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「僕は迎えに行ってくるから、君はその間に着崩れを直しておいで!」
綾乃は真っ赤になった。恥ずかしい。そういえば、権蔵にぶち回されたまま家を飛び出して着崩れたままだったのだ。綾乃は急いで控えの間に行き、身だしなみを整えた。
「君が食べたがっていたシュークリームを用意しておいたよ。」
「え~! ほんと~!」
廊下から声が聞こえてきた。
「今日はお客様がいるんだ。紹介するね。立川さん? 準備は出来た?」
繁充が聞いた。
「は、はいっ!」
綾乃の心臓は爆発しそうだった。繁充の大事な女性。会いたいような、会いたくないような、何とも御しがたい苦しみが胸を駆け巡っている。
「立川さん、どうしたの? こっちに来て。」
「ハイッ! ただいま!」
綾乃は思い切って客間のドアを開けた。そして顔を上げてみると、繁充が小さな女の子を抱きかかえていた。
―大事な女性って…この子のこと?
年の頃は6つ7つくらいだろうか。綾乃はてっきり許嫁と思い込んでいたので拍子抜けしてしまった。
「ご挨拶は?」
繁充は少女に促した。少女は繁充の腕から飛び降り、綾乃に深々とお辞儀した。
「初めまして! 繁充春子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
―まあ、すいぶんと礼儀正しい子ね
「初めまして! 私は…」
「立川様のところの綾乃様でしょう?」
春子はニカっと笑って言った。
「どうしてそれを…」
綾乃は驚いた。
「だって、お兄様がいつも…」
春子が言っている途中で繁充が真っ赤になって慌てて春子の口を押えた。
「ま、まあ、挨拶も住んだことだし…その…シュークリームをいただきましょう!」
「…は、はい…」
―もうっ! 繁充さんたら気になるじゃないっ! 春子ちゃん、お兄様がいつも何ておっしゃってるのっ?
綾乃はやきもきしたが、繁充の必死のガードでその先は聞きだせなかった。




