漆黒の髪を胸の下まで伸ばし、色白の肌に澄んだ目元が印象的だった。
―繁充君はああいう感じの子が好みなのかな…
「そんなんじゃないって。」
繁充はそっけなく言った。
「あんな制服の学校、この辺りにあったっけ? みかけないよな…。」
砂原呟いた。
―そう言われてみれば…
綾女も女生徒のセーラー服を思い出した。今時セーラー服も珍しければ、どことなく現代のセーラー服とも違う気がした。
「立川さん…食べないの?」
繁充は餃子を指さして言った。綾女は我に帰った。
「…あんまりお腹空いて無くて…。食べていいよ。」
綾女は自分の餃子を差し出した。
「やった!」
よこからサッと砂原が餃子を箸でつまんだ。
「おまえな~!」
繁充はムキになって綾女の餃子の皿を奪い取った。
ふと綾女を見ると、またボーっとして上の空だった。繁充は綾女をジッと見つめた。




