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部活が終わって部員たちはそれぞれ帰って行った。砂原はラグビー部の練習に戻った。用事の無い繁充と綾女は、帰りが同じ方向なので、なんとなく一緒に帰ることになった。
空は赤く染まり、ポツポツと街灯がつき始めた。二人は無言で歩いた。綾女は話題を探しながらチラっと繁充を見た。繁充は赤く染まる空をボーっと眺めていた。
誰かといる時、何も話さないと居心地悪く感じる綾女だったが、不思議と繁充と一緒の時は何も話さなくても大丈夫なような気がした。
―繁充君…やっぱり不思議な人…
ふと視線を感じて横を見ると、繁充がじっと綾女を凝視していた。
―ハッ! 私ったら気が緩んでふやけた顔してた! 恥ずかし~!
綾女は両手で顔を押えた。
「立川さん…あれ…」
繁充は前を指さした。
「…あれって…絵美じゃない?」
通りの向かい側にいたのは確かに絵美だった。絵美は男と二人でいた。何をしゃべっているかは聞こえなかったが、ただならぬ雰囲気なのだけは伝わってきた。
「…彼氏かな…ケンカしてるみたい…」
絵美は腕組みして面倒くさそうにしている。男は必死に何か訴えかけているようだった。
「…これは…」
繁充が呟いた。繁充は食い入るように二人の様子を見ている。
―意外…。繁充君って、痴話げんかなんかに興味ないと思ってた…。
綾女は繁充の意外な一面を垣間見て、絵美たちの痴話げんかよりもそっちの方が気になった。
「ちょっと心配だから行ってみよう。」
「え?」
繁充はそう言うと、スタスタと先へ行った。
「待って~!」
綾女も後を追いかけた。
―繁充君…そんなに絵美の事が気になるの???
綾女はモヤモヤしながらも、けっこうな速さで歩く繁充の後を追うのに精いっぱいだった。
「あ~、もう面倒くさい。だからもういいって言ってんの!」
絵美はあからさまな嫌悪感丸出しの顔で相手の男に言った。
「それは無いだろ! 俺が今まで…」
「うざいんだよ、おまえ! そんなだから嫌になったって言ってんでしょ!」
絵美は相手の男の話を遮って声を荒げた。
「前田さん! ちょっと!」
繁充が呼び掛けた。
絵美と男は同時に振り向いた。絵美は意外な顔で繁充を見た。男は繁充を見るなり、物凄い形相で睨んできた。綾女は繁充が何をしようとしているのか分からず、こんな修羅場に飛び込んできてしまってハラハラした。
「今日、部活の買い出しに行く予定だったでしょ! 俺と立川さんだけじゃ無理だからさ、一緒に来てよ。」
繁充は絵美に言った。
「あ…そ…そうだったよね…。」
絵美は渡りに船と、繁充に話を合わせた。
「そう言う訳だからさ、私もう行くから。これ以上付きまとわないでよ!」
絵美は男に言い放った。
「大変申し訳ないのですが、僕達ちょっと急いでいるので、失礼させてもらいます。」
繁充は男に向かったペコリと頭を下げると絵美の腕を引っ張って足早に立ち去った。
―繁充君…絵美の腕なんかひっぱっちゃって…
綾女は複雑な気持ちで繁充の後姿をじっと見つめた。




