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第三章スタートです。今回は少しホラー要素を入れてみました。^^;
「うわ~! 私、黎明館掃除担当だった~!」
リコが叫んだ。
それもそのはず、黎明館というのは学校の離れ、幽霊が出ると言われているいわくつきの校舎なのだ。
黎明館を使うのはPTAやOB,OGがほとんどで、在校生が使う事はほとんど無い。使用後は使った各々が掃除をして帰る為、生徒が掃除をするのは展示室のみだった。その展示室もめったに使われないため、掃除は月に一度となっている。
その昔、卒業生の実業家たちの寄付で黎明館は造られた。建物は洋風建築だが、日本の屋根瓦を使っている明治、大正や昭和初期によく見られた和洋折衷の建物だ。
歴史的価値が高く文化財扱いになっているため、建て替えは出来ず、補修を重ねて現在に至っている。そこがまた幽霊屋敷らしさを醸し出していて、生徒たちは滅多に寄り付かない。
黎明館は、記念館みたいなもので、たまに使われる大小の会議室や、講演などが出来るホールもある。床や階段の手すりは黒光りしていて歩くとミシミシ音を立てる。
明るい時に見るとレトロでお洒落な雰囲気だが、薄暗い雨の日や夕暮れに差し掛かるとその表情は一変し、一気にお化け屋敷感が増してくる。
中でも展示室には誰も入りたがらない。
そこはこの学校の歴代の制服や歴史資料が数多く展示してあり、戦時中の物もたくさん置いてあるのだ。
戦争に行く生徒の為の千人針や日の丸に書かれた寄せ書き、当時の遺品など…。
この展示室で実際に霊を見たという生徒が後を絶たない…。
「…どうしよう。」
リコは目に涙を浮かべて途方にくれた。
「ペアのまっちゃんが今日休みだし、リコ一人じゃん…。」
「可哀そう…。」
同級生たちは口々に囁いた。
「私、一緒にしようか?」
ルリが言った。
「え? いいの?」
「いいよ。今日は運動場、サッカー部の番だからグラウンド練習は遅めに始まるし。みんなが坂道ランニングやってる間に私手伝うよ!」
「ルリ~! ありがとう~!」
リコは泣きながらルリに抱き着いた。
ルリはラグビー部のマネージャーをしている。
ラグビー部は練習もハードだし休みも少ない。おまけに他の部はたいてい三年の夏に引退で、それから受験勉強に邁進できるが、ラグビー部に限っては冬の花園大会まで三年生も現役で活動するのだ。
その為、受験勉強に当てる時間がほとんど取れない。部員は推薦で大学に行ける場合も多いが、マネージャーにそんな利点は無い。
という訳でラグビー部のマネージャーをしたがる生徒はほとんどいない。
では何故ルリはそんな損ばかりのラグビー部マネージャーになったのか?
それは大好きな幼馴染の砂原がいるから…それだけの理由だった。




