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第三章、完結です。
「ルリ子さんに食べてもらいたい物がもう一つあるんだ…。」
繁充はそう言うと大きなガラスの瓶を取り出した。
「…これは…?」
ルリ子が聞いた。
「あの梅の木が、朽ち果てる前に最後の力を振り絞って実らせた梅で作った梅干しだよ。」
―…!
ルリ子の体は固まった。そして瞳から大粒の涙が止めどなく溢れた。
「ずっと実がならないって有名だったあの梅、最後に信じられないくらい実をつけたんだ…。きっとルリ子さんに食べてもらいたかったんだと思う…。」
繁充は優しく語りかけた。
「…あの梅が…。」
ルリ子はぐちゃぐちゃになりながら微笑んだ。そして梅干しを口の中に入れた。
ルリ子の脳裏に梅の木と太郎との思い出が駆け巡った。すると、ルリ子の前方に暖かい光が射し込んだ。
「…私…行かなきゃ…」
ルリ子は呟いた。
「うん。」
繁充は頷いた
「おにぎりと梅干、本当に美味しかった…。ありがとう。」
「どういたしまして!」
「太郎ちゃんの作ってくれたおにぎりの美味しさには程遠いけどね…。」
ルリ子はイタズラっぽく微笑んだ。
「以後、精進いたします。」
繁充は深々と頭を下げた。
そしてルリ子の霊は、ルリの体から離れてスッと立ち上がった。するとルリの体はその場に倒れた。
ルリ子の霊は光の中へゆっくりと進んで行き、そして光と共に消え去った。
それと同時に千人針の布がヒラヒラと舞いながら繁充の手のひらに落ちてきた。
「…ふぅ。一件落着。」
繁充は呟いた。
「し…繁充君…何で? どうして?」
綾女は繁充が何故ここにいるのか、そしてどうしてあらかじめおにぎりと梅干を用意してこの場所に現れたのか、意味不明で頭がパニックになっていた。横にいる砂原も同じような状態になっていた。
「君たちが言いたい事は分かるよ。ただ…僕に言えることは…」
繁充が話すのを二人は固唾を飲んで聞いた。
その時!
「おまえら~! 部活さぼってなにしてんだぁ~!」
彼らの担任であり、ラグビー部顧問の遠藤司が窓の外からこっちに向かって怒鳴っている。
「やばっ!」
綾女と砂原は目を見合わせてハッとした。
繁充はルリの事は自分に任せてと二人に告げると、ルリを抱きかかえて、保健室へ連れて行った。
―やっぱり俺たち…前世からの因縁が…
砂原は横を歩く綾女をチラ見した。
―繁充君…本当に不思議な人…
綾女はルリを抱きかかえて保健室へ向かう繁充の後姿をじっと見つめた。
黎明館展示室
繁充はガラス戸を開け、元あった場所にルリ子の千人針を置いた。
「あの梅干しは、大事にみんなでいただくね…」
繁充は呟いた。
そして展示室を後にした。
繁充が立ち去った後、千人針は役目を終えたかの如く、跡形もなくスッと静かに消え去った。
最後までお読みいただきありがとうございました!
第四章スタートまで、しばしお待ち下さい。^^




