OH-FU-DA! 〜厄は、揃いましたよ!〜
右手に、お祓い棒を持った美人の巫女と黄色いサングラスを掛けた若い僧侶が、卓を挟んで、向かい合って居た。そして、卓上中央の山積みされた札が在った。
巫女が、右手を伸ばして、先に引いた。
少し後れて、僧侶も、左手を伸ばした。
その動作を、交互に、五回も繰り返した。
「おお! 不夜さん、今日は、ツイているみたいだよ!」と、僧侶が、口許を綻ばせた。
「そうみたいね。黄休君」と、不夜は、しれっと相槌を打った。表情から察したからだ。そして、「黄休君は、そうやって、謀り上手なのよね」と、溜め息を吐いた。この笑みで、多くの者が、泣きを見ているからだ。
「やっぱり、不夜さんには通じないか…」と、黄休が、口を尖らせた。
不夜は、左右に、お祓い棒を振るなり、「ふう〜」と、安堵の息を吐いた。危うく、術中に嵌まるところだったからだ。そして、「騙されませんわよ」と、微笑み返した。
「取り敢えず、何枚変えようかな〜」と、黄休が、眉根を寄せた。そして、お経を唱えながら、卓上へ、札を伏せるなり、両手を合わせた。
不夜は、黙って、注視した。これも、一つの策だと認識しているからだ。
しばらくして、黄休が、拝むのを止めるなり、「札を四枚変えさせて下さいね」と、告げた。
「ええ」と、不夜も、承知した。
間も無く、黄休は、山札から四枚取り寄せた。
その直後、「だ〜れ〜だ〜?」と、山札の下から不気味な声が、聞こえた。
その瞬間、不夜と黄休は、頷き合った。その刹那、「厄は、揃いましたよ!」と、声を揃えた。そして、同時に、卓上へ展開させた。
私は、お祓い棒、賽銭箱、大吉御神籤、絵馬、破魔矢の神社一式!(※個人の偏見です。)」と、不夜は、宣言した。
少し後れて、「僕は、経文、数珠、大仏像、木魚、警策の寺社一式!(※個人の偏見です。)だね」と、黄休も、告げた。
程無くして、黒い煙が立ち上ぼり、実体化を始め、瞬く間に、禍々しい面構えの狒狒が、形成された。そして、「エバゴンに勝てると思っているのか?」と、凄んだ。
「黄休さん、山札の呪いを解きますわよ!」と、不夜は、毅然と口にした。
「OKですよ!」と、黄休も、即答した。
「悪霊退散!」と、不夜は、お祓い棒を振るった。
「觀自在菩薩…」と、黄休も、般若心経を唱えた。
その直後、「お、お前らぁぁぁ! わしを封印するつもりかぁぁぁ!」と、悪霊が、悶え苦しんだ。間も無く、「だあああ!」と、消滅した。
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