コーヒーの新商売?(提案編)
木枯らしの吹く日。
「モーフォッフォッ。今日は、お寒いですねぇ〜」と、茶色い背広の男は、左手で、鞄を持ちながら、通りを歩いて居た。そして、「こんな日は、温かい物が、欲しいですねぇ〜」と、自動販売機を探し始めた。安価で、手軽に暖を取れる物が、喜ばしいからだ。その瞬間、「彼に、連絡をしましょうかねぇ〜」と、口にした。恐らく、需要が有りそうだからだ。そして、歩を止めるなり、ズボンの右ポケットから、傷だらけの茶色い携帯電話を取り出し、瞬く間に、手際良く打ち込んで、送信した。その直後、電源が落ちた。その途端、「寿命ですねぇ〜」と、溜め息を吐いた。これで、連絡手段が断たれたからだ。程無くして、震えが来るなり、「そうそう。温かい物、温かい物…」と、鞄を持ち直して、自販機探しを再開した。しばらくして、“コーポ靄島”の建物の正面玄関口へ差し掛かった。その刹那、ようやく、自販機を視認するなり、歩を進めた。間も無く、前に立つなり、鞄を置いて、上着の内ポケットから茶色いガマ口の財布を取り出した。
不意に、「旦那、施しを」と、右側から男が、声を掛けて来た。
茶背広の男は、咄嗟に向いた。次の瞬間、「あなたは…?」と、目と鼻と口の部分だけをくり貫いた“ゼニ〇〇〇ト”と、ロゴに細工したレジ袋を被った男を視認した。そして、「自販機の物が目当てじゃないみたいですねぇ〜」と、動じなかった。強盗だと察したからだ。
「うだうだ言って居ないで、有り金出しな!」と、レジ袋の男が、要求した。
「待って下さい。温かい物で落ち着きましょう」と、茶背広の男が、宥めた。
「うるせぇ!」と、レジ袋の男が、怒鳴った。
「私は、益々、冷えて来ましたけどねぇ」と、茶背広の男は、ぼやいた。
そこへ、突然、レジ袋の男の頭上より、黄色い達磨が、出現するなり、落下して、下敷きにした。
「おや? あなたは、どらパンキーさん」と、茶背広の男は、声を掛けた。
「茶柱さん、失われた文化って?」と、どらパンキーが、問うた。
「未来で、どうかと?」と、茶柱は、提言した。
「確かに、珍品だね。で、お薦めは?」と、どらパンキーが、尋ねた。
「缶コーヒーですね」と、茶柱は、回答した。
「茶柱さん、教えてよ」と、どらパンキーが、促した。
茶柱は、一連の動作を見せた。
どらパンキーが、缶コーヒーを受け取り、「じゃあね」と、消えた。
「強盗も、連れて行っちゃいましたねぇ〜」と、茶柱は、口にした。