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女生徒は雨に濡れたのか全身びしょ濡れで髪が顔に張り付いていた。青ざめた顔だったが、ギョロギョロと大きく開いた目は力強く、まるで仇を見るような形相で綾女を睨んだ。
「…松浦…さん?」
いつものルリとはかけ離れた形相だったが、目の前にいるのは間違いなくルリだった。
「あの人があんたに頼んだの?」
「え? あぁ、おにぎりのこと? うん、今日松浦さんお休みだったでしょ? それで私、砂原君から頼まれて…」
「ずいぶんと嬉しそうね。あんたやっぱりあの人の事が好きなのね。嘘ばっかり!」
「え? どういう事?」
「…やっぱりあの時、息の根を止めとくんだった…」
「何言ってるの? 砂原君は仲のいい友達で…好きとかそんなじゃ…」
綾女はルリが何を勘違いしているのか全く分からなかった。戸惑っていると、急にルリは綾女の首を絞めた。
「あんたは何でも持ってるでしょ? 何で何も持っていない私からあの人を奪うの? あの人の事なんて全然好きでも無いくせに!」
ルリはこの世の物とは思えないような恐ろしい形相で綾女の首を力いっぱい絞めた。
「…うっ…うぅぅ…」
綾女はもだえ苦しんだ。
「何やってんだよ!」
突然やってきた砂原が、ルリの手を掴んで振りほどいた。
「冗談にも程があるぞ!」
砂原はルリを怒鳴った。
「立川さん! 大丈夫?」
その場にへたり込む綾女を砂原は抱きかかえた。
「…太郎さん…やっぱりその女を選ぶの? どうして?」
「…太郎さん? ルリ…何言ってんの?」
「本当は嘘なんでしょ? 親が勝手に決めただけなんでしょ? 本当は私の事を…」
ルリは目に一杯涙を溜めて震えながら呟いた。
「…そうだよね…この女がいけないのよ…この女さえいなければ…」
ルリは再び綾女に襲いかかろうとした。
その時!
フワ…
ルリの目の前に一枚の布が差し出された。ルリはその布を手に取りまじまじと見つめた。
「…そう…それは君が太郎さんの為に作った物だよね…」
語りかけたのは繁充だった。
そして四人の前の空間に穴が出来、その穴はぐるぐると回りながら大きくなって、その先に別の世界が見えた。




